『猫』 〜福太郎に捧げる短歌十首〜 |
一 之 |
| 抱きあげてまだ温かりし横さまに倒れゐし床もほのか温かりし |
| 縦二十五センチ横四十五センチ猫と生まれて小さき墓穴 |
| たはやすく死ぬるものかなわが猫の病まず苦しまずある朝突如 |
| 猫とはいへかくやすらかに失せたるは罪なき一世おくりし故か |
| 下校してそのまま裏へ回れるは猫の死を確かめに行きたるらしき |
| 「フク来い」と声呼ぶ声の今は空なし失せしは寒き三月五日 |
| 足先にて探る炬燵に触るるなし猫に合ひたる温ぬくとさなれど |
| クスクスと鼻を鳴らせば次ぐくしゃみ予感するらし逃げて行きしかな |
| 餌を欲りて振りかへりつつ先立てば猫も生き物生き物あはれ |
| 死といふはゐなくなることわが猫のゐなくなりたりいつもどこにも |
三月四日撮影 |
