Let it Be ホントの所。

 誰だったんだろうあの女の子。
 その日、わたしは学校についてからずっと考えていた。
 昨日の帰り道、新一の隣にいた女の子。
 新一は嬉しそうな顔でその子の事見つめてた。
 ……帝丹中の制服来てたから…帝丹中のコだと思うけど……ホントに誰だったんだろう。
 はぁなんかやだ…。
「オハヨ、蘭、今日は部活だっけ?」
「オハヨォ園子」
「なんか、元気ないんじゃないの?あれ?だんなは」
「だんなって……」
「新一君に決まってんじゃない。サッカー部だって今日、朝練あったんでしょ?」
「知らない。わたし、今日いつもより早くに出たから……」
 園子の言葉に当たり障りのないように答える。
「熱心ねぇ。この前、空手の大会で優勝したアンタが」
「…まぁね…」
 そう、わたしはこの前あった空手の大会で優勝した。
 優勝できるとは思ってなかったけれど、優勝することが出来て嬉しかった。
 中学1年から空手を始めたにしては、上達したわよね。
 まぁ、新一が練習つきあってくれてたりしたから…っっっっっっっっ。
 あぁ、もう頭に来る。
 もう誰なのよ、あの女の子はっ。
 気にしたって無理よね。
 わたし、新一とつきあってるわけじゃないもの。
 片思い…って辛いなぁ。
 あの女の子だれなんて聞けない。
「オハヨ」
 新一が教室に入ってきた。
「蘭、オメェ、今日なんで先に行ったんだよ」
「新一には関係ないよ」
「関係ないって…迎えに行ったらおっちゃんにもう出たって言われたんだぞ」
「だからっ………新一には関係ないよ。ちょっと…朝練したかっただけよ」
 もう、聞かないでよぉ。
 聞いたら、朝早く出た意味ないじゃないのよっ。
 昨日一緒にいた女の子誰って聞きたくないから、いつもより早く出たのに。
 つきあってもないのに、ヤキモチ妬いてるなんて変だって思われるのやなのよっ。
 そうこうしている間に授業が始まる。
 幸い、新一とわたしの席は離れていて、授業中にこっそりとか、休み時間になった途端に聞かれると言う心配はなかった。
 でも、やっぱり気になる。
 聞きたいけど、聞けない。
 いつも…いつも…これからもずっと一緒にいられると思ったんだけどな……。
 あの子…彼女なのかな…。
 彼女出来たら彼女出来たぐらい教えてくれたって良いと思わない?????
 はぁ……新一のバカァっっ。
「らーん。何あんたずーっとため息ばっかりついてるのよっ」
 お昼休み、ご飯の最中に園子が聞いてくる。
「別に…ずっとついてるわけじゃないよ」
「そう?で、なにがあったのよ。言ってごらん?この、園子様が聞いてあげるから」
「大丈夫、別に何もないよ」
 そう、園子に答えたときだった。
 園子からの返事のかわりに聞こえてきたのは別の声。
「何もないのに、ため息なんて普通つくかよ。」
「しっ新一っ。勝手に人の会話に入ってこないでよっ」
 そう、新一。
 いつの間にか、わたしと園子が食べている席に新一がいたのだ。
「わたしが、呼んだのよ。アンタずーっと新一君のこと避けてるでしょう。これで何もないなんて言わせないわよっ」
「…新一には…関係ないよっ」
「ハァ、蘭、ホントのこと言いなさいよ。新一君、心配してるわよっ」
「新一がわたしの心配なんてする訳ないじゃない」
「あのなぁ、するに決まってんだろっ」
「わたしより、昨日一緒に歩いていた女の子のこと心配しなさいよっ。新一のバカっっっ」
 そう、言い捨ててわたしは教室を飛びだしたのだった。

「新一のバカっっ」
 そう言い捨てて蘭は教室を飛びだした。
「どういうこと?」
 あっけにとられながらも園子はオレに聞いてくる。
「…オレだって知りてぇよ…」
 昨日、一緒に歩いてた女の子…?
「工藤先輩、毛利先輩にあげたんですか?」
「あ、設楽」
 1年の設楽が教室にやってきた。
「何しに来たんだ?」
「何しにってスカウトですよ。バスケット部に先輩を」
 そう、彼女はバスケ部のマネージャー。
 メンバーの一人が怪我をしてしまったために、オレに助っ人を頼みに来たのだ。
 オレはバスケットは出来ないと言ったのだが、球技大会のときのオレのシュートをみていたらしい。
「デ、彼女が昨日新一君と一緒に歩いていた女の子?」
 園子の言葉に設楽は驚く。
「えっ?毛利先輩みてたんですか?」
「……みたい」
「うっそぉ……。工藤先輩、さっさとそれあげてきたほうが良いですよ」
 そう言って彼女はオレのうしろに隠してあるものを指さす。
「ん?何?」
「これ、工藤先輩から毛利先輩へのプレゼントだそうです」
「プレゼントぉ?蘭の誕生日はとっくに過ぎてるのに?何あげるの?」
 興味津々に聞いてくる園子。
 はぐらかしても、追及してきそうだったので、オレは素直に答える。
「この前の空手の大会の優勝のお祝いだよ」
「だったら、さっさとあげてこい、工藤新一っ」
「わーってるよっ」
「ガンバって下さいねっ」
 何故か二人に応援されながらオレは教室を出て蘭を探しに向かった。

「新一のバカっっ」
 って言ってみたって…新一はなんでバカッて言われてるか絶対分かってないわよ。
 はぁ……やだぁ。
 ヤキモチなんて妬きたくないのに。
 ヤキモチ妬いてるなんて思われたくないのに。
 もう、全部新一が悪いんだからねっ。
 ずっと一緒にいてくれるなんて言ってくれちゃうから、期待しちゃうんじゃないのよっ。
 そこのところ分かってるの???
「悪かったなバカで」
 不機嫌そうな声が後ろから聞こえる。
「な、何でいるのよっ新一っ」
「なんでって、オメェが教室出たから追っかけてきたに決まってんだろ。ったく妙な誤解しやがって」
「みょ、妙な誤解って何よ。わたし、何もしてないわよっ」
「してるだろぉ。ったく……ほら、これやるよ」
 新一はぶっきらぼうに紙袋をわたしにつきだす。
「な、何よこれ…」
「オメェの、空手の大会で優勝したおまえへのプレゼントだ。ありがたくうけとりなっ」
 そう言って微笑む。
「なによぉ、えらそうに」
「昨日、オメェがみたのはバスケ部のマネージャーの設楽だよ。このプレゼント買いにいく途中で捕まってさ。助っ人やってくれって煩くって参ったよ」
 本当に参ってる顔で、新一は言う。
 そう言えば、この頃愚痴ってたの思いだした。
「あけてみろよ。多分、オメェが気に入ると思うやつだからさ。まぁ、たいしたもんじゃねぇけどな」
 新一の言葉にわたしは包みを開けてみる。
「うわぁ、うわぁ。うそぉ、新一、いいの?」
「あったりめぇだろ。大会で優勝したプレゼントなんだからさ」
「ありがとう、スゴク嬉しい。これ、ほしかったんだぁ」
「だと思ったよ」
 新一はそう言って微笑む。
 すっごく嬉しい。
 優勝したらプレゼントくれるって言ってたけど、ホントにもらえるとは思わなかったんだよね。
「ありがとう、新一」
「気にすんなよ。誤解、すんなよ」
 新一はじっとわたしを見つめて言う。
 誤解するなよって……それってどういう意味?
 なんか…新一もわたしのこと好きだって期待しちゃって良いわけ?
 たまに分からなくなる。
 けど、まぁ、良いよね。
「蘭、返事は」
「はーい」

*あとがき*
新蘭は中学生。
蘭のヤキモチへん。
設楽さん、工藤君に気がある女の子にするはずだったんだけど、バスケ部のマネージャーに変更。
タイトルはSMAPから。


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