同棲への道 1:Love again 前編 君に逢う為に生まれた〜We Love The Earth〜

 今、わたしは新一の家のリビングのソファに座っている。
 その家の今現在の住人である新一は出かけている。
 事件で。
 実は、ここにいることは新一には内緒。
 家でね、新一、もう帰ってきたのかな…って考えているのもいいんだけど……。
 新一の家で待っているほうが何か幸せだと思ってしまったの。
 待っているのはつらい。
 でもね、新一の空気…新一の気配…を感じることが出来ない自分の部屋で考えているよりも、新一のすべてを感じることが出来る新一の家で待っているほうが良いと思ったの。
 この前からずーっと考えていた。
 だから新一に「一緒に暮そう」って言われたときは夢かと思って泣きだしちゃった。
 うれしくって…。
 で、今日も新一の家で待っている。
 この頃、事件で呼びだされることが多い。
 結構生き生きしてるからいいのかな?
 約束をどたキャンされるのはかなり嫌だけど……。
 新一、は・や・く・か・えっ・て・こ・な・い・か・な。

 今日も事件で遅くなる。
 今の時間は夜中の12時ちょっと前。
 はぁ、事件だって呼びだされるのは良いけれど、やれ事情聴取だ、やれ打ち上げだって引っ張り回されるのだけは困る。
 何度も何度も断ると目暮警部が文句言ってくるし、高木刑事は、
「付き合い悪いよ、工藤君」
 って言うし、佐藤刑事に至っては、
「何?彼女が待ってるの?」
 ってからかう始末。
 これで結婚してたら
「家で妻が待ってますから」
 っとでも言えんだろうなぁ……。
 ………………………ってオレって何考えてんだ???
 マジで限界。
 18歳になって結婚できる歳なのに婚姻届を確認したら未成年者は保護者の承諾がないとダメと来たもんだ……。
 オレ的には18になった日に籍でも入れてみたかった……。
 って蘭は嫌だって言ったら無理じゃん。
 はぁ、どっちみちあの頃は忙しくって、病院に週一で行かなきゃならなかったし、オレの誕生日が合った休みのには服部達がいた。
 そうだ、快斗達とも遊んでたんだっけ………。
 はぁ、蘭の声聞きてーなぁ……。
 蘭、この時間だと寝てるし、起こすのあれだな……。
 家に帰ったらメール入れておこ。
 明日学校行くって。
 家の前に来て気がつく。
 リビングの電気がついてる。
 前にもなんかこんな事が合ったような……、しかもつい最近。
 まさかな……。
 玄関を見ると………間違いなく最近あった出来事と同じ靴。
 リビングを見ると案の定その持ち主はテレビを………って寝てる。
 オイオイ、明日学校だぞ、泊まる気か?
 別にオレは構わねーけど、やっぱちょっと問題。
「蘭」
 オレは声を掛ける。
 これぐらいじゃ起きないって分かってるけど、一応声をかける。
 まさか、熟睡してねーだろうな。
 してたら、完ぺきヤバイ!
 いったん熟睡したら起きねーんだよ。
「蘭!」
 もう一度声を大きくして蘭に声を掛ける。
「ん、ん……あ、新一お帰り…」
 寝ぼけた様子で蘭は言う。
 ったく…熟睡したらどうしようかと思ったよこっちは……。
 寝ぼけた顔でお帰りって言うんじゃねーよ……。
 うれしいけどさ…。
「何やってんだよ、蘭」
 蘭がいるソファにオレは座る。
「あのね、今日学校に来なかったでしょ。だから新一に逢いたくって……。何、新一はわたしに逢いたくなかったの?」
「逢いたかったに決まってるだろう」

「逢いたかったに決まってるだろう」
 そういって新一はわたしにキスをする。
 だったら、「何やってんだよ」って言わないで。
「…蘭、所でこんな時間だけど大丈夫か?」
 ふと新一が時計をさす。
 時計はもうすでに12時半をまわっていた。
 やっばーーーーーーーーい。
 ちょっとでかけて来るってお父さんに言ったままだ……。
「電話するんだろ」
 そう言って新一は電話を持ってきてくれる。
 2回コールの後お父さんは電話に出る。
「蘭、なにやってんだこんな時間まで!」
「ごめんなさい」
「ごめんなさいじゃねーだろ。今何時だと思ってるんだ。ちょっと出かけてくるっていって何時間経ってる」
 かなり怒ってる。
 こうなるともう黙って聞くしかない。
「しょうがないでしょう、新一の家にいるんだから」
 ……なんて口が裂けても言えない。
 黙って聞いている最中に突然受話器が手から外れる。
 新一が奪い取ったと気付いたときには
「こんな時間まで蘭を借りていてすいませんでした。蘭は家まで送ります。では失礼します」
 と新一がお父さんに言って電話を切った後だった。
「し、新一……」
「蘭……送るよ」
 新一はクールに表情を変えないでわたしを家まで送っていった。
 お父さんにも逢ってただお辞儀をして帰っていく。
 そんな新一に拍子抜けをしたのかお父さんは不満そうに自室に入っていった。
 ……。
 何であんなにクールな態度をとったんだろう。
 どうしちゃったんだろう。
 電話しようにも出来ない。
 今日泊まろうとは思ってなかった。
 ただ、こんな時間になっちゃっただけ……。
 お父さんのお説教だって我慢して聞いていればいいだけ。
 お父さんが正しいから…しょうがないけど。
 でも、でもね。
 いきなり電話とってあれはなかったと思うの。
 ……期待……してたんだけどな。
 ちょっとだけ(かなりかも)…この前新一が言ってくれたこと。
「一緒に暮そう」
 新一の中では冗談だったのかな……。
 そんなことない……よね。

「ごめんなさいじゃねーだろ。今何時だと思ってるんだ。ちょっと出かけてくるっていって何時間経ってる」
 蘭が謝る中でおっちゃんはやっぱりずっと蘭を叱っている。
 受話器から聞こえるそのおっちゃんの声がそれを物語っている。
 こうなることは見えていた。
 でも、蘭がいたいならそれでも良いと思った。
 けど、蘭が夜遅く出てくるのはかなり問題だし。
 そろそろ仕掛けねーとまたいつこんな事起るかわかんねーな。
「こんな時間まで蘭を借りていてすいませんでした。蘭は家まで送ります。では失礼します」
 蘭の手から電話をおもむろに取りおっちゃんに告げる。
「し、新一……」
「蘭……送るよ」
 オレはあくまでもクールに蘭に接する。
 これからが本番。
 おっちゃんから蘭を奪い取る計画。
 これは巧妙にしなくちゃならない。
 蘭にはもう一度確認したいけど、何かオレの態度に不思議に思っているみたいなので後でにする。
 ホントは帰したくない。
 蘭の家の前に来るまで何度それが口から出そうになったか……。
 でも、それ言ったら今後蘭と同棲出来る可能性が低くなる。
 帰すって言った手前、帰さなくちゃならない。
 おっちゃんにちょっとだけ挨拶して探偵事務所の階段を下りる。
 はぁーーーーーーーーーーーかなり後悔。
 あんなこと言うんじゃなかったぁ……。
 こうなりゃ、意地でも蘭と同棲してやる!!!!

*あとがき*
同棲への道第1話。
別名同棲もくろみ日。


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