同棲への道 6:怪盗の幕引き 後編 君に逢う為に生まれた〜We Love The Earth〜

〜予告10分前〜Kホテルの展示室から〜
「どないしたんや、工藤」
「どうも嫌な予感がする……。蘭達を屋上に行かせても良かったんだろうか……」
「いきなり、何言うねん」
 服部がオレの言葉に、驚く。
「服部考えてみろよ、もし、キッドが狙っている『ホワイトワンダー』が組織が狙っていたものだったとしたら、その宝石の情報を知っている組織とつながりがあったもの達が狙うのは必死。さっきはあいつが大丈夫っていうから安心して屋上に行かせたけど……」
「そうやな………。オヤジに連絡するわ」
 服部の言葉にオレはうなずく。
 それにしては怪しいやつは全く見えない。
 蘭達を屋上に連れていくときに隠れていそうなところはすべて警官をふさぐように中森警部に告げたし40階から上には怪しい人間は入れないようにした。
 一応キッド対策。
 でも、不安がぬぐいきれない。
「工藤、連絡したで……。オトン、不思議がってたけどな……」
 服部がそう言って戻ってくる。
「蘭に連絡する……」
「どうやってや?ここ携帯は使えへんで」
「まぁ、見てろって……」
 そう言ってオレは追跡メガネをかけ蘭に交信する。
「…蘭、蘭、聞こえるか?」
 少し間を置き蘭の声が聞こえる。
「新一???」
 少しだけ雑音交じりなのは屋上の風が強いせいだろう。
「聞こえるか?」
「うん、聞こえるよ。どうしたの、新一」

「…蘭、蘭、聞こえるか?」
 突然、新一にもらった探偵バッジから新一の声がする。
「何、蘭ちゃん」
「新一にもらった探偵バッジ……新一???」
 通話ボタンを押し、新一に問いかける。
「聞こえるか?」
 少しだけ雑音交じりなのは屋上の風が強いせいだろう。
「うん、聞こえるよ。どうしたの、新一」
「蘭、オレの話を聞いてくれ」
 新一の声が凄く深刻そうだ……。
「何?」
「いいか、何か合ったらオレが言ったところに行って、そこから離れるな。オレが行くまでそこにいて」
 何かって…何?
「……新一……」
「お願い…だから」
 凄くつらそうな新一の声。
 新一に言われたのは屋上の入り口から死角になる給水塔の影。
「……わかった……新一に言われたところにいるよ」
 安心させるように新一に言う。
 ホッと一息ついたのがバッジごしに聞こえる。
「工藤、オレにもかせや。蘭ねーちゃん和葉はおるか?」
 服部君の声が突然する。
 驚いたわたしに代わり和葉ちゃんが答える。
「なんやの、平次」
「和葉、オレがそこに行くまで蘭ねーちゃんと青子ちゃんを頼む。えぇな」
「どういうこと……」
 和葉ちゃんは不思議そうに服部君に聞く。
「工藤とオレは今そっちにいかれへん。快ちゃんも同じや…。えぇな、和葉。行くまで無事でおって欲しいんや…」
「平次、平次?」
「和葉、切るで。予告5分前やからな……絶対、無事でおってや」
 そう言って服部君は送信を切った。
「……キッドがねろうとるやつホンマもんなんや……」
 和葉ちゃんがそう言った。

「工藤君、服部君、来てくれたんだね。助かるよ」
 オレと服部が会話してると、中森警部が話しかけてくる。
「いつも申し訳ないねぇ」
 そう言う中森警部の顔は少し元気がない。
「どうしたんや?中森ハン、いつものキッドに対するあんたと全然ちごうとるけど、」
「そうかね」
「元気がないですね」
 オレと服部の言葉に中森警部は少しだけうつむく。
「君たちは、怪盗キッドの予告状を読んだかね?」
「いや、キッドから予告状が来たって言うんしか聞いてへんけど?どないな予告状やったんや?」
 服部の言葉に中森警部は怪盗キッドからの予告状を見せてくれる。
「世界最大のダイアモンド『ホワイトワンダー』を戴きに上がります。中森警部、これが最後の対決。楽しみにしています。怪盗キッド」
 最後の対決ね……。
「これを見て落ち込んでいるんですか?中森警部」
「いや………そうだよ、その通りだよ。工藤君。寂しいんだな。長年追い続けてきたキッドと最後の対決となるのがね……キッドを捕まえるのはわたしの長年の夢だった……。何て言うのかねぇ……こう、いざ最後と聞かされると寂しくてねぇ……キッドを捕まえなくてもいいのかも知れない…そう思わされてしまうんだよ」
 寂しそうに中森警部は言う。
『バリン!』
 窓ガラスが割れる音がしたかと思うと、電気が消え、非常灯のみが点灯する。
「そんなに寂しいですか?中森警部!」
 そう、キッドがやってきたのだ!!
「キッド!!!これで年貢の納め時だ!!!逮捕してやる!」
「先程まで寂しいと言っていたあなたがいきなり逮捕してやると言うとは思いませんでしたねぇ」
「う、う、うるさーーーーーーーーーーーーーい!!!」
 キッドの言葉に中森警部が反論する。
 どう見ても………キッドの言葉の方が正しいと感じてしまうのは何故だろう……。
「さて、工藤探偵、服部探偵、お久しぶりですね」
「しらじらしぃじゃねーかキッド……」
「そうや、よく言えたもんやのぉ、中森警部のところにオレらも呼びよって……」
 しらじらしいキッドの態度につい不満を持って言ってしまう。
 これじゃ、オレ達とキッドが知り合いだって言ってるようなもんじゃねーか……。
 瞬間、閃光が走る。
「な、なんや!!!」
 キッドが閃光弾を投げたんだ!!
 それは分かった。
 だが、
 次の瞬間。
 鋭い音が部屋中を走る。
「銃声だと!!!発砲を許可した覚えはないぞ!!!!」
「キッド!!!!」
 オレの言葉にキッドは応える。
「わたしは無事ですよ、工藤探偵では、失礼します」
 そうキッドの気配が消えた瞬間、電気がつく。
 そして、服部の連絡を受けた本部長がやって来た。
「キッドはどうした」
「……工藤……あかんで」
「あぁ」
「平次、どういうことや!!!!!!」

 宝石をとった瞬間、撃鉄をあげた音が聞こえた。
 まずい……そう思った瞬間、オレはその場から移動する。
 その瞬間、拳銃が発砲された。
 確実にオレに向かって来た。
 だが、オレは咄嗟に移動しその場から逃げ出したのだ。
 まずい、急いで行かないと青子達が危ない。
 あいつらの姿はなかった。
 合ったら新一達も確認してるはずだ。
 だが、ないって言うことは警官に扮していた可能性が高い。
 屋上へ向かうオレはそんなことを考えていた。

「今、したで変な音した…」
 ふと和葉ちゃんが言う。
「変な音って…?蘭ちゃん気付いた?」
 そう蘭ちゃんに聞くと蘭ちゃんはふとうつむき言う。
「確かにしたような気がする」
 何の音?
「銃声と違う?」
「まさか……」
「アタシ、平次と一緒におるから結構聞いたことあんねん。蘭ちゃんはない?」
 銃声……。
 まさか、快斗のみに何が……。
 次の瞬間影が空から降ってきた。
「……キッド……」
 空を仰ぎ見ると…キッドがふわりとおりてきた。。
 そして、キッドは屋上の太い手すりの上に立ち月にホワイトワンダーを掲げながら覗いていた……。
「……やっと…見つけた……。オヤジが追い求めていた、パンドラの宝石。オヤジが殺された原因のパンドラを……」
 月に輝いているホワイトワンダーの中心に赤く輝く石が見える。
「………こんなものの為にオヤジは殺されたのか………」
「……キッ…ド……。見つけたの?」
 苦しそうな、キッドの様子にたまらなくなり青子はキッドの方に向かった。
 そんなに苦しい顔しないで…キッド……快斗。
「青子……さん……。出てきてはいけない」
 青子の姿を認め、キッドの口調で快斗は言う。
 穏やかだけれど口調が厳しい…。
「どうして……」
 そう言ったわたしの言葉にキッドはますます苦しそうに言った。
「聞こえませんでしたか、銃声が?もしかするともうココまでやって来ている可能性が高い。頼む、青子…早く」

「頼む、オヤジ。全部話すからキッドのこと助けたってや、見逃したってくれや」
「平次、説明せい。お前は何をしっとんのや!」
 入って来た本部長に服部は頼み込む。
「キッドの事や。キッドが何を狙ってたのか。あいつの正体。あいつの考え全部知っとる。工藤も知っとる」
 服部がそう言いオレを見る。
「頼む、オヤジ、中森ハン。キッドは、あいつは友達なんや」
 服部が必死になって言う。
「中森警部、本部長。オレからもお願いします。あいつを助けて下さい」
 その瞬間、屋上で銃声が聞こえる。
「なんや、今の音は……。銃声か?」
 蘭…!!!!
 オレは追跡メガネをかけ蘭に話し書ける。
「蘭、蘭、聞こえるか、蘭。返事してくれ」

「青子……早く」
 そう快斗が青子に向かって苦しそうに言う。
 快斗、早く、何???
 その瞬間、小さいながらもはっきりと聞こえる爆裂音が響き快斗が弾き飛ぶように後ろに倒れる!!
「キッド……か、快斗、快斗ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!」
 快斗が撃たれた。
 そう思った時、入り口で声がした。
「怪盗キッド、よくぞパンドラを盗み出してくれた。その点に関しては礼を言うよ」

『新一……』
「蘭、無事か???」
『……わたしは大丈夫だけど……快斗君が…撃たれたの……撃たれたの……』
 蘭の言葉であたりに衝撃が走る。
「遅かったんか………」
「服部、遅かったって言ってる場合じゃない。屋上には蘭達もいるんだぞ」
「んな事言われんでもわかっとる!!ともかく、オヤジ。屋上に警官連れて行ってくれ。全部話すから」
 蘭の言葉で気がついたのか、本部長と中森警部はうなずいた。
『蘭、今どうなってる?』
「快斗君、大丈夫みたいだよ…何かが弾を押さえてくれたみたい」
 蘭の言葉にホッと一息つけた。
 でも、まだピンチなのは変わりない。
 ともかくオレと服部は屋上へと向かった。

「いってーーーーーーーーー」
「か、快斗、大丈夫なの?」
 青子がオレの顔を心配そうに見つめる。
 痛みの元を探ってみると、銃弾が新一がくれた探偵バッジの上で止まっていた。
 って、事は探偵バッジが銃弾を押さえていたって訳か……。
 くーーーーーーーーーーー。
 参った。
「怪盗キッド、よくぞパンドラを盗み出してくれた。その点に関しては礼を言うよ」
「お前らは何もんだ?」
 立ち上がり青子を背中でかばいながらオレはやつらに話し掛ける。
 だいたい、予想はついている。
 あの、組織の残党、かそれに繋がっていた奴等。
「だが、それは我々の物だ。命が惜しくば返していただきたい……」
 そう言って奴等は銃口をオレの方に向ける。
 二度目は…ないな。
「そう言うわけにもいきませんね。これは怪盗キッドがずっと追い求めていたもの、あなた方に差し上げるわけにもいきません」
 オレは極めて冷静に奴等に話し掛ける。
「なら、これはどうかな?怪盗キッドよ」
 そう行って奴等がオレに見せたのは……小型爆弾……。
「それでどうするつもりですか?まさか全員を殺すつもりですか?」
 冗談じゃねーぞ……。
「…全員で爆死を選ぶか怪盗キッドの死のみを選ぶか…どっちにするか、二つに一つだ・さぁ、どうする」
 ……全員での爆死とオレただ一人の死。
 一つしかねぇな。
 青子には…悲しい思いをさせちまうけど……。
 名探偵二人の彼女と青子を死なすわけにはいかねぇよな……。
 でも、やっぱ……。
「分かりました。では、最後の舞台を披露させていただくわけにはいきませんでしょうか……」
 無駄と分かっていながらもオレは奴等に問い掛ける。
 最後のオレの願い……。
「いいだろう。世界的マジシャンとうたわれた黒羽盗一の息子黒羽快斗の最後の晴れ舞台ぐらい見てもいいだろう」
 願いはかなった。
 それがあいつらの最後だ。
「Ladies and Gentlemen!! It's showe time!」
 そう言ってオレはあたりに花びらをまき散らす。
 鳩をあたりに飛ばし、カードをばらまく。
 それに紛れ込ますように新一からもらったボタン型受信機をばらまく。
 気付けよ、新一、平ちゃん……。
 頼む。

『いつまでその茶番をやるつもりだ!』
 突然、オレの追跡メガネから声が聞こえる。
「なんや、工藤」
 服部の声を無視してオレはそれに聞き入る。
『怪盗キッド、いつまでその茶番をやるつもりだ』
 間違いない…。
 快斗はボタン型受信機をばらまいたんだ……。
 声を飛ばすことの出来るそれを、オレ達に聞かせるようにしているんだ。
『いつまで?ですかね。まだ、すべてを披露しきれていませんよ』
 怪盗キッドの極めて冷静な声が聞こえる。
「キッドは無事なようだな」
 中森警部がオレに話し掛ける。
「いつもの彼の声だ」
 警部は気付いたのだろうか蘭の言葉で……。
『さて、いい加減にして、そのホワイトワンダーを我々に渡していただこう』
 男の言葉にオレ達…いや中森警部と服部本部長は驚いた。
「どういうことだ…」
「彼、キッドが狙っていたものは他の人間も狙っていたんです」
 オレの言葉に二人は驚く。
「工藤、屋上に行く道は一本しかないんか?」
「いや、もう1本あるはずだ……。本部長、そこから行って奴等を一網打尽にする方法はとれないでしょうか」
「危険な賭だろう。だが、キッドが我々が突入した時にその場から立ち去ってくれれば、勝機はあるだろう」
 快斗…次第だな……。
 何故キッドが受信機をばらまいたのか、その意味がオレなら分かると快斗は踏んでいる。
 そこから、人数、およびタイミングを計ることが出来る。
「10人前後って所やな」
 服部が受信機より送られてくる情報で人数を確認する。
「本部長、屋上への入り口両方とも警官を待機させました。合図によりいつでも突入可能です」
 刑事がやってくる。
「さよか……。工藤君、平次。合図はお前らで決めろ。えぇな。一瞬しかないど」
 本部長の言葉にオレと服部はうなずいた。

「さぁ、早く選びたまえ。自らの死かそれとも全員で心中か。怪盗キッド!!!」
 心中なんてごめんだ。
 オレはかすかに活きている探偵バッジを見つめ、青子を背にかばいながら少しずつ、後退する。
 警官が突入してくる。
 蘭ちゃんと和葉ちゃんは給水塔の影からオレの方を心配そうに眺めている。
 あの二人は大丈夫だ。
 すぐに、新一と平ちゃんがやって来る。
 問題は、青子。
『どのくらいで突入は可能なんか?』
『30秒で突入できる』
 30秒か……。
 それぐらい有れば青子を連れてココから一旦退散することが出来る。
 ……よし。
「……1分だけ…まってもらえませんか……」
 オレの言葉に、奴等はうなずく。
 カウントを始める。
「60.59.58.57.56.55.54.53.52.51………」
 命の…カウントダウンって所かな。

『60.59.58.57.…』
 快斗のカウントダウンが始った。
「服部」
「工藤」
 オレと服部は顔を見合わせ、うなずき有った。
「突入!!!」
 30秒間、の空白。
 1分なる前にそっちに着くはずだから。
 快斗、むちゃはするなよ……。

「25.24.23.22.21.20………」
 キッドがカウントを数えていく。
 新一……早く来て……。
 そう思った瞬間だった。
「そこまでや、全員銃をおろせ!!!」
「おじちゃん」
 和葉ちゃんはそう言った。
 そう、服部君のお父さんがいったのだ。
 あたりには数十名の警察官。
 そして、新一と服部君。
 わたしと和葉ちゃんがここにいることが分かっているが、いつ、キッドを狙っていた男達がわたし達の方に来るかも知れない。
 それを恐れて新一と服部君はこっちに来ない。
「ではご機嫌よう皆さん!」
 そうキッドはそう言って花吹雪をまき散らし、青子ちゃんとともに消えてしまった。
「ひっとらえろ!!!!」
 警官がキッドを狙っていた男達を捕まえ連行した。
「蘭!!!」
「和葉!!」
 新一と服部君がやって来た。
「蘭、大丈夫か?ケガしてねーよな」
 心配そうな新一の言葉にうなずく。
「新一は大丈夫?」
 そう言うと新一は
「オメーの方が心配だったからどうだか分かんねー」
 って。
 そんな不安になるようなこと言わないでよ。
「やっぱり、名探偵が一番大切なのは彼女なんですね」
 いつの間に現れたのかキッドが言う。
 そんなキッドの言葉に新一は微笑む。
「バーロ、あたりめーの事聞くなよ。この死に損ない」
「死に損ないって言い方はひでーな……」
 そう言ってキッドは座り込みムネあたりを押さえる。
 側には青子ちゃんが心配そうにキッドを見つめていた。
「アホ、めっちゃ心配したんやでこっちは。お前が撃たれたぁ聞いてな」
「って言いながら、オメーも心配だったのは可愛い彼女だろ」
「ハハハ、ばれたか。って言うか、このドアホ!!!ホンマに心配したんやど!!!」
 そう言って服部君はキッドの方に向かい、頭をはたく。
「平次、アタシのことは心配してへんかったんか???」
「殺しても死なんような女を心配してどないすんねん」
「ちょっとでも心配したぁって言うたってえぇやんか!アホ」
「言わんでも分かるやろ、ボケ!」
「ボケって言い方せんでもエエヤろ!!!」
 また、始った………。
 服部君と和葉ちゃんの喧嘩………。
 どうして喧嘩ばっかりするんだろう?
「いいんじゃねーのあれがあの二人にとって普通なんだから」
 新一は呆れ帰りながらも言う。
「平次、訳はなせや……」
 屋上に六人と青子ちゃんのお父さんの中森警部と服部君のお父さんの本部長の計八人しかいなくなったころ、服部本部長が話し掛ける。
「キッド、すまんな。オトンと中森ハンにいう羽目になったんや」
「別にかまねーよ。もう、終わり。終わったら中森警部には言うつもりだったしな」
 キッドの言葉に青子ちゃんは驚いて顔を見つめる。
「そんな不安そうな顔するなよ、青子……。中森警部、すべてをお話します」
 そう言ってキッドは扮装をといた。
「………快斗君………やっぱり君だったのかね…怪盗キッドは……。青子、知っていたのか?」
「……聞いたの……青子が、問い詰めたの……」
 中森警部の言葉に青子ちゃんはうつむく。
 ホントは問い詰めたわけじゃい。
 快斗君から聞かされたんだ。
「そう……か……。快斗君、だが、ワシが二十代の頃追いかけていたキッドは君ではないだろう」
「ハイ、オレじゃないです。あれは、オレの父、黒羽盗一……です」
 快斗君の長い、告白が始った。
 父親のこと、パンドラを狙っていた組織のこと、何故父親が今自分がてにしている宝石を探していたのかと言うこと。
 そして、自分のこと。父親が死んだこと。怪盗キッドをやっている理由。
 すべて、中森警部と服部本部長、そしてわたし達にも聞かせるように快斗君は告白していった。
「いままで黙っていてすいませんでした。騙すつもりは全くなかったんです。ただ、父親の黒羽盗一の殺された理由がどうしても知りたかった……これは、警察で処分して下さい。またいつ同じようなことが怒らないとも限りません」
 快斗君はそう言って中森警部にわたし、
「中森警部、青子を巻き込んでしまってすいません」
 そう言った。
 その、快斗君の言葉に新一は一歩前に出て言う。
「中森警部、快斗と青子ちゃんを巻き込んだのはおれのせいです。オレが快斗の正体を知らなければこんな事にはならなかった。服部本部長、平次君と和葉ちゃんを巻き込んでしまってすいませんでした。オレが、オレが首を突っ込まなければ、快斗君、青子ちゃん、和葉ちゃん、平次君、そして蘭を…危険な目に合わすこともなかった」
 新一の叫びにも似た声があたりにこだまする。
 苦しんでいた新一。
 新一はわたしを巻き込みたくないから…そう思って何も言わないでいた。
 新一は全部自分のせいで大切な人まで巻き込んでしまっていて凄く苦しんでいんだとたと今さらながらに思う。
 あの時はわたしはただ、何も知らないで、分からないふりして、コナン君(新一)にわがままを言っていた。
 でも、そんなつらいこと…巻き込んだなんて言わないで……。
 わたしは、側にいられるなら、それでも構わないんだから。
「新一、オレは関係ないだろ。オレは関係者だろ」
 新一の言葉に快斗君はつらそうに答える。
「な、何言うとんのや!工藤も快ちゃんも。オレが勝手に首突っ込んどるだけや!」
「そうや、アタシは平次の後をついてただけや、巻き込まれたんと違う!」
 新一の言葉に服部君と和葉ちゃんは否定する。
「青子、青子はどうなんだ?」
 中森警部はふと青子ちゃんに聞く。
「青子?青子は別に巻き込まれたって考えてないよ。青子も快斗の側にいたいだけだもん」
 青子ちゃんのその言葉に中森警部は寂しそうにうつむく。
「どうして、もうちょっと大人のことを信用せんのや」
「信用しとる。せやけど、工藤が子供にさせられとったって言うのを聞いてオヤジは簡単に信じられたか?信じられへんやったろ……。せやから工藤は自分で解決するいいうたんや」
 服部君の言葉に新一は苦笑する。
「工藤君、黒羽君……君たちは平次に気に入られとるんやな……。平次は気に入ったものしか側におかん……。卑下することあらへん。ただ、本人が決めただけや……。」
「………」
 本部長の言葉に新一と快斗君は驚く。
「こんな事いうのもなんやけど、これからも平次をよろしゅう頼みますわ。和葉ちゃんも平次のことよろしゅうな」
 和葉ちゃんはそう言った本部長の言葉にうなずき。
「言われんでも分かっとるよ、おっちゃん……」
 と言った。

「快斗君……君は……もう怪盗キッドにはならないのかい?」
「ハイ、ビッグジュエルも見つけました。もうなる必要は有りませんから……。逮捕、するんでしょう」
 オレの言葉に全員が驚く。
 オレは、…犯罪者…だ。
 泥棒をしていた。
 だから……警察に逮捕されるのは道理。
「何故だね、君は今まで盗んだものを返していたじゃないか。君はそれを探していた。そして見つかった。その見つけたものまで我々に渡す。君は、本当はその後ろにある強大な事件を未然に防いでくれていた。君の行為は決して正しいものではないと言われるだろう。だが、小さなことにかまけてその後ろに控えているものを見失っては、いけないのだよ。君を逮捕する?そんなこと、ワシにはできんよ。君は君の父親盗一君から預かった大切な息子のようなものなんだから」
 中森警部はオレにそう言う。
 オレは青子と幼なじみ。
 オヤジのショーには警部がよく付き添ってくれた。
 おふくろもオヤジもショーに出ていてオレに構っている暇が無い。
 必然的に青子との所に行くことが多い。
 あの……オヤジが死んだときも………。
「……ありがとうございます……警部……」
 心から言えたお礼。
 そして、中森警部は本部長と共に屋上から出て行った。

「た、すかったーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!」
 快斗は思わず声をあげる。
「快斗ぉ、良かったね」
「おぉ!!」
 青子ちゃんが嬉しそうに快斗に言う。
 ったく、いなくなったら途端に元気になりやがって!!
 思わず、快斗に文句を言いたくなってしまった。
「ったく、誰のおかげだと思ってるんだよ!!!」
「ホンマや……。オレがオヤジと中森警部に言わんかったら死んどったんやで」
「新一と、平ちゃんのおかげだよ!!!」
 そう言って快斗はオレと服部に笑いかける。
「快斗ぉ、そう言えばいつ東京に帰るの?」
「んーーー、取り合えず平ちゃんが泊めてくれるって言うから……和葉ちゃん青子のこと泊めてくれるかな?」
「えぇよ、工藤君はどないするの?蘭ちゃんは明後日までおるって言うけど」
 和葉ちゃんに話しを振られる。
 明後日までいる?
 なんでだ?
「明日寝屋川で地元のお祭りが有るんだって、それに行こうって和葉ちゃんに言われたの。新一は帰るの?」
 蘭は少し不満げに聞く。
「何で、帰るんだよ。蘭がいるのに帰るわけねーだろ」
 蘭と一緒に東京に帰るって決めてんだから……。
「工藤、オレの部屋や!!!!一緒に寝ようや!!!」
「何で服部と寝なきゃならねーんだよ!!!」
「しゃあないやんか、オレの部屋は狭いんやから」
「10帖の部屋持ちが何言ってるんだ!!!」
「ぐ……」
 服部となんかいやだ!!!
 だいたい、こいついびきうるさそうだし。
 快斗はオレと同じ意見を持ったのか服部に言う。
「平ちゃんってさぁいびきがうるさそうだよな、新一」
「あぁ、オレもそう思ってた」
 オレと快斗の意見に反論した人間が二人いた……………。
「そないなこと有るか!オレはかかへんねん」
「うん、アタシも平次のいびきって聞いたことないわ……」
 と、和葉ちゃん。
「か、和葉ちゃん……」
 蘭が和葉ちゃんのどっきり発言に驚く。
「な、何?アタシ変なこと言うた?平次、アタシ、なんか変なこと言うた?」
「言うてへんと違う?オレはいびきかかへんけどお前の寝言はうるさいわなぁ」
「ちょーまってや平次。アタシ、寝言を言わへんよ。なんでそんな嘘言うねん」
「寝言、言うとるやろ」
「言うてへん」
 また、始った………。
 言った、言ってないで。
 頭痛くなってきた……。
「新一、大丈夫?」
「大丈夫」
「快斗、平次君と和葉ちゃんて」
「青子、オレに聞かないで」
 ともかく、服部と和葉ちゃんの喧嘩は二人が飽きるまで続いたのだった。

*あとがき*
同棲への道とタイトル打っておきながら、実は目玉の怪盗の幕引き後編。


novel top