同棲への道 10:文化祭に向けて… 君に逢うために生まれた〜We Love The Earth〜

「3年B組のクラス対抗の出し物はなんですか?」
「はい、3年B組は演劇をします!!!」
 どうも、皆さまお久しぶりです、鈴木園子です。
 文化祭の季節到来よ!!
 我がクラス、3年B組の出し物は、そうよ、そうよ、シャッフルロマンスよ!!
 わたしが脚本書いたシャッフルロマンスなのよぉ!!
 何たって今年はベストでカップリングが決められるんですものぉ。
 こんな嬉しいことはないわ!!
 舞台上でキスシーン演じさせてやるんだから!!
 絶対あやつのことだから、キスぐらいするわよ。
 まぁ、彼女がかわいそうだけどね。
 そのくらいはいいじゃない。
 ってなんのことって?
 もちろんハート姫とスペイド王子のことよぉ。
 スペイド王子は去年はいなかったけど、今年はいるいる工藤新一!!!!!
 去年はまぁいたけどさぁ、なんか事件なんか起きちゃったから、ハート姫とのキスシーンまで……行かなくってさぁ。
 ちょっと悲しかったわよねぇ。
 せっかく、抱き締めてチューよってたき付けたのに……。
 ぐすん。
 気を取り直して、ハート姫はもちろん蘭よ。
 もうもうもうもう!!!!
 最高なんだから。
 蘭のハート姫の姿にみんなメロメロ。
 もちろん、新一君もねぇ。
 フフフフフフ。
 でも、まだこのことクラスには発表してないのよねぇ。
 あ、わたし今年文化祭の実行委員に選ばれちゃってさぁ、今、こうして文化祭の実行委員会に出てるって訳。
 でも、新一君素直にやってくれるかなぁ…。
 もしダメだったら、脅しでも何でも使うわよ!!!
 覚悟しろ工藤新一。
 あやつをからかうことに掛けてはわたしは天下一品の腕を持つんだから!!!

「と、言うわけで、我がクラスは去年泣く泣く中止せざるを得なかったシャッフルロマンスを再演することになりました」
「オーーーーーーーーーーーーーーーーー」
 クラス中が園子の声に歓声をあげる。
 一部を除いては…。
「一応キャストを決めたいと思うのですが、ハート姫とスペイド王子は皆さん決定でいいですよね」
「いいよ!!」
「それしかねーだろ」
「園子、それで書いてたんでしょ」
「もちろんよ。じゃ、蘭、新一君、よろしくね」
 そう言って、園子はオレと蘭に台本を手渡す。
「何で、やんなきゃなんねーんだよ。あんなクサイセリフなんか言えるわけねーだろ」
「はぁーよくそんなことが言えるわね。新一君」
 そう言って園子は嫌な微笑みをオレに投げ掛ける。
 な、なんだ?
 なんかめちゃくちゃ嫌な予感がするんだけど。
「新一君、一応、劇を観てくれるのは新出先生なんだけど、もし、新一君がやりたくないなんて言ったら…、即、スペイド王子は新出先生と変更よ!!」
 は?
「知ってるわよねぇ、スペイド王子はハート姫とどうなるか」
 …………。
「いいのぉ?蘭が新出先生とラブシーン演じても」
 と、園子は耳元でささやく。
「さぁ、どうする、工藤新一。プライドとる?それとも、蘭をとる?」
「蘭」
「よく言った。じゃあ、新一君はスペイド王子と」
 そう言って園子はメモを取る。
 ……選べるわけねーだろ。
 そんな二者択一でもねー選択に。
「で蘭はハート姫でいいよね」
「しょうがないなぁ、いいよ園子」
 と半ば強引に決められたキャスティング。
 去年も…多少は読んだけど、カナリゲロ甘な内容だよな。
 これって……。
 よくまぁ、これを恥ずかしげもなく書くよ園子のやつは。
「〜君を守るためそのために生まれてきたから〜あきれるほどにそうさそばにいてあげる〜」
 機嫌よく鼻歌歌いながら園子は台本を配役が決定したメンバーに渡す。
 残りのメンバーは校舎内の出し物を決める。
 ったく…こっちのみにもなれよな。
 やりたくねぇよぉ。
 でも蘭が新出のヤローとラブシーンを演じるところは見たくねぇし…。
 素直にココはやるしかねぇのかなぁ。
 はぁ。

 新一はさっきっから台本を見てため息をついてる。
 カナリ、嫌らしい。
 園子ってば強引よね。
 シャッフルロマンスは去年とカナリ内容が変わっていた。
 去年は帝国は邪魔するだけだったけど…。
 今年わたしさらわれるの????
 ふわぁ……大変。
 黒板に書きだされた配役はハート姫はわたし。
 スペイド王子は新一でハート姫の姉のダイア姫に志保サン。
 で今回は新出先生もでるみたい。
 新出先生は帝国の皇帝ジョーカーだって。
 ただね、とある4人の配役だけ書かないのよ、園子は。
 何でだろう。
 白き魔法使いと青き助手のクィンと騎士フラッシュと道士クローバー。
 ……?
 セリフ…読むと…すっっごく知ってる人に似てるような気がするんだけど……。
 気のせい、だよね。
 家に帰ると新一君のお母さんがいた。
「ど、どうしたんですか?」
「ケンカだろ。今度はなんだよ」
「そんな言い方しなくたっていいじゃないのよぉ。そう言えば遅かったわね。どうしたの?」
「実は…」
 とわたしが演劇の練習で遅くなったことを告げようとしたら、新一が割り込む。
「別にいいだろ。母さん、オレと蘭そとで食べてきたから食うもんねぇぞ」
「もう、そんな言い方しなくたっていいじゃないのよぉ。取りあえず、少しの間、ココにいるわよ」
「な、何でだよぉ」
「いいじゃない、自分の家にいたって」
「あのなぁ」
 そう言って新一は頭を抱え込む。
「蘭ちゃん、私がいたら邪魔?」
「そんなことないですよ。それにおばさまがいて下さったほうが何かと良いですし」
「オ、オイ蘭何考えてんだよ」
「何っておば様に練習観てもらおうと思って」
「練習って何?」
 新一のお母さんは言う。
「文化祭でわたし達のクラスで演劇をすることになったんです。それで、何故かわたしと新一、主役をやる羽目になっちゃって…」
「え?演劇?見せて脚本」
 その言葉にわたしは快く脚本を見せる。
「蘭ちゃんがこのハート姫なんだ。で、新ちゃんがスペイド王子、ふんふん。ぴったりじゃない。二人に」
 新一のお母さんは楽しそうに脚本を読む。
「母さん?」
 新一がその様子に訝しがる。
「観てあげるわよ。練習」
「じょ、冗談じゃねーよ!!」
「良いじゃないの。おばさま女優だったんだし」
「そうよぉ、ね蘭ちゃん。早速練習しましょ」
「ハイ」

 今日は、家庭科室を二つ占拠して、衣装合わせの日。
 朝からうきうきしちゃうわぁ。
 蘭の可愛いハート姫の姿が見れるんですもの。
 はぅ。
 あの蘭のハート姫の姿見ちゃったら新一君にはあげたくないって感じよねぇ。
 かといって他の男にやるのもなんだし…。
 蘭の事さんざん泣かせてきたけど、やっぱり、蘭を一番わかってるのは新一君だしなぁ。
 大の親友としては複雑な気分よね。
「蘭、これね」
「うん」
 蘭はクラスの女の子がやってるから大丈夫。
 当の問題はこの工藤新一よ!!!
 その前に、もう一人渋っている宮野さんを説得しなくちゃ。
「本当に着なくちゃダメ?」
「当然でしょう?そうじゃなくちゃ、衣装合わせの意味ないじゃないのよ」
「それもそうね。分かったわ。着替えるわ」
 と言って宮野さんは着替える。
 蘭の衣装は完全無欠の王女様って感じの衣装なんだけど、宮野さんはその反対嫌がらせをしそうな王女様の衣装でマーメードラインのドレスっぽく仕立ててみました。
 しかも色は黒のサテン地。
 まぁ、悪役だしね。
「宮野さん似合う」
「そう、かしら」
 少しだけ照れる宮野さんが可愛いわ。
「キャーーーーーーーーーーー。新出先生素敵!!!」
 隣の教室から声が聞こえる。
「何、見に行ってみようか?」
「え…」
 宮野さんはわたしの申し出に躊躇する。
「何、止まってるのよ、観たくないの?」
「観てみたいわね。少し、興味があるわ」
 とあまり表情を変えないように言う。
 この人もはっきりいって分かりやすい人よね。
「そんなこと気にしないで行きましょうよ。どっちみちわたし新一君の所に行かなきゃならないんだから」
「エ、園子新出センセ見に行くの?」
 わたしの言葉を聞いていたのか蘭の方をやっていた女の子達が言う。
「そうよ」
「わたし達も観たーーーーーーい」
 蘭を放っておいて全員で向こうに行くわけには行かないわね。
「んーーー、じゃあ、こっちに来てもらおうか。新一君とセットで」
「園子!!」
「その方が蘭だって良いでしょ?。じゃあ、行ってくるねぇ」
 そう言ってわたしは隣の教室に向かったのでした。
「新出先生素敵!!」
 男子の正確に言えば新出センセと新一君の着付けを担当している女の子達が口々に言う。
 確かにね、皇帝っぽく衣装は作ってみましたけど、ここまで似合うとは思わなかったわ。
 センセって結構、体格良いのね。
「で、どうしてあんたは着替えてないのよ」
 わたしは部屋の隅っこに座っている工藤新一に声を掛ける。
「別に、いいだろ」
 とぶっきらぼうに言う。
 全く、またこの手を使うのか。
 使いたくなかったのにさ(なんてね)。
 わたしは新一君の耳元に口を近づけてささやき掛ける。
「新一君、衣装合わせきちんとしないと、スペイド王子は即、新出先生と交換よ」
「オメェなぁ」
「あら、嫌なわけ?」
「わーったよっ着替えりゃいいんだろ着替えりゃあ!!」
 そう言って新一君は着替えを始める。
「サイズの方はぴったりね。きついところない?」
「別に平気。だけど、よくサイズ分かったな」
「もちろん、蘭から聞いたのよ」
「なるほどね」
 わたしの言葉に新一君は嫌そうに笑った。
「で、明日は立ち稽古だからね衣装を着てきちんと練習しといてね」
「ったく何でオレがこんなことやんなきゃならねーんだよ」
「新一君、きちんとやってくれなくっちゃ困るのよねぇ」
「冗談じゃねぇよ!!」
 と相変わらず、やる気なさそうに言う。
「全く何回言えば気が済むわけ、新一君。何度も言ってるでしょ、ちゃんとしないとスペイド王子は即交代よ!!!それでもいいわけ」
「…………………………………」
 そんな手には引っ掛からないぞって言う感じの新一君。
「新出センセはいつでも変われるって言ってるわよ。どうせ衣装も新一君と、新出センセの体格って似てるのよね、だからその衣装すぐに新出センセとチェンジできるのよねぇ」
「……わーったよ!!!やりゃあいいんだろ。やりゃあ!!!!」
 よし!!!

 立ち稽古の日。
 衣装合わせもすんで衣装を身に付けての練習となりました。
「皇帝ジョーカー、あなたにハート姫を渡すわけにはいかない」
「ほう、威勢がいいな、一介の騎士としてはなかなかの威勢ではないか?おっと失礼、一介の騎士ではなくトランプ王国の王子スペイドだったな」
「皇帝陛下、ハート姫を返していただきます。彼の姫はわたしのものだ!!」
「ままごとのようなことをよく言えるな。王子スペイドよ。彼の姫にどのくらいの力があるのか知っておろう。おぬしにその力を使えるとは思えん」
「私は姫の力を使おうとは思っていない。姫のことを道具としか思っていないあなたになんかハート姫は渡せない」
 延々と続いていく新一と新出先生のやり取りにあたりは圧倒されている。
 新一の演技のうまさは、家で見ていて知っていたし、それにコナンを演じ続けていただけあって(でもたまあに演技している最中でも本音やその他色々がでていたけど)上手い。
 それに数々の映画賞という映画賞を総なめにした有希子さんが直接演技指導しているから……(と言ってもおもしろがって口出ししてるだけなんだだけど)。
 その演技力を家で見て知っているわたしは凄いと思いこそすれ、圧倒されないと思っていた。
 でも…。
「新出センセ、さすが主役張ってただけはあるわね。それより凄いのは新一君よ」
「家と違う…」
 園子の言葉にわたしは言う。
「ホント?ほら家で練習しているときは押さえてるのよ」
 そうなのかなぁ?
 園子の言葉に疑問を持つ。
 家だと普通なんだけど…学校だと…気合い入っているって言うか…。
「脅したのよ。鈴木さん」
 突然、志保さんがわたしと園子の会話に入る。
「脅したって…どういうこと?」
「だって、新一君ちゃんとまじめにやってくれそうじゃないじゃない」
「だからって脅すことないじゃない…。ねぇ、園子、なんて新一に言ったの?」
「…きちんとしなかったら…即、新出先生とスペイド王子交代!って…」
「うそ…」
 だから…なんか機嫌悪かったんだ……。
「もう、園子、新一をたき付けないでよ!!!新一がむきになりやすいって知ってるでしょう」
「だからよ。だからまじめにやってもらうために、わたしは言ったの」
 と園子はしれっとした顔で言う。
「でも、鈴木さん、本気じゃないんでしょ?工藤君と新出先生の役の交換」
「当たり前じゃない。新一君と蘭のラブラブを人前で演じさせるためにこの脚本書いたんだから!!!わたしだって嫌よ。蘭が新一君以外の男とラブシーン演じてるの見るの」
 園子は志保さんの焦りが少しだけ聞こえる言葉にそう応えた。
 だったら…たき付けるようなこと言わないでよね。

 文化祭前日。
 わたしはとある所に電話する。
「どう?」
 電話の相手は大丈夫と答える。
 よしよしいい感じだ。
 演劇があるのは最終日の日。
 蘭、新一君。
 楽しみにしててよね。

*あとがき*
蘭と新一をからかう園子。と言うか蘭で新一とからかう??園子。
同棲への道11はシャッフルロマンスの舞台裏?


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