大阪告白の裏側で 君に逢う為に生まれた〜We Love The Earth〜

 連休前のある日服部にオレは電話した。
 本当は電話したくなかったのだが……。
 弱みを握られているからにはしょうがない……。
 なんで、あんなやつに見られたんだ???
 くっそーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!
 服部のやつめ。
 ここぞとばかりに使いやがる。
 くっそーーーーーーーーーーーーーー!!!
「ハイ、服部」
「よう服部」
「工藤やないかぁ!!!!!」
 服部はオレだとわかった途端、声がうれしそうに聞こえる。
「珍しいなぁ、工藤が電話してくるなんてなぁ」
「あのなぁ、用があるから電話してこいって言ったのはテメーだろ」
「そういやぁ、そうやったなぁ」
 服部はオレの言葉に笑って誤魔化す。
「で、用件はなんだよ」
「そうやそうや、今度の連休の時和葉と一緒にそっちに行くからどっかいいとこ捜してや」
「はあああああああああああああああ?!」
 連休にこっちにくるだとぉ?
 連休のたんびにこっちに来るんじゃねーよ。
 蘭と二人っきりにさせろっつーの!!!
「工藤、もうちょっと加減せいや、鼓膜やぶれたらどないすんねん」
「あのなぁ、連休のたびにこっちきてんじゃねーよ」
「えぇやんかぁ、工藤に逢いたいんやし。な、ええとこ捜してや」
「どっかいいとこってどんなところだよ」
 聞くと服部は悩む。
 何で悩むんだ?
 どっかいいとこってお前が言ったんだろ!
「和葉とおって楽しいところ」
 と、服部はすっぱりと言う。
 って言うことは服部は和葉ちゃんを好きだって認識したのか?
 確認をするために服部に聞いてみる。
「……服部、オメー和葉ちゃんのこと好きだってわかったんか?」
「な、な、な、な、」
 かなり、服部は動揺する。
 オイオイ、気付いたんじゃねーのかよ。
「あのなぁ………。ったく、和葉ちゃんと一緒に入れて楽しいところだろ?そう言うところに行きたいんだろ?セッティングしといてやるよ」
「ホンマか?」
 服部は凄くうれしそうに聞く。
「……まぁな」
「安心しとき蘭ねーちゃんには言わんとくから」
「ぜってーーーーーー蘭には言うなよ!」
「へいへい、ほなな」
 そう言って服部は携帯を切る。
 言われたくない……。
 まずい秘密を服部に知られてしまった…。
「ねぇ、新一、何がわたしには言うな、なの?」
 と蘭がいきなり言う。
 後ろを振り向くと蘭がにっこりと微笑みながら聞く。
 全然…気がつかなかった………。
「ら、蘭…」
「ねー新一。わたしには言うなよって何?」
「…な、何でもねーよ」
 言ったら殺される!
 コナンの時にキスしたなんて言ったら…絶対殺される。
「新一…何??わたしに言えないこと?」
 言えません。
 言ったら蘭の空手でしばかれるのは目に見えてるんだよ。
「……新一黙ってるって言うことはわたしに隠し事してるってことよね」
 隠し…事…だよな……。
「今はまだ言えないなんてなしだよ。わたしまだこの前のことも聞いてないんだから」
 屋上の出来事まで引っ張ってきた。
 まずいまずいまずいまずい……。
 言わないと絶対に引かない……。
 ……ん?
 ……もしかするとオレ言っても平気じゃねーの。
 オレ、色々やってるし……。
 開き直れば!!!!!
「新一!教えなさい!」
「わーったよ。じゃあ、教えるかわりにこれだけは約束しろよ」
「何?」
「聞いても怒らない事と、空手を使わないこと!」
 これさえ言えば、とりあえず、身の安全は守れる!!!
「…何怒るような事したの?」
「……んーーーーーーーーどうなんだろ。蘭、とりあえず、約束しろよ」
「分かったわよ…」
 オレの言葉に蘭はしぶしぶ承諾する。
「で、…ねぇ、新一…何?」
 と聞く蘭の手をとりあえず掴み、身動きが取れないようにする。
「ちょっと何よ新一」
 蘭がにらむが構わない。
 聞きたいって言ったのは蘭だしな。
「オレ、コナンの時に蘭にキスしたんだよ」
「うそ……」
「マジ」
「しんじらんなーい!!どうしてそういうことするの?」
「怒らないって約束だろ空手もなし。空手使ったらオレの言うことなんでも聞くこと」
「ちょっと、どうしてそう言うことになるのよ!!」
 蘭の抗議にオレはすっぱりと答える。
「身の安全のため!!!」
 蘭の空手による破壊行動は数知れない。
 だいたい動いている(坂道を滑っている)車の窓をけ破ったり、鍵のしまっている扉をけ破ったりするし、突然後ろから(ココがポイント)襲われたときはひじ鉄食らわせてかか落としはかけるし…、あと何が合ったっけ……。
 怒ると空手技かけるし……。
 さすがに、都大会空手部優勝者って言うのは伊達じゃない。
「最低!」
「はいはい、最低ですよ」
「もう、開き直って……」
「開き直ってるつもりはねーよ。あ、それより今度の連休どうする?なんか服部が和葉ちゃんといれて楽しいところに行きたいんだと」
 風向きが何となく怪しいので話題を変えてみる。
「服部君がそう言ったの?もしかして和葉ちゃんに告白するのかな」
「多分ね。なんか楽しそうに言ってたしな」
「そっか……じゃ、決めようか」
「そうだな」
 ちょっと機嫌直ったみたいだな。
 ホントどこにしよ。
 まかせろとは言ったけどな……。
「トロピカルランドでね、新しい、アトラクションが出来たんだって。園子が言ってたよ」
 蘭の提案でそこに決定する。
 ったく、何でオレが服部のためにおぜん立てしてやんなきゃならねーんだろ…。
 
 次の連休を利用して服部達はやって来た。
 服部のやつはオレの家に行くと騒いでいたが現地で落ち合うことにさせた。
 トロピカルランドの入り口で待っていると服部と和葉ちゃんが走ってやってきた。
「おせーぞ服部」
「すまんすまん」
 服部は軽く謝りを入れる。
 ったくこの軽さはどうにかならねーんかな。
 とりあえず、オレ達はトロピカルランド内に入る。
「ココでね、今ミステリーランドっていう今シーズン限定のアトラクションが出来たの。それに行こうって言う話しになったんだよ」
 と蘭が和葉ちゃんに話しかける。
 入場の時にもらうパンフレットを見ながらオレは素朴に思って蘭に聞く。
「蘭、ホントにいいのか?」
「何が?」
「ミステリーランドってお化け屋敷がメインだぜ」
「え………」
 オレの言葉に蘭と和葉ちゃんが止まる。
「うそ、新一、わたしそんなの聞いてないよ」
「ホンマに?平次どないするの?」
「行ったってええやんか。和葉行くで!」
 そう言って服部は和葉ちゃんの手を引いて行く。
 素朴な疑問、服部はミステリーランドのある方角分かってるのか?
 地図、見てねーよな。
「おい、服部」
「何や工藤」
 オレの呼び止めに服部は止まる。
「ミステリーランドがどこにあるのかわかってんのか?」
「………分からん」
 そう言った服部の顔が面白くってオレは思わず笑いだしてしまった。
「く、く、ハーーーーッハハハハハハハ。服部、面白すぎ!」
「新一笑っちゃ悪いよ」
 蘭も悪いと言いながらも笑っている。
 オレと蘭が笑っているのをみて
「ホンマ平次はアホやなぁ。場所分からんで行くやつなんておらんよ」
 と言いだし和葉ちゃんも笑いだす。
 服部は一人憮然としている。
「と、ともかく行こうか。蘭、オレがいるから平気だって」
 蘭の手を引いてオレはミステリーランドの方に向かう。
 ミステリーランドの最大の目玉は迷路兼お化け屋敷のミステリーメイズ。
「ホントにここに入るの?」
「そうだよ、じゃ。服部オレ達先に行くから」
 怖がる蘭をなだめながら入っていく。
 ミステリーメイズ。
 基本は迷路だけどかなりお化け屋敷的要素が強い。
 チェックポイントごとに地図がもらえるので早々迷うことはない。
 ただ、蘭がかなり怖がりなので、不安ではあるが
「新一ぃ……」
 すでに泣きそうだ。
 無理もない。
 生暖かい風に無機質な壁。
 この壁がかなり厄介な代物で、かなり本気で作成されたコンクリの壁だ。
 それと時折聞こえてくるラップ音。
「蘭、やっぱり止めるか?それともこのまま行く?」
「行く……」
 蘭は強がってるのかそう言う。
「ホントにいいのか?ダメだったら出てもいいんだよ」
「新一が側にいてくれるんでしょ。だったら行く……せっかく入ったんだもん」
 と、毎度お化け屋敷に入ったときのセリフを言う。
「新一、わたしのこと離さないでいてね」
 オレの腕にしがみつきながら蘭は言う。
「誰が、離すかよ」
 離さないのはオメーだろと言えないな。
 離したところで、泣き出すのは目に見えてるし。
 迷路も中盤に差し掛ったころ分かれ道があり、あたりがそれまでの雰囲気と一変する。
「わぁ、なんかココお化け屋敷みたいじゃないね」
 そう言って蘭はオレの腕からするりと抜ける。
「蘭……!」
 思わず、蘭の腕を取り抱き寄せる。
「ど、どうしたの新一」
「……な、何でもない。ただ、……何となく」
 何でもないじゃない。
 何となくじゃない。 
 腕を放したら、消えてしまいそうで怖くなった。
 単なるお化け屋敷のはずなのに。
 不安になったのは何故だろう。
「…?」
 オレの顔を蘭は不思議そうに見上げる。
「って、言うか離さないでねって言っておいて自分からいなくなりそうなことするなよ…」
「ごめんね、新一」
 そう言って蘭は満面に笑をたたえオレを見つめる。
 ……ま、ずい……。
 蘭のこの微笑みはオレのもっとも苦手で…尚且つ一番好きな笑顔だから……。
「新一、行こ」
 蘭はオレの腕を引き向かう。
「そんなに急ぐなよ。行くから」
 蘭が決めた道の方に向かう。
 地図を見るとどちらから行っても大丈夫らしい。
 だから素直にしたがった。
 もう一つの道に看板があったことをオレは知らない。
『別れと巡り合いの迷路。あなた方が入ったこの迷路はもう一度巡り合うために別れることになります。さぁ、もう一度巡り合うためにガンバリマショー』
 と言う看板を。
 お化け屋敷を出た後、オレ達は観覧車に乗る。
 服部達を先に乗せ、オレと蘭はその後に乗る。
「蘭、隣に座って」
「え、でも」
「…隣にいて欲しいんだよ…」
 そっぽを向きながら言うオレに蘭はしょうがないなぁと言うふうに隣に座る。
「なんか、今日の新一、いつもと違うよね」
「どういう意味だよ」
「何となく…なんか不安そうにしてた。お化け屋敷で…」
 お化け屋敷か……。
 確かになんか不安になった。
「蘭が…いなくなりそうで怖くなったんだよ……。急にオレの腕から離れたから…」
 そう言うオレの身体にふわっと何かがかかる。
 それが蘭がオレを抱き締めた事だとは少しの間気がつかなかった。
「ら、蘭……」
「新一でもわたしがいなくなると思って不安になるときあるんだ…」
「あたりめーだろ」
「良かった……わたしだけだと思ってたから…。わたしだけ新一がいなくなったらどうしようって思ってたんじゃなかったんだ……」
「蘭……。そんな、泣きそうな顔するなよ…」
 オレが原因でその顔をさせてしまうと思うと…つらい。
「新一だって泣きそうな顔してるよ」
 そう言いながら蘭は両手でオレの頬を挟み静かに顔を近づけた。
 ……蘭からのキス……。
 もしかして、初めてじゃねーの?
 キスした後、蘭は恥ずかしさのあまりうつむいてしまう。
「うつむくなよ……」
「だって……恥ずかしいんだもん……」
 そう言いながら蘭は顔を赤くしオレの視線から逃れるように外に顔を向ける。
 そんな蘭をオレは優しく抱き締める。
「蘭……好きだよ…蘭はオレのこと好き?」
「ウン……好きだよ、新一」
 甘い呪文のように蘭の声が響く。
 不安が流れるように消えていく。
 ガコン
 は????
 なんだ?
 突然の振動にオレは驚く。
「な、何?新一」
「どうやら、観覧車が止まったらしい」
 原因は多分すぐ上にある服部達が乗っているゴンドラ。
 ただ今、ケンカ中らしい。
 観覧車の中でケンカするなよ。
「服部君達の声がするよ」
「そりゃ、そうだろ。上で立ち上がっての大げんかみたいだからな」
「ホントに?」
「あぁ」
 ったく、なんなんだよあの二人は。
「服部君告白するのかな?昨日ね、和葉ちゃんから電話があってね、告白したんだけど、なんか服部君が本気にとってないみたいだったから冗談にしちゃったんだって」
 ハハハ…和葉ちゃんらしいや。
「うまくいけばいいな。服部君と和葉ちゃん」
「…そうだな…」
 幼なじみの恋愛は難しい。
 側にいるだけ、誰よりも側にいるだけ思いが分かりにくいし、伝えにくい。
 特に服部なんか鈍感なやつだしな。
 気がついただけでも進歩ありだし、しかも告白しようって思ったのが凄い。
 言えるもんだったらさっさと言っておいたほうがいい。
 いつ何時、何があるか誰もわかんねーしな。
「あ、動き出したね」
「あぁ、良かったな」
「ウン……新一、この前コナン君だったときわたしにキスしたって言ってたよねぇ」
 い、いきなりなんだよ。
「わたしも、告白するね」
「な、何を」
 告白するねってなんだよ。
 コナンの時、蘭にキスしたのとなんか関係があんのか??
「わたしね、寝ているコナン君にキスしたことあるんだよ」
 え???
 それはマジ?
「マジで?」
「ウン。コナン君は新一なんだなぁと思ってたから、別に問題はないよね……って。今思えばちょっと恥ずかしかったかな……」
「いつ…だよ」
「秘密」
 そう言って蘭はオレに隠し事をした。
 隠し事とは言えない他愛もないオレへのキスなんだけどさ……。

*あとがき*
平次が告白した時の新一×蘭。ちょっとだけ甘々にするはずが…。


novel top