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K&E 尺のカーソル修理


Keufel & Esser 社の両面尺で、特定の範囲の製造年は、カーソルのプラスティック部分(カーソルバー)が年と供にボロボロになると言う現象が起こる事が知られています。これをコレクターの間では Keiffel Esser Rotten Cursor Syndrome (KERCS: KE尺腐りカーソル症候群) と呼んでいます。

私も2−3本、この KERCS の尺を持っています。そこで何とかこれらの尺を使える状態に復元したいと考えました。


 

KERCS になったカーソル。カーソルバーがぼろぼろになっている。

考察
  • 改修にあったって再利用できるのはガラス、枠、ネジです。
  • カーソルバーは新しく作らなければなりません 。
  • カ^ソルの内部に使われているバネは酸化して完全に無くなっていますので再製作が必要です。
  • もともと使用されていたネジはインチネジです、。そのまま使用するとすればインチネジの工具が要ります。
カーソルバー
  • Dupon 社の Delrin という素材を使うことにしました。この材料はエンジニアリング・プラスティックと呼ばれるもので、適度な硬さを持ち、加工も通常の金属加工と同じ手法が使えます。
  • 一般名を「アセタール」といいますが、計算尺仲間の久保田さんがこの材料を入手してくれました。久保田さんありがとう。
バネ
  • 0.2mm 厚のりん青銅の板から切り出しました。このくらいの厚さがちょうど良いバネになるようです。
ネジ
  • 最初はカーソルバーに穴をあけただけで元のネジを強引にねじ込んだのですが、ネジが真鍮のせいもあって数回やるとねじ山がつぶれてきました。デルリンという素材は以外に硬いのです。そこでやはりタップを使ってバーの方に雌ねじを作ることにしました。
  • インチネジだとネジ穴を作るタップの入手が難しいのでとりあえずメートルネジを使うことにしました。 たまたま計算尺仲間の KIM さんが Hemmi 尺のカーソルの改修をされていて、小さいメートルネジを入手されたので分け ていただいて使いました。いくつかいただいたのですが、1.7mm x 2.5 の黒いプラスネジを使いました。KIM さん、ありがとうございました。

   
(左:改修カーソルを半分組み立てたところ、右:完成した 4081-3)


(別の尺: K&E 4088-3。こちらは真鍮のネジを使っています。)

あとがき

  • デルリンは「かぶれる」かもしれないのでマスクをして手袋をして作業すること、なんて注意書きが有ったので、びくびく物で、けずりかすも 全部袋に入れて廃棄するよう気を使いましたが「かぶれ」は出ませんでした。 やれやれ。
  • 新しいカーソルは滑りも良く、快適に使えています。
  • 素人の工作なのでカーソルバーの作成でずいぶん「おしゃか」を出しました。最初の失敗を含めて1/3の歩留まりでした。やれやれ。


追補 インチねじについて

その後インチねじについて調べたところ、K&Eのカーソルに使ってあるねじは No.1-72 と言うタイプであることが判りました。さらに日本でも タップを入手可能であることが判りました。 タップを購入してオリジナルのねじを使用したカーソルも作って見ました。


K&E 4081-3

タップはジャパン ホビー ツールから通販で購入できます。インチねじは三和鋲螺という店に在庫しているそうですが、私は購入したことは有りません。

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