昨日、青子とけんかした……。
原因ってなんだっけ……。
全然思い出せない。
多分、他愛もないんだと思う。
で、今日は仕事だって言うのに青子に逢いに行けないでいる。
くっそー逢いてーよぉ。
喧嘩したのが昨日の昼で、今日は休みだから……。
げっ丸一日逢ってない……。
本当だったら今日は、青子の家に遊びに行ってそのまま仕事だぁって思ってたのによぉ。
あ"ー逢いたいと思ったら余計に逢いたくなってきた。
しゃーねー仕事終わったらTELしよ…。
昨日、快斗とけんかした。
ちょっとした言い合いからお互いに譲らない意地の張り合いみたくなってしまった。
それが昨日の学校帰りのこと…。
本当だったら今日快斗は、家に遊びに来るはずで…、そのままキッドになってお仕事に行くはずだった。
でも、昨日の喧嘩が尾を引いたのか…快斗は来なかった。
予告時間は当に過ぎていて…。
キッドはお仕事に行ったのが分かる。
快斗……逢いたいよ。
今、どこにいるんだろう。
TEL…しちゃダメかな…。
でも逢いたいよ。
ごめんって謝ってないし……。
快斗…どこにいるの…逢いたいよぉ。
仕事も終わった。
残念なことに今日の宝石もパンドラが入った宝石じゃなかった。
いつになったら見つかるんだろう…。
青子に逢ってない不満も重なって気分がナーバスになっていくのがよく分かる。
けんか…なんてすんじゃなかったな…。
っていうか、すぐに謝っちまえば良かったんじゃねーのか?
かーーーーーーーーーーーー失敗した!!!
電話して謝っちまえ!!
あ、それとも直接の方がいいか?
えーい、ともかく電話だ、電話!!
携帯を取り出し、電源を入れたときだった!!
「〜何から何まであなたがすべて、わたしをどうにか輝かせるため苦しんだり悩んだりして頑張ってる〜(song
by 華原朋美:Hate tell a lie)」
あ…青子からだ!!!(ちなみに青子が入れた着メロ)
青子からの電話だ!!
「ア、青子?」
「か、快斗?」
名乗らないうちに青子とわかったオレに青子は少しだけ驚いている。
忘れたのかよ、オレのケータイ着メロ指定できんの。
「どーしたんだよ、電話なんか掛けてきて」
嬉しいくせに、ひねくれた言い方をしてしまう。
「終わったの?」
「まぁね。でも今日のも違ったよ」
「そう…」
少しだけ青子の声が小さい。
「青子?」
何か合ったのか不安になって青子の名前を呼んでみる。
「快斗、どこにいるの?」
「え?」
どこって…現場のすぐ近くのホテル。
「逢いたいの」
「あ、青子?」
突然の青子の言葉に戸惑う。
「どこにいるの、すぐに来て。すぐに青子の家に来て!!」
「…無茶言うなよ」
「逢いたいの、無茶なこと青子は言ってないよ。青子は快斗に逢いたいだけなの!!今日来るって言ったくせに来ないで、快斗のバカ!!!!」
青子はそう言いながら泣き出してしまった。
「バカはないだろ、バカは…。ったく、泣くなよ。すぐに行くから」
「すぐってどのくらい?」
どのくらいって言われてもなぁ?
「ねぇ、どのくらい?」
「5分、5分で行くから。オレが側にいない間は泣くな!」
「ウ、ププププ」
「な、なんだよ」
急に笑いだした青子にオレは戸惑う。
「快斗って気障、だよね」
「バーロォ…ともかく行くから青子、待ってろよ」
「うん、5分ね…待ってるから」
その青子の言葉を聞きオレはケータイを切る。
5分…でつけるかな。
って言うかオレ、青子に謝ってないじゃん。
「5分…なんて長いよ」
切れた通話口に向かってつぶやく。
快斗は5分なんて短いと思ってるかも知れないけど、待ってる間の5分って凄く長い。
分かってるのかなぁ。
快斗が来たら謝らなくっちゃ。
『快斗なんて大っ嫌い!!』
って言ったこと。
喧嘩してる最中って大っ嫌いって思っちゃうの。
でも、ホントは大好きだから、快斗のことだーい好きだから、『快斗なんて大っ嫌い』って言った後は後悔しちゃうんだよね。
今日はそれがずっと続いてた。
快斗が来たら謝ろう。
って思ってた。
TELすれば良かったんだけど…、顔をみて謝りたかった。
だから、快斗に逢いたいんだ。
逢いたいよ。
「5分で行く…」じゃなくって「ともかく、すぐに行くから」って言って欲しかった。
5分経っても来なかったら快斗どうするつもり?
まつのって嫌いだよ。
ふと、ベランダで物音がしたのに気がつく。
「…青子!」
そして、快斗の声。
窓を開けるとホントに急いで来たのか疲れている快斗の姿があった。
「快斗…早かったね」
思わず言った言葉に快斗はあきれ帰る。
「あのなぁ、今すぐ来いって言ったのはどこのどいつだよ!」
「あ、青子…」
「だろ、だったら早かったね何て言わない!!」
そう言って快斗は青子のほっぺたをむぎゅーーっとする。
うみゃーーーーー何すんのよぉ。
「昨日はごめんな」
「青子のほうこしょごえんにぇ(青子の方こそごめんね)」
「何言ってるかわかんねーよ!!」
「だったらひぇひゃにゃしてよぉ(だったら手はなしてよぉ)」
そう反論すると快斗はやっと離してくれる。
「で、何て言ったの?」
「青子の方こそごめんって言ったの」
「青子が悪いわけじゃねーだろ。今日だってオレ青子の所に行かなかったんだからな」
そう言って快斗は青子の事を抱き締める。
どうしてそこで抱き締めるのよぉ。
「青子、オレ青子に逢いたかったよ」
「ホント?」
快斗の言葉に驚き顔を快斗の方に向ける。
「あのなぁ、嘘言ってどうすんだよ」
「だってぇ」
快斗がそんなこと思ってるとは思わなかったんだもん……。
「さて、オレ。そろそろ帰るわ」
そう言ってオレはキッドの扮装をしベランダに出る。
「ねぇ、何でわざわざキッドになるの?」
「マントの背がグライダーになって飛べるようになるから」
青子の疑問にそう答える。
「ふーーーーーーーん」
「じゃあ、また明日な」
明日も休みだからホントは帰らなくてもいいんだけど……。
やっぱ、青子の所に泊まるっていうのはまずいしな。
付き合ってるけど、付き合ってるって言うことほとんどしてないし。
飛び立とうとした時マントが引っ張られたことに気がつく。
見ると、青子がしっかりとマントの裾を掴んでいた。
「青子、手を放してくれないかな」
「あ、ごめんね、快斗」
そう言いながらも青子は手を放さない。
「何?青子」
そう聞くオレに青子はうつむきながら答える。
「あ、あのね。今日、青子一人なの」
「うん」
「だからね、一人じゃ寂しいから」
ってそれはつまり。
「快斗、一緒にいてくれない?」
やっぱり。
ここはどうしたらいい?
嫌、別にさぁオレは全然オーケーなんですが、青子…泣かすわけにはいかねーし…。
とりあえず、キッドの扮装を時青子にむかって言う。
「あのさ、青子。オレ一応、健全な高校3年生って言うのは分かってるよな」
「うん、分かってるよ」
「でさぁ、青子とオレって付き合ってるんだよね」
青子、分かってるのかなぁ……。
「うん。」
「変なことになってもいいんだな?」
「変なことって」
だぁーーーーーーーーーーーーーー!!!
やっぱ分かってねーよこいつ。
「快斗?」
「こういうことだよ!!」
そう言ってオレは青子を抱き締め顔を上に向かせ、上から覆いかぶさるように口付けをする。
「……ん」
長い…キスのため少しだけ青子はボーッとする。
「分かったか?」
「快斗、変なことってえっちなこと?」
「他に何があんだよ!!」
あぁ、やっぱり分かってなかったぁ。
青子の顔を見ると何気に不満そうだ。
なんだよ、その不満そうな顔は!!
「青子、オレじゃ嫌?」
「………あのね……青子お子様だし……」
「んな事、分かってるって」
「青子ムネないし……」
「あのなぁ」
青子の言葉に脱力感を感じる。
「グラマーなねーちゃんよりはないけどって…んなこと関係ねーだろ」
「ひどい、快斗のバカ!」
だーオレが言いたいのはだなぁ!!!
「……快斗……青子ね、快斗の事大好き!」
「へ?」
突然青子はオレに首に腕をかけ抱きつく。
その言動にオレは戸惑ってしまった。
直前ではバカって言ってたくせに。
「いいよ、快斗だもん。快斗はえっちだもんね」
「あのなぁ……」
そういうもんじゃねーと思うんだけど……。
「快斗、大好きだよ。快斗は青子のこと好き?」
満面に笑みをたたえて言う青子を見てオレは少しだけ息を吐く。
ったく、勝てねーよな。
青子には。
「大好きだよ、青子」