君といるために 君に逢う為に生まれた〜We Love The Earth〜

 今日は新一の家にお泊まり日。
 もちろんお父さんには内緒。
 わたしが新一の家にお泊まりする日は決まって週末か祝祭日の前の夜。
 お父さんにはね、園子の家に泊まりに行ってることになってる。
 毎週なので…お父さんにはばれてるかも知れない…………。
 今のところ何にも言われてないので大丈夫なのかな?
 事件で呼びだされること今のところないから新一と一緒にいられるのが凄くうれしい。
 ただ一つ問題なのが
「……またオメーかよ。園子。何で毎度毎度電話してくるんだ?」
 園子がわたしがちゃんと新一の家にいるか確認の電話を入れること…。
「決まってるじゃない。蘭がいるかの確認よ。あら、もしかしてわたしは邪魔、だったわけ?」
「あったりめーだろ」
 で、その電話で新一が不機嫌になること。
 電話掛かってくるのは別にいいんだけど、……新一が不機嫌になるのは嫌なんだよね。
 分かってるのかな、園子は。
 まぁ、新一が帰ってきてから園子とほとんど遊びに行ってないのも園子が新一の家に毎度のごとく電話してくる理由でもあるんだけれど……。
「ったく、なんだよ。園子のやつ」
「しょうがないよ、新一が戻ってから園子とほとんど遊びに行ってないもん…」
「なーんだよ。それじゃあ、オレが悪いみてーじゃん」
「誰もそんなこと言ってないでしょ。園子も寂しいんだよ…京極さん帰ってこないから」
 園子の姿は前のわたしをみている感じだった。
 その人のことを思っていると凄く幸せなんだけれど……でもそばにいてもらえないのは凄くつらくて………。
 逢いたいのに逢えないなんて悲しすぎる。
「蘭……何うつむいてんだよ」
 新一がわたしを後ろから抱き締めるように座る。
「だって……」
 その後が言えない……。
 思いだすのにはつらくて。
 新一は側にいたとしても、わたしは新一が側にいたと思っていない。
 んん、違う。
 そう思わされていたんだから……。
「だってじゃねーだろ。今、側にいるオレはなんだよ?開き直るつもりはねーけど、オレだって……」
「分かってる。ごめんね新一」
「いいんだよ」

「園子も寂しいんだよ、京極さん帰ってこないから…」
 蘭は園子の事を我が身のことのように心配する。
 仕方ない……。
 蘭がずーっと今まで味わってきた事なんだから。
 分かってる。
 オレだってつらかった。
 いいわけにしかならない、開き直りにしかならない。
 でも、蘭の側にいたかった。
 蘭の側を離れたくなかった。
 この気持ちだけは本物なんだよ。
 ずっとそばにいる。
 ずっと側にいたい。
 呪文のように頭の中を駆け巡る。
 それがかなって欲しい。
 それをかなえて欲しい…。

 新一が、学校で高木刑事に呼ばれた。
 表向きは、事件。
 だけど、このところ新一は事件があっても出向くことはない。
 それは、新一が言ってたことだし、それに何よりも事件があった場合はわたしに言うはずだ(新一は事件だったら言うよって言ってたし)。
 じゃあ、なんなんだろう……。
「蘭、どうしたの?不安そうな顔、しちゃって」
 わたしが心配そうに新一の後ろ姿を見送っていた様子を園子に見られる。
「なんでも…ないよ、園子」
「ホント?わたしには何でもないって言うふうには見えないんだけど……」
「ホントに何でもないから、心配しないで」
 強がって園子には言ってしまう。
 園子は結構鋭いから感づいてしまうのかも知れないけれど……。
 でも、新一が高木刑事に呼ばれた理由ってなんだろう。

 高木刑事に誘導され、車の方に移動する。
 そこには佐藤刑事も一緒にいた。
 呼びだされた理由はだいたいわかっている。
 検査結果……だろうな。
 宮野が妙に晴れやかな顔をしていたから、多分、宮野は大丈夫だったんだろう。
 オレはどうなんだ?
 客観的にみて、宮野より、オレの方がAPTX4869を飲んだのは前で子供で合った時期が長いし、身体的にも、白乾児を飲んで戻ったり、宮野が作った解毒剤を飲んで戻ったりして結構身体に負担がかかっている。
 ……悪い結果……、最悪の結果と言うのも考えておいたほうがいいんだろうか……。
 出来ればそれはしたくない。
 蘭を悲しませないと約束したばっかりだから…。
「……佐藤さん、高木さん、今日来たのは検査結果の事…ですよね」
「えぇ、そうよ。検査結果は一応聞いたけど、一応あなた本人が聞いたほうがいいと思ってね、病院に行きましょう」
 オレの質問に佐藤刑事は軽くと答える。
 ん?
 今の口ぶりだと検査結果は良好だったと期待してもいいのかな???
「検査結果は一応良好よ」
「一応ですか……」
「えぇ、もう子供に戻ることはないという意味でね」
「そうですか……でも一応っていうのは……」
 オレは安心を感じながら二人に聞く。
「…………………非常に言いにくいことなんだけれどね………」
 佐藤さんがオレの言葉に言いにくそうにしている。
「な、なんですか?言いにくいことって………」
「高木君、言ってよ」
「え、えぇ僕がですか?最初佐藤さんが言うって言ってたじゃないですか」
 突然言い合いを始める。
 …ってオイオイオイオイ…ちょっとまずい状況じゃねーのか?
 これって……。
「や、やっぱり病院の先生が詳しいことを話してくれるから、先生に聞いて…」
「な、なんですか………」
 詳しいことは聞いてって……。
 どういうことだよ。
 不安になってしまった。
「遺伝子に損傷があるんだよ」
 遺伝子の損傷????????
 病院の医務室でオレの担当の先生に言われる。
「そんな深刻な問題ではないんだがね。将来結婚して子供が出来た場合に問題が今のままだと起きるんだよ」
 ………マジかよ……。
 ……そっか。
 そうだよな……。
「……だが不安になることは別段ないよ。ここ数年で遺伝子の研究は急速に進んでいる。数年後かにはその損傷も直る場合もある」
 先生はオレの不安を見透かすように淡々と話していく。
「じゃあ、悲観視することはないんですね」
「もちろんだとも、君の場合は特殊なケースが伴っている。だからトップクラスの医療も受けることが可能だ」
 ほっとする。
 ……どうになるかまだ分かってない。
「工藤君、とりあえず通院はもうしなくて大丈夫だよ一応定期検診って言うのが月一回あるけれどね」
「ありがとうございます」
「ただ、一度発作が起るかも知れないから…気をつけて」
 ……オイオイ。
 大丈夫って言っておいて、それはねーだろ……。
「工藤君、大丈夫?」
 待合室に戻って来たオレに佐藤さんが声を掛ける。
「一応大丈夫です」
「それは良かったね。でも、工藤君は一応高校生なんだから軽はずみな行動は止めたほうがいいですよ」
 と高木さんに言われる。
 ど、どういう意味だよ、それは。
 その事にオレは何も言えず、帰路についたのだ。

*あとがき*
前編後編の前編。後編は君と居るために乗り越えること。


novel top