強い風はいつも

1999年9月24日昼0:10頃、竜巻の直撃を体験した。
職場の窓の外に、黒い雲の固まりが渦を巻いて近づいてきた。
そいつは、桜の大木をことごとくなぎ倒し、建物の瓦・壁を吹き飛ばした。
車の窓硝子を粉々にし、倉庫を吹き飛ばし、民家の屋根を砕いた。
そして、そいつは、職場の敷地を抜け、そのまま街を蹂躙していった…。

実は、2日前の22日、職場のボスが57歳の若さで亡くなっていた。
竜巻が起こったこの日この時間、ちょうど、ボスの葬儀の真っ最中だった。
(ボスの魂が、竜巻になって、お別れに来たんだろうね) (;^_^A

竜の爪は、人間が作りだした建造物を、いともたやすく、ことごとく引き裂いた。
大自然の持つエネルギーを、いやというほど思い知らされた一日だった。

風や雨や太陽、そして愛…。
どれも、人間にとって必要で、無くなってしまうと淋しすぎるもの。
でも、強すぎた風や雨や太陽は、異常気象・天変地異として、
人間社会にダメージを与えるものだ。愛だって同じかも知れない。

お互いの気持ちがどんどん接近していくと、それにつれて、愛も高まっていくね。
世界中の何もかもが、二人だけのためにあるかのように、見えてくる。
二人を中心にして、世界が回っているかのような錯覚を覚える。

けれど、強くなりすぎた愛もまた、どこかしら、それを受け止めるお互いの心と体に、
歪みを生むものだ。そして、それに気がついたときには、もう手遅れ。
残された悲しみが、ただ風に揺れて泣いている。

愛も、風や雨・太陽と同じくだね。適度であること・過度にならないこと。
それが、愛を、心地よく長続きさせるための必要条件だろう。



【『Singles』ほかに収録】

(初稿 2000.05.27)



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