序章
太古より、我々の住む世界と同等の時間を過ぎてきた世界。
異世界と呼ばれるに相違ない世界だった。
その世界は、魔法が剣が存在し
我々が捨て去ったものを持ち続けている世界でもあった。
そして、平和でもあった。
人々は歌に酔いしれ花に酔いしれ平和に酔いしれた。
その…偽りの平和に…。
しかし、その平和も長くは続かない。
ある空間から魔物を呼び出したものがいる。
その名はロマ…ロマ・ラゴス・ハルツームという男であった。
彼の出現により平和は打ち砕かれた。
彼を止めた者がいる。
その人物の名は…慈悲深きファラスマスター。
尊き神に天へと上げられた戦いの神ナイルである。
激しかった戦いも終わりを告げる。
今から1万年もの前の出来事である。
すべての魔道士、賢者、僧侶は叫ぶ。
「ロマが復活する。この世に魔物が復活する。ロマがロマが…」
誰かが叫んだとき魔物が復活した。
「ロマの復活を止めるには勇者しかいない。勇者を探せ」
と、賢者が叫ぶ。
そこにいたものが聞く。
『勇者は何処か』と。
「勇者は『ファルダーガー』にはいない。相対している異世界にいる。
勇者は少女、勇者の証である『双龍のメダル』を落とす」
スウェルマスターの言葉に人々は動揺する。
「異世界だって?」
「あんなところに勇者なんているのか?」
「そうだ!あそこは荒んだ世界ではないのか?」
人々が叫ぶ。
その声にファラスマスターが答えた。
「あそこは荒んだ世界ではない。全体的に見てそうかもしれなくても、
一人一人の心は違うのだ」
と。
そして、今まで黙っていたウォールマスターが答える。
「この『双龍のメダル』を持ったものこそ我々が捜している勇者だ。
行け、異世界へ!
一刻も早く勇者を探し出すのだ」
その言葉に人々は敬礼し出ていく。
その様子を見ながら三聖人は口々につぶやく。
「ロマの復活はたぶん止められないだろう…。
だが、止めなくてはならない」
「そうでなくてはもっと厄介なことが起きる」
「早く…早く勇者が見つかれば……」
と。
そして、その様子を柱の陰で見ている男が一人。
「ロマ様の復活を止めようとしている輩がいる。
ロマ様の復活を早くしなくては…」
異世界(地球)「みらの、バイバイ」
「ばーい・」
あたしの名前は高山みらの。
イタリアが大好きなお父さんとお母さんがつけた名前。
昔はさんざん聞かされたっけ。
出会ったころの惚気話し。
イタリアのミラノで劇的な出会いをしてー…な感じで。
あたしもそんな恋がしてみたい。
な〜んてね。
うちに帰るとお母さんは出かけた後…。
オペラを見にいくとか行かないとかって昨日言ってたな…。
そのときもまた聞かされたけど、惚気話し。
はぁ、いいかげんにしてよね…?
床に何か落ちてるぞ。
そう思いながら拾う。
細かい装飾。
2匹の竜が向かい合って…その周りには宝石…。
ダイヤとかサファイアとかエメラルドとかルビーとかアクアマリンとか…いろいろくっついてる。
うちにこんなのあったけ?
ボーッと見ていると一瞬、めまいが起こる。
な、何なの?あたしって、貧血持ちだっけ??
その時だった。
見知らぬ女の人が目の前の鏡に現われたのは!
誰?
振り向き警戒をすると彼女はにっこり笑ってこう言った。
「警戒なさらないでください。私は怪しいものではありません」
と。
そんな事言われたって無理よー。
急にあたしに後ろにいて怪しまないでください、なんて言うほうが変よ!
「さっそくですが私の話を聞いてください。私…私たちは貴方のことを捜しておりました。我らが勇者ミラノ・フォリア・ウォールス様。私達の世界を救ってください。私達の世界に悪鬼が復活しようとしているのです」
勇者って何?
悪鬼って何?
いきなり言われ頭がパニックになるあたし。
「ちょっと、待ってよ!テレビゲームじゃあるまいし。急に勇者です。って言われたって困るのよ。それにミラノ・フォリア・なんとかって何?」
パニックになった頭を整理して言った言葉に彼女は頷く。
「確かに貴方の言う通りです。ですが事は一刻を争うのです。…名前のことについては今説明しますか?」
できるならば。
「かしこまりました。ゲートが開くまで説明いたしましょう」
と彼女は小瓶に入っている液体を壁に掛けた。
「これで、ゲートが開きます…。さて名前のことですが…。ミラノとは貴方の名前と判りますね」
彼女の言葉に頷く。
それは、あたしの名前だ。
「フォリアとは勇者の力を差し、ウォールスは神々の力を差します。つまり勇者の力を持ち、神々より力を与えられたミラノと言う意味の名前です」
何か、かっこいいぞ。
これなら面白いかもしれない。
「さぁ、ゲートが開きました。ミラノ様参りましょう」
彼女の言葉に頷く。
そして、ゲートの中へ…。
あたしは、心を決めた。
絶対、何か面白いことが起きる。
これは、ゲームなんだ。
そして、あたしはゲームの主人公なんだ。
いろいろできるじゃない。
コンサートとかカラオケとか映画にいきたかったけど、ま、いっか。
なんて気楽に考えていたあたしをその世界『ファルダーガー』は気楽に待っていてはくれなかったのだ。
そして、その世界『ファルダーガー』で待ち受けるものをあたしは知らないでいた。