ずっと側にいる
何も知らないときから側にいて
空気のような存在
今までも側にいた
コレからもそばにいる
冬の陽だまりのような君の笑顔の側に
じじくさいんやけど……。
庭に面した廊下が丁度えぇ感じで陽が当たってたので、オレは日向ぼっこを兼ねて日ごろの疲れを癒すために、寝ることにした。
受験や、事件やさんざん引っ張り回されているから…たまにはえぇやろ?
オレの家は広いから日陰に邪魔されることもあらへんしな。
他人の目から見たオレの行動って言うのはどうなんやろな。
アホかと思われんのやろか?
他人の為に一生懸命になったらアカンのやろか。
そんなん思われんのは嫌やな…。
オレがやっとることは正しいことやと思ってやっていきたい。
そう思う。
「平次…」
和葉の声が聞こえる。
何でやろ?
まぁ、えぇか。
多分夢やしな。
和葉は今日出かけるって言うてたしな。
「もぅ…あんた寝とんの?せっかく遊びに来たったのに」
遊びにってなぁ、「今日友達と予定があるんやわ」って言うてたんはどこのどいつや!!
「まぁ、えぇわ。おとなしく寝てる平次って言うのも悪くないし。日向ぼっこって言うのも悪ない…よね…」
そういう和葉の声が不意に消える。
どないしたんや、和葉?
「平次…あんたこの頃事件行きすぎやで。後ちょっとで試験なんやからちょっとは控えんとあかんよ…」
そういう和葉の手がオレの頭をなでる。
「あんま…無理せんといて…。ホンマに。アタシ…平次が居らんようになったら…多分、……あーんもう止め止めっ。昼間っからこんな湿ったらしいのアカンわ。アタシもねよ」
不意に…背中に温かさを感じる。
……和葉か……。
そんなんをぼーっと頭の片隅で感じる。
まだ…眠たいらしい。
なんでこいつはオレの側におってくれんのやろう。
事件、事件って言うて全然構ってやってられへんし…推理アホやし…(推理ドアホは言いすぎやで…ホンマ…)。
なんでやろな……。
寝返りをうち、和葉の存在を確認して腕の中に収める。
ずっと側におった。
何も分からんころから側におって…空気のような存在。
今までも側におる。
コレからも側におる。
「…平次…?…平次っ。平次!!!!!!」
和葉がオレのことを呼ぶ。
「なんやねん、人が気持ち良う寝とんのに」
「気持ち良う寝とんのはかまわへんけど…アタシのこと放してくれたってえぇやろ?」
「なんでやねん…。えぇやんか…このままやって」
「嫌やわっ。今、何時やと思うてんの?」
「何時やねん」
和葉が腕を出し時計を見せる。
………4時?????
「そうやっ4時。アンタなぁアタシが来たの何時やと思うてんの?1時やでそっからずっと放してもろうてへんねんで。なんでちょっと遊びに来ただけでアンタの昼寝の相手せなアカンの?」
「えぇやんか。がたがた言わんとたまにはおとなしくせぇ」
「たまにはってアンタそれアタシがいつもはおとなしくないって言いたいん?」
「そうやろ」
なんか…喧嘩口調になっとんなぁ…。
「なぁ…」
「何?」
ふと思ったことをオレは和葉に聞く。
「何でオマエは…オレの側におってくれんのや?」
「なんでって……。……そりゃ……アンタが……好きやからに決まっとるやないの……。ってもう、なんちゅうこと言わすの?」
そう言って和葉はオレをはたく。
「痛いやんか…」
「せやから…はよ、放してぇな」
「いやや…って言うたらどないすんねん」
「平次…アンタ何考えとんの?」
「何って……」
返事に困っていると和葉は笑う。
「アンタ…たまに子供みたいになるよね。…そうやちっちゃいころの平次?そんな気がするわ」
「ガキ扱いすんなや」
「ガキって…平次が子供みたいな態度とるからやろ?」
そう言って和葉は笑い続ける。
そんなん笑うなや…。
「ただいまぁ」
あ"っおかんや。
こんなとこ見られたらアカン!!!
「おばちゃん、お邪魔してます」
咄嗟に離した手から和葉は起き上がる。
「あら、和葉ちゃんきとったん?」
「うん、そろそろ帰ろう思うてたんやけど」
「そう?残念やねぇ。お母ちゃんによろしゅうな」
「ウン、ほな、お邪魔しました」
オカンと会話して和葉は隣の家に帰っていく。
腕が…痛い。
……3時間…板の間で和葉を抱き締めて寝とったのが…ココにきて来たらしい。
「アンタ…何ニヤケとんの?」
「な…急に何言うねん」
「和葉ちゃんにナンカしたらアカンで」
「なっなんもしとらん!!!」
焦るオレにオカンはおもしろそうに笑う。
「な、なんやねん」
「和葉ちゃんもなんやにっこにこしとったからなぁ、こらアンタがナンカしたんかと思うてなんや…なんもしとらんかったん?残念やわぁ」
何が残念やねん。
ずっと側におるから…。
何も知らないときから側におって…弟のような存在やけど…。
今までも側にいた。
コレからもそばにおるから。
平次…いつもわらっとって。
アタシが側におるから…。
冬の陽だまりのような君の笑顔の側にいつも…おるから。