イレギュレーター --1--
アンカー
ISSA(国際秘密工作員:International Secret Special Againt)によって形成される1個体の組織の事である。
アンカーは1st及び2ndの最小組織隊(2人組)によって構成される。
その下に3rdと呼ばれる者もいるが、彼等は1st及び2ndになる為の予備生である。
そしてアンカーは2種類の組織に分類される。
その内訳はESP(超能力)保持者とそうでない否保持者に分類され、ESP保持者(能力者)と非能力者は決してペアリングされる事はない。
アンカーの仕事は多岐に渡る。
人命救助から潜入捜査までありとあらゆる仕事をこなす。
その過酷な仕事の中で1stや2ndを不慮の事故でなくした者もいる。
そう言う者や、サイキック(攻撃的ESP)保持者や、その他特殊能力を持つ者はアンカーには所属出来ないのである。
そう言う者を引き取る部門。
それがイレギュレーターというISSA内にあっておおよそその存在をあまり知られていない組織に所属が移るのである。
アンカーの仕事は多岐に渡る。
だが、イレギュレーターの仕事はそれ以上の物がある。
イレギュレーターは通常のアンカーと違って、ペアで仕事をすることがない、グループを組んでもいい事になっているのだ。(アンカーでも特殊な例もある)。
もちろん、上層部の許可を得れば、1stまたは2ndを得てもいい事になっている。
それは、簡単なものではなかったが…。
アンカーの養成所というのはISSAの本部内に合って、性格難から即刻イレギュレーター行きを言い渡された男はその場で苦虫をかみつぶした思いで目の前にいる人物を見やる。
「おいおい、そんな顔すんじゃねぇよ。なんか俺が悪い事したか?」
その人物は男を揶揄するような語り口調と目線で話しかける。
「…いちいち、呼び出すんじゃねーよ、くそババァ。俺じゃなくって、金蝉を呼びやがれっっ」
そう言って男…玄奘三蔵…は従兄の金蝉の名前を口に出す。
目の前にいるイレギュレーター長官である叔母、観世音菩薩。
「金蝉を呼んでどうするつもりだ?あいつは、お前と違ってきちんと1stになってんだぜ?かわいい相方見つけてな。だから、お前も見つけろって言ってんだよ。そろそろいいんじゃねぇの?あいつらと付き合ってちったー性格丸くなったんじゃねぇの?」
「フン、テメェの目は節穴か?あんなのと付き合ってて性格が丸くなったって言うんだからな?俺はあいつらと付き合っていらいらしっぱなしなんだよっ」
「そう言うなって。それより、忘れたのか?アンカーの1st候補生は2ndを選択出来るって事を。探せばいいじゃねぇか。自分が気に入った奴を。1stと1st候補生にはその権利がある。最も、上で了承しなきゃ無理だがな」
「下僕共だけで充分だ」
「そう言ってた金蝉だって2nd見つけたぜ?2ndなんざうぜぇって言ってた奴がな」
観世音の言葉に三蔵は眉間のしわを深くする。
「探して見ろよ。お前だけの奴を」
楽しそうに観世音は三蔵に向かって言った。
そうそうにくそババァ(イレギュレーターの長官:観世音菩薩)の所(執務室)から出てきた俺はその足で、中央庭園に向かう。
ISSAの日本本部ビルは相当高い。
1階から15階までが本来のISSAの業務室、アンカー事務所やイレギュレーターの事務所などが点在する。
15階から30階までが寮。
アンカー養成所に通う人間はココにすむ。
30階から40階までがアンカー養成所となっている。
そして、数階事に1フロアまるまる使って庭園がここは造られている。
庭園と言うだけあって天井は広いし、木もあり噴水、芝生も存在する。
普通の公園となんら変わりはない。
あるとするならば天井があるぐらいか。
どこからか風通し窓があるのか風も存在する。
ビル風だろうが、それは美味い具合に調整されている。
一番人気なのは屋上庭園。
次が、寮の中央20階に存在する庭園。
そしてあまり人気がないのが15階の中央庭園。
候補生は寮中央25階の庭園に行くのが多いし、ココで働いている人間は、15階まで来るより最上階の直通エレベーターで最上階の庭園に行ってしまった方が早いからだ。
よって、15階は人が少ない。
だから、俺は、ココの奥を愛用していた。
「探したって良いんだぜ?自分の相手。1stにはその権利がある。最も、上で了承しなきゃ無理だがな」
ババァの言葉が頭を駆けめぐる。
「たった一人だけ、いたんだよ。お前のテレパスに反応した奴」
部屋を出る寸前、そう言った言葉が頭から離れない。
めんどくせー。
なんで俺がそいつを捜さなきゃならねぇんだっっ。
2ndなんざ、いらねー。
守らなきゃならねぇ者なんざ…必要ねぇんだよ。
木により掛かったまま思い出すのは…あの雨の日の事。
俺をかばって、俺に力を与えて、俺を俺なんかに…名前を与えて死んだあの人を…。
必要ない俺何かよりずっと必要だったあの人は、あの雨の夜に死んだ。
失った後が怖いから。
残された者の痛みが分かるから、守る者なんざ2ndなんざいらねぇんだよ。
うざい、下僕共だけで充分だ…。
そう…思っていた。
「…くう?」
遠くから、声が聞こえる。
この庭園に誰か入ってきたのだろう。
良く通る声が響き渡る。
「どこにいるの?」
誰かを捜しているんだろう。
俺以外にいねぇよ。
こんなとこ。
見れば分かるだろうが。
「…う?悟空?どこにいんのよぉ!!」
悟空?だと?
無駄な事、してるな。
あの猿だったら食堂でまだ飯でも食ってるはずだ。
「もう、中央庭園で待ち合わせって言ったの悟空じゃないのよぉっっ。もう、まだ食堂で粘ってるのかなぁ。」
煩い声が鳴りやむ。
この養成所であの猿を知ってる人間がいるとはな…。
「……おい…」
近くまで来た人間…女を呼び止める。
「……」
深栗色の髪をフワリとたなびかせ、ミッドナイトブルーの瞳を大きく開く。
「…あ、ごめんなさい…」
「あぁ?」
突然、俺に向かって謝る。
うざそうな、女に見つかった。
そう、思った。
どうやら、俺は有名らしく、講義室などに行こうものならば声があがる。
食堂でもそうだし、庭園でもそうだ。
だから、わざわざ人気のない中央庭園なんかに来ている。
人気のないところはココ以外にどこかあったか?
考える。
「人がいたの、気付かなくって…。騒いじゃってごめんなさい。静かだから、ここにいたんですよね?」
女はそう言う。
分かり切った事言ってんじゃねぇよ。
そう言おうとした時だ。
「なんか、人嫌いっぽいですよね。見るからに。 あなたって」
「…?」
普通の、そこら辺の女と違って騒がないし妙な興奮もしない。
俺の事を知らないのか?
不思議そうにしている俺に彼女は言葉を紡ぐ。
「ここにいても平気ですか?嫌なら行きますけど、友達とココで待ち合わせなんです。孫悟空って言ってわたしと同じくらいの男の子なんですけど」
「…別にかまわねぇ」
そう言った俺の言葉に彼女はふんわりと微笑んだ。
「ありがとうございます」
そう言って彼女は、その場に腰を下ろす。
何故、ココにいる事を許したのか。
理由が分からなかった。
ただ、心地良いと思ったのは事実だ。
ふと、気がついた。
どこかで、見た事がある。
ふんわりとした深栗色の髪とその笑顔。
つい最近みた記憶があって…でも曖昧な記憶。
「あ、三蔵!!!」
遠くからうるせーバカ猿の声が聞こえる。
「っ!??!!!!ごめん、マジ遅くなった」
「遅いよ、悟空っ」
?
悟空は、彼女をと呼んだ。
では、彼女が悟空の話しに出てくる女か。
「で、どのくらい食堂で粘ってたのよ。時間、今何時だか分かってるの?」
そう言って彼女は立ち上がり、悟空に時計を見せる。
「ごめん、マジで謝るっっ」
「もう、いいよ。悟空の食欲にはなれてるから」
彼女の言葉に悟空は肩を落す。
「あ、三蔵。紹介するいつも話しているっ。で、、こっちが三蔵。前に話したよな?」
「…三蔵?あぁ、あなたが玄奘三蔵さんですね。初めまして、です」
「……玄奘三蔵だ。……」
か…。
確か…、陰陽師の大家の名前がそう言ったはずだ。
陰陽師がISSAに入るとはな。
まぁ、僧籍に身をおいている俺も人の事言えねぇが。
不意に携帯がなる。
着信音は第九。
は驚いたように携帯を取り出す。
「、どうしたの?」
「……やばい……お兄ちゃん……」
悟空の言葉にそう答えて、彼女は携帯に出た。
悟空の方は顔を何故か青くしている。
「もしもし…」
『今まで、どこにいたんです、なかなか電話がつながらないんですが』
「…ごめん、八戒」
八戒…だと?
『ごめんとかそう言うのを聞きたくて僕は電話した訳じゃないんですよ』
「あぁ、そうだよね。ごめん。えっと、今まで電波が届かないところにいたの」
『そうですか?だったら、良いんですけどね』
「怒ってない?」
『怒ってないですよ。どちらかと言えば、心配したんです』
「ごめん、ねぇ。ごじょ兄は?悟浄は…怒ってる?」
…今、なんて言った?
河童の名前が出なかったか?
『悟浄も怒ってませんよ。悟浄も僕と同じ、心配してたんですよ』
「…ごめんなさい」
なんで、下僕共の名前が彼女から出てくるんだ。
「八戒からなんだ…」
「悟空、何を知っている」
「あぁ、三蔵はとは初めてなんだよな。八戒と悟浄がいつも話してるだろ? の事」
悟空の言葉で思い出す。
あの二人が溺愛している妹の事を。
『、今、悟空の声が聞こえたような気がしたんですが』
「……八戒?」
『あと、三蔵の声もしたんですが…。まさか、、ISSAにいる訳じゃないですよね』
「…は、は、は、八戒?」
の声が裏返る。
何があったんだ?
八戒の事だ、何かを彼女に言ったのだろう。
慌てるほどの何かを。
『僕と悟浄で言いましたよね。ISSAにだけは入るなって』
「うん、聞いてる。あのね、悟空とは街でばったり会ったの、で、悟空がえっと三蔵さん?とも一緒で、で、でね、お昼?一緒にどうかって悟空が誘ったの。八戒や悟浄の話も聞きたかったから…だから、えっとね」
『そう……ですか。まぁ、そう言う事にしておきましょう。あとで聞けば分かる事ですからね』
「………」
携帯を持ったままは固まる。
「何かあったんだよな…。八戒だし」
「だろうな」
『じゃあ、また電話します。もたまには電話下さいね。メールだけじゃなくって』
「う、うん」
そうして、彼女は携帯を切る。
「……助けて、悟空ぅ……」
携帯を切った後、は悟空に言う。
「?」
「どーしよぉ。八戒と悟浄にばれるぅ」
「…ばれたのか?」
「まだ。…後で聞けば分かる事ですからねってニッコリ微笑まれたよぉ」
声だけじゃわからんだろうと言う事は今の彼女にはないらしい。
余程動揺しているようだった。
「八戒と悟浄の事だよ?特に八戒?もしあたしがISSAでアンカーで3rdで特能者扱いだってばれたらそれこそもう絶対やばい!!監禁?させられるぅ」
そんな事はないと言おうと思ってもやりかねないなと八戒のあの性格を知っているだけに、何とも言えない。
「理由によったら助けてやらんでもない」
「へ?」
「お前が、八戒や悟浄の妹とはな」
俺の言葉の意味をまだ理解しきっていない彼女に悟空が説明する。
「三蔵は俺達とパーティ組んでるんだ。は知ってるよな、八戒や悟浄が特能者(特殊能力保持者)だからイレギュレーターでパーティ組んでるって」
悟空の言葉には頷く。
「三蔵はそのリーダーなんだよ」
「…なんでその人が、ISSAに来てるの?」
「観音のおばちゃんに言われて来たんだって。2nd?を捜しに来たんだよな」
「ペラペラしゃべってんじゃねーよ。バカ猿」
「猿って言うなよぉ!!」
悟空の文句を無視して俺はに聞く。
「理由はなんだ?そうまでして知られたくない理由は」
「あの…わたし、お兄ちゃん二人…八戒と悟浄に相談した時ISSAには入るなって反対されたんです。あまりにも危険だから」
確かに、ISSAのアンカーはとても危険だ。
イレギュレーターもしかり。
「というのは本名か?と言えば、陰陽師の本家だったはずだが?」
「…はい、よくご存じですね。わたし、実は跡取りなんです」
????
跡取りだと?
陰陽師本家のの跡取りがこの目の前にいる悟空とさほど年の変わらない少女だと?
冗談にも程がある。
「本当ですよ?冗談じゃないです。…兄達…八戒と悟浄がISSAに入った理由は、知ってますか?」
「おおよそは」
の言葉に頷く。
10年前、彼等の肉親(正確には八戒の肉親)が殺された事件に発端がある。
八戒や悟浄がISSAに入ったのはその犯人を捜す為だと、以前聞いた事がある。
「わたしだけ何も出来ないでいるのはいやだったんです。その為に、陰陽道以外にも道術も拾得しました。そしてISSAにも入って…。まぁ、そのせいで特能者扱いになりそうなんですけど」
そう言っては手元の携帯を見つめる。
「三蔵、三蔵も協力してくれよな?俺だけじゃ、絶対八戒や悟浄にばれちゃうと思うんだ。特に…八戒には誤魔化すのすっげー大変で」
「ごめんね、悟空」
「いいって。過保護な八戒が悪いんだってさ。すっげー過保護って俺学生の頃から思ってたし」
「ハハハ」
乾いた笑いをは見せる。
あいつ等、特に八戒の過保護ぶりは、端で見ていてすさまじいものがあった。
1日1回…いや、3回か?
悟空が学校に行っていた頃は、朝、昼、夕、夜、4回電話していたのを見た事がある。
肉親の月命日には悟浄といそいそと出かけていたし(恐らくというか間違いなくも一緒だったのだろう)、悟浄は悟浄でその月命日の1週間まえあたりから夜遊びをしなくなる。
聞けば
「デートだからねぇ」
と楽しそうに言っていたのを思い出す。
「デートじゃないでしょう。僕も一緒だって言う事を忘れないでくださいね」
「1ヶ月ぶりだし?兄としては妹にはカッコいいところ見せたいっしょ?」
「その意見には賛成ですね」
と楽しそうにしていた会話を思い出す。
それを、こっそりとため息付きながら見ていた悟空も目の端に入っていた。
その時は「何考えてるんだ?」
と本気で思っていたのだが…。
目の前の少女を見ていると、過保護になるのが分かるような気がした。
ふわふわとしている雰囲気の中にも強い意思。
目を離したらどこかに行きそうで、それでいてしっかりと地に足がついている。
どこか矛盾した雰囲気を隠し持っている。
だから余計に過保護になるんだろう。
矛盾した雰囲気を持ってるから。
とは、いえ…。
目の前で落ち込んでいるを見ていると、あの二人の過保護ぶりが過剰な為に苦労しているのは目に見えた。
その隣で彼女を慰めている悟空もその過保護ぶりをまともに見ていて彼女を不憫だと思っていたんだろう。
学生の頃からと悟空が出かける事が多かった。
さすがにその時は八戒と悟浄を慮って彼女の名前を出す事はしなかったらしいが。
「なぁ、三蔵も助けてやってよ。、マジで苦労してるんだって。すっげー横で見てて大変なんだぜ?修学旅行の時もさぁ」
そう言って悟空はその時の苦労を話し出す。
同じ学年だった為に、悟空はの護衛を八戒と悟浄に命じられたらしいのだ。
「まぁ、別にそれは良かったんだけどさ。その後、いろいろ聞かれて、もいろいろ聞かれたんだよな?」
悟空の言葉にはその時を思い出したのか深く頷く。
「いいだろう、助けてやる」
「いいんですか?ありがとうございますっ。すっごく助かりますっ」
花が咲いたようには微笑み、頭を下げる。
「別に大したことじゃない。あの過保護ぶりが過剰になると後々面倒だからな」
そう言う…どこか、いいわけがましい…俺にはふんわりと微笑む。
「でも、やっぱりありがとうございます」
「良かったな」
「うん」
…過保護になる気が…わかるような気がした。
自然に近い風が庭園内を凪いでいく。
それが心地良いのかは目を細める。
「」
「はい?」
俺の声に、はこちらに顔を向ける。
「俺の事は三蔵で言い。それから、敬語もやめろ」
「…いきなりどうしたんですか?」
「三蔵、の事、気に入ったんだよ。三蔵気に入った奴にしか名前呼ばせないって八戒が言ってた」
悟空が嬉しそうにに言う。
「くだらねぇ事言ってんじゃねぇよ。敬語使われたり、敬称つけられたりするのがうざってーだけだっ!!」
ハリセンで悟空の頭をはたきながら俺は答える。
「大丈夫?」
「へ〜き。慣れてっからさ」
そう言っては悟空を気遣う。
「、分かったか?」
「?、あ、はい」
分かってんのか?
こいつ?
その瞬間だった。
光の洪水が襲ってきたのは。
『------よろしく------』
何かが聞こえた気がした。
「三蔵…さん?」
一気に光が消える。
目の前にいたのは、同じく驚いている。
「さんはいらねぇって言ったはずだ」
「はっ、あっ…うん」
敬語も使うなと言った事を思いだしたのだろう。
は、とまどいながらも頷いた。
あの光の洪水はなんだったんだ?
その疑問は後々に解かれる事となる。
あとがき
アンカー第1話。
他のアンカー(オリジナル版とコナン版)を読んだ方ならご存じかも知れませんが、珍しく1話で1st、2ndのペアリングが作られていません。
最初は、ヒロインが三蔵の2ndになって戸惑うなんて言うのにしようかと思ったのですが、せっかく、八戒と悟浄が溺愛兄を演じてくれてるので(特に八戒)2ndに指名する前に逢わせてしまえと!!!
そんな感じ。
ついでに、八戒からの着信音が『第九(ベートーベン作曲、交響曲第九』だったのは…渚カヲルくんの(スパロボα)BGMが第九だったからです。
石田キャラつながりぃ。
悟空:すっげー大変なんだ。そのせいで俺までの事心配するようになったんだよな。
:ごめんね、悟空。悟空にまで迷惑かけちゃって
悟空:が悪い訳じゃないってさ。
:そうかな?
三蔵:悪いのはあの二人だろうが?
悟空&:…そうだね。
Thanks 壁紙:Future Rocket Coaster