ふりそそぐもの angel song 〜イブの鐘〜 / song by : the brilliant green

 聖テイタン学園の敷地内にあるその教会は、すでに使われてはおらず、学園の生徒達の格好の隠れ場になっている。
 もちろん、わたしもそこに行くのは好きで…そこにはいつもは見せない顔を見せてくれる人が好んでいる場所だったりするんだけど。
 とくに、その人が好きなのは教会の屋根裏の…日差しが天窓から入り込む部屋。
 その人と秘密の話をするのはいつもその場所。
 普段は周りの友達と一緒になってバカな事やったりしてるのに、そこにいる時だけ、違う顔を見せる。
 初めてあった時、その人はひどく驚いたのを覚えている。
 おどろいたのは…わたしの方なのにね。
 背に輝く12枚の羽を持つその人を見て…驚いたんだよ。
 輝けるほど光を持つ12枚の羽根は天界では天使長の意味がある。
 一応テイタン学園はクリスチャンの学校だから、知識としてわたしはそのことを知っていた。
「ねぇ、天使長様がこんな所にいても良いの?」
「まぁね。ちょっと待ってる事があってさ」
「待ってる事?」
「そっ」
 わたしの言葉に新一は簡単に答える。
 なんだろう?
 って言うかソレよりも、問題点があるわ。
 新一は天使長様なのよ。
 ホントは12月のこの時期、天使長様の新一は地上でのんびりしてるほど暇じゃないはずなのにっっ。
「ネェ、新一。ホントに地上にいても良いの?新一は天使長様じゃないの?」
「まぁ、一応そうだけど。天界の事は他の奴に任せてあるし、オレって結構気むずかし屋だからさ、いるとみんな気ぃ使うんだよな。って…蘭、オレがいたら嫌なのかよ」
 そう言って新一はわたしをにらむ。
「誰も、そんな事言ってないじゃない。ただ…なんか…気になっちゃって…」
「気にする必要ねぇよ。ソレより、蘭、おいで」
 うん。
 新一は、自分の隣を開けてわたしを促す。
 そしてわたしはそっと新一の隣に座る。
 隣に座ったわたしを新一はいつものように輝く羽根でつつみ込んでくれる。
 初めて逢った時、驚いた事今でも忘れられない。
 木の上に座っていた天使。
 12枚の羽根は天に弓を引いた天使を思い出されて…最初はその天使かと思ったぐらいだ。
 でも、聞いたら、その天使じゃなくって、今、天使を統括している天使長だと新一は言った。
 12枚の羽根を持っていたその人は光に愛され、そして光の愛を欲した人。
 その人と同じなのって聞いたら哀しそうに笑っていたっけ。
「で、新一、ココで何を待っていたの?」
「うーん…もう少し待てばわかるけど…。カタラリ…まずったかな…シェリーに知られてなきゃいいけど…。やっぱ…アタリブに頼めば…あぁ、ダメだ。そしたら即シェリー行きだ。オレと快斗と和葉がココにいる事がばれちまう…。ともかく、蘭、もう少し待てっっ」
 何事かぶつぶつ言っていた新一はわたしに待てと言ってそしてまた天窓を眺める。
 いつもなら、この時期は澄み切った青空が見えるはずなのに天窓から見える空は太陽はかげり薄雲がかかっていた。
 だからなのかな?
 ちょっと寒い。
 確かに、新一に包まれてると暖かいんだけど…。
「新一…寒いね」
「オメェさぁ、一つ言って良いか?」
 え、何?
「オメェ、薄着しすぎなんだよ。風邪引くっていつも言ってんじゃん」
 そんな事言ったって…。
「厚着したら可愛くないんだもん」
 そう言ったわたしに新一は呆れるようにため息をつく。
「それに、こうやって新一が包んでいてくれるんでしょ?だから良いの。新一が暖かいんだもん」
「ソレも、そうだな」
 そう言って新一はしっかりともう一度わたしを包み直してくれる。
 そのときだった。
 不意に白い羽根が1枚降ってくる。
 じっとその羽根を見つめていると新一がぱっとソレをつかむ。
「羽根…急に現れたよ」
「これ、伝言」
 で、伝言?
「天使の間で使われる伝達手段だよ」
 あっさりと新一は言う。
 それって…天界からのメッセージ見たいなものじゃないのよ?
「驚く事ないって。……何とか、なったみたいだな」
 羽根を見つめながら新一は呟く。
 なんとかって何?
「蘭、とっておきのプレゼント上げるから…、空見てて」
 何とかなったって何?
 とっておきのプレゼントって何?
 新たな疑問を新一は増やしていく。
 わたしは首を傾げながら新一の言葉通り、天窓から空を見上げる。
「見せたい物があるんだ、誰でもない、たった一人。オメェだけに…」
 静かに響く新一の声を聞きながら外を見ているとふわり、ふわりと舞い落ちてくるものがあった。
 …ゆ、き?…。
 雪だよね…。
 ウソみたい。
 この時期にふるなんて滅多にないのに。
「オレ…蘭に何あげて良いかわかんなくってすっげー悩んだんだ。どうして良いかわかんなくってさ…。だったら、オレが出来る事…すればいいかなって…。ってオレは人に頼んだだけなんだけどな。で、蘭、感想は」
 そう新一が聞いてくる。
 感想なんて言葉に出てこないよ。
「…雪、降らせる事何て簡単なの?」
「まぁね、天候の天使に雪、降らせてくれって頼めば全然問題なし。さすがに真っ青な青空の下から降るっていうのは無理だったけどな」
「ありがとう…、すっごくうれしい」
 でも、平気なの?
 思わず不安になる。
 新一はなんだかんだ言っても天使長様で…簡単に、人であるわたしを喜ばせるために、天候変えるなんてしちゃって良いのかなって。
「問題ないよ。蘭が好きだから…。蘭のためだったらなんでもしたいから。理屈じゃネェだろ?そう言うのって」
 理屈じゃない。
 そうだよね、好きだから、その人のために何かしたいって思うの当然だよね。
「ありがと、新一。ホントにありがとう。すごく嬉しい。ネェ、わたしも新一のために何かしたいの。何か出来る事ある?」
 わたしの言葉に新一は穏やかに微笑んで言う。
「蘭が、オレの側にいてくれるのならソレで良い。オレの側にいて、蘭の事、全部、見せてくれるだけでいいから」
「それだけで良いの?」
「あぁ、それだけで良いよ」
 そう言って新一はわたしを抱きしめた。

 白い雪が少しずつ積もっていく。
 音が少しずつ吸収され、半時も立たないうちに、あたりは銀世界になる。
 街は白い時間を歓迎し、祝うだろう。
 もう少し立ったら、この静かな空間にも喧噪が訪れるかもしれない。
 ソレまでは二人きりでいられる事を願う。

*あとがき*

天使編。
今回のクリスマスの話で唯一のLight-LAW属性の新一くん。
でも、感覚的にはDarkに片足つっこんでいるかもしれない状況。
DarkじゃなくってCHAOSか…。 以上、めがてんネタでした。

さて、これの元案の説明。
元々、これをクリスマス話に持ってこようと思ったんですけど、あまりにも宗教くさくなったんですよ、考えていく間に。

たとえば、

『神はすべての理を知っている。神に背く?そんな事無理なんだよ。神はすべてを知っているのだから。堕ちる理由は知っている?堕ちるのは自分を信じられなくなるから。神は闇でさえも把握している。地に堕ちた者を天の驚異とおそれているのは神ではなく…我々なんだよ。』

こんな台詞とか…。後は…

「新一…新一は堕ちたりしないの?」
「どうして?」
 光が差し込む教会の一室で蘭はオレに聞いてくる。
 オレが天使だと言うことは蘭は知っている。
 天使長だとも蘭は知識の中から知っている。
 オレの背に輝く12枚の羽。
 それは天使長の証。
「だって天使は人を好きになってはいけないんでしょう?」
「そうだね…。蘭、天使が堕ちるときそれは神に背を向けたときだけだよ。神の存在を信じず、神の愛を受け入れなくなったときそのとき、天使は堕天を起こす。いわゆるフォールダウン。蘭、坂を上るのと下るのどっちが楽?」
「下るのだよね…」
「そう、だから天使は堕ちる。高見は自分を律していれば居られるけれど、足の踏み場がほとんどない。穴だらけなのさ。天使はそのたくさんの穴を注意しているんだ。

光と闇は相反するけれど、隣り合わせに存在するものだよ。

天使は光から出来ているんだ。人の目にも見えるように今は、物質体マテリアル体であるけれど、本来天使の本質は精神体のアストラル体と意識体とも霊魂ともいわれるイデアル体からなるんだ。アストラルとイデアルの構成が光なわけ。

こんな話とか、(ここら辺はまだよくまとまっていない)。
で、参考書がバスタだよ。
ははは、笑うしかないね。
一応キャラ設定。

新一(工藤新一):天界において天使長となる銀色に輝く12枚の羽を持つ。基準属性なし
和葉(遠山和葉):天界において、セラフで基準属性は水。
灰原(シェリー):天界においてセラフ。基準属性は火。新一のサポート。
快斗(黒羽快斗):天界においてセラフで新一のサポートをする。(灰原より深い)。基準属性は風。
阿笠博士:天界の天使(多分権天使あたりかな?)エンジェルドール(通称ドール)の製作者。コナン:新一のドール(コピーロボット見たいな奴)。普段はみかけ小学生。でも、ドールなので自在に本体である新一に変身が出来る。
キッド:快斗のドール。見かけ怪盗。自在に快斗に変身できるのはもとより、他の人物にも変装可能。
毛利蘭・服部平次・中森青子:聖テイムズ学園の生徒。

こんなもんかな? 良いところまで行ったんだけどね。
でも天使長新一という案は捨てきれず、今回のクリスマスに持ってきました。
クリスマスクリスマスしてないけどね。
次の話もしてないかも…。