あほう鳥

アホウドリって、とてもお人好しな鳥。
どんな海鳥にも負けないほどの、すばらしい飛翔力があるくせに
人を恐れず、逃げることを知らないバカなやつ。
やがて、羽毛目当ての人間たちに裏切られ、餌食になっていく。
長い船旅に厭きた船乗りたちは、アホウドリを釣り針で釣りあげ、
慰みもの・笑いものにした。

アホウドリは、死んだ船乗りの魂が生まれ変わった姿。
アホウドリに輪廻したのは、前世で慰みものにした報いだろう。
せっかく生まれ変わっても、またすぐに、殺されてしまう運命だ…。

人を信じるのって、いけないことだろうか。
人に裏切られるのって、しかたないことなんだろうか。

それでも、誰かを信じていたい。
信じられない人ばかりの世の中じゃ、生きているのが辛くなる。
あなたが本当に心を許し、信じてもいい人は、この世のどこかに
必ずいるよ。

あほうどり…漢字で書けば、信天翁。
どんな時でも、天(そら)の正しさを信じて、生きている翁(おきな)
のように、やっぱり、人を信じたい。やっぱり世の中を信じたい。
そして、あなたを信じたい。



【『愛していると云ってくれ』ほかに収録】

(初稿 2000.05.28)



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