白 菊

中学1年生の同級生だったYさん。1年生の秋には隣の市に転校していってしまったね。
わずか数ヶ月の出逢いだったが、同じ係活動の班で、一緒に仕事をしているうちに、
元気があって、笑顔がすてきで、気軽に話しかけることができた彼女を、わたしは、
わりと気に入っていた。
翌年、彼女からの年賀状に書かれていた、「学習係の中でもがんばってね…」
のメッセージに、思わず(うん、がんばるよ)と応えてしまったわたしだった。(;^_^A

それから7年ぐらい過ぎたある日のことだ。
新聞に載っていた小さな記事に、遠い記憶がよみがえった。

 ー工場の爆発事故で、男性従業員死亡ー

普段なら見過ごしてしまうかもしれない記事だったが、この日はなぜか目に留まった。
死亡した男性の住所と、その姓には見覚えがあった。
(まさか…Yさんの父親?)
昔の年賀状を探して住所を見たら、悲しいことに一致していた。

(連絡しなきゃ…)
(何か手助けしなきゃ…)
(でも…)

今思うと、たとえ、その時連絡をとったとしても、わたしに何ができただろうか。
それは大きな驕り。たぶん、何もできなかっただろう。
でも、人間として何かしなきゃという想いだけは、強かった。

20年以上経った今でも、わたしの心残りになっている。

あなたは、再び笑えるようになれたのだろうか。
あなたの笑顔は、今も見られるのだろうか。



【『月−WINGS』ほかに収録】

(初稿 2000.07.22)



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