らいおんハート〜神様に願う〜 君に逢う為に生まれた〜We Love The Earth〜

〜Angel heart〜
「青子ちゃん、明日は快斗の側にいてあげて」
 快斗の家に遊びに行くと突然、快斗のお母さんにそう言われた。
 明日がどういう日か青子だって分かってる。
 でも、どうして快斗のお母さんがそう言ったのか青子には分からなかった。
 だって……。
「やっぱり、快斗と一緒の方が良いんじゃないですか?」
 そう言うと、おばさんは笑って
「たまには二人っきりになりたいの。青子ちゃん、協力してくれない?」
 と屈託のない笑顔で快斗のお母さんはそう青子に言ったのだ。

「なーんで、アホ子がオヤジの墓参りにくんだよ」
「いーじゃないのよ、バ快斗!!」
 今日の快斗は機嫌が悪い。
 アホ子って突っかかってくるし。
 でも、今日はあまり反論しないでいよう。
 そう思った。
 今日だけは何も言わないで快斗の側にいよう。
 そう決めた。
 今日は快斗のお父さん、盗一おじさんの命日…。
 景色のきれいな山あいの共同墓地に盗一おじさんのお墓はある。
「………オヤジ……来たぜ。……1年振りだよな……。去年…ここに来たときよりも気分、全然違う。…この1年いろんなことあったけど…ありすぎたっていたほうが良いのかな」
 お墓の前で、花を持って快斗は盗一おじさんに向かって言う。
 ホントは快斗に渡したいものがあった。
 お父さんに言ったらあっけなく却下されたけど。
 だけど、快斗は見せたかったと思う。
 でも、青子が一蹴されたようにそれはダメだってこと分かってる。
「ほら、青子。青子もお参りするんだろ」
 花を生け終わった快斗が少し離れてみていた青子に声を掛ける。
 いつもと変わらない笑顔。
 でも、少しだけ。
 ホンの少しだけいつもと違う笑顔。
 今にも泣きだしそうな。
 でも、それはいつも快斗のこと見ている人にしか分からない微妙な変化。
「青子、何ぼーっとしてんだよ」
「あっ、盗一おじさんにね、お願いしたいことがあるんだ」
「なんだよ」
 青子の言葉に快斗は首をかしげる
「快斗がおバカなことしませんようにってお願いしなくちゃ」
「なーんだよ。それは」
「おじさん、快斗がバカなことしないように見てて下さいね」
 とふざけながら言う。
「あのなぁ」
「あと、」
「まだ、あんのかよ」
「わるいー?」
「で、なんだよ」
「秘密」
 そう、快斗にはヒミツ。
 神様、盗一おじさん。
 お願いがあります。
 快斗が幸せであるように。
 青子の側にいる事で、快斗が幸せでありますように。
 お願いします。
 快斗のこと青子に守らせて下さい。
 快斗が苦しまずにすむように。
 いつも青子のことを助けてくれた快斗が青子のことで苦しまないように。
「青子、まだかよ」
「まだだよ」
 快斗に少しだけせかされる。
 でも、その声は優しい。
「なんで…母さん…来なかったんだろうな。いつも一緒にお墓参りするのに」
「なんか…用事があるって言ってたよ」
「オヤジに会いに来るのをやめてまでか?どんな用事だよ」
「知らないよ。でも青子はそう聞いたの。で、おばさんの変わりに青子が来たの」
 ホントは知ってる。
「たまには二人きりになりたいの」
 そう言ったおばさんの言葉。
 その言葉にどのくらいの思いが込められているんだろう。
 快斗がキッドをやめたこと、おばさんは知ってる。
 ホントはおじさんに怪盗キッドをやめて欲しかったんじゃないのかな?
 それが快斗に引き継がれてしまった。
 ホントは…一番避けたかったことのはずなのに…。
「快斗…、お願いがあるの?」
「何?」
 ふと思ったこと。
 盗一おじさんに快斗の成長した姿を見せたい。
 って。
 でも、快斗いやがるかな?
 ダメでもともと聞いてみよう。
「快斗、マジック見せて」
「え?」
 案の定、快斗は嫌な顔をする。
「ダメ?」
「何で見たいんだ?」
「青子じゃないよ。おじさんに見せてあげて欲しいの」
「オヤジに?」
 快斗の言葉に青子はうなずく。
 どうしても見せてあげたい。
「ぱーっとやってよ。快斗」
「良いぜ、青子」
 少し考えて快斗はニッコリ微笑みそう言った。
「よし、青子、観てろよ」
「青子じゃないよ。おじさんだよ」
「わーったよ。オヤジ、見ててくれよ」
 そう言って快斗はマジックを披露する。
 たくさんあふれ出る花からカードから。
 どこに隠し持ってたんだろうなんていつも思ってしまうぐらいの快斗のマジックのネタ。
 でも青子のことを夢の世界に連れていってくれる。
 快斗、青子は快斗の側にいるから。
 快斗が心配しないように青子はいつも快斗に笑っていてあげるからね。

〜Lion Herat〜
 どうして、青子は屈託なく笑うんだろう。
 ときたまその無邪気な笑顔がうらやましく思う。
 汚れのないまっすぐな微笑み。
 それがオレの黒ずんだ心の中に深く深くしみ込んでいく。
 消えることのない事を青子の笑顔は綺麗に消していく。
 新たな思いに捕らわれてはいても。
 家に帰ると今日は帰らないという母さんからの書き置きがあった。
 こんな日にどこに行ったんだろう。
 そう思ってしまう。
「おばさん、いないの?」
「あぁ、今日は帰らないだと。書き置きがあったぜ」
「ホントだ」
 青子は書き置きを見つめる。
「青子、お前、ホントは知ってるんじゃねーの。母さんの居所」
「知らないよ。青子が言われたのは『たまには二人っきりになりたいの』って言われただけだよ」
 二人っきりになりたいだぁ??!!
 なんだよ、それは!!!
「二人っきりって……」
 ……そうか……。
 何となく分かったような気がする。
 母さんの思い。
 オレがキッドをやめて…全て解決して…オヤジに言いたかったこと全部言いに行ったんだ…。
「快斗?」
 視線を上げたオレに青子は不思議そうに声を掛ける。
「大丈夫だよ…オレは」
 オレの言葉に青子はニッコリと微笑む。
「快斗、今日お父さんいないから泊まっていっても良いよね。今日は青子が快斗の側にいてあげるからね」

 青子が側にいる。
 青子のぬくもりを感じられる今は幸せなんだろうな。
 青子はオヤジに何を願ったんだろう。
 オレが願うのは二つしかない。
 一つはオレなんかの側にいる青子が幸せであるように。
 もう一つはオレが青子を守れるように。
 新一や、平ちゃんは自分が大切なものを守れる力がある。
 けれど、オレにあるのはマジックのみ。
 あと、泥棒の才能。
 泥棒の才能なんていらない。
 何かないか?
 青子を守るために必要なちから……。

*あとがき*
らいおんハート第1弾。快斗編。快斗の将来の夢は何だろうと少しだけ悩んだ。


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