秋のさわやかな陽だまりの中で、君の側にいよう
もし神様がいて、願いをかなえてくれるのなら
君の側にずっといられること、それ以外に無い
陽だまりが連れてきてくれた時間
君が許してくれるなら…君の側にいよう
提無津川の心地よい風が土手で寝ころんでいるオレの髪をなでていく。
秋の気配と言うよりも既に秋の風になっていて、太陽から降り注ぐ日差しさえもさわやかな秋の空気となっていた。
「こう…のんびりした、時間も悪くないな」
去年の今ごろは…怪盗キッドをやっていてのんびりと時間を過ごす暇もなかった。
「ね、だから来てよかったでしょ。青子に感謝してよね」
と、ニッコリ笑った青子がオレの顔を上からのぞき込む。
「うわ、びっくりさせんなよ」
「失礼ね、びっくりさせてるつもりなんか青子には無いよ」
と青子はオレの隣に座る。
「気持ちい風…だね」
「そうだな」
そう言ってオレは目をつむる。
「もー、すぐに快斗は寝ちゃうんだからぁ」
「寝てねぇよ…。ただあんまり風がさわやかだからちょっと眠たくなっただけだよ。青子も寝てみろよ。気持ちいぜ」
「もー、快斗って子供だよね」
そう言って青子はオレの言葉に素直に従い横になる。
どっちがお子様なんだよ。
「ホントだ、気持ちいね。快斗」
そう言って青子は目をつむる。
全く、人には寝るなって言っといて自分だって寝るくせによ。
「おーかをこーえーたにをこえーぼくらのまちにーやってきたー(着メロ:忍者ハットリ君)」
突然、携帯がなる。
この着メロは平ちゃんだ。
「誰?」
「平ちゃんだよ。もしもし?平ちゃん、何しに掛けてきたんだよ」
『和葉と喧嘩してもうた』
んなことだろうと思ったよ。
「で、何でオレのところに掛けてきたんだ?だいたいそう言う電話って新一の方じゃねぇの?」
『工藤にはつながらんかったんや…』
「家?それとも携帯?」
そう聞くと平ちゃんは
『両方や』
と言ってうなだれる。
こりゃ、蘭ちゃんとデートか居留守だな。
『なぁ、快ちゃん、何か相談のってや』
「断る」
そう言ってオレは平ちゃんからの電話を切る。
いや、正確には携帯の電源を切った。
「いいの?平次君からの電話切っちゃって」
「良いんだよ、じゃあ何?青子は平ちゃんに邪魔されてもいいの?」
「え……。快斗…邪魔されたくなかったの?」
「あったりめーだろ」
はぁ、なんで青子ってこーなんだよ。
「だって…快斗、この頃青子と一緒にいてくれないじゃない」
そう言って青子はうつむく。
「……ごめん…青子……。これから一緒にいてやるよ。大丈夫一緒にいれる」
もし神様がいて、願いをかなえてくれるのなら、オレの願いは、青子の側にずっといられること、それ以外に無い。
陽だまりが連れてきてくれた時間。
青子が許してくれるなら…青子の側にいよう。
「ホントに?青子と一緒にいてくれる?」
そう言って青子は起き上がる。
「あったりめーだろ。青子の側にいてやるよ。…青子の方こそ、オレの側にいてくれる?」
「うん…側にいるよ。快斗がイヤって言っても青子は側にいるからね」
青子はそう言うとオレに満面の笑みを見せる。
その青子の微笑みにオレは救われる。
「ありがと…な…青子」
「何言ってるのよ。快斗らしくないよ。快斗、帰ろう」
そう言って青子はオレの手を引っ張る。
らしく…ないってなんだよ。
「そんな引っ張るなよ。青子」
「快斗…、お礼なんて言わないで。青子は自分で決めたの。快斗の側にいるって」
オレは起き上がり、そう言って微笑む青子の隣で土手を上っていく。
きっとこれからも、こんな日が続いて欲しい。
願わくば、青子の微笑みが消えないように…。
神様、お願いがあります。
快斗の側にいさせて下さい。
快斗はホントはさびしがり屋なの。
青子がいなくちゃダメだと思うの。
んん、違う。
ホントは青子がさびしがり屋なの。
だから、神様。
もしいるのなら、青子のお願い叶えて下さい。
これから先も、快斗の側にいられるように。
快斗が側にいてくれるように。
そして。
快斗が幸せであるように。
青子の側にいる事で、快斗が幸せでありますように。
お願いします。
快斗のこと青子に守らせて下さい。
快斗が苦しまずにすむように。
いつも青子のことを助けてくれた快斗が青子のことで苦しまないように。