傷ついた翼

「よけいなお世話だよ」
「ほっといてくれよ」

自分の心がつらい時って、周りの人のやさしさも見えなくなってしまうね。
自分に向けられる慈しみ・やさしさが、すべて安っぽい同情、そして好奇
のまなざしに見えてしまう。心がすさんでゆくのが、自分でもわかる。

でも、時間が経てば、絡んだ心の糸も、必ずほぐれてくる。
すると初めて、今まで自分に向けられていたのが、みんなの優しさだった
ことに気がつくものだ。そして、なぜか涙が…。

体が成長するように、心だって、いつかは、おとなになる。
自分だけが全てだった子ども時代と違い、人の心の機微がわかるよう
になる。そうなった時、人は、初めて後悔を覚えるんだね。

「遅すぎなければ(→『傷だらけの翼』)」
「もしも想い出せないなら、わたし、いつでもあなたに言う(→『誕生』)」
「もう一度、誓いなおすことができるなら(→『HALF』)」
「心は変わる…もっと好きになれ(→『最後の女神』)」

中島みゆきの歌には、今の自分を取り巻く環境に流され、無力になって
しまうような弱さはない。最後の最後まで、あきらめない強さを感じる。
逆境を逆手にとり、運命を切り開いていこうとするエネルギーを感じる。

1975年第3回ポプコン入賞曲:『傷ついた翼』。
第4回ポプコングランプリ曲:『時代』よりも、先に世に出た、名曲である。



【『Singles』ほかに収録】

(初稿 2000.05.20)



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