「これで片づいたわね」
「うん、ありがとう志保さん」
「別にいいわよ。暇だし、それに面白いものも見れたしね」
と志保さんは少し微笑みながら言う。
今日はわたしの引っ越しの日。
引っ越しって言ってもそうたいした荷物じゃなく、大人数でやることじゃなかった。
だいたい、わたしの私物って言ったってそんな多くない。
勉強道具とか洋服とか小物とかCDとかぐらいだし……。
あと勉強机。
お父さんが邪魔だからもっていけって言ったのよね。
そのくらいの荷物なのに引っ越し先にいる人数は総勢8人……。
「何でこんなにいるんだ?」
新一が不思議がるのも無理はない。
最初はね和葉ちゃんと青子ちゃん位だったの。
園子には新一の家に引っ越すって言うことまだ言ってなかったし。
所が……。
「えぇ!!!今日新一君の家に引っ越す????」
暇を持て余して(あと宿題を一緒にやろうとおもったらしい)うちに来たら引っ越しの準備をしていた…と言うわけなんだよね。
で、服部君と快斗君は……和葉ちゃんと青子ちゃんに着いてきたと言うわけ。
ちなみに志保さんは……上記の通り暇だから。
何やらにぎやかな新一の家を興味をもってのぞきに来たらしい。
…志保さんも結構好奇心旺盛よね。
「はぁ、なんでここは幼なじみのるつぼなのかねぇ」
園子が新一に入れさせたコーヒーを飲みながらため息をつく。
「どういう意味?」
とわたしが聞くと園子はわたしを見ながら言う。
「……まず、あんた達二人!!!それから服部君と遠山さん、それからあんた達二人にそっくりなあの二人!!」
と青子ちゃんと快斗君を差しながら言う。
「幼なじみは幼なじみを呼ぶのかしらね」
「そうよ、蘭のご両親だって幼なじみなんでしょ」
まぁ、そうだけど……。
そうなのかなぁ……。
「で、鈴木さんは何さっきから書いてるのかしら?」
志保さんの言葉に園子は意味あり気な微笑みを浮かべる。
な、何?
「園子…何考えてるの?」
「フフフ、よく聞いてくれたわね、蘭、宮野さん。これはあのシャッフルロマンスの脚本なのよ!!」
「……って園子去年のがあるじゃないの」
「あのね、蘭。去年よりダイナミックに且つドラマチックにするために書き直してるの」
……園子、大変だったのよ、去年はセリフ覚えるのに。
「大丈夫よ、蘭だったらセリフも演技も完璧よ!!でね、今年はせっかく新一君もいるし、宮野さんもいることだし、もー大変よ!蘭」
園子は一人で盛り上がりを始める。
「これで、怪盗キッド様がいればなぁ……」
ふと園子は呟く。
一瞬にしてあたりは静まり返る。
「な、何?わたし変なこと言った?」
その異様な静まり方に園子は慌てる。
無理もないよね、園子は怪盗キッドが誰かなんて知らないんだもん。
「怪盗キッドはもう出ないんじゃないのかしら?」
と志保さんは呟く。
「そうなのよねぇ。あぁ、いい案考えてあるのよぉ。蘭、聞いてくれる」
「何?園子」
とわたしが聞くとそれは……実際にやったら新一が怒りそうな内容だった。
「まずね、怪盗キッド様が颯爽と舞台上に現れて蘭扮するハート姫を新一君扮するスペイド王子から連れ去ってくの!!!」
「……で……」
「でね、でね、スペイド王子とキッド様が対決するのよぉぉ!!!」
と園子は楽しそうに言う。
「あら、それ面白そうね。怪盗キッド…とまでは行かないけれど、相当なマジックの使い手だったら彼がそうよ」
と志保さんは快斗君をさす。
って……志保さん快斗君の事知ってるの?
「知ってるも何も、彼はあの世界的マジシャン故黒羽盗一氏のご子息でしょ」
その言葉につられて快斗君がやってくる。
「なに?何の話し?」
「快斗君のお父さんの話し」
「うわぁ、ホント新一君そっくりねぇ。ねぇねぇ、帝丹高校の文化祭に出るつもりない?」
「え?」
「園子!!!」
「もぉ。冗談よ冗談」
そういう園子の目が何となく本気モード入っていたような気がするのはわたしだけ?
でもそれが冗談ではなくカナリ本気だったと言うことがアトになってわかったのだけれどね。
園子が席をたち何故か服部君達の方へ行った時だった。
「お久しぶりですね、お嬢さん…」
と快斗君がキッドの口調で志保さんにはなしかける。
「あら、覚えていたのね」
「えぇ、あなたのように美しい方は忘れませんから」
と快斗君は言う。
って事は快斗君と志保さんって知り合いなの?
「まぁね、新一がおっていた組織とオレがおっていた組織が一緒だったのは知ってるでしょ?その関係でね」
志保さんは…その組織にいたから…その時にあったのね。
「ホントに、工藤君にそっくりなのね。あなたって」
「興味が湧いてきましたか?」
「冗談言わないで。あなたまで研究してたら時間がいくらあってもたりないわ」
……なんか嫌な会話。
志保さん…まだ……。
考えるのやめよ。
「かーいと、何話してるのかなぁ?」
突然、青子ちゃんが快斗君に後ろから抱きつく。
「あ、青子!!!いきなり何しやがんだよ」
「何って別に快斗に抱きついただけだよ。嫌なの?」
「……別にいいですけどね…」
そんな快斗君と青子ちゃんを見て志保さんはクスっと微笑む。
「やきもち…ね。私帰るわ。この後用事が待ってるし…」
「え、宮野さん帰るの?だったらわたしも帰るわ」
志保さんの言葉に園子が反応する。
「二人とも帰るの?」
「まぁね、この後用事あるし、それに。あんた達のラブラブーの中に相手がいない私がいたって楽しくもなんともないじゃないのよぉ!!」
そう言って園子&志保さんは帰っていった。
はぁ、京極さんにあえない寂しさはわかるからなんとも言えないなぁ。
「そうだ、快斗。夜中に遊びに来るなよな!」
突然、新一が快斗君に向かって言う。
「何で、いいじゃん。あ…分かった!邪魔されたくないんだろぉ」
「分かってんならくんじゃねーよ!!!」
「だってぇ、キッドやめてから暇なんだもん」
「だからってなぁ、暇つぶしにオレの家に来るな!!!」
「ケチ」
その快斗君と新一の会話を聞いていた青子ちゃんが突然驚く
「快斗ってば夜中いないと思ったら新一君の所に来てたのぉ?駄目だよ、迷惑掛けちゃ」
「えぇなぁ、快ちゃんは簡単に工藤のところに来れて」
「平次、何いっとんの?連休の度につきあうアタシのみにもなってや」
「せやったらついてくんなや」
「アタシがおらんかったら平次、何やるかわからんやんか」
「あのなぁ!!」
和葉ちゃんと服部君はまた口げんかを始めてる。
快斗君は青子ちゃんと話してる。
なんか…すごくこの空気が気持ちい。
ホッと出来る。
「蘭、どうした…」
新一が突然声をかける。
「何が?」
「なんか微笑んでるから……」
「平和…だなぁって思って」
「まぁ、そうだな」
新一はそう言いながらわたしの肩を抱き寄せる。
「新一…」
「ん…」
「これから…よろしくね」
「…っこ、こっちこそ」
「な、何どもってるのよ」
「急にそんなこと言いうからだろ」
そう言いながらの新一の顔は赤い。
急に言いたくなった。
凄く今幸せで、この幸せがなくならないように祈ってて、でもいつかなくなってしまいそうで怖くて……。
「わたし…幸せだよ。新一とこうしていられて、みんなに逢うことが出来て」
凄く、そう思う。
だから、これからも幸せになる。
きっと新一とだったら。
ね。
蘭が幸せそうにオレを見つめる。
そうだ、蘭に見せたいものがあったんだ。
「蘭…ちょっとつきあって欲しいところがあるんだけど…」
オレは蘭にしか聞こえない声でささやく。
「なんで?」
蘭は不思議そうにオレに聞く。
「見せたいものがあんだよ」
「見せたいもの?」
蘭の言葉にオレはうなずく。
とりあえず、オレと蘭はちょっとだけ出かけてくると声を掛け車で出かける。
そこはとある高原。
まだ、時間的にはまだ少し早いので、近くにある父さん所有の別荘に向かう。
蘭を中に通す。
「素敵な別荘だね」
「完璧に母さんの趣味だよ、ココは」
「でも、新一のお母さんって趣味いいじゃない」
「そうか?」
「そうだよ」
「まぁ、少女趣味じゃないっていうのは救いだけどな」
オレの言葉に蘭はそうかなと言ってクスリと笑う。
「ねぇ、新一どうしてココに来たの?」
「え、夜までの秘密」
「夜までって…みんなどうするの?」
蘭はオレの言葉に驚く。
あれ、言ってなかったっけ?
「あいつらは大丈夫だって…。それに、夜じゃないと…蘭に見せられないんだ……」
オレの言葉に蘭は不思議そうな顔をした。
「ちょっと出かけてくる言うて…もう5時になるで」
「ホントだな…もう4時間経ってるよな……」
「アタシさっき工藤君に聞いたんやけど……」
「青子も聞いたよ」
「ホンマ?」
「うん」
「そんなら…勝手に台所使わせてもらおうか」
「そうだね」
二人の彼女の会話に二人の彼氏は首をかしげた。
「和葉、何聞いたんや?工藤に」
「工藤くん、蘭ちゃんに見せたいものあるんやって…」
「だから、平次君と快斗を足止めしてくれって頼まれたの」
と二人の彼女の言葉に二人の彼氏は顔を見合わせる。
「なんやねん」
「さぁ?」
「きっと……」
「なぁ、多分そうやろね」
「だよね」
「えぇなぁ、うらやましいわ」
「うんうん」
そう言って夕食を作り出した二人の彼女に二人の彼氏はますます首をかしげるばかりだった……。
夜の帳があたりを支配し始めるころ…オレは蘭の手を引いて目的地に向かう。
「ねぇ、新一、ホントに、変なことしない?」
「しないってんだろ」
ちなみに蘭は目隠し中。
「ねぇ、どこにいくの?」
「着いたら教える。もう少し信用しろよ」
「してるわよぉ」
そう言って蘭はオレの手をギュッと握る。
目的地に着き蘭の目隠しを外す。
「蘭…目を開けていいよ」
オレはそう蘭に告げる。
「うわぁ……始めてみた…、これ…ホタルだよね」
蘭の言葉にオレはうなずく。
今、オレと蘭の目の前に広がるのはたくさんのホタル達。
「光の絨毯みたい…」
蘭はそう言ってホタル達に見ほれる。
そんな蘭に見とれてしまい……、本来の目的を思わず忘れそうになる。
「蘭……」
「何?」
蘭がオレの方を向く。
「どうしても、言いたいことがあるんだ…。後でもいい…そう思ったときもあったけど…」
そう、オレは言うことを決めた。
まだ、言わなくても良い。
そう思ったこともある。
だけど…、オレは嫌なんだよ。
それだと。
そのままだと。
「蘭……今はまだ…同棲って言うカタチでしか一緒にいられないけれど……。オレがきちんと誰の力も借りないで…蘭と生活できるようになったら…オレと……、結婚して欲しい…。結婚して下さい」
「………え……?」
いえた。
言った!!!
ずっと言おうと思ってたこと。
「…し…んいち……それ…ホント?」
小さな声で蘭が呟く。
「嘘なはず無いだろ」
「ホントにホント?」
「あぁ」
蘭の言葉にオレは力強くうなずく。
蘭以外には考えつかない。
他に誰がいるって言うんだ?
「ありがとう…新一」
「蘭…」
「凄く嬉しい、新一がちゃんとわたしのこと考えてくれていて」
そう言った蘭の声は少しだけ涙声だった。
「蘭のことなんていつでも考えてんだぜ」
そんな蘭をオレは優しく抱き締める。
オレはいつでも蘭のこと考えてる。
どうしたら幸せにできるか。
どうしたら泣かせないでいられるか。
どうしたら…蘭を守れるか。
その事しか考えてない。
オレは蘭の体を離しあるものをとりだす。
そして蘭の手首を掴む。
「な…何?」
「それまでの…予約と言うか…約束というか…」
そう言ってオレは指輪をはめる。
「し…新一?」
「なんだよ」
「ど、どうしたの?これ」
はぁ?
蘭の言葉にオレは面食らう。
普通…こう言うのって嬉しいもんじゃねぇのか?
「…どうしたのって…買ったんだよ」
「買ったって…いつ」
「ずっと前…」
「ずっと前っていつよ」
蘭はしつこく聞いてくる。
「あのさぁ、蘭」
「なによぉ」
「ちょ、ちょっと待てよ、何で泣いてんだよ」
急に泣きだした蘭にオレは戸惑う。
何で泣いてんだよ。
「嬉しいからに決まってるじゃない。もう、急にプロポーズなんかして、指輪までくれちゃって喜ばない奴がどこにいるって言うのよバカ」
そう言って蘭はオレに抱きついてくる。
「蘭…」
「何?新一」
「必ず、絶対に蘭の事幸せにする。約束するよ、蘭」
「うん…、わたしも新一の事幸せにする」
天から降り注ぐ星の光と…あたりに小さく光っているホタルの光が同調してオレと蘭は宇宙にいる感じになる。
きっと幸せにする。
約束するよ。
〜夜中:帰ってきた家主の二人を思いだし二組の彼氏彼女の怪しい(?)たくらみ中〜
「蘭ちゃん…幸せそうだったよね」
「そうやね」
「でも入籍せぇへんのやろ?」
「すればいいのにな。それをネタにからかえるのにさ」
「駄目だよぉ、からかっちゃ」
「いいじゃねーかよ」
「あのなぁ、アタシ、えぇこと思いついたんやけど…」
「何?」
「昼間、鈴木さんおったやろ。彼女とちょっとだけ話したんやけどな」
「…文化祭のことでしょ?わたしも聞いたよ」
「ホンマ?協力したってもえぇと思ったんやけど、平次も協力してや」
「…面白そうやし…まぁ、えぇか」
「快斗もだよ」
「わーったよ。この怪盗キッド様が盛り上げて差し上げましょう!!!」
〜electric plophet〜
君に見せたい所がある 世界中で一番きれいな場所
エメラルドグリーンの海と白亜の宮殿と地下に広がる迷宮 夕闇に光るたくさんの島々からの光
ホントならすぐに君を連れていきたいけれど それは無理だから
でもいつか必ず君を連れていく
電気じかけの予言者たちが教えてくれたんだ 僕と君は必ず幸せになれるって
君を愛しているのは僕だけ そばにいるのも僕だけでありたい
世界中で一番の夜を 世界中で一番の君にプレゼントする
まだ君をそこに連れていけないけれど いつか必ず君をそこに連れていく
いままで何も出来なかったけれど
これから先の事を考えたら
その時のことはもしかするとたった一瞬のことなのかも知れない
君が大切にしているものがある
君の親友 君の両親 君の大切なもの
それは全部君のものだから 君は君のままでいいんだから
何も不安になる必要なんてないんだ 何も怖がる必要なんて無いんだ
僕は君の側にずっといるから 何もかも頼って欲しい
僕は君に甘えられること 頼られること 全然きにしてないんだから
これから一緒に暮らしていくからいつか必ず金色の夢を見せてあげるよ
僕等は未熟だけど 全てこれからのために 毎日を 毎夜を
君と二人で生きていきたい