陽だまりの中で〜君がいれば大丈夫〜

 春のうららかな陽だまりの中で、君と昼寝をしよう。
 君がいればボクは生きていける。
 君のほかには何もいらない。
 ボクと君をつなぐモノ以外。
 二人で生きていくこと、誰かに反対されても大丈夫。
 君が、ボクの側で笑っていさえくれれば…。

 …蘭のにおいがする…。
 覚醒していく意識の中で蘭の存在を確認する。
 でも…なんで蘭の存在を感じるんだろう……。
 まぁ、いいか、いても。
 いてくれたほうがうれしい…。
 寝返りを打つと柔らかい感触に気がつく。
 あれ……???????
 静かな寝息まで聞こえてくる。
 目を開けると、蘭がオレに寄り掛かって寝ていた。
「ら、蘭……」
 思わず、声を出してしまう。
 やば…おきたかな?
 蘭を見ると静かに眠っている。
 ????蘭と逢うのって夕方じゃなかったっけ?
 何でいるんだ?
 ま、いっか。
 のんびりとしてても。
「ん……」
「蘭?」
「新一、起きた?」
 蘭がおれの顔を見上げる。
「いつ来たんだよ」
「んーーーーーーーー10分ぐらいまえかな」
 時計を見て言う。
「起こせば良かったのに」
「起こしたよ、起こしたのに新一起きなかったんだもん」
 と蘭はすねるように言う。
「わりぃ」
「いいよ、なんか新一が日なたで気持ち良さそうに寝てるんだもん。だからねわたしもね一緒に寝ようかなって思ったの」
 と言って蘭はオレに寄り添う。
「ホントはね、約束した時間に来ようかなって思ったんだけど、早かったらお昼頃には帰ってこれるって言ってたでしょ。だから…早くくれば……新一に……逢えるかなって……思ったの。もしかして迷惑だった」
「バーロ。んなわけねーじゃん」
 蘭の肩を抱き締め、オレは続ける。
「オレも、オメーに早めに逢えてうれしかったよ。いいな、こんなのんびりした午後も」
「…ウン」
 突然のプレゼント。
 蘭がいればオレは生きていける。
 蘭のほかには何もいらない。
 オレと蘭をつなぐモノ以外。
「蘭……」
 今まで考えていたこと思っていたことを告げよう。
「何?新一」
「オレは、蘭と一緒にいたい。蘭は?オレと一緒にいたい?」
「いたいよ」
「蘭、オレと一緒に暮らさない?多分、周りはいろいろ言うかも知れないけれど。オレはそんなことに構うつもりないし。オレは蘭以外の人と一緒に暮らしたいと思わない」
 オレの言葉に蘭は戸惑う。
「…新一…それって同棲?って事?」
「ん…今は。そう言うことになるかな、どうせなら、……結婚の方がいいんだけど……」
 最後の方は思わず誤魔化してしまう。
 でも、本当のオレの気持ち。
 周りはきっといろいろと言うだろう。
 まだ高校生だからとか。
 子供だからとか。
 そんな事、分かり切ってる。
 自分が子供だって理解してる。
 それでも、…それでも、…オレは蘭と一緒にいたい。
 昔っからそうだ。
 蘭の側にいられればそれで良かった。
 コナンの時でさえも蘭の側にいた。
 コナンの時は……、最初こそ、阿笠博士に言われたことだとしても………。
 やっぱり、蘭以外の人間なんて考えられねーよ。
「……ん……」
「蘭?泣いてんのか…」
 蘭のすすり泣く声にちょっと驚く。
 …まずいのか???
「だって、新一がちゃんとわたしの事、考えてくれてたって事、分かってすごくうれしくって。…ごめんね、泣いちゃった」
「じゃあ、一緒に暮すってこと…」
「いいよ新一。新一と一緒なら大丈夫だもん」
 そう言う蘭の肩を抱く力を込める。
 蘭と一緒なら大丈夫。
 蘭が隣でわらっていてくれさえいれば大丈夫。

*あとがき*
陽だまりシリーズ第1弾の新蘭編は同棲告白の新蘭。
少し、文章プラスした改訂版。
前のままじゃ少し幼いかなぁと、新一の心情を少しプラス。
奴のわがままと独占欲が……。
…プラスされたせいで、なんだか、ガキさが目立った気がする今日この頃。