SELF CONTROL 最愛の敵

 オレの名前は工藤新一。
 帝丹高校三年生。
 一応高校生でありながら探偵なんてやってる。
 日本警察の救世主と謳われているオレには迷宮入りの事件なんてない。
 夢は今のところ探偵になること!!!
 オレの父親は、世界的に有名な推理小説家の工藤優作。
 代表作は闇の男爵(ナイトバロン)が出てくるシリーズ。
 オレに探偵としてのいろんな知識を教えてくれたの一応オレの尊敬する人でもある。
 オレの母親は元女優で藤峰(現、工藤)有希子。
 デビューが18で19ですべての賞と言う賞を総なめにし20で父さんと結婚し引退した人。
 やってることは無茶苦茶だが…あの潔さは見習いたいと思っている。
 で……オレには最大の敵……いる。
 毛利探偵の娘で、空手の都大会女子の部優勝者。
 そう、あいつだ。
 気が強いし。
 意地っ張りだし。
 涙もろいし。
 怖がりだし。
 お人よしだし。
 可愛いし。
 美人だし。
 ……最大で最上で最強で…最愛の敵……。
「で、新一君。この頃、あの子とはどうなのよ」
 とあいつの親友である鈴木財閥のお嬢様の園子が言う。
 今週掃除当番になっているオレは、放課後の掃除の時間に屋上の掃除に向かう。
 園子もオレと同じ掃除の班なので一緒の所を掃除する。
「どうってどうもしねーよ」
「彼氏彼女になってどうもしないわないわよねぇ」
「何が言いたいんだよ」
「別にぃ。ただあの子が毎週休みの度にあんたの所に泊まってるのは知ってるんだからね」
 聞きだしたな、園子の奴……。
 ったく余計なことしかしねーんだから。
「あぁ、あの子もよくこんな男といるわよねぇ」
「あのなぁ」
「ずっと待ってなんかいないで他の男と付き合っちゃえば良かったのに」
 と意地が悪そうな微笑みをオレに向ける。
 園子がオレをからかい始めている。
 こいつにからむと余計なことがない。
 ほっとくのが一番。
 オレはさっさと掃除をおわして教室に戻ろうとする。
 あいつと一緒に帰るためにだ。
 あんまり待たすのも悪いしな。
「ちょ、ちょっと新一君、まだ掃除の時間終わってないわよ」
 いつもだったらさぼる園子が珍しく今日に限ってオレを呼び止める。
「なーんだよ。掃除なら終わったろ?今日は買い物にいかなきゃなんねーんだからよ」
 明日は第2土曜日で休みなのであいつがオレの家に今日から泊まりに来る。
 でオレがあいつのために料理を作ってやるために買いだしに出かける事にしたのだ。
「と、ともかく。まだ掃除の時間終わってないんだからね」
 園子はかなり焦りながら言う。
 ……おかしい。
 さてはあいつに何か合ったな。
「戻る!!」
 園子はいまいち隠し事っていうのが出来ねぇからな。
「ちょ、ちょっと新一君」
 教室の前までに行くと、同じクラスの女の子がいた。
「や、やだ。工藤君もう戻ってきたの?」
「へ?」
 彼女の言葉にオレは面食らう。
 どういう意味だ?
「…やっぱりまだ戻ってなかったかぁ」
 オレの後を追いかけるようにして園子が教室の中を見て頭を抱えて言う。
 教室を見ると…待っているはずのあいつの姿がない…。
「お、オイ。あいつはどこに行ったんだよ!!」
「……ごめん、新一君。あたしが余計なことをあの子に頼んじゃったから」
 そう言って彼女はオレに謝る。
 余計なこと???
 …大方、予想がつく。
 多分、彼女が橋渡しになってのあいつへの告白だろう……。
「で、今どこにいるんだよ」
 オレの声に驚いたのか彼女は恐る恐る言う。
「体育館…裏」
 その言葉を聞きオレは体育館裏に行く。
 大体なんだよ。
 オレがいるって言うこと知らないやつがまだいんのかよ!!
 あいつはオレのだぞ。
 オレの女なんだよ。
 14年、14年かかってんだぞ。
 あいつを手に入れるのに。
 ポッと出のそこら辺のヤローにあいつを渡すかよ!!
 だいたいあいつは無防備すぎる。
 ナンパされ率高すぎるし。
 オレの心配まるで無視で行動しやがる。
 あいつの甘えたところって可愛いんだよなぁ……。
 なんかいじめたくなるし。
 でもいじめすぎると泣くんだよなぁ。
 怒った顔も可愛いし。
 泣いた顔も可愛い。
 あんまり泣かしたくはねーんだけどよ。
 ……ってオレあいつにめろめろなんじゃ……。
 体育館裏に近付くとあいつと告白しようとしているヤローの声が聞こえる。
「…だからね…オレ、君のことが……」
 ……この声……。
 オレをサッカー部に勧誘した日向裕介じゃねーか!!!!
 あのヤロォ、オレとあいつが付き合ってること知ってるだろぉ!!!!
「オレの女に、手を出すんじゃねーよ!!!」
 あまりの怒りに声が自然と低くなる。
「く、くどう……」
「し、新一……」
 日向君とあいつの言葉が重なる…。
「日向、蘭はオレの女だ!!!」
 そう言ってオレは蘭を横抱きにして、人気のない体育館の倉庫裏に連れてくる。
 何か言いたそうな日向を無視して…。
「な、なんでこんなところなのよ!」
 蘭はそう非難するけどオレはあえて無視をする
 ここは蘭が一番苦手な幽霊スポットだとしてもだ。
「学校で、蘭と二人っきりになれるところがここ以外にないだろ!!」
 そう、ここが幽霊スポットのため訪れる人はいない。
 夏休みとかに肝試し大会とかで来ることは合ってもな。
「ごめん……」
 そんなオレのきつい言い方でおれが怒っているのを悟ったのか蘭は謝る。
「………」
 ったく…謝るんだったら会いに行くんじゃねーよ。
 と喉まで出かかったがオレはぐっと我慢する。
「怒ってるよね……」
 そう言った蘭にオレはわざとぶっきらぼうに答える。
「…怒ってねーよ」
「怒ってるよ」
「怒ってるんじゃねーよ、オメーのお人よし加減に呆れてんだよ!!」
 呆れているとは言ったが口調はついつい怒りが入ってしまう。
「だって……」
 言い訳しようとする蘭の言葉をオレは遮る。
「だって…じゃねーよ。だいたい、人に頼まれたぐらいで告白されにわざわざ行くなよ」
「しょうがないじゃない…あの子何度も何度も日向君に頼まれたって言ってたから。日向君とあの子の仲を変にしちゃあれだと思ったんだもん」
 ホンット、お人よしだよなぁ、蘭のやつは。
「…仲なんてどーにもならねーよ。日向とあの子は前同じクラスでたまたま蘭とあの子が仲よかったから頼んだってだけに決まってんだろ。別にあいつらの仲が悪くなったってあの子には何の支障もねーよ。ったく、人が良すぎるのもいい加減にしろよな」
「だって…あの子何度も日向君に言われて困ってたみたいだったし…わたしが会えば解決すると……思ったんだもん」
「解決しなかったらどうすんだよ」
「……ごめん……」
 おれの言葉に蘭は素直に謝る。
 まぁ、当然だな。
 オレは正しいこと言ってるし。
「ったく……今度こういう事があったら断れよ」
「……うん……」
「ったく……もう告白シーンなんて見たくねーよ……」
 そう言ってオレはうつむく。
 ったく、これで何回目だ?
 蘭が告白されてるのを邪魔するのは。
 数えたくもねぇ。
 願わくばこの先合って欲しくない。
 蘭はオレのなんだよ!!
「ごめんね、新一」
 そう言って蘭はオレの顔を見て笑ってうなずく。
 う……めちゃくちゃ可愛い。
 ま、ずい……なんか可愛すぎる。
 この笑顔誰にも見せたくねーよな。
「で、蘭、今日泊まりにくるんだよな」
 オレは息がかかるくらいの至近距離で蘭を見つめる
「し、しんいち……」
 驚いてあごを引いた蘭に構わないでオレは蘭の瞳を見つめる。
 この瞳に…蘭のきれいな瞳にオレ以外の男なんて映したくない。
 オレだけを映して、映させていたい。 
「蘭、今日オレの家に泊まりにくるんだよな」
 オレは蘭の目をじっと見ながら言う。
 目線なんて外させない。
「で、蘭。どうなんだよ」
「…………泊まりに行く……わよ……」
 そう言って蘭はオレの事をにらむ。
「素直じゃねーよな」
 ホント素直じゃねーよな…。
 たまには素直になれよ。
 蘭。
「新一、ホントは泊まりに来て欲しいんでしょ?」
 突然、蘭は顔に満面の笑みをたたえながらオレに聞く。
 う…………ホントのこと、いきなり言うなよ。
 …しかも、にっこり笑いながら……。
 くっそーーーーーーー可愛すぎるじゃねーか。
 オレ…蘭の泣き顔にも弱いけど…。
 蘭の微笑みにも弱いんだぁ……。
 負けたな…。
 蘭のすべてに。
 勝てるわけねーよな。
 初恋で、しかも始めて逢った時に一目ぼれして落ちた女に勝てる訳なんてねー。
 幼なじみって言うオプションつきだし……。
 負けました。
 オレは一生蘭には勝てねーよ。
 最大で最上で最高で最愛の敵だよ、蘭は。

*あとがき*
およよ技あり〜最大の敵〜の新一サイド。新一のやきもち編とも言う。


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