イレギュレーター -- 0-3 --  

 

 三蔵の機嫌が悪い。
 理由は、わかんねー。

「俺が知るかよ」
「そうですね、ISSAで一緒に行動している悟空の方が分かるんじゃないですか?」

 八戒と悟浄にちょっとだけ相談したらそう言われた。
 やっぱ、相談する相手間違っているよな、俺って。

「さんぞー」
「何だ」

 三蔵の機嫌の悪さの理由がなんとなく、知りたくって(知らない方が本当はいいのかもしんないけど)三蔵の部屋に行ったら、それほどでもなくって驚いた。

「別に何でもないけどさぁ」
「何でもないんだったら、来るな。うるさくてしかたねぇ」
「あぁ、ごめん」

 そう言って俺は扉を閉めて出ていこうとした。
「悟空」

 その俺を、三蔵が呼び止める。

「何、さんぞー」
「……俺に2ndが出来たら、どうする?」
「え、三蔵、2nd見つかったの?」

 どんな子だろう。
 だったらいいな。
 三蔵、気に入ってるし。
 八戒と悟浄がいろいろうるさいけど、『超最優先事項』の時と一緒に出かけられるし。
 まぁ、このことはしか知らないんだけどさ。

 って言うか、今関係ないし。

「……」
「三蔵?」
「なんでもねぇよ」
「は?」

 な、何だよ、何でもねぇって。
 三蔵はそのまま話を進める気はないらしく言葉を止める。

 もー何だって言うんだよっ。

 

 

***

 

 

「天蓬、データはどうなってる?」
「長官、コレなんですが、いかがです?なかなか興味深いデータが出てると思うんですが」

 コンピュータプログラムのスペシャリストであり、警視庁サイバー犯罪専門の人間、天蓬がモニタに映し出しているデータをイレギュレーターの長官である観音に見せる。

「悪くはねぇな。最初の頃に比べて、いいシンクロ率たたき出してるじゃねぇか」

 データはレーダーが読みとっている能力(ESP)の現在進行のシンクロ率を示している。
 データ値の持ち主は自分たちがはかられていることは知らない。

 能力者のペアリングには、実はこのシンクロ率で決定されることが多い。
 非能力者のペアリングは余程の事がない以外、自分のパートナーを指名をすることを認められることが多いが、能力者のペアリングの場合、少し様子が違ってくる。

 シンクロ率。

 この値が高くないと認められないのだ。
 能力者が互いに力を合成させる事をシンクロと呼ぶ。
 その事は、作戦においても重要な位置をしめ、この値が低いと、シンクロさせることは不可能なのだ。

「ファーストコンタクト時のシンクロ率は最大値を示してましたが、それも一瞬のことでしたからね」
「接触させていけば、シンクロ率が上がるって言うのはあながち嘘じゃねぇな」
「金蝉の説が正しかったと言うことですね」
「まぁ、能力によってそれが引き上げられるって言う可能性もあるが……。ここまではあがらねぇな。普通は」

 観音の言葉に天蓬はうなずく。

「えぇ。彼にとっても、彼女との接触はいい刺激になってるようです」
「こいつが、能力に目覚めるのはいつだ?」
「もう目覚めているはずですよ。ESP波は検知されてますから。ただ、このシンクロ率からいって、おそらく多方向って言うのは難しいかもしれませんね」
「どういう事だ天蓬」

 天蓬の言葉に長官は眉をひそめる。

「互いのシンクロ率が高いと言うことは他の物が侵入する余地がないと言うことです。彼女の場合はまだ能力は未発達。その状況での高シンクロ率をたたき出していると言うことは…。彼女は彼以外の人間と交信することは不可能でしょうね」
「…問題…だな」

 天蓬の言葉を聞いて観音は小さくつぶやく。

「ま、それもおもしろそうだけどな」
「まぁ、彼がなんて言うか見物かもしれませんけどね」
「全くだ」

 そうつぶやき、天蓬と観音は軽く笑った。

 

 

***

 

 

『玄奘三蔵、龍ヶ崎。至急俺様の所へこい』

 ふざけた、放送がISSA内を駆けめぐる。
 データ管理室にいた俺は周りにあった視線をにらんで一掃し、くそババァのいる執務室へと向かう。

「じゃあな、
「うん、またね」

 部屋にはいると、はすでに観音と話をすませていたらしい。

、早かったんだな」
「うん、近くにいたんだよね?三蔵はどこにいたの」
「データ管理室だ。ISSA関連の事件はデータ管理室で管理されているからな。あそこでしか見ることのできない過去の資料がある」
「ふ〜ん」

 そう言った彼女の後ろの方でくそババァがにやにやと笑っているのが見えた。

「わたし、行くね」

 は不意に俺の殺気を感じたのか部屋を出ていく。

『またね、三蔵』

 そう、メッセージを言い残して。

「随分と仲いいんじゃねぇのか?」
「何のようだ」

 観音の言葉を遮り、用件をさっさと切り出させる。

「別に。『ただ、可愛い甥の元気な姿を見たい』叔母がそう思うのは正当な理由だろう?他にどんな理由が欲しい」

 人を食ったような笑みを観音は俺に向ける。
 その笑顔が怪しいんだよ。

「それだけの理由で呼びつけるんじゃねぇよ」

 そう吐いて部屋を出ようとした。

「そう言えば、2nd候補は見つかったのか?」

 わざとらしく、今、思い出したかのように言う。

「…話す必要すらねぇな」
「見つかってないなら、見つかってないんでいいんだぜ?こっちでは、お前の2nd候補はすでに見つけてあるからな」
「勝手なことすんじゃねぇよ。自分の2ndぐらい、自分で見つける」

 

 ……ニヤリ……。
 

 観音の笑顔の中心だった口唇がそうゆがんだ。

「気づいてねぇか…」

 そして、そうつぶやいた。
 何が…だ?

「自分の2ndは自分で見つける、か…」

 

 …自分が何を口走ったのか今、気づく。

 

「いいぜ、好きにしな。探して見ろよって言ったのは俺のほうだからな。お前が誰を連れてこようが文句はいわねぇよ。シンクロ率がどうこうとは別問題だしな。まぁ、お前のテレパスに反応する奴は今のところ、たった一人しかいない。しかも、そいつはお前にしか反応しないっていう特異体だ。すぐに見つかるだろうよ。もっとも、もう見つけてるかもな」

 そう言って観音はいつものけだるげな笑顔を見せて手元の資料に目を落とす。

「もう、見つけてるのかもな」

 その言葉だけがひどく残った。

 

 

***

 

 

 観世音長官はイレギュレーターの長官で実は、彼女自身も能力者なんだけど。
 久しぶりに逢ったら、ESP波が検知されてるっていきなり言われた。

 しかも、その値はどんどん大きくなってるって。
 って事は、特能者扱いからアンカー能力者扱いになるらしいんだけど。

 わたしが持ってる、ESPって何?

 って聞いても教えてくれなかった。
 観音が言うには、わたしのESP能力は『かなり珍しい波形』らしく、検知するのに時間がかかり、その『特殊さ』故に、どうやらわたしは2nd候補になってしまいました。

 1stがいいなぁと思ってたんだけどなぁ。
 こだわりは特にないんだけど。

 ただ1stだとパートナーに左右されることなく、行動できるから…。
 ちょっと2ndには申し訳ないけど…。

 …って、綾弥は2ndなのに自由に動いてたっっ。
 って事は全然問題ないじゃん、良かった。

「うるせぇ〜」
「きゃあああああ」
「三蔵、いきなり、に何すんだよっっ」

 いきなり、三蔵にハリセンでぶん殴られた。
 …ってなんでぇっ。

「三蔵、なんで、わたし、いきなり三蔵に、はたかれなくっちゃならないわけっ?」
「……知るかっ」

 そう言って、三蔵は違う方を見る。
 何よ、これぇ。

、大丈夫か?」
「大丈夫だよ、心配するほどじゃないし。三蔵っていつもあぁなの?」

 急に理由もなく殴るとかっ。

「いつもそんなんじゃないけど。理由があるんだけど。あんなの初めてだからなぁ」
「そっかぁ。なんか、ムカツクぅ」

 理由があるにしろ、急にはたくってないよねぇ。
 謝るぐらいしろって言うのっ。


「な、何よっっ」

 急に三蔵がわたしのことを呼ぶ。

「………なんでもない」

 そう、小さくつぶやいてまた、別の方向を見る。
 な、何よぉ、何なのよぉっっっっっ。

『……いい加減にっっ…』

 な、何?

「どうしたんだよ。三蔵にはたかれたところ痛い」

 悟空が心配そうな顔でわたしを見つめる。

「ん、何でもない。ちょっとこのところ偏頭痛がひどくって」

 偏頭痛…じゃないんだけど。
 観音に相談したら誰かのESP波を受けてるせいだって教えてくれた。
 詳しく説明するのも面倒だからまぁ、一応頭痛もするし、偏頭痛と。

「まじ?八戒とか悟浄、知ってるの?」
「へ?し、知らないよっっ」

 悟空が誤魔化した言葉を真に受けてしまったぁ。
 八戒や悟浄の名前が出てくるとは思わなかったよ。

「ふ、二人には内緒にしておいて?心配するから」

 いつもかなり心配してるんだけど。
 心配すること楽しんでる節があるけど。
 でも、やっぱり、二人に心配はかけたくないから…。

 ……最悪な事態を招かないとも限らないし……。

 って言うことはとりあえず、黙っておく。

『……自分のっっ……』

 …まただ。

「ホント、まじ大丈夫??」
「大丈夫だから」

 何だろう、前みたいな感じじゃないけれど。
 痛みは伴わないけど。

 なんか聞こえてくるような気がして仕方がない。

 何が聞こえてきてるんだろう。
 静かに目を閉じて、聞こえてくる音だけに注意する。

「………」

 風で、葉のこすれている音。
 遠くで聞こえてる研修生やISSAで働いているの声や足音。
 このビル内で響き渡る数々の物音。

 それはいつも聞こえている物だった。

 いつもと変らない音の中に聞こえる『言葉』。
 音じゃなくって言葉。

 お仕事時に霊魂が語りかけてくる言葉じゃなくって、なんか違う感じ。
 そう言えば、霊障が起きた時、時々『ESP波』が検知されるって聞いたことがある。

 って事は、幽霊がいるんだ!!!
 お仕事だっっ。
 お仕事しなくちゃっっ!!

『違うっっ』

 つっこまれたぁ。
 って何よぉっ。
 何よぉ、じゃあ、何なのよぉ。
 コレは。

、いい加減、自分の能力に気づきやがれっっ』

 …はい????

、聞こえたか?」

 三蔵?
 三蔵がにらんでわたしを見ている。

「聞こえてるはずだ」

 何がよぉっっっっ。

「今の言葉だっ」

 いらいらしてる三蔵。
 そして訳が分かってないわたし。
 同じく、訳が分からず、おろおろしてる悟空。

『今の言葉って一体…』
「『自分の能力に気づきやがれっっ』って事だっ」

 …自分に気づきやがれっっ。
 ってわたし、何のESPなの????

 

 

***

 

 

「……聞こえたか」
「…はい」

 悟空は特能者の研修のためいなくって、この時間研修が行われる時間だから、この能力開発室という名のESP研究室には誰もいなくって。

 いや、いるのはわたしと三蔵だけで…。

「随分、鈍感だな。それでよく、陰陽師をやってられる」
「……自分がどんな能力を持ってるか知らなかったんだからしょうがないと思うんですけど」

 なんかケンカ腰に話しかけられてるから、こっちもケンカ腰になる。

「いつ、自分が能力保持者だって聞いた」
「いつって…この前、観音に呼び出されたときだけど?」
「……あの、くそババァ」

 三蔵はわたしの言葉を聞いて、この場にはいない観音に悪態を付く。
 聞けば、三蔵は観音とは親戚関係にあるという。
 ……何となく、納得。

「……とりあえず、三蔵。ごめん」

 そして一応、謝っておく。
 わたしの『ESP波』を三蔵が受けちゃったらしくって(しかも、かなり強力に)で、いらいらしていたらしい。

 わたしも、三蔵の『ESP波』を受けてはいたけれど、偏頭痛ぐらい。
 その偏頭痛だって、「人が出す『ESP波』を初めて受けたせいだ」と、観音の所に遊びに来ていた警視庁の刑事さんでお仕事でもお世話になっているさんと金蝉さんに教えてもらった。

 後から聞いた話だと、金蝉さんは三蔵の従兄らしい。
 しかも、観音の息子。
 うーん、かなり驚いたんだけど。(観音の息子ってあたり)。

「…別に謝る必要はない」
「だから、とりあえずってつけたじゃん」
「テメェ」

 ハハハハハハ。
 にらまれたから、とりあえず、笑って誤魔化す。

 で、疑問に思っていたことを聞いてみる。

「三蔵、わたしはテレパシストなの?」
「一応な」

 一応?
 どういう事なの?

「お前の能力はかなり『特殊』なんだよ」
「特殊…ねぇ」

 観音も言ってたっけ、わたしの『ESP波』は『かなり珍しい波形』で、『特殊』って。
 どう、特殊なんだろう。
 言葉の続きが知りたくて、三蔵に視線を向ける。
 当の三蔵は何かを考えている最中らしく、わたしが見ているのも気にならないと言った感じだ。
 ふ〜ん、困ったなぁ。

 不意に、思った。
 こんな所、人に見られたら大騒ぎだろうな…って。
 金色のさらさらな髪に、紫暗の瞳。
 女の子が騒ぎたてるほどの美形。
 当の本人は騒がれるのがものすごく嫌いで、いつも不機嫌そうに眉間にしわを寄せている。
 笑顔を見たことがある人は多分いない。

 なんか、なんか、変な感覚だ。

 アンカー養成所のアイドルみたいな人とこうやっているの。
 なんか、変な感じだ。

 急に、三蔵が呼ぶ。

「何?」
「考え事するときは回線を閉じろって言わなかったか?」

 …あ、あは?
 全部、今の事、聞かれちゃったらしいです。

「回線の閉じ方って」
「教えたはずだ」
「はい、教わりました」

 ハハハ、しまった…。
 しっかし、回線閉じないと聞かれるのって不便だよねぇ、テレパシストって。

「テメェの能力は特殊だと言ったはずだ」
「って、聞かないでよっっ」
「聞こえたんだっっ。聞きたくて、聞いてんじゃねぇよっ。いいか、テメェの能力は、特殊でも何でもねぇ。ただの、中途半端なだけなんだよっ」
「ど、どういう意味?」

 三蔵は視線をはずす。
『テメェのテレパスは、俺しか受けないんだよっ』

 ……はい???
「三蔵しか受けないって……」

 三蔵にしか、おくれないって事?
 まじ?

『いい加減に分かれっっ』

 うっそぉ、そんな話聞いたことないよぉ。
 一人にしかおくれないテレパシストってそんなの普通じゃない。

「だから、特殊なんだよっ」
「だからって読まないでよっ」
「テメェこそ、読んでんじゃねぇよ」
「読んでないわよっっ」
「読んでんだよっっ」

 ……。
 お互いがお互いにテレパスが入ってきたり、送ったりして、かなり異常な状況になってると気づいたのは、少し、落ち着きを取り戻した時だった。


「何?」

 ようやく、落ち着きを取り戻し、テレパスの仕方などを練習し、テレパスの回線の開き方、閉じ方、送り方を覚えた時だった。

「何?三蔵」
「お前のテレパスはどうやら俺しか受け取れない。そして、俺のテレパスは、お前が一番受け取りやすい。観音の話じゃあ、俺のテレパスの『ESP波』も特殊な波形らしい」

 わたしから視線を外しながら、三蔵は言う。
 何を言いたいんだろう。

 

「…俺の2ndになれ」
 

 一呼吸をおいた後、まっすぐにまるで、射抜くようにわたしを見て、三蔵は小さくつぶやいた。

「……三蔵の2nd???」

 三蔵はすでにイレギュレーターとして行動している。
 その三蔵が今ISSAにいるのは…2ndを探してるからだった。

「別に、2ndなんざ必要ないんだがな」

 ……ひねくれてるのかな?この人。

「三蔵ってひねくれ者だよね、言葉付け加えなければいいのに」

 そう言うわたしに

「俺じゃ不満だって言いたげだな」

 三蔵はわたしの言葉に眉間のしわをより深くする。

「別にそう言う訳じゃないよ。でも、本当にわたしでいいの?あの過保護な兄が2人もれなくついてくるよ?それに…わたし、貴方に迷惑かけたくない」

 三蔵の2ndだったらいいなって、ふと思ったことがある。
 その思いは、すぐに消えたけど(八戒や、悟浄からの電話で)。

 でも、三蔵の2ndかぁ…。
 気にしないのかな?あの、過保護兄達を。
 それにいろいろ迷惑かけちゃうと思うし。

「迷惑なんざ、とっくにかけられてる」

 確かにその通りで。
 もう、八戒や悟浄に嘘付いてもらってるし。

「それはテメエが気にする事じゃねぇな」

 少し、穏やかな顔で三蔵は言う。

 あぁ、こんな穏やかな表情もするんだな。
 知らなかったな、わたし。

 だから、自然と言葉がでた。

「わたしでいいなら、…1stになってくれる?」
「2ndになれって言ってんだろうが」

 その言葉にわたしは頷く。

「うん」

 三蔵の穏やかな表情が少し変る。
 いつも微笑まない人が少しだけ微笑んだような気がした。

 

 

***

 

 

「……今から?」
「他にねぇだろうが。もう、観音や上には話を通したからな」
、八戒や悟浄は今日、いないから大丈夫だと思うよ」

 今から引っ越しって言われた。
 ちょっと待ってよぉ、いきなり引っ越しって聞いてないよぉ。

「いつまで、先延ばしにするつもりだ」

 図星を付かれた。
 何を言いたいのかすぐに分かる。
 過剰なほどに心配している、八戒や悟浄に『ISSA』に入ったこと言ってない事。

「…分かったわよぉ。フォローしてくれるんでしょう」
「俺の2ndだからな。少しはしてやる」

 少しって何よぉっっ。
 不安だ、もう、平謝りしかないよね。

 そうして、三蔵達が住む家に引っ越したんだけど…。
 悟空のうそつきぃ、八戒と悟浄いるじゃんっっ。
 しっかり在宅中じゃん。
 三蔵に2ndだって紹介された後、

「ごめんなさい、ごめんなさい」

 当初の予定通り、平謝り。

「……説明してくれますね、

 静かな、八戒の声が響く。

「あのね、わたし、黙ってみてるのいやだったの。花喃の事、わたしも何とかしたかったの。ISSAに入れば、普通は入れないような所も入れる。だから、ISSAに入ったの」
「…だけどね、
、オレらが、俺と八戒が心配するって言うの分かってて入ったのか?」

 悟浄が、八戒をいったん制しながらわたしに言う。

「…うん。だから、黙ってた。悟空や、三蔵に協力してもらって。さんや、金蝉さん、天ちゃん(八戒の従兄の天蓬の事)、ケン兄(悟浄の従兄、捲簾の事)も知ってる。って言うか天ちゃんとケン兄には、ばれた。さんや金蝉さんには入るとき協力してもらった」
「知らなかったのはオレらだけか?」
「…ごめん。でも、絶対に心配するって分かってたから、大げさってほど心配するって分かってたから。悟浄には言ってもいいかなって思ってたけど」
「八戒じゃあ、監禁しかねねぇってやつか」

 悟浄が八戒を見ながら苦笑いして言う。

「僕は、そこまで、非常識じゃありませんよ」
「いや、お前ならやりかねねぇよ」

 ……悟浄がそう笑って言う。
 …悟浄が言うと、ものすご〜く、リアルでいや。

「…遠くにいるより、ましといえば、ましですね。三蔵の2ndって言うのは少し引っかかりますが」
「八戒、許してくれるの?」
「許すも何も、もう、ISSAに入ってしかも2ndにまでなってるんだから、駄目も何もないでしょう」
「ごめん」
「謝らなくてもいいですよ。三蔵の2ndって言うのはかなり引っかかりますが、見知らぬ他人でもないですし、逆に、見知らぬ他人の2ndになってでもいたら、その人殺しかねないですしね」

 …恐ろしい言葉を聞いたような気がします。
 悟浄に助けを求めようとしたら、悟浄もビックリして4,5歩ほど後ろに下がってました。

 下がりすぎっっ。

「…ともかく、良かったな、。悟浄と八戒に怒られなくってさ」

 悟空が場の雰囲気を変えるかの様に明るく、わたしに声をかける。

「あ、そうだね。悟空、ありがとね」
「気にすんなって、これから大変なんだしさ。三蔵の2ndでテレパシストなんだからさ。三蔵だけにしかおくれないんだっけ?」
「どういう…事ですか?」

 ………八戒と悟浄の表情が変りました…。
 う、悟空の馬鹿ぁ。

「説明してもらいましょうか、三蔵」

 …矛先が…三蔵に向いた。
 ……この後のことはとりあえず、見なかったことにしておく。
 だって、八戒と悟浄のコンビが切れるとかなりやばいということを、今更ながらに知ってしまったから。

 …これから、どうなっちゃうんだろう。
 先の事考えると、ちょっとだけ頭が痛い。

 とりあえず、三蔵ごめん。

、覚えとけよっっ」
「そういう言い草、僕達の可愛い妹にしないでもらえませんか、三蔵」

 ……ホントに、ごめん。
 謝るしか、ないです。

 今は。

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あとがき

アンカー第3話。
一応、三蔵、ヒロインを2ndにするまでのなが〜い道のり編終了です。
八戒と悟浄を入れたくて、最後を書いたのですが、ちょっとまとまりなかったような気がします。
なかなか三ちゃんがヒロインを2ndにしてくれなくって大変だったよ。
前に日記で書いた三ちゃんヒロインを2ndにするシーンをアレンジする羽目に。
なかなか素直に言ってくれないんだもん、この人。

天ちゃんを出しました。
天捲コンビは激悪コンビです。警視庁サイバー取り締まりの総元締め。ハッキングの天才綾弥ですら相手したくない人物です。というわけで、オリジナルの方にも出るんですよ。(もちろん名前は変えてますが)

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