Nights of the Knife 君の元に帰るために

 ある日突然オレはパトカーにら致された。
 オレは服部平次。
 大阪府警本部長の服部平蔵の息子で、西の名探偵って言われとる。
 大阪では有名な探偵なんやで。
 せやけど、…全国区…ではないな。
 全国区になるにはとんでもない強敵をたおさなアカン。
 そいつは東の名探偵、工藤新一。
 そう、高校生探偵(オレもそうや!!)、日本警察の救世主(オレもなれんで!)平成のホームズ(あいにくホームズにはなりとぉないのぉ。オレが好きなんはえらりーくぃーんやし…)と呼ばれてるオレの大親友や。
「平次、親友や思うとんのは平次だけやと思うよ?」
 そう言うこいつはオレの幼なじみで遠山和葉や。
 えぇやんか、オレが勝手に思うとるだけなら別にえぇやろ。
「工藤君は、平次なんか眼中にないよって…。せやけど、工藤君てめっちゃカッコえぇよねぇ。蘭ちゃんがうらやましいわ。ホンマに。なぁ、平次、工藤君ってどんなん?」
 ……なんや腹たつわ。
「和葉、でてくんなや。工藤の話やったら後でしたるから待っとれ」
「せやけどいっつも平次は工藤工藤言うとるやんか、聞いたってええやろ」
「今はアカン。今は忙しいんや!!後でにせい」
「ふぅ、しゃあないなぁ」
 そう言って和葉は消える。
 ったく何しにでてきよったんやあいつは、オレのモノローグに勝手に出てくんなや。
 閑話休題。
 ともかくオレはある日パトカーにら致された。
 学校に向かってる最中にや。
 その日和葉は日直や言うて先に学校にいっとった。
 ホンマやったらオレもはよ起きて、一緒にいくんやけど……。
 まあ、寝坊したんやな。
 道歩いとったらいきなり知り合いの刑事に話しかけられたんや。
「オォ、平ちゃん、和葉ちゃんはどないしたんや」
「大滝ハン、何で来ないなとこにおんねん。しかもパトカーで」
「いやな、ちょっと人連れてかなあかんねん」
「連行やったら覆面でもえぇんと違うか?」
「緊急事態や。ん」
 府警本部の大滝ハンがパトカーに一緒にのってる他の刑事に合図した途端オレはパトカーの中に引きずり込まれた。
「な、な、何やねん。オレ、何もしてへんで」
「すまんな、本部長の命令なんや。府警本部に頼む」
 と……パトカーにら致されたオレは、府警本部に連れていかれたんや。
 大阪府警本部最上階・本部長室隣応接室
 オヤジの部屋の隣の応接室にオレは連れてこられる。
 オレが…何かをやったいうわけやない。
 それはじっとパトカーの中で前を見据えとった大滝ハンの表情からでも見て取れた。
 それやったら…何や?
 思い当たるとしたら一つしかない。
 …工藤新一…の事や。
 帰る際、工藤はオレに言った。
「お前のオヤジさんに話したからこの件は動き始める。どう…転ぶかわからねぇな。もしかすると…服部お前と話できるのもこれが最後かもしれねぇな」
 そう言って工藤は新幹線にのって東京に帰っていった。
 その最後の言葉に納得がいかんかったオレは何度も工藤の携帯に電話はしたけどな。
 あぁ、もちろん本人は出たで。
 ともかくや、工藤が追っかけとる組織の事件は確実に動き出した。
 そう見てもおかしくないな。
 応接室に入るとオトンと遠山のおっちゃんそして知らん男が一人おった。
 どっかで見たことのある…と言うよりも誰かの面影を思いだす男やった。
 口ひげがあるからよう思いだされへんかったんやけど…そう、工藤に似とった。
「君が、服部平次君だね」
 観察するように見とるオレにその男は話しかける。
 柔和な表情そしてその口ぶり。
 人に警戒を与えない物腰、せやけど、どこにも隙があらへんかった。
「私は工藤優作。江戸川コナン…いや、工藤新一の父親だ」
 工藤の父親?
「とすると、あんたがあの有名な推理小説家の工藤優作なんか?」
 オレの言葉にその男、工藤のオヤジさんはうなずく。
 ホンマそっくりやで、工藤に。
「平次、そんなとこつったっとらんで…座りや。彼が平次に話したいことがある言うてんねんから」
 オヤジの言葉にオレはソファに座る。
「服部君、君にきちんと話して置こうと思うんだ。今、新一が置かれている状況を。そして、これからのことを……」
 と工藤のオヤジさんはオトンや遠山のおっちゃんに席を外すよう頼む。
 そしてオレと二人っきりになったころ……オレに話始めた。
「新一は今、蘭くんの側にいる。離れない…そう言ってな。新一がおっている組織は彼の身近にまで迫っているのにだ。新一がおっていた組織は…世界的犯罪組織でインターポールが全世界の警察組織にその実体を掴むよう指示していた組織なんだ。日本では都道府県本部の本部長および刑事部長(警視庁のみ警視総監、刑事部長、各捜査課の課長まで)とそして内閣調査室がその調査にあたっているんだ」
 そのスケールの大きさにオレは工藤が心配になった。
「おっちゃん、工藤は平気なんか?工藤は…どうなるんです?」
「今のところはなんとも言えない。ただ、まだ安全と言っておこうか。蘭君の側には今二人護衛がついている。一人は彼女の父親である毛利小五郎さん。彼は新一が江戸川コナンだったということを気付いていたよ。そして事件と偽って彼女の護衛に着いている警視庁捜査一課の佐藤美和子刑事だ…。面識は…あるかな?」
「そんなにはないなぁ…せやけど…蘭ねーちゃんの護衛やったら、目暮警部でもえぇんとちゃいますか?」
「目暮警部はこの事を知らないのだよ…。新一が…小さくなっていることをね。目暮警部が動いたら捜査一課強行犯3係全体が動くことになる。それは避けたいことなんだよ」
「……他の警察で工藤の正体を知っとる人はおるんですか?」
「新一が小さくなっていることを警察関連で知っているのは君のお父さんと遠山刑事部長、白馬警視総監(現段階白馬っちのお父さんを警視総監にします)小田切刑事部長(出てくるのか?原作で!!!)と高木ワタル刑事と佐藤美和子刑事のみ…。高木刑事と佐藤刑事は新一に近かった刑事だったんでね。彼等二人は表向きは捜査一課強行犯3係の刑事となっているが17日付けで内調所属の刑事になっている。つまり内閣調査室からの出向というかたちだね」
 工藤のオヤジさんはそこで一旦止め目線を落とす。
「新一は…身近な人間の護衛を警察に頼んだ。蘭君、小五郎君、蘭君の母親、阿笠博士、阿笠博士が預かっている少女、新一…江戸川コナンといつも遊んでいる少年探偵団、鈴木財閥の令嬢、園子君、そして……服部君と君の幼なじみの和葉ちゃん…。この人達に護衛を付けて欲しいそう頼んだんだ」
 そうか……。
 工藤がボウズとばれたら関わった人間、側におる人間、親しくしとる人間全て消される…そう言うわけか…。
「…工藤が…置かれとる状況はわかった。オレや和葉の状況もだいたいは把握した。一つ聞きたいことがあるんやけど……、なんでオレにその事をいいにきたんです?別に言わんでも良かったんと違います?オレは知らんままでも良かったんと違いますか?」
「平次君。君が新一の親友と分かったからだよ」
 工藤のオヤジさんが言った言葉にオレは耳を疑う。
 工藤の親友やて?
 なんで工藤のオヤジさんがそないなこと言うんや?
 そ、そりゃオレは工藤のことを親友やと思うとる。
 話しあうやつはあいつぐらいしかおらへんしな(まぁ、和葉もおるが和葉は別で)。
 せやけど…工藤がオレを親友やと思うとるとは……。
「驚いてる様だね。新一は、君を心配していたよ。自分の正体を知ったことで君まで巻き込まれないかとね…。新一が君のことを話すときの顔は蘭君の事を話すときと同じような顔をしていた…。そうだな…あの顔は信頼していると言う顔だったな……」
 その言葉にオレは何か照れてしもうた。
 工藤がオレを信頼してくれとる……。
 うれしいんか…はずかしいんかよう分からんでホンマに。
「新一を頼む…」
「おっちゃん…」
 突然の言葉にオレは驚く。
「新一はあまり心を開く子ではないんだよ。幼いころから各地を転々としていたからね。そんなふうにしてしまったのはまぁ、取材旅行だと称して連れまわしていた私にも責任があるんだがね。新一が側に置いておいた唯一の人物が蘭君なんだよ。そして新一は君を認めているんだ。多分、これから先、新一をつなぎ止めることが出来るのは蘭君と君以外にはいないだろうからね」
 淋しそうに工藤のオヤジさんは呟く。
「オレでえぇんのやったら力になります」
「ありがとう、平次君。新一には秘密にしておいてくれ、私が君に逢いに来たということを」
 そう言って工藤のオヤジさんは応接室を出ていった。
「平次、こんなところにおった」
 そして入れ違うかのように突然和葉が入ってきた。
「な、何しにきたんや和葉」
「さっきアタシの携帯にコナン君から電話が掛かってきたんや。平次のところに掛けてもつながらへんてな。まったくなんでアタシまで府警本部にこなあかんの?」
「なんや、和葉もら致されたんか」
「そうや、学校ついて朝の掃除終わった後にに突然呼び出し…。平次の携帯掛けてもつかまらへんし…なんでココに連れてこられた理由もわからへんし……」
 そう言って和葉は泣きそうになる。
「なぁ、平次。大滝サンから聞いたけど何でアタシ達に護衛ついとるの?」
 和葉はオレに向かっていう。
「…詳しいこと聞かんかったんか?」
「聞いてへんよ。大滝さんも詳しいことしらんみたいやし…」
「そうか…。オレも今聞かされたんや…、詳しいことはよぉわかっとらん」
 とオレは和葉に嘘をつく。
 和葉は工藤が江戸川コナンやいうの知らんしな。
「和葉ちゃん、ちょっとえぇか?」
「おじちゃん、どないしたん?」
「何故、護衛がついとるかと言う話のことや…。平次はどないする?聞くか?」
「別にえぇよ。後でだってかまへん、オレ電話かけなアカンとこがあるからな。和葉、よぉきいとけや。後で聞くからな」
 オレの言葉に和葉は不思議そうにうなずく。
 その理由はわかっとる。
 事件みたいな話で首を突っ込まんオレに和葉は不思議なんや。
『……服部か……』
「そうや」
 オレは、和葉とオトンが本部長室に向かったのを見て、工藤に電話する。
『元気そうだな』
「何抜かしとんのや?オレがケガしたとでも思うたんか?」
『バーロォ、そんなんじゃねーよ』
 つらそうな声とは裏腹に工藤は明るさを装う。
 今、自分がどないな状況にあると工藤は気付いとんのやな……。
「何しに電話かけてきたんや?珍しいんやないか?工藤から電話かけてくるなんてな」
『……服部に……』
 そこで工藤は言葉を止める。
 なんや?
 オレになんや?
「工藤、オレになんや?なんかしてもらいたいんか?」
 そう聞くオレに工藤は小さな声でいう。
『蘭を………蘭のことを……頼みたいんだ』
「……どういう意味や?」
『ともかく、蘭の側にいて欲しいんだ。もちろん、和葉ちゃんも一緒に』
「なんでや」
 オレは工藤の言葉に再度、意味を聞き返す。
 理由はわかっとる。
 蘭ねーちゃんの護衛や。
「それやったら自分でおったらえぇやんか」
『……そうしたいのは山々なんだけどよぉ……。無理、なんだよな』
 淋しそうに工藤は呟く。
『おっちゃんもさぁ、いなくなっちまうから…蘭一人、置いていかれねーんだよ』
 工藤のつらそうな声がオレの耳に突き刺さるかのように聞こえてくる。
 工藤、死ぬつもりなんか?
 蘭ねーちゃんに死んでも戻るいうたんとちゃうんか?
 オレには工藤の声は死地に向かう戦士のように聞こえてしょうがなかった。
「……工藤……」
『服部……オメーと和葉ちゃん以外には…頼めねーんだ……。頼むよ、服部。蘭のことをさ』
 工藤の悲しげな声が工藤の置かれている状況を把握したオレに届く。
 ホンマはもっとつらいかも知れん。
「分かったわ、工藤。せやけど、全部聞くで」
『何をだよ……』
「オレと和葉を呼んだホンマの理由や……よぉ考えとくんやで」
 そう言ってオレは携帯の電源を切る。
 工藤の抗議を浮けん為にや。
 その時オトンと和葉が入ってきた。
 和葉は何故か泣いとる。
「オヤジ、和葉に何言うたんや!和葉、なにないとんねん。どないしたんや」
「何でもあらへんよ。心配せんといて」
 と和葉は涙を無理やりぬぐう。
「さよか……。それやったら、今から東京行くで」
「な、何で?」
「工藤からの……頼みごとや……」
「工藤君からの?」
「そや……。オヤジ、かまへんよな」
 オレの言葉にオトンはうなずく。
「ほんなら、…東京いこか…」
 オレの言葉に和葉はうなずいた。

 一旦家に帰り、制服から着替え、オレと和葉は東京に向かう。
 和葉はなんも言わん。
 オレも…なんも言わん。
 言われん空気がオレと和葉の間にただよっていた。
 新幹線の指定席に座り和葉はオレに話しかける。
「平次…蘭ちゃんが危ない言うのホンマ?蘭ちゃんが一番大切やから…蘭ちゃんが狙われるん?なんで?」
 和葉は工藤の名前を出さん。
 それは蘭ねーちゃんやオレらが危険な理由は工藤に…あるとそう聞いとるはずやから。
「……そう、聞いたんか?」
「……うん」
 和葉はオレの方みんでうなずく。
「そう…やな。あいつがおっとるもんはあいつを知っとるもん、あいつが大切にしとるものを全部消してまうんやと……」
「……アタシ、ほとんど面識あらへんよ」
「そう…やな……。せやけど、オレは工藤の親友や……。親友の…大切な……もんは……あいつにとっても……大切……なもんなんやろな」
 オレの言葉に和葉は驚いてオレの方を見る。
「平次?」
「な、なんやねん」
「アタシって平次の大切なもんなん?」
 そこを突っ込むなや……。
 誤魔化して言うとんのに……。
「和葉は…大切な幼なじみや!!」
「…………一瞬期待したアタシがアホやった…」
 そう言って和葉は窓の方に顔を向けた。
 な、なんやねん!!!

「ハハハハ…喧嘩したって訳か」
「アホ、和葉機嫌悪いんやで」
「ワリィな、わざわざ来てもらってさ…」
 毛利探偵事務所で工藤はオレに向かって言う。
 オレはあのまま和葉と仲直り出来んまま探偵事務所に着いた。
 久しぶりに来た米花町はなんも変わったところはあらへんかった。
 ただ、工藤が元気がない以外は。
「さて、工藤。話してくれてもえぇんと違うか?オレと和葉を東京に呼んだ理由。それから小五郎のおっちゃんが探偵事務所におらん理由」
 和葉が蘭ねーちゃんと上の自宅で話し込んでる間にオレは工藤に聞く。
「……組織の動きが表面化してきた。オレの正体を警察のトップのみに知らせたから。そのために警察とともに今、情報戦って所だ。おっちゃんは…オレの正体を知ってる人に頼んで警察の方に行ってもらった。正確にはオレの名前を出しておっちゃんにも協力してもらう事を要請したんだよ…。蘭は何も知らない。蘭はおっちゃんは依頼で遠くに行ってるって言うことになってる」
 工藤は一旦そこで止め顔を上に向ける。
「……オレが蘭の側にいられる時間がなくなってきたんだ…。やつらは薄々工藤新一は江戸川コナンだということに気付き始めている。灰原はもう姿を隠した。警視庁の地下シェルターにいるんだぜ、あいつ。そこでオレを小さくしたクスリAPTX4869の解毒剤を作ってる。出来あがんのはいつだろな……。詳しく教えてくれねーんだぜあいつ。そうそう、APTX4869のデーターを手に入れた奴がいるんだ…。どこの誰だかはわからねぇけどな……。蘭の側にいたいのに……いられないなんてつらいな。蘭は…蘭だけは守りたい。服部、蘭のこと…頼んだぜ」
「アホ…言われんでも頼まれたる。工藤、絶対戻ってくるんやで。蘭ねーちゃんはお前が戻ってくる事ずっとまっとるんやからな」
 オレの言葉に工藤は小さくうなずいた。
「蘭…を呼んできてくれねぇか…。オレ、そろそろ行かなきゃならねぇんだ……蘭にはちょっと側を離れるって言うこと言ってあるからさ」
 工藤の言葉にオレは上にいる蘭ねーちゃんを呼んだ。
「何?服部君」
「ボウズが話があるんやと」
 オレの言葉に蘭ねーちゃんと和葉は降りてきた。
「蘭ねーちゃん」
 蘭ねーちゃんが事務所内に入ると工藤はうつむいて蘭ねーちゃんの名前を呼ぶ。
「何?コナン君」
「…お願いしたいことがあるんだけど…いい?」
「…いいよ、コナン君」
 工藤の言葉に蘭ねーちゃんは快く引き受ける。
 せやけど…お願い事ってなんや?
「あ、あのね。抱っこ……して欲しいんだけど……いい?」
 そう言って、工藤は顔を赤くしながら蘭ねーちゃんに言う。
 な、何考えとるんや工藤のやつ。
「…だめ?」
「…ったく。大人ぶってるくせに甘えん坊なんだから」
 そう言って蘭ねーちゃんは工藤の事を抱き上げる。
 言った張本人の工藤はめっちゃ顔が赤い。
「コナン君…また帰ってくるんだよね」
「……うん」
 工藤は…蘭ねーちゃんの肩に顔をうずめながら言う。
 ……つらいんやな……。
 オレは和葉を促して外に出る。
「コナン君、なんかつらそうやったね」
「そうやな……」
「蘭ちゃんの事好きなんやね」
「あぁ…」
「工藤君、戻ってきたらコナン君と蘭ちゃん取りあいやね」
「ハハハハハ」
 それはない。
 と言っときたいところやけど…知らん和葉に言うたってしゃあないから笑って誤魔化す。
「アタシ、上に行っとるわ…」
 和葉はそう言って上に戻る。
 丁度その時工藤が出てきた。
「……服部……蘭を……頼んだぜ」
「あぁ、まかしとき」
 オレの言葉に工藤はうなずき階段を下りようとした。
「待って……」
 蘭ねーちゃんが事務所から出てくる。
「蘭ねーちゃん」
「しんいち……待って」
 そう言って蘭ねーちゃんは工藤の方に向かう。
 ……ちょっと待てや……。
 今、蘭ねーちゃん、ボウズになっとる工藤に向かって新一言うたで。
 まさか気付いとんのか。
「どうしたの…蘭ねーちゃん」
 工藤の言葉に蘭ねーちゃんは工藤を抱き締める。
「…ら、蘭…ねーちゃん」
「ちゃんと、ちゃんと帰ってきてね。ずっと…待ってるからね」
「蘭…ねーちゃん」
「ちゃんとあなたが帰ってくること…待ってるから…」
 そう言って蘭ねーちゃんは工藤のことを離した。
「蘭…ねーちゃん、じゃあ、行って来ます」
 そう言って工藤は踵をかえし外に出ていった。
 それを見ながらオレは蘭ねーちゃんにさっき沸いた疑問を振る。
「なぁ、蘭ねーちゃん」
「何、服部君」
「しっとったんか?」
「何が?」
「な、何がってボウズのことや」
「コナン君のこと?」
「そうや」
「で、何が?」
 アカン、話してくれそうにもない。
 多分、蘭ねーちゃんは気付いとんのやな。
 工藤が…ボウズやって事…。

 それから一週間後…工藤は帰ってきた。
 ただし、江戸川コナンの姿で。
 いつ戻れんのや。
 そう聞いたら
「しらねぇよ…解毒剤がまだ完成してねぇんだと。マウス実験もやるって言ってやがる…。くっそー早く元に戻りてぇよ」
 やと。
 まぁ、それから数ヶ月後にはもどっとるんやけどな。

*あとがき*
君の元に帰るためにの最終話。


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