らいおんハート〜一番えぇこと〜 君に逢う為に生まれた〜We Love The Earth〜
〜喧嘩っプル健在なりよ〜
「和葉、どこにおんねん。帰るで」
 放課後、職員室に呼びだされたオレはその呼び出しから教室に戻ってくるとオレを待ってるはずの和葉がおらんかった…。
「うわぁ、もう平次戻ってきたで」
「ホンマや、和葉にケータイ持ってったよね。電話せんと」
 同じクラスの長峰多記と勝沼杏奈が言う。
 オレらと同じ中学で高校3年間も一緒の結構仲が良い二人や。
「どういうことや?」
「どういうこともあらへんよ。平次君」
 と杏奈。
「そうや、気にせんといてや」
 と多記。
 何でやねん。
 気にせんとき言われて気にせん言うやつがどこにおんねん!!!!!
「和葉はどこにおんねん」
「裏庭に告られに行ったん」
 多記の言葉にオレは驚く。
 オレがおる言うのにまだ和葉に告白するやつがおんのかぁ???
「どういうことや!!!!!」
「多記、告られに行った言うのは違う。和葉が言うには…大事な話がある言われたから行った……や…」
 オレの変わっていく形相に驚いてるのか杏奈と多記はびくびくし始める。
「誰や」
「何が?」
「決まっとるやろ、和葉を呼びだしたやつや!!!!」
 誰や、大事な話言うて和葉を呼びだしたやつは!!!
「…平次、怒鳴らんと約束できるか?」
「怒らんと約束できるんやったら…言ったってもえぇよ。うちらかて、和葉がそいつの話聞き行くの止めたんやから」
 多記と杏奈が恐々言う。
 怒らんいう約束せなあかんのか?
 そんなにとんでもないやつに和葉は呼びされた言うんか?
「誰や、怒らんから言うてみぃ」
 オレは極めて冷静になって二人に言う。
「ホンマに怒らん?」
「怒らん」
「ホンマに怒らん?」
「怒らん言うとるやろ」
 オレの冷静な態度に二人はやっという気になったらしい。
「和葉を呼びだしたんは…………西園寺圭………や」 
 な、なんやてーーーーーーーーーーーー!!!!
 西園寺言うたらあのなまっちょろい、バスケ部のやつやないかぁ。
 女にキャーキャー言われたいだけでバスケ部に入ったやつやで!!!
 改方がバスケ弱いのを良いことに入ってるアホやで!!
「平次、待て」
「何や」
「西園寺にお前が勝てる見込みはあらへん」
 多記がオレを止める。
「確かに、お前はカッコえぇと思うで。男のオレから見てもそう思うんねん。せやけどな、相手はこの改方学園で彼氏にしたい男ナンバー1の男や!!そんな男にかてる思うか?和葉かて推理アホなお前より、彼氏にしたいナンバー1の男の方がえぇに決まっとるとおもわへんか?」
「………」
 ………そうやな…。
 事件やいうて…和葉のこと放って出かけてまうオレより……彼氏にしたい男ナンバー1
の方がえぇに…………………?
「多記、アホなこというんやないの。ホンマのこと言うたげんと…。和葉がそんなミーハーなやつに思うん?あんた何年和葉と一緒におんの?」
「落ち込んどると思うたか?アン…」
「平次?」
「和葉は…誰にも渡す気あらへんで」
 そう言うてオレは教室を飛びだした。
 行き先はもちろん裏庭や!!
 まっとれよ、西園寺圭!!
 目に物みせたるわぁ。

 西園寺圭。
 今、アタシの目の前にいる男。
 改方学園で彼氏にしたい男ナンバー1の人物。
 である。
 いや……正確に言うと…彼氏にしたい男ホントはナンバー2の人物…である。
 ナンバー1は圧倒的人気で…平次である。
 だけど、大概、告白すると「女と付き合うの興味あらへんねん」(これはアタシとつきあう前)か「じゃじゃ馬だけで精一杯や」(これ直に聞いてアタシを怒らせた一言!!)「大事なやつがおんねん」(これも直に聞いたやつ。これめっちゃ言いセリフやん)で断られるので…ナンバー1にしないと人気投票実行委員会の子が言ってた。
「うちら無駄なことはせん主義なんや。そは言うても、服部に投票する奴おると思うけどね」
 って。
 それやったら服部平次に投票は禁止にすればえぇやんって言うたけど。
「やっぱり、服部の人気がどのくらいあるか知りたいと思わん、和葉ぁ」
 と、アタシの複雑な心境を見抜かれてしまった。
 好きな人が人気あって欲しい。
 だけど、もてるのは嫌。
 矛盾、しとるよね。
 分かってる。
 だけど、嫌なんだよ。
 平次はアタシの!!!!
 ………はぁ。
「で、遠山さん、話きいとった?」
 突然、西園寺君に呼ばれる。
 あっかーん、つい平次のこと考えてもうた。 
「あ、ごめんごめん。相談したいことやったよね。ちょっとアタシ考え事して、聞いてへんかった。ごめん」
「まぁ、えぇけど」
「で、アタシに相談したいことって何?」
「実はな?……オレ、遠山さんの事が好きなんや」
 じっと見つめる西園寺君。
 さすが、改方学園人気ナンバー2の座におるだけはあるわ。
 髪はサラサラだし、結構、体の均整とれてるし、顔はかっこいいし。
 雰囲気っていうたら工藤君に似てるかも。
 あ、平次の嫌いなタイプ。
 平次、
「工藤が推理やってへんかったら絶対友達になってへんな」
 って言ってたし。
 色……白いなぁ。
 平次が黒すぎか?
 平次って地黒なんだよねぇ…。
 でも、白い平次って嫌やわ。
「返事、きかせてくれへん?」
「へ?返事?なんの?」
「せやから、オレ、遠山さんの事すきやから…」
「そんなこと言われても…アタシ、西園寺君と付き合う気あらへんし……って言うか彼氏おるしぃ」
 って言うか、西園寺君ってアタシが平次と付き合ってること知らないんかな?
 そんなこと…ないよねぇ。
「遠山和葉の影に、服部平次あり。またその逆もあり」
 と…言われてたし…。
「そんなこと、構うつもりあらへん。オレは遠山さんが好きやから」
 と真摯な瞳で彼はアタシを見つめる。
 これが、カッコイイんや!!
 って皆言うけど……。
 どうもアタシはそうは思えない。
 アタシは平次の事件追っかけてるときのキラキラしてる目が好きだったりするから。
 こんな告白に命懸けてます!!みたいな奴…嫌や。
「……和葉!!!!!!何してんねん」
 不意に平次の声が聞こえた。

「平次、どないしたん?用事もう終わったん?」
 突然、声かけたオレに和葉は驚きもせんと言う。
「あ…あぁ。終わったけど……何してんねん」
「ん?西園寺君に話がある言われて…ちょっと来ったん。まぁ、西園寺君、そういことやからアタシ、あんたと付き合われへんから。堪忍ね、平次、かばんは?」
 かばん?
 あ……教室に置いてきてもうた。
「…アホ…ココまで迎えに来るんやったら、かばん持ってきてくれても良かったやんか……」
「教室まで戻ればすむことや、帰るで」
「うん」
 そう言って和葉はおれの隣に並ぶ。
「ちょっとまてや……」
「何や?」
 帰ろうとするオレと和葉を西園寺は呼び止める。
「……遠山さんが付きおうとる人ってそいつなんか?」
「他に…おらんよ」
「…そいつよりオレの方がえぇんとちゃうか…」
 …ちょ、まてや……。
 …こいつ…オレのこと知らんのか?
 頭いたなってきたわ……。
「お前、オレのこと知らんのか?せやったら自己紹介したるわ。おれの名前は服部平次や。ここ改方におってオレのこと知らんで和葉に声かけるんはもぐりやで」
「服部…平次……もしかして…あの剣道部の服部か?」
「他に、この学校に服部いうやつも平次言うやつもおらんで」
 ホンマに知らんかった見たいや。
 まだ、こんなやつおったんか……。
「お前ら、ただの幼なじみちゃうんか?」
「ちゃう。幼なじみ兼恋人同士や!!!!!」
 ここではっきりしとかんとあかん。
 こういうやつから噂言うのは広がってくから…はっきりオレのもんや言うとかんとまた誰に和葉が声かけられるかわからへん!!!
「ハズかしーーーーー。平次ぃ、よく平気で言えるなぁ。そないセリフ」
 オレの言葉を受け和葉は顔を赤くして文句を言う。
「アホ、誰のせいで言うてる思うねん」
「アタシのせいやないやろ」
「だいたいなぁ、こないなとこまでのこのこ付いてくんなや!!」
「しゃーないやん。大事な話ある言うてるし、まさか告白なんて夢にも思われへんやろ」
「多記とアンに言われなかったんか?告白やからいくんやないって」
「……平次、やきもちやいてくれてん?」
 止まらずに続いていくと思うとったいつもの言い合いが和葉の突然の言葉で遮られる。
 ホンマやったらココで止まったらあかんはずが……止まってもうた。
「なぁ、平次、妬いてくれたん?ホンマの事言うてみぃ?」
「………アホ、そないな訳あるか」
 精一杯に反論してみるが……顔が赤くなっとるはずやから…説得力がまるでない。
「ホンマ?」
「…………」
「平次、ホンマにそう思うてん?」
「………………そないな訳あるか………」
 負けた。
 負けてもうた。
「よし、平次帰るでぇ!!!!!!」
 オレらの言い合いを呆気に取られてみていた西園寺をしり目にオレと和葉は家路につく。
「そうや、和葉。今日の夕飯どないすんねん?」
 さりげなく、誘ってみる。
「今日な。平次の家やで。アタシ、静華おばちゃんから頼まれてんねん。ほらオカン達旅行やろ。せやから静華おばちゃんから平次の夕飯作ったってって頼まれたん」
 そう言えばそうやった。
 オカンと和葉のオカンでいつもの旅行やった。
「そうなんか?オヤジ達の分はどないするんや?」
「あれ、聞いてへん?オトン達夜勤や言うてたで」
「夜勤?何でや。官僚が夜勤するんか?」
「知らんよ。なんかえらい事件が山場や言うてたで朝。そういや平次、今朝起きるの遅かったなぁ」
 そうや、今朝は寝坊したんや。
「せやけどホンマ事件好きやなぁ」
「平次には負けてまうと思うけど」
「オレ、そない事件好きやないで」
 和葉の言葉にオレは反論する。
 せやけど、和葉から帰ってきた言葉は
「……………6回」
 やった。
 6回???
 何の数字や。
「何や、その回数」
 軽く返すオレに和葉は見る見る機嫌が悪なってきた。
「…………アンタが、今月、アタシとの約束すっぽかした回数や!!!!!」
 ……ホンマか?
「6回やで、6回。アンタが事件や言うてアタシとの約束すっぽかした回数。まだ月半分も来てへんのにもう6回もアタシ、デートの約束とか全部あんたにすっぽかされてんねんで!!これの、どこが事件好きやない言うん?」
「すまん」
 和葉の怒りを静めるためにオレは素直に謝る。
「謝るんやったら、府警本部にほいほい顔ださんといて」
 何の反論もできひんわ。
 少し…自重したほうがえぇな。
 これは……。

〜喧嘩っプル健在だから…〜

 考えとることがある。
 この前から…。
 ただ、それを和葉に言うてえぇか悩んだ。
 せやけど、許されるのなら……それはその方がえぇ…そう思うた。
 それがオレの存在する理由だとしたらや……。
 そうすればみんなうまくいく。
 うまくいったほうがえぇに決まっとる。
 せやから…この考えをまず和葉に言う。
 ……もうあのことは学校に言うた。
 実行できるか出来ないかは…和葉にかかっとる。
 オレの存在する理由がまず一つは和葉にあるから…。
 和葉がおらんかったら…多分、オレはオレでのうなるハズや。
 他の人間になってまうやろうな……。
 和葉は許してくれるのやろうか…。
 こないなオレを……。

「…和葉…」
「何?」
 眠たいのに…平次がアタシのことを呼ぶ。
 だけど…めちゃくちゃ優しい声で…。
「オレ……考えてることあんねんけど……黙って聞ぃとってくれるか?」
「えぇよ……何?」
 目を覚ますためにアタシは起き上がる。
 寒さにアタシは近くに脱ぎ捨てたはずの…パジャマの上を探して羽織る。
 それでもやっぱり肌寒い。
 そんなアタシを見て平次も起き上がりアタシのことを抱き寄せる。
「あんな……オレ……に行こうと思うねん」
 アタシ以外の人間には聞こえへん声で平次は囁く。
「平次……?それ本気なん?」
「本気や…。ただ…和葉が許してくれるなら…っていうのが前提にあんのやけどな」
 ……せやから…職員室に呼ばれたのか……。
 アタシは…保留にしてある。
 改方はエスカレーターも可能だから上にそのまま上がることも出来る。
 今だったら全てを変えられる。
「和葉…これ以外良い方法なんて浮かばへん。これが一番良い方法なんや…。遠すぎるで……向こうとこっちは…」
「……そうやね……。平次、平次の好きな様にしたらえぇよ。アタシもそれやったら賛成やで。そんなこと出来るんやったらしたい思うてたし」
「そうなんか?」
「うん。楽しそうやんか。毎日が」
「そうやろ。楽しそうやろ。まぁ、こっちの方が心配になるんやけど。別に平気やろ。オレが好きでやってることやしな」
 キラキラした目で平次は言う。
 アタシは、この平次のキラキラした目がなくなって欲しくない。
 そう思ってる。
 だからアタシは平次の負担にならないように、平次が少しでも楽になるように…側にいる。
 それが一番えぇ事やから。
*あとがき*
らいおんハート、平次×和葉編。
長峰多記・勝沼杏奈・西園寺圭は公開していないオリジナル小説の登場人物。


novel top