こんな時間 子供たちは夜の住人〜WE LOVE THE EARTH〜

「快斗寝不足?」
「青子だって知ってるだろ?平からの電話のせいだよ」
 快斗の言葉に青子は頷く。
 今日は卒業式。
 平次君からの電話は、合格の知らせ。
 合格発表、青子と快斗は見に行った。
「大丈夫だろ?」
 って新一君は言ってたけど、やっぱり不安で。
 でも、そんな不安なんて吹き飛ばすかのように青子と快斗、平次君と和葉ちゃんの受験番号はちゃんとあった。
 良かったね。
 って言っててお祝いして朝一で連絡するって言うこと忘れてて、二人が知ったのは大学からの合格通知を見てからだった。
 だから、何で連絡してくれなかったんだって平次君は気がつけば電話してくる。
 なんか、かけるの楽しんでるみたいだって快斗は言ってる。
 とりあえず、今日は卒業式。
 答辞は白馬君が読んでた。
 カッコイイねって快斗に言ったらなんか変な顔しておこってたっけ。
 思いだして笑ってしまう。
「青子、どうしたの?」
 その様子を恵子は見てた見たいで青子に聞いてくる。
 恥ずかしくって誤魔化す必要もないんだけど、何となく誤魔化してしまう。
「えっ何でもないよ。それより、恵子、快斗知らない?」
「快斗君だったらさっき下級生の女の子に告白されてるの見たよ」
「それホント恵子?」
 青子の言葉に恵子は頷く。
 相変わらず…もててるんだ…快斗。
「なんて言ったのかなぁ」
「そんなの断ってるに決まってるじゃない。青子何考えてるの?」
「何って……」
 不安なんだよ…快斗、かっこいいし、キザだし…。
 女の子にもてるの当然何だもん。
「もう、何深刻な顔してるのよっ。青子は黒羽君と付き合ってるんでしょ?だったら不安になる事ないんじゃない?」
「そうかな」
 青子の言葉に恵子は頷く。
「中森さん、ちょっと聞きたいことあるけど…いいかしら?」
 会話してる青子達のところに紅子ちゃんがやってきた。
「どうしたの?紅子ちゃん」
「黒羽君、どこにいるかご存知?」
「紅子ちゃんも快斗のこと探してるんだ…。青子も探してるんだよね。全く快斗ってばどこに行っちゃったんだろぉ」
 そう言って青子達は考える。
「青子さんっ」
 考えてるところに、白馬君がやって来た。
 もしかして白馬君も快斗のこと捜してるのかな?
「ちょうどよかった。青子さん、お話があるんですがよろしいですか?」
「何?白馬君、青子に話って」
 そう言って問い掛ける青子に白馬君は少しだけ照れた様子を見せる。
「どうしたの?」
「実は……」
 その時だった…。
 影が外を走る。
「何?」
 次の瞬間、向かいの校舎の屋上に…
「怪盗キッドっっ」
 そう怪盗キッドがいたのだ。
 なっ何やってるのよぉ快斗ってばぁ。
「怪盗キッド、今日こそ捕まえて見せますよ」
「キッドが高校に何のようなのかしら?」
「クスっ」
 屋上の出入り口の上にいる怪盗キッドはどこを見てるの?
 もしかして…青子の方?
 みんなの口からこぼれる言葉達を遠くで聞きながら青子は突然の事に呆気に取られていた。
「青子?どうしたの?いつもはキッドの姿見た途端おこる癖に」
「えっあっそうだよ。怪盗キッド捕まえに行かなくっちゃ」
 そう言って恵子の言葉に青子は我に返り、青子のいつものキッドへ対する態度を見せる。
「待って下さい、レディにそんなことさせるわけには行きませんよ」
「大丈夫だよ。青子のお父さんはキッド専属の刑事なんだから。青子だって怪盗キッドのこと捕まえられるよっ」
 そう言ってキッドの所に行こうとする白馬君を押しとめ、屋上へと向かった。

「キッドっ何してるの?!みんな見てるよっ」
 青子の言葉にキッドは上からスタッと飛び降りる。
「お待ちしてましたよ、青子さん」
 そう言ってキッドはニッコリと微笑む。
「ココだと、あちらから丸見えですね」
 と鮮やかに微笑んでキッドは青子を促し、建物の影に隠れる。
「ここで…何してたの?」
「……青子の事待ってた」
 そう言って快斗はキッドの扮装を解き、制服姿に戻る。
「青子のことって…だったら教室に来れば良かったじゃないの…青子…快斗のこと捜してたんだよ」
 それから、紅子ちゃんも。
 それから、それから、青子だけじゃなくって他の子も快斗のこと捜してたのに。
「んー…青子、抱き締めていい?」
 突然の快斗の申し出。
 学校で抱き締められたことなんて無いから思いっきり快斗に叫んでしまった。
「はぁ?いっいきなり何言うのかなぁ。快斗ってば。普通そう言うこと言わないよっ。それに学校だよっ。誰かに見られたらどうするの?青子、恥ずかしいんだけどっ」
「いーじゃん、今日で卒業なんだしさっ。で、返事は?」
 突然のことに戸惑う青子に快斗は期待満面の笑顔で聞いてくる。
 そんな顔でみられたら嫌だなんて言えないじゃないのぉ。
「しょうがないなぁ…」
 しぶしぶ…青子は快斗の申し出に答える。
 恥ずかしいよぉ。
 普通、学校ではこういうことしないんだからねっ。
「青子っ」
「なによぉ」
「何でもねぇよ」
 そう言って青子のことを抱き締める快斗はすごく子供っぽい。
 嬉しそうに快斗の声が笑ってる。
「快斗ってばお子様だよねっ」
「ひっでーなぁ。青子の方がお子様だろっ」
「青子、お子様じゃないもんっ」
 そう言って快斗から離れようとしたけど…快斗は離してくれない。
「…かい…と?」
「青子は……じゃねぇの?」
 耳元で囁かれても聞こえないぐらいでも青子にだけ聞こえた言葉。
「うん………。青子も…快斗と一緒だよ。でも、快斗がいるから…」
 青子の言葉に快斗はニッコリと笑う。
 快斗の笑顔…。
 うっ、この快斗の笑顔に青子、一番弱いんだよぉ。
「何恥ずかしそうにうつむいてんだ?」
「なっ何でもないよぉ。快斗のバカっ」
「バカはねぇだろ」
 おこってるのか快斗の声が不機嫌になってるから不安になって見上げてみたら快斗ってば笑ってた。
 むー、青子、快斗にバカにされてる。
「なーに怒ってんだよ」
「怒ってないよ」
「怒ってるだろ?」
「怒ってませんっ」
 そう言って快斗から顔を背けようとしたときその顔を快斗に押さえられる。
 吸い込まれそうになった快斗の…闇色の瞳に…青子は一瞬我を忘れてしまった。
 青子は…快斗の瞳の色って好き。
 闇色…ミッドナイトブルーのその色は快斗によく似合う。
 そんなこと恥ずかしくって快斗には絶対口が裂けても言えないけど…。
「で、青子怒ってる?」
 そう言ってニッコリと微笑む快斗に青子が勝てるはずない。
 快斗分かってやってる。
 悔しい。
「もう、怒ってないよ」
 そう言って微笑んだ青子の額につぶったまぶたに頬に…キスをする。
「くすぐったい?」
 くすぐったそうにしている青子に快斗は言う。
「…青子は…恥ずかしいのっ。学校だし……」
「お子様だな?青子ってば」
「快斗、快斗だって人のこと言えないでしょっ」
 そう言った青子に快斗はキスをする。
 軽く口唇を重ねた後一瞬微笑んで深い甘やかなキスに変わる。
「快斗…学校だよ」
 口唇を離した後の青子の言葉に快斗は脱力する。
 な、なんでかなぁ。
 青子言ってることって正論だよね。
「いいじゃん…学校でキスしたって。オレだけじゃねぇもん」
 オレだけじゃないって?
「新一だってやってるし、平だってやってるって言ったんだぜ。オレだけじゃねぇもん」
「そう言って開き直らないの。新一君はお芝居でやったんでしょ?平次君だって多分なんかそう言うイベントごとに巻き込まれてキスすることになったんじゃないの?青子聞いてないよ、和葉ちゃんと蘭ちゃんから」
「普通はいわねぇの」
「言うよ」
「いわねぇっつーの。青子、オメェだったら言うか?」
「えっ」
 快斗の言葉に思わず詰まってしまった。
「いわねぇだろ?だからあいつらもやってんの?ったく…だから青子はお子様だって言うんだよ」
 そう言って快斗は青子を抱き締めながら座り込む。
 そんな快斗に預けるように青子はよりかかる。
 こんなこと…誰か来て見られたりでもしたら…恥ずかしいな。
 でも快斗の腕から抜け出たくない…。
「青子…お子様じゃないもん」
「お子様だよ」
 ふてくされて言った青子の言葉に快斗は静かに言う。
 降り注ぐ日差しが暖かくて…快斗の腕の中も暖かくって…。
 こうしてるのも良いのかななんて思っちゃって…。
「快斗…こんなところでのんびりしてたら学校しまっちゃうよ」
 って言ったら、
「バーロォ。オレを誰だと思ってんだよ。鍵ぐらい簡単に開けられます。防犯ベルだってお手の物」
 だって。
 ほーんと快斗ったら何考えてんのよ。
「あぁ、いけないんだぁ。そんなことしたらお父さんに言っちゃうんだから」
「待った、青子!!!それだけは、勘弁して」
 そう言って焦った快斗がすごくおもしろくって笑ってしまった。
「青子っ笑うなっ」
「だっておもしろいんだもん」
「くっそー」
 快斗は青子の言葉にふてくされる。
「ごめんね、快斗。冗談だよっ」
「心臓にわりーよ」
 そう言って快斗はニッコリと微笑んだ。
 そして、もう少しだけのんびりした後、青子と快斗は学校をでる。
 荷物をとりに教室に戻ったとき先生に荷物があったから閉められなかったって怒られたけど、それって青子のせいじゃないよね。

*あとがき*
快斗×青子の卒業式話。


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