これから先の全ての事柄について 君に逢う為に生まれた〜We Love The Earth〜

 服部達を送りだし、ようやくオレの家には平穏な時間が戻って来た。
「楽しかったね。服部君と和葉ちゃんが来て」
「まぁな」
 蘭の言葉に素直に賛同する。
 楽しくなかったって言えば嘘になる。
 ひさしぶりに高校生らしい遊びと言うかなんて言うんだ『青春』なんて言ったら恥ずかしいけど、まるでそんな感じが送れた気がする。
 そこら辺は大阪二人組に感謝かな?
「ねぇ、新一。学校はどうするの?」
「一応、明日っから行くよ。そうすると補習と追試の日々が待ってるんだろうけどな。まぁ、オレって成績はいいから何とかなるだろうけど」
「自慢?」
「な、何言ってんだよぉ」
「そんなこと言ってる人にはせっかく持ってきた今までの授業のノートのコピー見せてあげません」
 そう言って蘭は手に持っているノートのコピーを捨てようとする。
 ま、待てよぉ!!!
「冗談よ、ハイ。これが新一が休学してたときのノートのコピー」
 蘭は微笑んでノートのコピーを貸してくれる。
「わりぃな、蘭」
「なーに言ってるのよ名探偵さん。前だって休むたびにノート貸してたじゃないの」
「そうだったな…」
 蘭との穏やかな時間が流れる。
 蘭と一緒にいられる時間が一番いいな、やっぱり。
「蘭……」
「何?」
 蘭の顔に手を添えたときだった。
「ピンポーーーーーーーーーーーーーーーーン」
 チャイムが鳴る。
 誰だよぉ!!!
 窓から見ると見たことのあるかっぷくのいい男性と他数名が見える。
「目暮警部じゃない?」
「…そうみたいだ」
「事件じゃないよね」
 蘭が不安そうにオレを見る。
「バーロ、そんなわけねーだろ。目暮警部には連絡してねーって言ったじゃん」
「まぁ、そうだけど」
「でも、なんだろな」
 そう言いながらオレは玄関のところに向かい、目暮警部達を招き入れる。
「工藤君、久しぶりだねぇ」
「お久しぶりです、目暮警部。今日はどうなさったんですか?」
「阿笠博士から連絡が合ったんだよ、君が戻って来たって言うことをね」
 ふと目暮警部の後ろに目をやると佐藤美和子刑事と高木ワタル刑事がすまなそうにオレを見ている。
 そう言うわけ…か。
 佐藤刑事と高木刑事はオレが内調(内閣調査室)に極秘に連れていかれたときに居たのだ。
 本来ならば、捜査一課の課長である目暮警部がオレを内調に連れていくものだが、組織の事件はトップクラスの問題のために極秘で行わなければならず、現場の陣頭指揮をとる目暮警部が動くと捜査一課強行犯3係全体が動くはめになる。
 そうすると、いろいろと問題が起こることになるために、捜査一課の刑事である高木刑事と佐藤刑事の二人が極秘に任命されたらしい(一応目暮警部は概要は聞いている)。
「いやぁ、また君の名推理が見れると思うと楽しみだよ」
 と、目暮警部はリビングのソファに座って言う。
「ハハハ、いつでもこの名探偵工藤新一にお任せを……って言いたいところなんですが、
今までずっと休学していまして学校の方の出席日数がどうなるかちょっと分からないんです。やはり学校は止めるわけには行きませんし……どうしてもと言う難事件以外はちょっと………」
「そうかね……」
「すいません。で、ここで提案なんですが警視庁でメール(インターネットの)はすでに使用してますよね」
「警部は苦手みたいなんで主にボクや佐藤刑事とか若手の刑事は使ってますけどね」
 と高木刑事は言う。
「高木君……。で、どうするんだね」
「ハイ、困ったことが合ったらメールで教えていただければ多少なりとも現場に行かなくてもアドバイスが出来ると思うんです。まぁ、メールチェックするのは夜になってしまいますけど」
 そう、オレが考えた苦肉の策。
 事件現場に行きたい。
 でも、学校のこともあるし、蘭のこともある。
 当分の間は控えないと……と思ってこの案を昨夜、服部と考え出したのだ。
 服部はすでにこの方法をとっており、面白そうだ!!!と思ったら現場に行ってしまうという。
 それじゃあんまり意味ねーんじゃ…と言ったら、
「そんなことあるか、オレの場合は面白そうな事件に首突っ込むだけやけど、お前の場合ちゃうやん。目暮警部に連れてかれるんやろ?それやったら面白そうな事件を来たメールん中から選択してや、それでこれ面白そうや!って思ったやつだけ首突っ込んだらえーんとちゃう?」
 そう言う問題じゃねーと思うんだけど……。
「ともかくや、メールは使えるで」
 と言う服部の説得を受け、この案を考えついたのだ。
「……そうだな。君はまだ学生だったんだな…。まぁとんでもない事件の時はよろしく頼むよ工藤君」
「ハイ、その時はこの名探偵工藤新一におまかせを」
 その時、蘭がコーヒーを持って入ってくる。
「蘭君、すまないねぇ、せっかくのところを」
「な、何ですか。目暮警部急に」
「いやあハハハハ」
 目暮警部は笑って誤魔化す。
 ハハハじゃねーよ。
「工藤君、ちょっといいかな」
 そう言って高木刑事がオレを呼ぶ。
 蘭は佐藤刑事と目暮警部と談笑中なので気付かれていない。
「工藤君、すまないね今日は」
「いいえ、いいんですよ。目暮警部は詳しいことは知らないんですから」
「ならいいんだけど、あ、後でちょっと迎えに行くから」
 迎え???
 なんだそれは。
「君の身体のことだよ。一応警察病院の方で見てもらうことになるだろうから」
 ……来たか……。
 そう思った。
 APTX4869の後遺症。
 と言うものが多分あるんだろう。
 きっと、コナンになって工藤新一に戻って平常にいられるわけがない。
 APTX4869とその解毒剤を飲んだ時にかかる身体への負荷は相当なものがあった。
 分かってるつもりだった。
 ただ、戻れたことがうれしくてその考えをどこかに追いやっていたのも事実だ。
「工藤君?どうしたんだい?」
「何でもないです。分かりました。高木刑事、その時は連絡下さい」
 そう高木刑事に告げる。
「新一、どうしたの?」
「何が?」
 目暮警部達が帰った後に、蘭が声を掛ける。
「なんか、考え事してる顔だよ」
「そう見えた?」
「ウン」
 蘭は鋭い。
 オレの様子で何をしているのかだいたいあたる。
「何考えてるの?」
「これからのことだよ」
 オレの言葉に蘭は首をかしげる。
「これからのこと。オレのこと、蘭のこと、学校のこと、事件のこと、いろいろかな」
「わたしのことって?」
 突っ込まれたくないところを蘭は突っ込んでくる。
「だから、色々だって言う意味だよ」
 そう言って誤魔化す。
「じゃあ、新一わたし帰るね。明日迎えに来るからね」
 そう言って蘭は帰る。
 蘭のこと、蘭とどれだけ一緒にいられるのか。
 色々考えてしまった。
 そう、戻ってから考えていなかった分……。
 不意に、寂しくなってしまった。
 蘭が来る前は一人でいられたのに、帰ってしまってから急に寂しさを感じる。
 これから、どうなるんだろう。
 変わらないでいられるのだろうか。
 蘭の側に。

*あとがき*
〜これから先のすべての事柄について〜は序章見たいなモノ。
次から完ぺきに本編が始まり。


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