東の名探偵にお・ね・が・い 君に逢う為に生まれた〜We Love The Earth〜

〜新一〜
「新一のバカ!最低、今日は絶対にあけてねって言ったじゃないのよ!!もうホントに知らない」
 今月に入って6回目。
 そう、今月に入ってからオレは蘭との約束(デート)をすっぽかしてしていた。
 理由はオレが行かないと解決しないような事件が何点か合って、その事件を解決した後に、あれも、これも…と立て続けに言われたからだ。
 だから、蘭とのデート……すっぽかしてしまっている。
 いいわけも出来ない。
 だから、何て言えねー。
 分かってくれるだろうなんて持ってのほかだ……。
 そのオレの気分を周りは気付かずに事件を持ち込んでくる。
 そうして、蘭の約束をすっぽかす。
 悪循環に陥っていた。
 このままじゃまずい。
 それでなくても、蘭が隣にいない生活に耐えられなくなってきているのに……。
 一ヶ月持つかなって思っていたが、最初のうちはこまめに蘭が側にいた。
 ほとんどずっといたし。
 だが、三ヶ月目……限界。
 もう、無理なんだよぉ。
 そう言うときに限って事件って奴は舞い込んでくる。
 しかも、今回は、あのやロー!!!!
「工藤君、申し訳ないねぇ。今回も来てもらっちゃって」
「いえ、そんなこと気になさらないで下さい」
 と、中森警部に営業用スマイルで答える。
 そう、快斗もとい、怪盗キッドが予告状をオレに出したのだ!!!
 快斗とは何度か出かけたことがある。
 もちろん、お互いの彼女が一緒で(メインはこっち)。
 快斗とは話しが合うので気を使わなくていい、蘭に言わせれば似ているのでお互いのつぼも分かる。
 オレと今現在話が合うやつはそうそういない。
 快斗以外では…服部ぐらいだろう。
 ただ、服部のあのしつこい性格はどうにかして欲しいけど。
 まぁ、服部も快斗と同じく気を使わなくてもすむやつだけどな。
 でもってオレは今屋上にいる。
 はっきり言ってオレはキッドを捕まえる気はない。
 殴る気はあるんだが、奴の狙いも分かってしまったからそれを阻止するわけには何となくいかない気がするからだ。
 もちろん、逃走経路や、盗る手段さえ押さえてしまえば捕まえるのは楽だ。
 が、オレは助っ人なので、実際現場で指揮をとるのは中森警部であり、オレが言った通りに警官が動けば問題はないのである。
 まぁ、動いてくれないので結構問題なのだが……。
「……はぁ」
 ため息がつきたくなる。
 警察官が動いてくれないと言う問題よりも別問題がこの後に待ちかまえているからだ。
 まずい。
 限界が近くなってきた。
「『無能な警察官に苦悩する名探偵の図』って所ですかね……」
 空から舞い降りるようにキッドはやってくる。
「どういう意味だよ、キッド」
「深い意味はないですよ。あなたの気持ちを代弁しただけです」
 そう言ってキッドはにっこりと笑う。
「テメーのせいでなオレはこのごろマジで!ヤバイんだよ」
 うー蘭にあいてーよぉ。
 こんなやつ相手にしたくねーよぉ。
 泣き言言いそうになる。
「おや?元気がないですねぇ工藤探偵。……さては蘭ちゃんとケンカしたな」
「何で蘭とケンカしなきゃ何ねーんだよ!!」
 キッドから戻った快斗に思いっきり反論してしまう。
 …まずいこれではばれたも同然だ。
「名探偵なら名探偵らしく彼女の事で動転すんじゃねーよ」
 と快斗はからかいながらからむ。
 ……やけにからむじゃねーか。
 さては、青子ちゃんと何か合ったな?
「快斗、青子ちゃんの事怒らせたんじゃねーの?」
 オレの言葉に快斗は止まる。
 大当たりだ。
「な、何で、あ、青子をお、怒らせなきゃならねーんだよ!」
 ポーカーフェイスを保ちながらも快斗は動揺しているのかオレの言葉にどもりながらも反論する。
「見りゃ分かるだろ」
「あのなぁ!!!」
 快斗が反論した時だった。
「〜おーかをこーえーたにをこえーぼくらのまちにーやってきたー〜(着メロです)」
 いやぁな着メロが鳴り響く。
「……新一、お前こんなの入れてんの?まさか蘭ちゃんじゃねーよな」
 蘭じゃない。
 この着信は限定なのだ。
 出なくても出ても言い奴。
 出たら間違いなく、くっだらねー用事を掛けてくる人物。
「ん?西の名探偵じゃん」
 快斗がオレの携帯をかすめ取り着信ナンバーを見る。
「か、快斗出るなよ」
「なんで、いいじゃん」
「良くない!!!」
 そう言って快斗から携帯を取り返したときだった。
「工藤ーーーーーちょーーーーー、相談のってやーーーーーーーーーー!!和葉といい感じになるんはどないしたらええんや……」
 運が悪かったのか、通話ボタンを押してしまったらしい……。
「そんな、くだらねーことで、いちいち、電話、してくるんじゃねーー!!!」
 陽気な服部の声にますます機嫌が悪くなる。
「何でや?」
「今、事件の最中。キッドと対峙中なんだよ!」
「そない怒るなや工藤。まぁ、えぇやんか。アドバイスぐらいしてくれてもなぁー」
 アドバイスだぁ!!!
 自分で考えろよ!!!
「そこを頼むわ」
「だぁーうっせえなぁ」
 自分で考えろ!そう言おうとした瞬間だった
「わーったよ。一言だけだ。!ムードを考えろじゃあな」
 楽しそうに快斗はオレの携帯でオレのまねをして服部に向かいそして、切る。
「な、なにしやがんだよ!!」
「いいじゃん、じゃあ、またお逢いしましょう。工藤探偵。今宵は楽しかったですよ」
「…………」
 あっけにとられているオレを無視し快斗は夜の街の中に飛んでいった。
 な、な、なんなんだあいつは!!
 って、言うか何でオレの周りあんなやつばっかり???

〜蘭〜
「新一のバカ!最低、今日は絶対にあけてねって言ったじゃないのよ!!もうホントに知らない」
 そう言ってわたしは新一の家を飛びだした。
 デートの約束をキャンセルされたの今日で6回目。
 最初の2回は笑って許した。
 それが……間違いだった。
 三回目…しょうがないかって感じで許した。
 仏の顔も3度までって言うし……。
 それが間違いだったのかも知れない。
 4回目、5回目と続くたびに腹が立ってしょうがなくって今日爆発した。
 たいてい、
「わりぃ、事件が起こった。」
 そう言って行って簡単に行っちゃうの。
 探偵の時の新一の顔は嫌いではない。
 むしろ好きだと言っても過言じゃない。
 新一が事件を解決しているのを何度も見ているし、そう言うときの新一は不謹慎ではあるがカッコイイと思ってしまう。
 それに、ここ最近、事件だからと言って出かけることは少ない。
 まぁ、意図して少なくしてるわけだけれど……。
 でも、この頃多くなっている。
 それは、まぁ、それでもいいと思ってるし、今まで事件を避けていたのはわたしと側にいたいから(らしい)のでその点は許す事にした。
 でもね、どたキャン連続6回はないと思うの。
 今回はキッドのこと。
 中森警部に言われたとき断ればよかったのよ。
 キッドにはもう手を出さないって言ったくせに…。
 はぁ、新一ってわたしと事件どっちが大切なんだろう……。
 選んで…何て言えないのがつらい。
 事件を取られるのは嫌だけれど、事件を追っかけていかない新一も嫌なのよねぇ。
 はぁ、複雑。
 …青子ちゃん…どうしてるかなぁ。
 快斗君がキッドとして出かけてるから青子ちゃんも今一人…なんだよね。
 よし、電話してみよう。
 トロピカルランドで逢ったとき携帯の番号交換してその後結構遊んでるんだよね。
「ハイ、青子です」
 青子ちゃんの声はちょっと元気ない。
「もしもし、青子ちゃん?わたし、蘭」
「蘭ちゃん。どうしたの?」
「青子ちゃんどうしてるかなぁって思って」
「新一君、いないの?」
「うん……キッド……の所行ってる」
 そう言うわたしに青子ちゃんは謝る。
「ごめんね、蘭ちゃん」
「青子ちゃんが悪いわけじゃないよ」
「でも、キッドが予告状出したから新一君行っちゃったんでしょう。それに青子が前に頼んじゃったから」
 と青子ちゃんは悲しそうに言う。
「青子ちゃんが悪いわけじゃない。全部悪いのはあの推理バカ!!」
「そうね、あの気障な怪盗が全部悪いんだもんね」
 青子ちゃんと話していたら気が紛れてきた。
 その後もわたしと青子ちゃんとで他愛もない話しをする。
 いろんなこと。
 大阪二人組の話とか。
 青子ちゃんと和葉ちゃんも仲よくなったみたい。
 結構愚痴聴かされてるんだって。
 聞けばわたしに迷惑かけるのはあれだからって青子ちゃんのところにって。
 そんなこと気にしなくても良いのにね。
「わたし、今から、新一の家に行こうかな」
 ふと口からそんな言葉が出る。
「そうしなよ。そうしたほうが良いよ」
 青子ちゃんの言葉に押されてわたしは新一の家に向かう。
 まだ、新一は帰ってきていない。
 合い鍵を使ってわたしは新一の家を空ける。
 ふと思ったの。
 家で帰ってきたかなって考えているよりも、新一の家で新一が帰ってくるのを待ってお帰りなさいって言ったほうが良いって。
 携帯は音を消して、でテレビつけて不機嫌なふりしてよ。
 少したつと、新一が帰ってきた。
 わたしがいることにかなり驚いてるんじゃないのかな?
「蘭、何やってんだよ」
 驚いている声が聞こえる
「お帰り、新一」
 わたしはわざと凄く、不機嫌そうな声で新一に向けて言う。
 しかも視線はテレビに向けたままね。
「お帰りって……何やってんだよ」
「新一待ってたの」
 あっけにとられている新一を無視してわたしは不機嫌な振りをしたまま、答える。
「蘭……ごめん」
 ちょっとの沈黙の後、新一は謝る。
 何で謝るの?
 どうして謝るの?
 新一が事件で出かけるのは分かってるよ。
 事件よりわたしを取ってなんて言えない。
 出来れば、現場に着いていきたい。
 これ、本音。
 でも、それって許されないことだろうからわたしは家で待っている。
「蘭……探偵止めろって言うなら……オレ止めるよ」
 どうしてそう言うこと言うかな……。
「どうして、そう言う事言うの?そんなこと無理だってわたしが一番知ってるよ。新一が帰ってきたそれだけで良いの」
 わたしはソファから立ち上がり新一の元へと向かう。
「…蘭……」
「側にいて……。わたしが言いたいことこれしかないって知ってるでしょ。新一が側にいてわたしのこと好きでいてくれたらそれでいいの」
 わたしのその言葉に新一は顔を赤らめる。
 もう、照れないでよ……。
 わたしまで照れるじゃないのよ。
「新一、お願いがあるの」

〜新一〜
「新一、お願いがあるの」
 突然、蘭が言う。
 蘭のお願い?
 何だろう………。
「新一とずーっと一緒にいたいの」
 ずっと一緒にいたい?
 それって………………。
 ちょっと、蘭、それって。
「新一、今日……泊まってっていいよね……」
 え………。
 立て続けに言われる言葉にオレの頭の中はショートし始める。
「今日、お父さんいないの……ダメ?」
 甘える顔で蘭は言う。
 そんな顔で見るなよ……その顔オレ弱いの知ってるだろぉ……。
 いつまで持つかな…………。
 今、蘭の事……抱いたら、もう完ぺきに離せなくなる…。
 ずっと側に置いておきたくなる。
 ちょっとでも離れられなくなる……。
「……蘭……限界なんだよ。オレ今」
「え………」
「限界なの。蘭がいなくってそばにいなくって…………蘭、オレからもお願いしたいことあるんだけれど、いい?」
 ……まだ早いかも知れない。
 でも、オレの中では限界。
「……蘭……オレの側にずっといてくれ……」
 ………リミットまで……あと少し……。

*あとがき*
○○にお願いの新一編。
別名同棲への道序章の序章


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