OPERA NIGHT〜極彩色の世界〜

「宣戦布告?するの?」
「蹴落とすには必要じゃねえ?」
「まぁ、負けるとは思えないよねぇ」
「当然だろ」

 最期の敵はたとえ身内だとしても。
 外の敵は蹴落とした方がいいんです。

皇帝達の休日 〜かすかな光を捜していたい〜 

 朝、起きて、着替えて、食堂へと向かう。
 フェリシアーノ達は戻れたのかな?
 結局、昨日は戻る様子がなかった。
 フェリシアーノもヴィルヘルムも記憶にあるはずのローデリヒさんの家じゃないのに何の違和感も感じていなかった。
 気にしてないのか……と言うよりもそういう『現在の記憶』というのは残っているのかも知れない。
 三人が寝る部屋はフェリとロヴィが同じ部屋で、ヴィルヘルムだけが別の部屋。
 さすがに、元に戻ったとき、ルートさんが側にいたら二人(主にロヴィーノ)がパニックを起こしかねないという理由で別部屋になった。
 ちびsが「お休みなさい」って言った時、思わず、「一緒に寝る?」って口から出そうになった所を済んでの所で押さえたのは、ココだけの秘密だ。
 可愛い三人に写真撮りたくてしょうがなくって。
「元に戻られた時それを見たら真っ赤な顔して消してくれって言い出しますよ」
 菊ちゃんにそう言われる。
 確かにそうかも知れない。
 でもなぁ、撮らなかったら絶対後悔する。
 で思った事は。
「みんなの小さい頃も見てみたいなぁ」
 と言う事。
「そうですか?」
「うん。なんか、フェリシアーノ達見てたら思った」
 見れないなんて事分かってる。
 普通の人みたいに写真でも…見れるって訳じゃないっていうのも分かってる。
「少なくとも、菊ちゃんのちっちゃい頃を知ってるのはにーにしか居ないわけだし」
 小生意気な小学生に会ったような気分?って聞いたらそうあるって苦笑い浮かべてたっけ。
「聞かないでくださいね」
「え〜、小生意気なお子様の菊ちゃんって言うのも楽しそうだよねぇ」
 少なくとも、小生意気だって思われても仕方ないと思うんだ。
 にーにと初対面で『私は日のいずる国の日本です。初めまして日の沈むところの中国さん』って言われたら地理的な問題でなんて言ったって。
 まぁ、東の方から来たって直接、言わないところはやっぱり日本なのかなぁなんて思ってみたり。
「菊が小生意気?」
「あり得ないだろう」
 今の菊ちゃんを知る人ならそう思うだろうね。
「別に、私は小生意気ではありませんよ。たとえて言ったら小生意気だと思われてしまっただけです」
 そう、たとえただけだよ。
 地理的な意味で。
 そう言えば、思う事。
「エリザの小さい頃ってどうだったの?」
 ホントに男装してたのかな?
「男だと思ってたんだぜ」
「うるさい」
 ギルの言葉が終わらないうちにエリザのフライパンが落ちる。
 言わなきゃ良いのに…ホントに。
「でも本当に思われてたんですか?」
「……そうですよ……、今思えば恥ずかしいですよね」
「私は、貴女が女性だって気づいてましたよ」
「な、何を言うんですか、ローデリヒさん」
 マジデカ、ローデリヒさん!!
「何度も貴女に戦いを申し込んだのは…私は勝てないのが悔しかったのかだと思っていたのですが、あるとき気がついたんですよ。貴女が戦い方も含めて美しかったからだと…」
「ろ、ローデリヒさん。いきなり」
 きゃ〜〜〜〜。
「だから、ずっと貴女が欲しかったんですよ」
 涼しい顔で紅茶を飲むローデリヒさんに…エリザは顔が真っ赤で…聞いてるあたし達も照れるのはもう…仕様です。
 素でのろけるローデリヒさんって……実はスゴい?
「……あっあの、私、紅茶のおかわり持ってきます」
「大丈夫ですよ。そこに準備してありますから、立ち上がる必要はありませんよ、エリジュ。それに貴女もゲストの一人ですよ。たまには貴女も持て成させてください」
「は、はい……」
 ローデリヒさんの隣で愁傷に座ってしまったエリザは本当に可愛くって。
「なんか素でのろけられてもうたな」
「聞いてるこっちが照れるって言うか」
 そんな感じ?
「それよりも私は、樋乃の小さいときが知りたいですよ」
「あたしの小さい頃なんて可愛くないと思うよ?」
 うん、あたしはいいのよ。
「何を言うんですか、可愛いと思いますよ」
「子供は可愛いよね」
「全く素直じゃありませんね」
 素直とかそう言う問題じゃないと思うんだけどなぁ。
「そうか…樋乃の小さい頃か…」
「アーサーさん」
「……別に、思ってないからなっっ。樋乃を小さくしようなんて」
「思ってんじゃねえか。もしそうなってもテメェは危なくて仕方ねえな」
「そうやな、アルトゥルに任せたらどないなってまうか」
「テメェも危ねえじゃねえか」
「何言うてんねん」
 うん、だから、あたしは良いから。
 まぁ、ともかく三人が寝た後はそんな会話してた。
 戻ってればいいけれど。
 ヨンスが小さくなったとき、戻ったときには小さかったときの記憶も残ってたって言う。
 三人はどうなんだろう。
 菊ちゃんと合流して朝食の為に食堂に行けばフェリシアーノ達はまだ来ては居なかった。
 来ていたのはローデリヒさんとエリザとアーサーでアントーニョさんとギルはまだ来てなかった。
 相変わらず、アーサーは居心地悪そうな感じ。
 本当は泊まる予定はなかったらしくって、フェリシアーノ達を小さくしてしまった事に対しての責任を感じているらしい。
「おはようございます、まだ、フェリシアーノ君達はいらっしゃってないんですね」
「えぇ、寝坊したのか…それとも戻れてないのか分かりませんけどね」
 菊ちゃんの問いにローデリヒさんはそう答えた時だった。
「おはようさん。フェリちゃん達戻っとったで」
「だから、お前はそう怒んなって」
「大体、兄さんは人の家にいるって言うのに寝坊するというのはどういう事だ。見に行って正解だったな」
「ハハハハ」
「笑い事じゃないだろう」
 アントーニョさんと一緒に残りの四人も入ってくる。
 ギルは戻ったルートさんに起こされたらしい。
「…何とか戻ったようですね」
 今の姿に戻ったルートさん、フェリシアーノ、ロヴィーノの三人を見てあたし達はホッと胸をなで下ろす。
「ともかく一安心という所ですね」
「全く、人騒がせな事ですよ。アルトゥル、もう二度とあのようなことは止めて欲しいものですね」
「す、済まない」
 アーサーはローデリヒさんの言葉に本当に申し訳なさそうに謝る。
 話し合いの相手を小さくしちゃったんだから、その話し合いがまとまらなくたってしょうがない訳だもんね。
「お三人とも、何か気分悪いところはありませんか?」
「大丈夫だよ、菊。特にないかな?会議してたルーイやローデリヒさんには悪いけどさ、ちょっとだけアルトゥーロに感謝しようかな」
 そう言ってフェリシアーノは泣きそうに笑う。
「覚えてるの……?」
「ん?そうだね」
 泣きそうな理由は聞かない事にした。
 分かってるから。
ちゃん」
 フェリシアーノに呼ばれる。
「あのね。ちょっと、立ち上がってくれる?」
 フェリシアーノに言われてあたしは椅子から立ち上がる。
「どうしたの?」
 そう言う前に、腕を引かれてあたしはフェリシアーノにハグされた。
「へへへへ」
「おい、フェリシアーノっ」
「オレが先だって言ったよね。兄ちゃん」
「くっっ」
 な、何?
 そう言えば、なんかいつものハグと違うような。
 いつもはぎゅっと抱きしめられてすぐに離してくれるんだけど………。
ちゃん、大好きだよ」
 いつも甘いんだけど、それよりもことさら甘く耳元で言われる。
「ふぇ、フェリシアーノ?」
「迎えに行ってもいいですか?ちゃん」
 ちびフェリに言われた言葉を頭上から言われる。
「ちょ、ちょっと待って!!」
「大きくなったからいいよね」
 いや、良くないって、良くないって。
「フェリシアーノ、言ったよね、あたし。菊ちゃんとずっと一緒にいるって」
「テメェ、聞いてたんじゃねえのかよ」
 あたしの言葉を受けて呆けてたアーサーがフェリシアーノに言ってくれる。
「何が?アルトゥーロ?アルトゥーロにはさぁ、関係ないよね」
 声が明るいのに、なんか底冷えするような響きを感じるんですが、気のせいですか?
 黒フェリ降臨ですか?
 や、止めてくださいっっ。
「菊と一緒にいるって言うのは覚えてるよ。でもさぁ、ちゃんが俺の事好きって思ってくれたら、それチャラになるんだよね」
 ならないから、菊ちゃんは婿取る気だって言ったよね。
「フェリ、いい加減離れろよ」
「しょうがない。約束だもんね」
 そう言って、フェリシアーノはあたしのほっぺに軽くキスをして離れる。
 あたしの頭の中はパニック。
 どうしたらいいですか?
、おはよう」
 ロヴィーノにそう言われる。
「お、おはよう、ロヴィーノ」
 満面の笑顔のロヴィーノ。
 ってちょっと珍しいような。
 いつもどっか斜に構えた笑顔なんだけど。

 ふわりと抱きしめられる。
 やっぱり、さっきのフェリシアーノと同じでハグじゃない。
「ろ、ロヴィーノまでっ」
、オレの事大好きだって言ったよな。オレもすっげー好き」
 あ、あたしが言ったのはちびロヴィに対してであって。
 ホント、耳元で言うの止めて欲しい。
 耳、実は弱いんですよ……。
 そんな事誰にも言えないけど、ホントダメなの。
 誰か助けてよ、この状況に唖然としてないで。
「本気だから、オレとフェリ。覚悟してろよな」
 本気って?
 何が?
 もう、ホントどうしたらいいのよっ。
「そろそろ、その辺にしてくださいね。ロヴィーノ君、フェリシアーノ君?私の目の黒いうちにはに手を出す事は許しませんよ。それが誰であろうとね。もちろん、例外はありますよ。がその人じゃないとダメと言う人以外ですね。まだどなたもその位置には収まっていませんので、今はダメですよ」
「き、菊こえーぞ」
「じゃあさぁ、ちゃんがそう思ってくれれば良いんだよね」
「そうですが。私が認めてないとダメですからね」
「ヴェー。そんなのめちゃくちゃ難しいじゃんかー」
「無茶いうなよな」
 ようやく、ロヴィーノはあたしの事を離してくれた。
、大丈夫か?」
 困ったように見ていたルートさんが話しかける。
「ルートさんも見てないで助けてくれれば良かったのに」
「いや、そのな、まぁオレも気持ちが分からないでもないというか」
「え?」
「いや、なんでもないんだ。気にしないでくれ……あぁ。一つあるな」
 そう言って、ルートさんは席に座る。
「昨日は、迷惑を掛けた。何というか、ありがとうとでも言っておこうか」
 ルートさんの意識の中にヴィルヘルム(神聖ローマ)の記憶が残っているのだろうか?
 あたしと同じ事を思ったのかギルとローデリヒさんは驚いてルートさんの事を見る。
 でも、なんて聞いて良いのかも分からなくって。
「あたし楽しかったし。小さい頃のルートさんも可愛かったよね」
「だから、それはっ」
「あ、あたしアーサーの小さい頃見てみたいなぁ」
 思いっきり、話を変えてみる。
 それはそれで良いんだよ。
 多分。
 だって、ヴィルヘルムはルートさんじゃない。
 神聖ローマがドイツだって言う訳じゃない。
 ドイツは神聖ローマの先の姿だっていうなら誰もがきっと納得するか分からない。
 だから、とりあえず、ちっちゃい頃のルートさんだったで良いんだよね。
 昨日のあれは。
「いきなり、何を言い出すんだ」
「フランシスさんが言ってました。ちっちゃい頃のアーティは可愛かったのにって」
 からかいついでの言葉だけど。
 確かにちびリスは可愛かった。
「だから、可愛いのかなぁと」
「か、可愛くないからな別に。が見たいって言うのなら、見せてやっても良いんだけど」
 そうだ、もう一人みたい人がいるんだった。
「ギルの小さい頃ってどうだったの?」
「うざかったわね」
「面倒でしたね」
 ローデリヒさんとエリザに一刀両断されるギル。
「嫉妬してんのか?エリザベータ。小さい頃の俺様に」
「何で嫉妬しなくちゃならないのよ」
「ケセセ、俺様はちっさくても可愛くって格好良かったんだぜ」
 うん、確かにちょい、ウザイかも?
 ちびプー可愛かったんだけどなぁ(3巻の)
 うざかわいいって奴?
「だから、ルートさん、気にしなくて良いよ。迷惑なんて掛けられたなんて思ってないから」
「そうか、ありがとう」
 そう言って、ルートさんは微笑んだ。
 その後は朝食(と言うよりもブランチな感じ?)でした。

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あとがき

歌をエコーに戻しましたww。 ちなみにユートピアのアドレスはこちらです。
制作者はどちらもKEI(絵師じゃない方)さんです。

今回の話はまるきりイタリア兄弟編でしたね。
オチを当初は考えてなかったので、考えてたら、まさかのくるん兄弟宣戦布告編……orz。
こんなことになるなんて思いませんでした。
本命二人の影が薄い薄い。
次回の誕生日編で、自己主張してください。
戻ったルートは、小さくなってしまったときのヴィルヘルムの記憶はあるけどあるだけで、何を考えていたのかまでは分かってないという状況です。
だからなんて言っていいのか分からなくって困ってる。
ヴィルヘルムの言う『あいつ』をルートが認識してるかどうかを書こうと思ったんだけど、入れ所が分からなくて……諦めてます。