転校生 君に逢う為に生まれた〜We Love The Earth〜

「おっどろいたなぁ、オメーが転校生としてくるとはよ」
 オレは目の前の赤みがかった茶髪の女に向かって言う。
「あら、そう言う言いぐさないんじゃないの?工藤君」
「あのな、灰原」
「失礼ね、私はもう灰原哀じゃないわ。自己紹介したとき言ったでしょう、宮野志保よ」
 そう言って灰原もとい、宮野志保は言う。
 こいつは4月の始業式の日に転校してきやがった。
 しかもオレのクラスで、しかも席はオレの前だ!!
 ちなみに、オレの席の隣は蘭、それはいい。
 でも、後ろが園子で何で前の席が宮野なんだ???
 悪夢じゃねーか。
 オレは基本的にこいつが苦手だ。
 どう苦手って言われても困るんだが…。
「で、わざわざ昼休みの屋上に呼びだした理由ってなんだよ」
「私がここに転校してきた理由はAPTX4869にあるって言ったらどうする?」
 どういう意味だ?
「今、私は警察の監視下にあるの。保護司は阿笠博士よ。まぁ、それも当然よね、組織に居たわけだし、APTX4869を作ったのはわたしだし。ここに転校してきたのは工藤新一という名探偵がいるって理由からよ」
「そうか……」
「工藤君、そろそろ警察から連絡が入ると思うわ。あなたのAPTX4869の検査よ」
「昨日高木刑事から言われたよ」
 オレの言葉を聞いて宮野は話しを続ける。
「APTX4869の後遺症がどうなるか私にも分からないわ。下手したらまたコナンに戻る可能性だってあるわよ」
「冗談だろう」
 オレの言葉に宮野はクスッと笑い
「半分はね」
 と言う。
 オイオイ半分ってなんだよ。
「あなたがのんだAPTX4869は未完成品、事件後手に入ったAPTX4869は多少改良されていたわ。ほとんど改良されていなかったけれど。それをもとにして作った解毒剤よ、どう作用するか分からないじゃない」
「宮野…」
 宮野の言った半絶望的な未来にぼう然となりそうになる。
「今、日本に遺伝子工学の権威がいるわ。彼は今、国の管理下にある遺伝子工学研究所にいるの。そして、彼が今行っていることはAPTX4869の完全な解読。大丈夫よ、あなたの細胞の一部は彼に渡してあるはずだから」
 なんだよそれは。
「まぁ、当分の間は暴走しないことね」
 は???
 宮野の突然の言葉の意味がわからない。
 どういうことだ?暴走しないって。
「手にいれてしまったものはもう手放せないもの」
 ………ちょ、ちょっと待てよ。
「まぁ、あなたの顔を見れば手に入れたか手にいれてないかぐらい分かるわよ。工藤君」
「灰原???」
「それに、毛利さんの顔を見ればだいたいの人はわかるわよ」
 ……嫌な汗が背中に流れる。
「とりあえず、忠告しておくわ。検査の結果が良好でないかぎり、暴走しないこと。覚えておいたほうがいいわよ。そうじゃないと、どうなっても知らないから」
 そう言って宮野は意地悪そうな微笑みをオレに投げ掛け教室に戻っていく。
 って言うことはかなりバレバレってこと????
 …それはそれで好都合。
 蘭に近付く男が減ればの話しだけど。
「新一…、宮野さんと何話してたの?」
 いつの間に居たのか蘭がお弁当を持ってオレの側にやって来た。
「わたしに話せないこと?」
「……ある意味あってる。けど、今はまだって所」
 オレの言葉に蘭は目を伏せる。
「いつになったら話してくれるの?」
 と静かな声で言う。
「近いうちだよ」
「近いうちって」
 蘭の言葉にオレは詰まる。
 近いうちってどのくらいだろう。
「早くて、1週間かな」
 検査して検査結果が分かって……。
 一週間じゃねーかも知れない。
「ねぇ、宮野さんって哀ちゃんだったの?」
 少しの沈黙の後の蘭の言葉にオレは驚く。
「急にどうしたんだよ」
「新一、宮野さんのこと灰原って呼んだでしょう。だからそう思ってさっき宮野さんに聞いたの。そしたら新一に聞いてって言われて……」
 あいつ、自分で言えばいいのに。
「蘭、長くなるけどいいの?」
「………長くなるってどのくらい」
 そう言って蘭は潤んだ瞳でオレを見つめる。
 やばい、めちゃくちゃ可愛い。
 そんな蘭を見ているとついついいたずら心を起こしてしまう。
「一晩掛かるけど、いい?」
 耳元にキスしかつささやく。
「な、何言ってるのよ、新一は!!!!」
「だって知りてーんだろぉ。あいつの話は長くなるって言ったじゃねーか最初に」
 まぁ、一応組織にいたってことは言ったはずだから。
 一晩はかかんねーけどな。
「何よ新一のバカ」
「バカはねーだろ……。蘭が居なくって寂しいんだよ……」
 最後の方はかなり誤魔化していったけど、全部聞こえたか?
 蘭の顔が見る見るうちに赤くなっていく。
 オイオイ、照れるなよ、こっちまでてれるっつーの。
「夕飯ぐらいは作りに行ってあげるよ」
「マジ?」
 オレの言葉に蘭はうれしそうにうなずく。
「これ、新一のお昼だよ」
 そう行って蘭はオレにお弁当を渡してくれる。
「おいしい?」
 蘭はオレの顔をのぞきながら聞く。
 あたりめーだろ、蘭が作った料理がうまいって言うのは。

*あとがき*
転校生の新一編。新一の未来、宮野さん的展望。


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