えぶりばーでぃーず…〜君に逢うために生まれた 番外編〜

 今年は初めて二人っきりですごす、クリスマス。
「蘭、プレゼントは何がいい?」
「新一は何が欲しい?」
 耳元で囁きあう言葉の中に幸せな時間。
 今までは違った。
 去年は子供だったために、ホームパーティ。
 手はつないだけれど…、それは子供と…高校生で……。
 それでも、本の一時の幸せ。
 その前は家でクラスメート全員でクリスマスパーティ。
 その前は高校受験勉強で……。
 でも、今年は違った。
 今年はレストランを予約して、二人っきりのディナー。
 道楽と…言われようが、蘭と甘い夜をすごすためなら、コネだってスネだって何だって使うさ。
 って蘭に言ったら殴られそうだよな…。
 ともかく…、その努力?のかいもあって上手い具合にいい感じのクリスマスを過ごす事が出来た。
 蘭は……ワインレッドのワンピースが似合っていて…綺麗だったし…。
 そのレストランの他の客が蘭に見とれていたのは気にくわなかったけど。
 蘭へのクリスマスプレゼントはきれいなペンダント…。
 似合うだろうなと…そう思って買ってみた。
 買った後で…オレって蘭にメロメロだよなと…ふと笑ってはみたけれど…。
 ともかく、蘭も喜んでくれたから…まぁ、よかったかな。

 初めて…新一とすごすクリスマスはやっぱり特別なものにしたいじゃない?
 そう思ってわたしは新一が「24日はレストランで食事しよう」って言ったときからドキドキしていた。
「あんたって……やっぱり道楽よね」
 なんて思いながらまぁ、一緒にすんでるから多くは言えないけれど…。
 だけど、ソレを聞いてわたしは園子に付きあってもらいその食事の時に着ていく服を選んだ。
「こういうワンピースで新一君を悩殺しちゃえ!!!」
 そう言って園子が出したのはワインレッドのベロアのワンピース。
 襟元にはフェイクファーがつけられている可愛いやつ。
 結構前が開いてるから恥ずかしいかもなんて言ったら
「そんなんじゃ悩殺出来ないわよ!!!」
 なんて言うから結局それにしちゃって……。
 悩殺出来たのか…今一つ謎なんだけど……。
 新一もカッコ良かったのよ。
 ちゃんとしたレストランだったからスーツにネクタイといういでたちは相変わらず様になっていて……なんか反対にわたしが新一に悩殺されたみたいだった。
 新一にあげたクリスマスプレゼントは新一の希望どおり最新刊の推理小説。
 普通、時計とかって言うわよ!!
 それなのに、この大バカ推理の介は最新刊の推理小説…と言った。
 まぁ、結局クリスマスプレゼントはそれだけじゃなくって…。
 時計をプレゼントした。
 もらったのは可愛いペンダント…。
 御守り代わりにしろなんて気障なこと言って…ソレが結構嬉しかったり…。
 まずいわねぇ、語る男にこんなにはまってるなんて…まぁ、いいけどね。

「平次、あんたらが出かけるときはちゃんと戸締まりするんやで!!後、人様の娘(和葉)に手を出すんやないで」
「平次、和葉に手ぇ出したら……どうなるか分かっとるやろな」
 …オヤジと、和葉のオトンが…オレに脅しをかける。
「………分かっとるよ…」
 その二人にオレは怯えながら……頷く。
 オレの両親と、和葉の両親は23日から年明けまでハワイに行った。
 オレと和葉が受験やと言うのにや…。
 まぁ、そのおかげで誰にも邪魔されへんで和葉とおられたんは良かったな。
 ソレと引き換えに……なんや怖いもん食わされそうになってもうたけど。
 失敗した言うてなぁ…あれはないやろ。
 ホンマに…。
「平次ぃ………したくまだおわらへんのぉ?」
「今行くわ。和葉、家の方は戸締まりしたか?」
「したからこうやっているんやろ」
「そういやそうや。ほな、行くか」
 オレの言葉に和葉は頷く。
 和葉のポニーテールが今日も軽快に揺れる。
 そして耳に光るのは…オレがクリスマスプレゼントとして買うた…和葉によう似合うオレンジ色の石がついた……ピアスだ。
「やっぱ…オレンジ色で正解やったな…」
 不意に呟いた言葉に和葉は顔を赤らめる。
「な、何で急に顔赤くすんねん!!」
「やって…平次…手…」
 手?
 和葉の言葉に…オレは我に返った……って…。
 我に返ったオレの利き手は和葉の耳に添えられとった。
「…せやから…これは…」
「平次……はよ…行こう…な?」
 そう和葉はオレの手を取り目的の場所へと歩き始めた。

 アタシの両親と平次の両親が共にハワイに旅立った日、アタシは平次の家にお泊まりを始めた。
「やって…平次も一人やし…アタシも一人やんか。せやったら一緒におったほうが便利と違う?」
 なんて友達に言って…。
 つまり、イブ&当日は邪魔せんといてね!!!と言う意味を込めたのだ。
 とは言うものの、26日からアタシと平次は行くところがあってそのための準備の為にアタシは一旦家に帰り、また荷物を持って平次の家にやって来る。
「平次ぃ………仕度まだおわらへんのぉ?」
「今行くわ。和葉、家の方は戸締まりしたか?」
 そう言って平次は荷物をもって出てくる。
「したからこうやっているんやろ」
「そういやそうや。ほな、行くか」
 平次の言葉にアタシは頷く。
 何となく気合い入れて結んだポニーテールが揺れる。
 そして耳に光るのは…平次からもらったクリスマスプレゼント…可愛いオレンジ色の石がついた……ピアスだった。
 どうしてもしたかったピアス。
 平次にさんざんねだって開けてもらったピアスの穴。
 どうしても開けたくて2ヶ月前開けてもらった。
 さすがに、学校に行くときは透明のピアスつけてるけど…。
「やっぱ…オレンジ色で正解やったな…」
 平次はアタシを見ながら不意に呟き自分の手をアタシの耳に添えニッコリ微笑む。
 ちょー待ってやぁ……。
 いきなり何すんねん……。
 その手と…その笑顔…反則やって……。
「な、何で急に顔赤くすんねん!!」
「やって…平次…手…」
 アタシの言葉に平次は我に返る。
 どうやら無意識だったらしい。
「…せやから…これは…」
「平次……はよ…行こう…な?」
 無意識でもえぇわ…。
 アタシは耳に添えられた平次の手を取り目的の場所に向かっていった。

「快斗からのクリスマスプレゼント青子はもらったよ」
「は?」
 青子にそう言われてオレは驚く。
 そのイブの夜はクラスメートの喝さいを受け…幕が閉じられた。
 このクリスマス会を企画したのは誰であろう…青子である。
 青子は基本的にお祭り好きだからこういうイベント事になると異常に燃えるのである。
 そして、ソレのとばっちりを受けるのは必ずオレ。
 だいたいこういうときには
「ね、快斗お願い。マジック披露して」
 って上目づかいで言われ、その…青子にオレは必ずと言っていいほど勝てなくて…。
 結局青子のいいなりになってしまう。
 で、今年も同様。
 青子の提案で青子の家でクリスマスパーティが開かれ、オレは青子にお願いされマジックを披露する。
 そして一段落したら外に繰り出しカラオケボックスでカラオケパーティが恒例となっていた。
 だが………。
 今年は違った。
 青子はカラオケには行かず、そしてオレも行かなかったのだ。
 青子からもらったのはお財布とパジャマ。
 オレのお財布がカナリみすぼらしく見えたらしく、
「そんなんじゃ、金運逃げちゃうよ」
 と言われ続けた青子がオレにプレゼントしてくれたのだ。
 そしてパジャマは…。
「……あのね……青子と…色違いでおそろいのパジャマなのっ」
 そうおそろいのパジャマなのである。
「青子ね、快斗とおそろいのパジャマ着たかったの。…蘭ちゃんがね、新一君と色違いでおそろいなんだって…。青子ソレ聞いたとき…なんかうらやましくって…。でも、快斗、寝るときってトレーナーでしょ?だから……コレ快斗に着て欲しくって……」
 恥ずかしそうに青子は言う。
 で、そのお礼と言うわけではないが…青子にオレからのプレゼントをあげると言った途端
「もらったよ」
 と言われたのである。
「ちょっと待てよ、まだやってねぇよ!!」
「快斗からの青子へのプレゼントはマジックでしょ?毎年そうだもんね。毎年、新作を青子に見せてくれるんだよね。今年の新作ってあれかなぁ?」
 そう言って青子は今日やったマジックのネタを思いだす。
 たしかに……毎年、青子にだけ分かるように新作をクリスマス会の時披露していた。
 けど、それ以外もあげてたろう!!
 青子!!!
 忘れんじゃねぇよ。
 はぁ…まぁさ…オレにも…原因があるんだよ。
 青子にだけ分かるってことはそのネタを披露するときは青子にプレゼントをあげている。
 まぁ、新作の披露にかこつけて…って言うわけだが。
「ねぇ、どれ?青子分からないよ」
「ねぇよ。今年は新作披露してねぇよ。それに、新作は青子へのクリスマスプレゼントじゃねぇよ!!ちゃんとやってたろ?クマのぬいぐるみやら、ウサギのぬいぐるみやら、パンダのぬいぐるみやら、オルゴールやらって」
 オレがここ近年に新作披露にかこつけて青子にやったクリスマスプレゼントを並べあげる。
「え?あれ…おまけじゃなかったの?」
「あのなぁっ、おまけが、ご丁寧に、ラッピングされてるかぁ?気付けよ青子…。」
 オレにも非があるのは確かだが……けど普通気付くだろぉ?
「マジックにかこつけてくれようとするからでしょう」
「だって………しゃあねぇだろ………恥ずかしかったん…だから…」
 青子の質問に答えるオレの顔は多分、赤い。
 そんな様子のオレに青子は笑いだす。
 はぁ、ポーカーフェイス…どうして青子の前じゃ出来ねぇんだろ……。
 参ったな…。
 まぁっいいけどな。
「青子、…てぇ、出して」
 まだ笑っている青子にオレは言う。
「快斗、どっちの手?」
「左」
 そのオレの言葉に青子は素直に左手を出す…。
 そして…一瞬のうちに青子の手にそのプレゼントを渡す。
「え……快斗……これって……」
「……やるよ。クリスマスだしな…今まで心配かけた…わび。だよ」
 オレは青子の顔を見れずにそう言った。
 情けねぇ…。
 世界中の女性を魅了したと言われる怪盗キッドがコレくらいのことで緊張しちまうんだからな…。
 やっぱ…、青子は特別だからな。

「まっかなおはなのーとなかいさんはーいつーもみんなのーわーらーいーもーのー」
 そう言いながら青子はレンジ回りの掃除をする。
 理由は手持ちぶさただから。
 さっきまで、青子の家はたくさんの人がいた。
 毎年恒例のクリスマスパーティの為。
 今年のクリスマス会は良かったなぁ。
 ちゃんと、快斗もいてくれたし。
 去年は…快斗ってば、途中でいなくなっちゃうし。(東風デパートに行っちゃったのよね……キッドのバカ!!!)
 で、快斗はちゃんとマジックを披露し盛り上げてくれた。
 約束だもんね。
 でね、毎年恒例になってる快斗の新作マジックが今年も披露された。
 その時はだいたい、青子が快斗の指名を受けてマジックのパートナーをするの。
 やっぱりマジックやってる快斗って…いいなぁなんて思うんだよね。
 で……その後はいつもはカラオケに行くんだけど…。
 今年は…青子は行くのをやめたの。
 受験生だからって言う理由じゃなくって(江古田も私立ねエスカレータにする?)
 ただ、クリスマスの夜は、単に快斗と一緒にいたいなと…思ったんだ。
 そのためって言うわけじゃないけれど、プレゼントはお財布とパジャマ。
 快斗のお財布ってボロボロなの。
 青子がいくら「快斗、お財布綺麗にしないとと金運逃げてくわよ!!」って言っても変えないから青子がプレゼントすることにしたの。
 で、パジャマは青子とおそろいのパジャマ。
 色違いなんだよ。
 青子と同じの着て快斗が寝てるって思うと嬉しくない?
 だからね、青子はそうしたの。
「…ねぇよ…」
 突然、快斗は青子に向かってそう言う。
 快斗からのプレゼントもらったよって言ったら快斗はそう言ったのだ。
「今年は新作披露してねぇよ。それに、新作は青子へのクリスマスプレゼントじゃねぇよ!!ちゃんとやってたろ?クマのぬいぐるみやら、ウサギのぬいぐるみやら、パンダのぬいぐるみやら、オルゴールやらって」
 と快斗は顔をあかくして青子に言った。
 それに
「あのなぁっ、おまけが、ご丁寧に、ラッピングされてるかぁ?気付けよ青子…。」
 とも付け加えた。
 確かにそうかもぉ。
 でも、クリスマスプレゼントだよって言われないと普通分からないんじゃないの?
「マジックにかこつけてくれようとするからでしょう」
 って言ったら案の定快斗は顔を赤くする。
 おかしいなぁ…怪盗キッドってポーカーフェイスが得意なんじゃなかったっけ?
 青子の目の前にいる快斗はどう見てもポーカーフェイスを装ってるふうには見えない。
「だって………しゃあねぇだろ………恥ずかしかったん…だから…」
 そう言ってますます快斗は顔を赤くする。
 その様子をみて青子は笑いをこらえ切れなくなった。
「な、何笑ってんだよ」
「だっておもしろいんだもん」
「あのなぁ……青子、…てぇ、出して」
 まだ笑っている青子に快斗は言う。
「快斗、どっちの手?」
「左」
 その快斗の言葉に青子は素直に左手を出した。
 なんだろう……と考えている間にそのプレゼントはまるで分かっていたかのようにそれにぴったりとはまる…。
「え……快斗……これって……」
「……やるよ。クリスマスだしな…今まで心配かけた…わび。だよ」
「わびって……左手のここでいいの?」
「……まぁな…早いけど………さ」
 そう言いながら快斗は青子の方を見ない。
「青子……」
「何?快斗」
 手にあるソレがすごく嬉しくて…快斗の声に青子は優しく答える。
「…明日あたりさぁ、あの二人が来るって言ってるだろ」
「そうだったね」
「からかわれないように気をつけろよ」
「大丈夫だよ、青子は。ソレよりも快斗…平気?」
 青子はオレの方を心配する。
「オレは平気だよ。………まさかな」
 ふと快斗は呟く。
「快斗どうしたの?」
「……忘年会しそう」
「忘年会か…その時は、快斗よろしくね」
「あのなぁ……。青子、今日一人だよな。泊まってってやるか?」
 快斗は不意に青子にそう言う。
「ホント快斗?」
「あぁ、青子が寂しくないように、オレが側にいてやるよ」
 と快斗は青子に向かって満面の微笑みを向けたのだ!!

〜疾風怒涛・波乱万丈な忘年会へと続く!!〜

*あとがき*
ここから、子供達は夜の住人の忘年会へと続きます。


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