同棲への道 4:西へ…… 君に逢う為に生まれた〜We Love The Earth〜

 夕飯時……家には何故か、快斗と青子ちゃんが居る。
 何でだ?
 で、何でオレはこの二人のために夕飯を作ってるんだ????
 こいつらがきたときオレは真っ先に蘭のことを聞いた。
 でも、帰ってきた言葉が
「新一、お腹空いた」
 と快斗。
「新一君、青子は魚料理が良いなぁ」
 快斗の言葉を聞いた青子ちゃんがこれ。
 なんでめしになるんだよぉ。
「青子ぉ!!!オレが魚嫌いだって知ってるだろぉ」
「しってるよ、だからお魚さん食べようって言ってるの」
 あのなぁ、
「嫌だ!」
「何よ、力いっぱい嫌だって言うことないじゃないの!バ快斗」
「なんだとぉ、アホ子!やるのか?」
「やってやろうじゃないのよぉ!!!」
「いい加減にしろ。何しに来たんだよぉ、オメーら」
 頭きて叫ぶと快斗はオレをじろっと見青子ちゃんの手を引いて言う。
「青子、帰るぞ」
「え、あ。うん」
 え、蘭のこと教えてくれねーの?
「お、オイ。快斗、蘭は今どこにいるんだよ」
「……お腹空いた」
 ……どうあってもめし食うつもりだな。
「わーったよ。そこで座ってろ」
 …オレは快斗と青子ちゃんに席を指定して、今現在こうやってご飯を作っている訳だ。
 青子ちゃんは魚料理にしてと言ったのだが……あいにく魚はなかったので適当なものを作る。
 その適当さ加減に快斗は驚く。
「新一、お前いつもはどんな食生活してるんだ?」
「いつも?普通どおりだよ」
「この料理見て普通どおりって思うか?」
「だいたい、オレつくんねーもん。今はだいたい……蘭が……作ってくれるから」
 そ、蘭が料理をしてくれるからそれに甘んじているわけだ。
 だいたい、自分のために豪勢な料理を作ろうとは思わないし。
 蘭の為なら作ろうとは思うけどな。
「蘭ちゃんの手料理ねぇ、おいしかったぜ、新一」
「てめぇ、何しに来たんだよ!!!」
「あ、新一君。青子、蘭ちゃんが夕飯作ってあげてって云われたから作るね」
 そう言って青子ちゃんはキッチンに向かう。
「冷蔵庫の中にね、チャーハンの元を作っておいて入れてあるって言ってたの。それ使っていいって言ってたんだ」
 そう言って青子ちゃんは冷蔵庫の中からラップに包まれているチャーハンの元と冷凍庫に入っている冷えご飯をだしてチャーハンを作り始める。
 小気味いいチャーハンを炒める音が部屋中に響き渡る。
「快斗、今何時?」
「7時ちょいすぎ」
「じゃあ、後ちょっとだね」
「だな」
 不思議な会話が快斗と青子ちゃんの間を流れる。
 あと、ちょっと??
 何がだ???
「ハイ、出来たよ」
 20分程でチャーハンができ上がり、銘々のお皿に盛りつけられている。
 オレと青子ちゃんのは普通の丸いカタチに盛りつけられているのだが、快斗のだけ
「魚、魚、魚、魚、魚、魚あーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー。あおこ!何でオレのだけ魚のカタチなんだよぉ」
 魚のカタチに盛られていてご丁寧に、海苔で魚の目、鱗まで描かれている。
「可愛いじゃない、お魚さん」
「卑怯だぞーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!」
「卑怯じゃないもん」
 まぁた始ったこの二人の喧嘩。
 服部と和葉ちゃんもよく喧嘩するけど、快斗達もよくするなぁ。
 ふぅ、…蘭…今どこにいるんだろう。
 …青子ちゃんって蘭に似てるよなぁ。
「…あの手の顔には弱くってね……」
 って昔快斗(キッド)が言ったのが分かるわ……。
 まじ、似てるもんなぁ。
 青子ちゃんと蘭が入れ替わったりしたら周りのやつらってわからねーんじゃねーの。
 …って…オレも………分からなかったらどうしよう…。
 間違ったら殺される…。
 でも、蘭、快斗とオレ間違えなかったんだよなぁ。
 分かるのか???
 分かるかも知れねーな……。
「…新一君…青子の顔に何かついてる?」
 じーっと見ていたために青子ちゃんに聞かれる。
 不意に聞かれたために、一瞬、蘭を思い起こさせて不覚にも顔が赤くなってしまった。
 それを……快斗に見られてしまった。
「新一、青子はオレのだ!!!」
「あのなぁ、何でそ言うふうになるんだよ!」
「青子の事変な目で見てるからだろ!!!」
「変な目じゃねーよ!」
 ただ蘭に似てるって思ってただけだ!!
「新一サイテー!」
 快斗のやろうは蘭のまねまでした。
「快斗ぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」
「…お、怒った?」
 恐々、快斗はオレを見る。
 あたりめーだ!!!!!!!!!
 蘭に変装した揚げ句、蘭を眠らせて、蘭を抱き締めて、あと、蘭の携帯に出て蘭のマネして!!!!!!!!
 今までしたこと忘れてねぇんだぞ!!!!!!!!!
「蘭ちゃんのこと抱き締めたってホント?快斗」
「………あ、お、こ……?」
「快斗、蘭ちゃんのこと抱き締めたってホント????」
 頭にきて青子ちゃんに耳打ちしたことに青子ちゃんは反応する。
「快斗ぉ!まだあったのねぇ。最低、快斗のバカ!!!!!」
「あ、あ、あ、あ、あ、あ、あれは、不可抗力だっ」
「ほー、オレに変装して、蘭を抱き締めたことが不可抗力だって云うんだ。はぁ、なるほどねぇ」
「………ごめんなさい!!!!!」
 そう言って快斗はオレと青子ちゃんに謝る
 何がごめんなさいだ。
「青子ぉ、ごめん」
「…………」
「あおこぉ、そんな怒るなよぉ。一瞬だけだよ。……青子、青子の言うこと何でも聞くからさぁ」
「ホントに?」
「う、うん」
「じゃあ、お魚さん食べよう!!!」
 そう言って青子ちゃんは隠し持っていたシラスを快斗のチャーハンの上に降りかけた!
「魚、魚、魚、魚、魚、魚あーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー」
 チャーハンの上にいっぱいかけられたシラスは、青子ちゃんによって無理やり快斗の口へと運ばれていた。
 ざまぁ見やがれ。
「never end never end わたし達の未来は never end never end わたし達の明日はfantsy 夢を見る誰でも夢をみる 数え切れない優しさが支えてる(Never End song by 安室奈美恵)
「誰?青子」
「着いたみたい、出るね」
 青子ちゃんの言葉に快斗はうなずく。
 着いた?
 誰が……。
 まさか、蘭…っじゃねーよな。
 蘭、どこにいるんだよぉ。
「もしもし、着いたの?」
『うん、今パトカーで服部君の家に向かってる』
「パトカーーー?」
 青子ちゃんの言葉にオレは驚く。
 パトカーってなんだ?
 どうしていきなりパトカーが出てくるんっだ?
「パトカーってどうしてパトカーに乗ってるの?」
『タクシー代わりなんや。青子ちゃん元気?』
『青子ちゃん、快ちゃんおるん?』
『だって』
「あはははははははは。ちょっと待って快斗に今替わるね」
 急に笑いだした青子ちゃんは携帯を快斗に渡す。
「平ちゃん、青子のこと笑わすなよ」
 電話の相手は服部らしい。
 ったく、パトカーをタクシー替わりに使うなよ。
『おぉ、すまんすまん、で、工藤には言うたんか?』
「まだ、だよ。言って最終にのられたらたまったもんじゃないからな」
 最終????
『それも、そうや。工藤の様子、どないなっとんのや?』
「え、もーおもしれーぜ、平ちゃん」
 そう言って快斗はオレの方を見る。
 面白い????
 意味がわかんねーよ。
『ホンマか?快ちゃん電話かわれや』
「ダメ、それは出来ない相談だねぇ。平ちゃん、一回替わってくれるかな?」
『えぇよ、蘭ねーちゃん。快ちゃん』
『何、快斗君』
「今から新一に話すけど良いね」
 オレに話す?
 なんだ?
『快斗君にまかせるよ。驚くよね、新一』
「だね」
『快斗君、新一どうしてる』
『へたれになっとると』
『蘭ちゃんおらんと工藤君も寂しいんやね』
「そう、今平ちゃんと和葉ちゃんが言った通りだよ」
『ホントに?見てみたいなぁ』
「蘭ちゃんが居るって分かったらすぐに元気になるから難しいよ。多分のぞき見るのってかなり難しいんじゃないの?」
 …………………快斗の電話の相手、蘭、なのか??
「快斗、電話変われ!!!!」
 オレは快斗の持っている携帯を奪い取ろうとした時だった。
「じゃ、また電話するね。じゃあね」
 そう言って快斗にきられてしまった……。
「かぁーーーーいぃーーーーーとぉーーーーーー!!!!!!!!」
 くっそーーーーーーーーー蘭の声聞きてーよぉ。
「新一、蘭ちゃんは今大阪の平ちゃん達のところに居るよ。でも連絡なし、蘭ちゃんがそうしたくないって言ってる」
 快斗はオレの顔を見ながら言う。
「どうしてだよ」
「理由は蘭ちゃんは新一の声聞いたら甘えちゃうんだと。だから聞きたくない。って甘えたりしたら、同棲はたんなるその場の勢いでしたいって言ってると、とられるからだってな。蘭ちゃんなりのケジメだよ。新一が蘭ちゃんに少し離れて接するようにしたって云うのとおんなじ」
 ……だいたい、想像はついていた。
 ただ、オレは甘えられても、頼られても全然良いのにな。
「よく…決心したよな。同棲しようって。本当はお前のことだから結婚の方が良いんだけどとでも言ったんじゃねーの」
「……言ってねーよ……」
 本心覗かれた気がした。
 結婚の方がいい。
 蘭が側に居るんだったら。
 同棲なんて不確かなものじゃなくって結婚して周りに認めてもらえて蘭と幸せになれればそれがいいと思う。
 でも、オレは高校生だし、蘭も高校生だ。
 オレ自身名のある探偵で両親も有名人。
 蘭の両親だってそうだ。
 父親はへっぽこだけど名探偵と呼ばれた人物だし、母親は法曹界のクィーンと呼ばれててテレビに何かに呼びだされて出ていたことだってある。
 オレと蘭の同棲がばれたらかなりの大スクープになるだろう。
 いろいろ問題が出てくる。
 分かってる。
 分かってる。
 でも、でも、蘭と一緒にいたい。
 それだけは譲れない。
 誰にも譲りたくない。
 蘭の側に居ることを。
「だから、オレ達は協力してやるよ。平ちゃん達も同意してくれる。お前がコナンだったときつらいの知ってるの平ちゃんだしな。西の名探偵と怪盗キッドと東の名探偵がそろえば何だって出来るだろ」
 快斗…………。
「だから、新一は自分が出来ることをする。手始めにすることは蘭ちゃんの両親の説得。だろ、それから大阪に行っても遅くないよ」
 ……目が覚めた。
 そうだよな、何とかしようと思えば、何とかできんだろうな。
「サンキュ、快斗」
「ば、バーロ。礼なんて新一らしくねーよ」
 オレの礼に快斗は顔を赤くする。
「な、何でそこで顔が赤くなるんだよ!!!」
 ったく。
 今日一日動いていなかった頭の中を動かす。
 おっちゃんから攻めていくんじゃなくって、その周りから行く。
 おっちゃんが一番苦手としている人物から手始めに落としていく。
 知っているその番号に電話をする。
「ハイ、妃法律事務所ですが」
「夜分遅くすいません、工藤新一と言いますが、妃英理先生はいらっしゃいますでしょうか」
「新一君?」
 少しきつめの声の主、蘭の母親、妃英理さんがでる。
「はい、そうです。お久しぶりです」
「元気なようね?ところでこんな時間にどうしたの?蘭に何か合ったの?」
 蘭の事を心配するなら戻ってくればいいのに……。
 と心の中で思いながらもオレは応対をする。
「いえ、そう言うわけではないんですが。……明日、時間を少し頂きたいんですが…」
「何のために?」
 少しだけ幼いころさんざん味わった恐怖を感じながらオレは
「……電話ではあまり言いたくないことなのですが……」
 と、答える。
「そう、……まぁ良いわ。明日の午前中…10時ごろから大丈夫よ」
「本当ですか?では、あしたそちらにお邪魔させていただきます」
「新一君、一人でくるの?」
「そうですけど…、何か問題でも?」
「蘭は一緒じゃないのね」
 そう寂しそうに言う。
 蘭に逢いたければ戻れば良いじゃないですか……と喉まで出かかりながらオレは明日の予定の再確認をして電話をきる。
「とりあえず、午後あたり大阪に迎えるようにする。快斗、それなら問題ないだろう」
「全然ないよ。オレ達も大阪に行くかも知れねーんだ。その時はよろしく。青子、帰るぞ」
 そう言って青子ちゃんと快斗の二人は帰っていった。

妃英理法律事務所

 さすがに……緊張する。
 あの、にらみも威圧感も全部、蘭に受け継がれてるかと思うと……ちょっと蘭のこの先が怖い。
 まぁ、一応おっちゃんと暮らしていたわけだから。
 んーそれでもやっぱり怖い。
 どっちの性質を受け継いでいても怖いんだよなぁ。
 でも、蘭ってたまぁに母さんに似ていると思ったことがあるけど何でだ?
 …確かに母さんと一緒にいたことも結構あるから……。
 って蘭って母さんに似てるのか??
 考えるの止め止め。
 ここに来たのは蘭との同棲を認めてもらうためだ。
 応接室に通され英理さんが出てくるのを待っている。
「かなり、久しぶりね、新一君」
「あ、お久しぶりです」
 立ち上がって挨拶しようとする事を止められる。
「…わたしが家を出てから新一君には逢っていなかったわね」
 ある意味、合ってる。
 新一としては会ってなかったが、コナンとしては会ってたからオレ的にはかなり久しぶりではない。
「で、話って何」
 唐突に切り出される。
 何から言っていいのか分からない。
 いきなり同棲させて欲しいって言っても…呆れかえられるのがオチだ。
 とは言ってもオレが来たのはそれしかないわけだし。
 ココは思いきって言うしかねーよな。
「新一君?」
「蘭との同棲を認めて頂きたいために来ました」
「蘭との同棲?」
「ハイ」
 言ってしまった。
「どうして?」
「蘭の側に居たいからです」
 それ以外にない。
 海外に行こうと父さん達に言われたときも蘭と一緒に居たいから行かなかった。
 コナンであったときも蘭の側に居たいがために、嘘をつき通した。
 すべて蘭の側に居たいから。
「蘭の事をずっと側で見ていきたいんです。これから先も。苦しいことも悲しいことも嬉しいことも楽しいことも…すべて蘭と分かち合っていきたいんです」
 ふぅ、言いきった。
 ……オレの考えは甘いのだろうか。
 …好きだから、側に居たいから、同棲をさせてくれっていうのは…。
「新一君」
 うつむいたオレの顔をあげさせるかのように英理さんはオレの名前を呼ぶ。
 その呼ばれたほうに顔を向けると、じっと英理さんがオレの顔をにらんでいた。
 目をそらしたい。
 小さいころから味わってきたあのにらみ。
 でも、その目線を外す訳には行かなかった。
 蘭が好きだ。
 だから蘭の側に居たい。
 これ以外にない。
 やっぱり認められないのだろうか。
「新一君、蘭はどこにいるの?小五郎から電話が会ったの。蘭が来てないかって」
 おっちゃん、英理さんのところまで電話したんだ……。
「……蘭なら大阪にいます。蘭のこと迎えに行こうと思ってます……」
「新一君」
「な、なんですか?」
「蘭を…蘭をお願いね」
 ど、どういう意味だ????
「蘭を迎えに行くんでしょ。蘭に会ったら電話してきなさい。蘭に話したいことがあるから」
「は、ハイ」
 オレは英理さんの言葉にうなずいて法律事務所を出る。
 ……許してもらえたんだろうか……。
 いまいち疑問が残る。
「るぱーんるぱーん、るぱーん、るぱーん」
 携帯が鳴る。
 この着メロは快斗。
「新一?オレ快斗。予告状出すから新一も来いよ」
 快斗はそう言って電話を切る。
 それだけで切るなよぉ。
 ともかくオレは大阪に向かうための準備するために家に戻ったのだ。

「この度はご乗車ありがとうございました。車内にお忘れ物のないようご注意下さい」
 車内アナウンスが流れわたしは荷物を持って新幹線を降りる。
 久しぶりの大阪。
「蘭ちゃーん」
 新幹線のホームにはすでに、服部君と和葉ちゃんが居た。
「どうしたの?二人ともわざわざホームまで来ることなかったのに」
「迎えに来たんや、工藤が言うとったで蘭ねーちゃんは方向音痴やって」
 と服部君が言う。
 新一ーーーーーーーーーーーーー。
「蘭ちゃんがくる言うたら平次のオカンとうちのオカンがな豪勢な夕飯にする言うてはりきってんねん」
「そうや。そのせいでまだ飯食うてないんや」
「アハハハ」
 大阪駅を出ると目の前には一台のパトカーが止まっていた。
 何で止まってるんだろう。
 事件か何かあったのかなぁ。
 ま、まさか前みたいに。
「蘭ちゃん、これにのって」
 やっぱりーーーーーーーーーーーー。
「ほんなら鈴木ハン頼むわぁ」
「本部長が知ったらどないすんねん、平ちゃん」
「そんなん平気や。巡回いった帰りやぁとでも言えば何とかなるやろ」
「それもそうやハハハ」
 ふぇーん。
 恥ずかしいよぉ。
 気楽な会話が服部君と運転席に乗っている刑事さんの間でかわされる。
「そんな恥ずかしなることないって。夜だから誰も見てへんし」
「そう言う問題じゃ……」
 はぁ、これで2回目だよ。
「蘭ねーちゃん、快ちゃんには電話したんか?」
「あ。忘れるところだった」
 服部君の言葉に思いだしわたしは青子ちゃんの携帯に電話した。
「青子ちゃん?わたし」
『もしもし、着いたの?』
「うん、今パトカーで服部君の家に向かってる」
『パトカーーー?』
 わたしの言葉に青子ちゃんは驚く。
 無理もない。
 誰だってパトカーに乗っているって知ったら驚くよね。
『パトカーってどうしてパトカーに乗ってるの?』
 その言葉に応えたくなくって和葉ちゃんと服部君に説明させる。
「タクシー代わりなんや。青子ちゃん元気?」
「青子ちゃん、快ちゃんおるん?」
「だって」
『あはははははははは。ちょっと待って快斗に今変わるね』
 その言葉に青子ちゃんは笑う。
 誰だって笑うよね。
 快斗くんに替わったので服部君に携帯を渡す。
『平ちゃん、青子のこと笑わすなよ』
「おぉ、すまんすまん、で、工藤には言うたんか?」
 わたしがこっちに居るって事今はまだ言わないでって約束だからまだ内緒にしてもらっている。
『まだ、だよ。言って最終にのられたらたまったもんじゃないからな』
「それも、そうや。工藤の様子、どないなっとんのや?」
『え、もーおもしれーぜ、平ちゃん』
 新一の様子??
 ちょっとどういう意味?
「ホンマか?快ちゃん電話かわれや」
『ダメ、それは出来ない相談だねぇ。平ちゃん、一回替わってくれるかな?』
「えぇよ、蘭ねーちゃん。快ちゃん」
 服部君が携帯を返してくれる。
 相手は快斗君らしい。
「何、快斗君」
『今から新一に話すけど良いね』
 快斗君はそう言う。
「快斗君にまかせるよ。驚くよね、新一」
『だね』
 どんなふうに驚くんだろう。
 ふとあることが気になって快斗君に聞いて見る。
「快斗君、新一どうしてる」
 すると、
「へたれになっとると」
「蘭ちゃんおらんと工藤君も寂しいんやね」
 と服部君と和葉ちゃんが言う。
『そう、今平ちゃんと和葉ちゃんが言った通りだよ』
「ホントに?見てみたいなぁ」
『蘭ちゃんが居るって分かったらすぐに元気になるから難しいよ。多分のぞき見るのってかなり難しいんじゃないの?』
 それ、言えてるかも。
『快斗、電話替われ!!!!』
 突然、新一の声がする。
 なんか、やっぱり新一だ。
「じゃ、また電話するね。じゃあね」
 そう言って快斗君は電話を切る。
「新一の声……聞きたかったなぁ」
 思わずでたつぶやきに
「快ちゃんも工藤も声、一緒やんか」
 と和葉ちゃんと服部君の二人から突っ込まれる。
 微妙に違うのよね。
 新一と快斗君って。
「ホンマに違う?」
「声だけ聞いとると分からんときあるで?」
「違うよ。え、分からない?」
 わたしの言葉に服部君と和葉ちゃんは顔を見合わせる。
「わからへんよなぁ、和葉見分けつくか?」
「声だけだとわからへんよ。蘭ちゃん聞き分けもできんの?」
 ……聞き分けって……。
 区別…つかないのかな。
 わたし簡単につくんだけど……。
 そう言えば、青子ちゃんはどうなんだろう。
 新一と快斗君、区別つくのかな……。
 服部君の家でご飯を食べ、和葉ちゃんの家(隣どうし)に行き、お風呂に入らせてもらって和葉ちゃんの部屋で一息ついたころ、服部君が窓から入ってきた。
 あまりの突然の出来事に驚いては居たが和葉ちゃんに言わせると。
「いつものことや、平次の部屋すぐ隣なんやで」
 ベランダごしの隣の部屋。
 ホントに幼なじみだって言うのが感じられる。
「どのくらい服部君と和葉ちゃんって一緒に居るの?」
「気ぃついたときはおったよ。小さいころの平次めちゃくちゃ可愛かったねん、蘭ちゃん写真見る?」
 と和葉ちゃんがとりだしたアルバムには赤ちゃんの頃からのがある。
 しかも二人そろって……。
 姉弟……兄妹みたい……。
 なんてね。
「気がついたときってどのくらい?」
「んーこの三才の頃やね」
 と和葉ちゃんが指さした写真は河原に二人一緒に手をつないでいてその隣には『和葉&平次 3歳』とト書きされていた。
「一日だけな、アタシのオトンと平次のオトンの休みが一緒になってな全員で遊びに行ったんよ。…河原で遊んどった記憶はあるんやけど……他は全然」
 そう行って和葉ちゃんは笑う。
「で、そろそろ本題に入ろうや」
 服部君が台所から持ってきた麦茶を片手に言う。
「そうや、蘭ちゃん家出ってどういうこと」
 二人はわたしに聞く。
 その家出の顛末をわたしは話す。
 お父さんのこと、新一のこと、これからのこと……。
「一緒に暮そう」って言われたこと……。
 その為にお父さんと喧嘩した事。
 全部。
「そうやったんかぁ……」
「そう言うことならアタシら協力するよ。いつまでもここにおったらえぇし。な、平次」
「そうやな、工藤が蘭ねーちゃんの側におりたいって言うのは痛い程分かるしな。あんなんなってもずーっと側におったんやから。蘭ねーちゃんの側以外にはいきたないんやろな」
 服部君は言う。
 …コナン君の時のことさしているんだよね。
「何とかなるやろ。何もならんときは駆け落ちって言うのもありやで蘭ねーちゃん」
 …新一とおんなじ事服部君はいう。
 ……もしかして服部君と新一って似てるんじゃぁ。
「えぇね、駆け落ち。愛する二人が手に手をとりあって果てまでも逃げていく。アタシもそんなん事してみたいわぁ」
「アホ、何言うとんのや、駆け落ちした二人の片方は逮捕されてまうんやで」
「何の話や、平次」
「ドラマの再放送の話や」
「平次、ドラマ見とったの?」
「暇やったから……ぼーっとテレビ掛けとったらそれがやってた」
「アハハハハハ」
 何年か前のドラマの話を服部君はする。
「今、こっちで再放送してるの?」
「この前終わったんやけどな。納得いかんであの最後は」
「ぼーっとやなくて真剣に見てたんやな平次……」
 和葉ちゃんと服部君の会話は傍で見て面白い。
「ともかくや、オレらは蘭ちゃんと工藤の味方や。何か困ったことあった場合は言うてきいや」
「そうや、味方やでアタシら」
 そう言って服部君と和葉ちゃんは言ってくれる。
「ありがとう」
 心から出た言葉。
 応援してくれる人がいる事が凄く心強い。
「新一、どうしてるかな……」
「へたれになっとるやろ。工藤は蘭ねーちゃんがおらんととことんおかしなるからなぁ。ホンマ蘭ねーちゃんに何かあったらあいつどないなるかわからへんで」
 そんな新一想像できないなぁ。
 いっつもクールだから。
「蘭ちゃん、大事にされてるんやね。アタシ蘭ちゃんがうらやましいわぁ」
 そう和葉ちゃんはうらやましがる。
 何言ってるんだろうね、和葉ちゃんってば。
 和葉ちゃんだって大事にされてるのに。
 右手の甲の傷が物語ってるのにね。

*あとがき*
東京にいる新一と大阪へ行った蘭の話。平次が見ていたのは『青い鳥』。


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