東都デパートの屋上にいくとすでに青子が待っていた。
静かに何かを考えているようにたたずんでいた。
「青子さん、お待たせいたしました」
静かに青子に声を掛ける。
あくまでも、怪盗キッドとして。
「遅かったんだね、キッド」
「ちょっと、手間取りまして……」
「青子に話しがあるなんてなあに?」
青子はオレを寄せ付けないように話しかける。
「わたしがあなたに掛けた魔法を解くために来ました」
青子をまっすぐに見つめオレは言う。
今、オレはどんな顔をしているんだろうか。
いつものポーカーフェイスを保てているのだろうか……。
「魔法?キッドはいつ青子に魔法をかけたの?」
「わたしがキッドとなったときにあなたに魔法をかけてしまった」
「……キッド……泣いてるの?」
へ?
青子の突然の言葉に面食らう。
「キッド泣いてるよ。どうして」
頬に流れる涙にオレは気がつかなかった。
「…魔法解いてもいいですか?」
「……」
青子の返事を聞かずにオレはキッドの扮装を解く。
「………やっぱり、快斗だったんだね」
青子の言葉に驚く。
「どういう意味だよ、青子」
「何となく分かってたんだよ、青子。快斗がキッドだって……」
「……そうか、青子、言い訳にしか何ねーと思うけど……オレがキッドやってる理由聞いてくれるか?」
オレの言葉に青子はうなずいた。
本当の事を話すのは苦しい。
青子は分かってくれるのか?
なじられてもしょうがない。
責められてもしょうがない。
嫌われてもしょうがない。
青子はキッドが嫌いだから。
でも、オレは青子が好きなんだ…。
新一もこんな気分だったんだろうか……。
大切な彼女に自分はコナンで今まで騙してそばにいたってコトを……。
オレは青子にすべてを話した。
「快斗、何で言ってくれなかったの?」
そう言って青子はオレに抱きついた。
「何で言ってくれなかったの?青子に言ってくれれば快斗の苦しみの半分持ってあげられたのに……」
泣きながら青子は言う。
「青子はそんなに信用できない?青子はずっと快斗の側にいちゃいけない?」
「そんなことねーよ、でも青子キッドのこと嫌いだろ?だから言えなかったんだよ」
「キッドは嫌いだよ。でも快斗のことは好きなんだよ」
???どういう意味だ?
「だから、快斗じゃないキッドは嫌いって言うこと」
「わかんねーっつってんだろう」
「全部含めて快斗が好きだってコト。……キッドは……やっぱり好きじゃないけど」
ハハハハ……。
最後の青子の言葉に笑ってしまう。
「青子、オレがキッドだって黙ってたこと許してくれるのか?」
「当たり前でしょ、青子が許さないで誰が快斗の事許すの?青子、ずっと快斗の側にいるからね」
そう言いう青子をオレは抱き締めた。
ずっといていいよ。
オレも青子の側にずっといるから。
笑って許してくれる青子が凄く愛しくて大切で、泣かせたくない……。
多分…新一もおんなじ気持ちだったんだろうな。
大切な彼女を泣かせたくなくて…大切で大切で。
悪かったな、さっきは抱き締めちゃってさ。