君色想い 離れるのが嫌

「ぜったいやだ!!!ようちえんなんかいきたくねぇ!!!」
 オレは工藤新一、4歳。
 今年で5歳になる。
 大好きな人は蘭。
 蘭がいればそれでいいのに。
 オレの両親はオレを幼稚園なんかに入れようとする。
「なんでようちえんにいかなきゃならないんだよ!!!」
「新ちゃん、幼稚園に行けば、友達いっぱいできるわよ」
「ともだちいっぱいなんていらねぇ、らんがいればいい」
「新ちゃん、蘭ちゃんも幼稚園に行くのよ」
 母さんの言葉にオレは驚く。
 蘭も幼稚園にいくだとぉ……。
「らんもほんとにようちえんにいくの?」
「そうよ、蘭ちゃん幼稚園に行くんですって。蘭ちゃんに友達いっぱいできたら……新ちゃん、忘れられちゃうわね」
 蘭に忘れられる……。
 そんなのイヤだ!!!!!!!!
「か、かぁさん!!!!」
「さぁ、どうする新一」
「と、とおさんまで……」
 くーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー。
 しゃあねぇ幼稚園に行くか!!
「わかったよ、ようちえんとやらにいってやるよ!!!」
「もぉ、最初っからそうやって素直に言えばいいのに」

「蘭、どうして今日になって幼稚園に行きたくないなんて言いだすの」
「だって、しんいちとおなじようちえんじゃないんでしょ。だったらわたしいかない」
「蘭、我が侭言わないの」
「わがままじゃないもん」
 わたしは毛利蘭、4歳。
 今年で5歳になるの。
 大好きな人は新一。
 新一がいればそれでいいのに。
 お母さんがわたしが行く幼稚園には、新一も行くか分からないって、今日になって言ったの。
「だいたいわたしがようちえんにいきたくないっていったとき、しんいちもいっしょのようちえんだからいこうねっていったの、おかあさんだよ」
「はぁ、蘭。新一君だけじゃなくって違う友達もつくろうとは思わないの?」
「おもわない!!!」
 他の友達なんていらないよ。
 近くにすむケーキやさんの女の子が新一と仲良くしてるの見たら嫌だったんだもん。
 幼稚園ってケーキやさんの女の子と同じような子がいっぱいいるんでしょ?
 だったら行かない。
 新一と他の女の子が仲良くしてるの見たくないよ。
「らーーーーーーーーーん」
 え??
「ほら、したくしなさい。お迎えが来たわよ」
 お迎えって…、今の声…新一だよ?
「誰も、新一君が同じ幼稚園じゃないって行ってないでしょ?今朝まで駄々をこねてたのよ。あのこは、蘭と一緒の幼稚園じゃなくちゃ嫌だって。安心なさい、蘭、新一君とおんなじ幼稚園よ」
「ホント???」
 信じられない…新一と一緒の幼稚園に行けるなんて……。
「ホントにホント?」
「えぇ、そんなに信じられないんだったら玄関に行ってみれば」
 お母さんの言葉にわたしは玄関の扉を開ける……。
「らん、ようちえんいこうぜ」
 新一がにっこり笑って立っていた。
「うん、しんいち。おなじようちえんなんだよね」
「あったりめーだろ!!!らんとおなじようちえんだってかあさんからさんざんたしかめたからな」
「ふーん」
「な、なんだよらん。うれしくねーのかよ」
「なんで?うれしいにきまってるでしょ!!しんいち、だいすき」
「え、お、わぁ!!!らん、きゅうにだきつくなよぉ」
 突然抱きついたから新一が後ろに倒れそうになった。
「ごめん……だいじょうぶ?」
「だいじょうぶ、しんぱいすんなよ」
 そう言って新一はニッコリ笑った。

「大概の幼稚園児って言うのは初めて幼稚園から来たときは母親の側から離れなくって保母さんが苦労するものじゃないの?」
 遠くで母さんの文句が聞こえる。
 普通は、そうなのかな?
 まわり見るとだいたいのやつは、母親のソバから離れようとしない。
 オレと蘭って特別なのかなぁ?
「らん、おれとらんってへんなのかなぁ?」
「なんで?」
「だってほかのやつっておかあさんといっしょにいるじゃん」
 おれの言葉に蘭は少しだけ首をかしげて言葉を紡ぐ。
「そういえばそうだね。でもわたし、おかあさんべんご……」
「べんごし、だよ」
「そう、そのべんごしさんっていうのをおかあさんはやってるんでしょ?わたし、おかあさんのじゃましたくないもん。だからしんいちのそばにいるの」
「そうだよなぁ、おれもかあさん、とうさんといっしょにいろいろやってるからじゃましたくねーし……。きにするひつようじゃねーよな」
「うん」

「…で、毛利さんと工藤さんにお話したいことがあるんですが……」
 突然、英理と有希子は幼稚園の保母さんに声をかけられる。
「あの、蘭がなにか?」
「新ちゃん何かやったんですか?」
「いえ…そういうわけではないのですが…」
 と保母さんは言葉を濁す。
 そんな様子に英理と有希子は顔を見合わせ訝しがった。
「あの、大変言いにくいことなんですが、いつも新一君と蘭ちゃんで遊んでいるんです。他の子と遊んだらと言っても…そうはしないで…。仲がいいのは大変いいんですが……」
 と保母さんは言った。

「さぁ、お昼寝の時間ですよ」
 と先生は言う。
「らん、いっしょにねよ」
「うん」
 お昼寝の時間は蘭と一緒に寝る。
 だっていつも蘭と一緒だしな。
 お昼寝は一緒じゃなきゃ眠れないし。
「はぁ、なーんかラブラブよね。あのこたち」
 と先生のため息めいた声が聞こえてくるけどそんなこと関係ない。
 別にラブラブだっていーじゃん。

「とまぁ、こんな感じなんです」
 有希子と英理は新一と蘭の話しを聞いて目を丸くする。
「まぁ、そんなに仲がいいんですか?」
 英理の言葉に保母さんはうなずく。
「これじゃあ、英理、きちんと考えたほうがいいかもね」
「そうねぇ、…でも、小五郎がなんて言うか…」
「小五郎くんは蘭ちゃん溺愛してるものね」
「えぇ、優作さんはどう考えてるの?」
「優作?優作は蘭ちゃんがお嫁さんに来ても全然オーケーって言ってたわよ」
「…ってそれは有希子、あなたの意見でしょ」
「えぇ、でもでも優作だってそう思ってるわよぉ」
 と保母さんを無視して話しを進めていく有希子と英理に保母さんは驚きを隠せない。
「あ、あのぉ」
「何か?」
「あ、いえ別に何でもないです」

 あ、お母さん達がいる。
「しんいち、おかあさんたちがいるよ。なんかせんせいとはなしてる」
「ホントだ。でも、どうせくだらねーことだろ」
「くだらなくないことだったらどうするの?」
「……オレなんかしたかな?」
「したかもよぉ」
「じょ、じょうだんだろ?」
「しらなーい」
「オイ」
「へへへへ」
 新一とはなしているとお母さんが遠くから呼ぶ。
「蘭、新一君!はやくいらっしゃい」
「はーい」
 その声にわたしと新一はお母さん達の方に行った。

「で…、この写真はいつの間に取られたの?」
「多分…ほら、幼稚園のアルバム作るときに写真撮るじゃない。その時だと思う」
「ふぅーん、しっかし、あんた達のラブラブぶりも年期が入ってるのね」
 園子は一枚の写真を眺めながら呟く。
 年期って……。
 わたしだってこの写真見て驚いたんだから。
「で、この写真はどこから出てきたの?」
「新一のお母さんが面白いものがあるから送ったって電話があったの。それがこの写真」
「フーン、幼稚園の先生もおせっかいね」
 おせっかいなのかなぁ?
 お母さんに聞いたらあんまり仲が良いから呆れてたって言ってたけど……。
「呆れるわよ、この写真見たら。どうしてこんなにラブラブ度が高い訳?」
「そ、そんなこと言われたって……」
「くだらねーこと話してんじゃねーよ」
 園子がからかう中、新一が台所から顔を出し言う。
「あら良いじゃない。こっちはうらやましいって思ってるんだから。で、今もこんなことやってるわけ」
「そ、園子!!!!」
「ハハハ冗談よ…って二人して顔真っ赤にしないでよ。って言うことは…はぁ、そうなのね。じゃあ、わたしはお邪魔ね。帰るわ」
 そう言って園子は帰っていった。
 園子のバカァ……。

「らん、きょうかえったらどうする?」
 お昼寝の時間、周りが寝ている中、新一はわたしが起きていることを確かめてからわたししか聞こえないぐらいの小さな声で話かける。
「んー…。しんいちのいえにあるきにのぼりたい」
「あのきか…いいぜ。ア、でもとうさんがなんていうかな」
 そう言って新一は少しだけ考え込む。
「なんで?」
「あのきにのぼるなっていうんだぜ」
「なんで?」
「しらねぇ」
 わたしの疑問に新一は不満そうに応える。
「おりれなくなるから?」
「どうなんだろうな。でもたぶんだいじょうぶだとおもう」
「ホント?」
「あぁ」
 そう言って新一は満面に笑顔をたたえて言う。
「でもおりれなくなったらどうしよう」
「だいじょうぶだって…オレがいるだろ」
 不安そうに言ったわたしに新一は勇気づけてくれる。
「しんいち?」
「そんなふあんそうなかおすんじゃねーよ。おれがなんとかしてやるから」
「ホント?」
「ホント。だからあんしんしろ」
 そういって新一はキスしてくれた。
「…しんいち」
「おまじない。ぜったいだいじょうぶだっていうな」
「しんいち……」
「そんな…みんなよ…はずかしいじゃねーか」
 新一は顔を赤くして目線を避ける。
 なんか嬉しいな。
「…らん?」
「………おやすみ」
 そう言ってわたしは新一にキスをしてお昼寝をすることにした。
 まさか…その瞬間を写真で撮られていて…尚且つ後から見せられることになるとはその時は思いもしなかったのだけど。

*あとがき*
メインは一緒にお昼ね&ちう。
君色思いはスマップ好き歌ベスト5に入る一曲。


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