未来予想図〜前編〜 子供たちは夜の住人〜WE LOVE THE EARTH〜

-オープニング-
 今日は卒業式。
 とは言っても帝丹は、エスカレーター式だから、今のメンバーともう逢えなくなるって事はない。
 それでも、三年間(オレ的には二年とちょっとだけど)学んだ校舎を離れるのは何か特別なものがある。
 そして高校生最後の厄介事が待ち受けてるのも事実だった。
「工藤先輩っ好きでしたっ」
 そう言って卒業式が終わった後、オレに向かってくる後輩の女の子達と、他クラスの女の子達。
 そう、卒業式というのは告白ラッシュなんだ。
 だからといってその告白を一つ一つ聞いてる暇なんてない。
 固まってきた女の子達にオレは一斉に謝って蘭を探した。
「宮野っ、蘭しらねぇか?」
 保健室へと続く廊下でオレは宮野を見つける。
「蘭さん?さぁ、見てないわ。さっき鈴木さんを見たから、彼女なら知ってるんじゃないの?」
「サンキュ」
「待って工藤君」
 園子を探しにその場を立ち去ろうとしたオレを宮野は呼び止める。
「あんだよっ。オレは急いでんだよっ」
「そのくらい分かってるわよ。あなたに忠告というか密告ねこれは」
 そう言って宮野はクスッと微笑む。
「何だよっ」
「蘭さん、告白されてるわよったくさんの人に」
 そう言い残して宮野は保健室へと向かった。
 オイオイオイっそれだけ言い残して立ち去るんじゃねぇよっ。
 蘭、どこにいるんだよぉっ。
「あっ、いたいた。新一くーん。」
 遠くから園子の声が聞こえる。
「何だよっ。オレは今急いでんだよ」
「ちょっと来て」
 そう言う園子の方にオレは向かう。
「オレは今急いでんだから用件だったら手短になっ」
「分かってるわよ。蘭だったら、教室にいるわよ」
 と園子は小声で言う。
「なんで小声なんだよっ」
「卒業式と言ったら、告白のラストチャンス。蘭の親友として、そしてあんたの相談相手として、蘭に近寄る男をけ散らすのは当然でしょ」
 と得意げに言う。
「ともかく蘭は教室であんたのこと待ってるから、早く行ってやんなさい」
 そう言った園子に礼をいいながら(しっかりケーキセットをおごる約束をさせられたが…ってあいつ何度オレにおごらせてるんだ?)オレは教室へと向かった。
 廊下から蘭の姿が見える。
 窓際で少し物憂げに外を見ている。
 その姿に一瞬言葉をかけるのをためらう。
 あまりにも…はかなげで…そして消えてしまいそうな感覚を覚え…。
「蘭…何、してんだ?」
「新一っ」
 振り向いた蘭の顔はさっきの物憂げな表情と全くちがって、憂いのない晴れ渡っている笑顔だった。
「相変わらず…もててるね」
 近付いたオレに蘭は少し寂しげに微笑む。
 もしかして…見られていたんだろうか…。
 オレがたくさんの女子に告白されているところを。
「そんな顔すんなよ」
 そう言いながらオレは蘭を安心させるかのように抱き寄せる。
 一瞬驚きながらも蘭はオレに体を素直にあずける。
「やっぱり…落ち着く。新一の腕の中って…いつも…一緒なのにね」
「不安…?」
 静かに聞く言葉に蘭はどっちとも言えない表情をオレに見せる。
「どうなんだろう…不安なのかもしれない。新一…」
 囁くように蘭がオレを呼ぶ。
「何?蘭」
「側にいてね…新一…」
「ったりめぇだろ?オレはオメェの側からこれぽっちも離れる気なんてねぇよ。蘭こそ…オレの側にいろよ」
 オレの言葉に蘭は小さく頷いた。

-本編:未来予想図前編-
 今日は卒業式…。
 そしてアタシと平次が大阪から東京に引っ越す2日前…。
 引っ越しの準備はほとんど終わってる。
 あとは…なんやろ…。
 することが思い浮かばない…。
 ともかく…今日は卒業式。
「和葉、はよしたくしぃ」
「ウン、今しとるよ…」
 鏡の前で…揃えた前髪の長さと受験の間切りにいけなくって昨日揃えてきた髪の毛の長さが気になって…いつものポニーテールをしながら気になってしまう。
「和葉、何しとんの?」
「オカン…変やない?」
 なにが気になってるのか分からないんだけど、気になって洗面所にきたお母さんに確認してしまう。
「もう、変やないで」
「ホンマ?」
「ホンマやから…平ちゃんと一緒にいくんやろ?待たせる気なん」
「そんなつもりないよ…」
「やったらはよしたくしなさい」
 オカンの言葉に頷いてアタシはセーラーのリボンを縛る。
「オカン、オトンも卒業式には来る言うてた?」
「さぁ、どないやろなぁ…難しいかもしれへんなぁ」
「そう言えば…平次言うとった…。この前あった殺人事件が解決してへんって」
「あんたと平ちゃんの卒業式やもんね…。下手したら大阪府警の刑事が総動員してくるんと違う?」
 そう言ってお母さんはおもしろそうに笑う。
「オカン…おもろがってない?そんな怖いこと言わんといてよぉ。事件や言うの聞いたら下手したら平次まで行ってまうんと違う?」
「そう言う人間好きなったもんの報いやと思って諦めたほうがえぇよ」
 そう言ってお母さんは苦笑いをする。
 ハァ、わかっとんのやけどなぁ。
「おばちゃーん、ご飯あるかぁ?」
 そう言って平次がやってきた。
「ん?あるでぇ平ちゃん、食べてき。はよせんと遅刻してまうよ」
 そしてアタシと平次の朝ご飯は始まる。
 こんな食事風景ももうもうないかと思うと少し寂しい。
 それでも、平次と二人で考えて決めたことやから…。
「ほな行ってきます」
「うちらは後からいくからな」
 お母さんの言葉に頷き何度となく通った道を学校へと向かった。
「卒業生代表、服部平次」
 進行をしている先生の声に導かれて、平次が壇上にたつ。
「答辞 日差しが春めいてきた今日この頃」
 平次の声が講堂中響き渡る。
 なんだかんだ行って平次の成績はトップだったらしい。
 幼なじみとして誇らしく思い、そして恋人として不安になる…。
 カッコイイ、そして優秀な平次にあこがれる女の子は少なくない。
 だから今日の卒業式も…平次に告白しようと考えてる女の子はたくさんいるんだろうな。
 なんて事考えてると憂鬱になる。
 ため息つきたくなる…。
「卒業生代表 三年B組服部平次」
 そう言って平次は答辞の紙を校長先生に渡し一礼をして壇上を降りる。
 その時不意にアタシに視線を向けかすかに微笑む。
 その微笑みにつられわたしも微笑むと、平次は小さく頷いた。
「あんただけに微笑んだんやで、服部のやつ」
 前に座ってる女の子にアタシは照れながらも頷く
「どうやった?和葉」
 そして、隣に座った平次がアタシに小さい声で囁く。
「まあまあやね」
 なんて思ってることとは反対のこと平次に囁く。
「どうやった言うのはないやろ。お世辞でもカッコ良かったとでも言わんかい」
「いつも言うてるやろ」
 ウソ。
 いつも「カッコイイ」なんて言ってない。
 そんなこと平次前にして言えるわけないやろ?
 恥ずかしすぎるやんか。
「いつも言うてへんで」
「ウン」
「あのなぁ」
 言い合いは終わることなく続いてく。
「もう、いい加減やめや。先生がにらんどる」
 クラスの子の言葉にアタシ達は気付き言い合いをやめる。
 こんなことももうない。
 と思ったらなんか急に悲しくなってきた。
『仰げば尊し』のイントロなんてなってるからかもしれない。
「何ないてんねん」
 涙をすすったアタシに平次はこづく。
「やって…なんか悲しなったんやもん…」
「アホ…」
 軽く聞こえるハズの言葉が軽く聞こえない。
「平次…あんたもしかして…」
「なんや?」
「何でもあらへん」
 アタシの視線を向けた平次にアタシは言葉を流してかわした。
 卒業式も終わり、アタシ達は教室に戻ってきた。
「和葉、あんたボロボロやね」
 そう言ってみんなアタシの方を見る。
「やって…やって…、もうみんなと逢えんようになると思うたら…なんか悲しくなってもうたんやもん…」
「決めたのはあんたやろ?和葉。せやったら泣かんの」
 勝沼杏奈がアタシに言うて来る。
「うん」
「もう、泣くんやないの。ウチまで移るやんか」
「せやったらうつしたるわ。アンも泣き」
「いややわぁ。せっかく我慢しとんのに泣いてもうたら水の泡やもん」
「水の泡にしたるっ」
「何騒いでんねん。はよ席付けっ」
 担任が教室内に入ってくる。
 最後のHR、先生の言葉。
 それが妙にムネに付く。
 やっぱり…大阪から出てしまうから…。
 そして解散となった。
「和葉ぁこの後時間ある?」
 帰る準備をしてるアタシにクラスの女子の委員長が突然声をかける。
「何で?」
「えぇから…」
 そう言ってアタシは他の教室に連れてかれた。

「和葉ぁ、この後時間ある?」
 そう女子の委員長に和葉はどこかに連れてかれた。
 どこに連れてかれていつ戻ってくるか分からんままにオレは帰る用意をしてその間に写真撮影に応じる。
「服部ぃ、ちょっとえぇか?」
 男子の委員長がオレに声をかける。
「なんやねん。卒業参りなんて流行らんで」
「アホな事言わんとちょっと付きあえって」
 そう言って委員長はオレの事を引っ張っていく。
 いきなりなんやねん。
 引っ越しの準備せんとあかんねんどっ。
 それから和葉も待ってないとアカンのやで!!
「ココやここ」
 そう言って連れてこられた場所は何でもない普通の教室。
 待っていたのは生徒会の役員。
「なんやねん」
 そう言う間もなくオレはセッティングされた場所へ座らされる。
「…今から何があんねん」
 オレの言葉を無視しながら元生徒会副会長(女)は手に持ったトランシーバーを使う。
「えぇこちら、服部平次サイド。遠山和葉サイド応答願いますどうぞ」
 は?
 今、和葉の名前が出んかったか?
『こちら、遠山和葉サイド。服部平次サイドどうぞ』
『ちょー待ってぇ平次サイドってなにぃ』
 和葉の戸惑いの声がトランシーバーを通して聞こえてくる。
「そうや、どういうことや?和葉サイドってなんや」
「気にせんと」
 副会長はニッコリと微笑む。
 気にせんとって言われても気にするっちゅうねん。
「こちら服部平次サイド準備完了。そちらはどうですか?どうぞ」
『こちら遠山和葉サイド準備完了。これから実行に移しますどうぞ』
「了解!!」
 その瞬間だった。
『生徒会より在校生、及び卒業生に申し上げます。ただいまより、2/15日より招集いたしました件に付いて緊急招集を行います。該当する方は、至急ただいまより指定の場所へお越し下さい。服部平次サイド・3-A組。遠山和葉サイド・3-H組となっております。もう一度繰り返します』
 と校内放送が流れた。

「どういうこと?」
 アタシの言葉に元生徒会長(男)はニッコリと微笑み言葉を紡ぐ。
「服部平次及び遠山和葉に告白し隊の出番や」
「はぁ???」

「はぁ?」
 和葉の声がどこからか聞こえる。
 教室は離れとんのによう大きい声がでんなぁ。
 突然の事に頭が真っ白になってもうてる。
 いきなりのことにオレは把握できてへん。
「どういうことやねん。服部平次及び遠山和葉に告白したい言うんは」
「告白したいやない。告白し隊や」
「どっちも一緒や。せやからどういうことやねん」

「やってオマエ達、東京に行ってまうんやろ?せやから大阪おるうちにオマエ達に告白したいって言うてる子達をバレンタインを過ぎてから招集したんや。1年から三年までな」
 だからってアタシと平次をこんなに離すこと…。
「やってオマエの側に服部がおったらオマエに告白したい言う子絶対近寄れへんやんか…せやから服部から隔離したんや。服部に告白する言う子は遠山の目が合っても告白するからな。せやから服部平次に告白し隊って言うのは一種のカモフラージュやで。本命は遠山やで」
 その時生徒会長の携帯がなる。
「はい、こちら遠山和葉本部。ん?一年準備オーケー?せやったらえぇよ。ちゃんと注意事項言うてや?こっちも一応ロープ張っとるから平気やろうけど。万が一の事って言うの考えてや?ほなよろしく。と言うわけで、遠山、今から第一弾の1年が来るから楽しみにしてや。一応こっちで面接もしてんねん、せやから安心せい」
 と生徒会長は微笑んだ。

「………隔離って…和葉になんかあったらどないすんねん!!!!」
 オレの言葉に副会長は驚く。
「平気やって…和葉の方には生徒会長がおるし…あの人空手の有段者やし。和葉のこと守ってくれると思うから。服部は気の済むまま告白受けてな」
「あのなぁ、気の済むままって言うの使うところちゃうやろっ」
 そう言うと副会長は愛想笑いをする。
 和葉の事が心配や…。
 浮気…せんやろなぁ。
 結構あいつ面食いやし。
「はい、こちら服部平次本部。ホンマ?ほならこっち連れてきてや。禁止事項言うてね。こっちも一応ロープはるけど…よろしゅうね。ほな。よろしくっ。服部、今から第一弾の一年が来るからよろしゅうね。別に付きあえなんて言うてへんねんから。ただ告白したい言う子だけが来るんやから」
 そう言って副会長達はロープを張る。
「このロープはなんやねん」
「これ以上立ち入り禁止の印。1mでえぇよね」
 その言葉にオレは適当に頷く。
 オレの方より不安なのは和葉の方や
「和葉の方はどのくらいや?」
 まさか1mやないよな…。
 そしたら和葉、危ないで。
「1mやないよ。2mや。握手したい言うてる時は剣道部の男子が和葉に何もされんように護衛に付くから安心して。剣道部の男子はあんたがいるから絶対和葉に告白しようなんて考える奴おらんのやから」
 確かにその通りや。
 オレは副会長の言葉に頷く。
 オレのにらみかが効いているのか剣道部の連中は和葉に手を出そうとはせん。
 かといってそれが安心言うわけでも…ない。
 裏で…狙ってるかもしれへんやんか…。
 気が気でならん…。
「服部先輩っ好きでしたっ」
 次から次へと続く告白は耳から耳へと通り抜ける。
 ホンマに…こんなんでえぇんか?
 他人事ながらオレは頭の隅で考えてはみても気になるのは和葉のことだけ…。
 はよ終わらんか?
 うんざりしとんのやけど…。
 和葉の方が気になってしゃあない。

「遠山先輩、好きでしたっ」
「ごめんなさい」
 謝るのにも疲れてきた。
 平次の方にもたくさん女の子がいるんだろうなと思うといてもたってもいられない。
 平次に告白してくる女の子ってかわいい子ばっかりやから、蘭ちゃんみたいな子が平次に告白でもしたら…アタシ勝ち目あらへんよう。
「これで、1.2年は終わりやな。跡は3年を残すのみや」
「会長…ホンマにアタシまだおらんとアカン?」
「何でや?この後用事でもあんか?」
 用事…ないと言ったらないしあると言ったらある。
 引っ越しの準備…してへん。
 それから…最後の大阪デートもしてへん。
 それからご飯はオカンとオトンと平次のとこのおじちゃんとおばちゃんとで食べる約束になってて…。
 そう言えばなんか…お腹空いてきた。
「会長…アタシお腹すいたんやけど」
 アタシの言葉に会長は苦笑する。
「これ終わったらおごったるわ」
「ホンマ?それならえぇわ」
 その言葉を受け、周りの生徒達も反応する。
「会長、ウチらもおごってや?」
「アホ、自分らはおごりやないで。おごるのは和葉だけやっ」
 と会長の言葉が教室内に響く。
「けちっ」
 その言葉にあたりは爆笑の渦に巻き込まれる。
 平次の方…どんなふうになってるんだろう。
 かなり不安。
 早く終わってくれないかな。
 会長の携帯がなる。
 業務連絡のように言葉がとんだあと会長はアタシに向かって言う。
「これから三年連れてくけどえぇな。これで終わりやから平気やで」
「それやったらはよおわして」
 愚痴るように呟いた言葉に会長は小さくため息をついた。

「これで終わりっお疲れさん」
 やっと終わったぁ。
 めっちゃ疲れたわ。
「それだけあんたのことが好きや言うてるこが多いんやね。さすが、改方学園、彼にしたい男ナンバー1やね」
「なんやそれ」
「せやから生徒会主催彼氏にしたい男決定戦であんたはF組の西園寺圭をぶっちぎりで抜いて堂々トップの座に3年間君臨してるんよ」
 そんな話初めて聞いたで。
「ホンマは服部のこと今年は発表してへんねんよ。理由は、絶対あんたが1位に決まっとるから。探偵やって、剣道を始めスポーツ全般得意でスポーツ関係でいろんなところから助っ人頼まれてるあんたが1位にならへんハズないやろ」
 そう言って副会長は苦笑する。
 そういや…腹減ったな…。
「副会長…オレ、はらへってんねんけど、和葉の方まだ終わらんか?」
 軟禁状況にあるオレは教室から出るのもままならない状況やった。
 廊下の外では泣いたり嬉しがったりしてる女子の声が聞こえたからや。
「ちょっと待って。会長に確認したげる。ん…会長電源きっとる……。…まさか…あのこと本気やったん?」
 副会長が繋がらん携帯を見て呟いた。
「どういう意味や?」
 いやな予感がして自然に声が低くなるのがわかる。
「どういう意味って……。服部君、そんな怖い顔せんといてよ」
 冗談でオレの視線をかわそうとする副会長にむかってオレはにらむ。
「どういう意味やねん…」
「せやから…もぉどうにかしてよぉ。誰かあのアホ会長見てきて!!!」
 その言葉に生徒会の面々が和葉の教室に向かう。
「答えろ」
「……せやから…生徒会長…和葉のこと好きやって言うてて……。まさか本気やとは思わへんやろ?」
 その言葉を後ろに聞きながらオレは教室を飛び出る。
 和葉がいるはずの教室の前は剣道部のやつらや教室におった生徒会のやつがたまっていた。
「あ…服部」
「何してんねん。和葉の方は終わったんか?」
「おわったんやけど…突然、会長が教室からオレら閉めだしてん」
「鍵かかっとんのか?」
 その言葉に生徒会の奴が首を振る。
「かかってへんけど…開けられんやろ?」
 苦笑したその顔になんや腹が立つ。
 和葉はオレのもんや言うてんのがわからへんのか?
「開けるでっ」
 そう言って開けた時思いっきりはたく音が聞こえた。
 見ると目に一杯涙溜めた和葉が会長を平手ではたいてた所やった。
「和葉?」
「あんた最低やわ!!!せっかくおとなしくしたったんのにそう言ういい方ないやろ。謝ってや」
「………遠山……すまん…」
「アタシやないやろ。平次にやっ。平次のこと侮辱せんといて。見損なったわっ」
 そう言って和葉は入り口に向かいオレがいることに気付く。
「どないしたんや?和葉。なんかされたんか?」
 静かに聞くオレにしがみついて思いっきり泣きだす。
「和葉どないしたんや?」
 オレの言葉に答えんで和葉は和葉は泣きじゃくる。
「和葉になにしたんや」
「何にも…してへんよ遠山には…」
「やったら謝ってよ、平次に。せやなかったらアタシは絶対にあんたのこと許さへんからっ」
 意味が飲み込めてないオレに会長は謝る。
「すまん…服部」
 そう言って会長は教室を出ていった。
 ホンマ何があったんや?
 そう聞いても和葉は首を振るだけやった。

「多記、オマエおったんか?ちょうどえぇわ。オレと和葉の荷物教室からもってきてくれへんか?」
 平次の声が頭の上から聞こえてくる。
 それに多記は答え教室の方に向かっていく。
「どないしたんや?」
 囁くように平次はアタシに言う。
 教室内もろうかも人はほとんどいなかった。
「……あいつ…平次のことアホっていうたんよ…」
「そんなことほっとけば良かったやんか…」
 呆れながら平次は言う。
「やって許せへんかったんやもん…平次のことアホって言うていいのアタシとおばちゃんとオトンとオカンとおじちゃんと」
「なんでそんなに言うてえぇ奴がおんねん」
 と平次はアタシの言葉に突っ込む。
「アタシ公認やで」
「オレは非公認やっ。と…って…和葉他にもおんのか?」
 その言葉にアタシは頷き言葉を続ける。
「おるよ、あと工藤君と快斗君」
「なんで 工藤と快が出てくんねん。
「平次のこと認めとるから…」
 アタシの言葉に平次は何か言おうとしていた言葉を飲み込む。
「平次のことちゃんと認めてくれとる人しか平次のことアホって言ったらアカンねん」
「みんな言うとるやろ。アホやなんて呼びかけみたいなもんやで」
 平次はそう言う。
 ホントは違う。
 ホントのところはそこにない。
 アタシは会長に告白された。
 好きやって言われた。
 とりあえず、アタシはごめんって謝った。
 せやけど…引いてくれなかった。
 なんども謝った後、アタシは会長に言われたのだ。
「なんて…服部はこんな女すきなんやろ」
 と……。
 吐き捨てるように言った言葉…。
 何故か頭に来た。
 普段だと
「こんな女で悪かったね」
 なんて言えるのに。
 平次がバカにされた感じがしてどうしようも無かったのだ。
 だから、アタシは聞こえなかったふりをして…
「今、なんて言うたの?」
 と聞いてしまったのだ。
 それが悪かったのかもしれない。
 聞き方がおかしかったのかもしれない。
 アタシの声には怒気が含まれているって言うのが自分でもわかった。
「こんな女好きになる服部はアホちゃうかって言うたんや」
 そう言った会長の言葉にアタシは頭に来て平次が廊下にいるのに気付いていながらアタシは会長の頬を平手で殴っていたのだ。
 悲しかった…。
「和葉…落ち着いたか?」
 平次の言葉にアタシは頷く。
「それやったら、帰るで。オレ、もう腹ぺこぺこや。なんか食ってくか?多記とアンがおごる言うてるで」
 平次の言葉にアタシはただ頷いていた。

後編に続く(~_~;)。

*あとがき*
新一×蘭は冒頭のみ。卒業式のメインは平次×和葉。


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