くっきーweek 君に逢う為に生まれた〜番外編〜

1日目
 始まりはその日の放課後からだった。
 調理実習等でおかしを作るときは女の子達は誰にあげるかを相談するもので…
 そして、大半の女の子って言うのはあこがれのカッコイイ男の子にあげるもので……。
 大概、わたしの見てる範囲での場合、
「工藤君、今日の調理実習でお菓子(クッキーとか)作ったから食べて」
 と言う光景が繰り広げられる。
 等のもらう本人は、
「マジで?ありがとう!」
 そう言ってその女の子からお菓子をもらう。
 そして、周りの男の子にばらまく!
 わたしはそれを毎回見ていた。
 それは今回もやって来た。
 今週の調理実習は全クラスともクッキーを作るらしく、女の子達は誰にあげるかって言うのを話しあっていた。
 そう、その放課後、作ったクラスの女の子達がやって来た。
「工藤君、今日の調理実習でクッキー作ったから食べて」
 と言うのがやって来た。
 毎度のことだし、分かってる。
 新一はかっこいいし、サッカーはうまいし、それに運動神経はいいし、成績は学年トップだし、しかも高校生探偵だし…。
 はぁ、分かってるの、分かってるのよ!!!
 でもね納得いかないわけ。
「蘭って言う彼女がいるのにまぁまぁどうしてあぁもやって来るんだろうねぇ」
 園子がわたしの心の中を見透かしたように言う。
「なんか、蘭さんが居ようが居まいが関係ないみたいね。」
 と、志保さんが言う。
 ふぅ、こんな状態が一週間続くのか……。
 憂鬱…。

2日目
 新一と帰ろうと思ったとき女の子達がやって来て、
「工藤君、今日の調理実習でクッキー作ったから食べて」
 そう行って新一にクッキーを渡す。
 しかも、わたしの目の前で。
 昨日はわたしの目の前じゃなかった。
 新一他、男の子達の前でだった。
 まぁ、それを横目で見ていたけど。
 なんでよりにもよってわたしの目の前な訳?
 嫌がらせ?
 それとも挑発?
 ちょっとムッてくる。
 でも、当の本人は帰ることを忘れ、まだ教室に残っていた男の子達と一緒にクッキーを食べ始める。
 もーーーーーーーーー、帰るんじゃなかったの?
「新一、わたし、先に帰るね!!」
 そう言ってクッキーをおいしそうに食べようとする新一をおいてわたしは教室を出る。
「まてよ、蘭」
 追いかけてくる新一を無視してわたしは昇降口に向かう。
「なぁ、蘭。あ、もしかして妬いてるの?」
「妬いて何かないわよ」
 追いかけてきた新一の言葉に思わず反論する。
 ホントは腹が立ってしょうがないのに…。
「ふーん」
 新一はわたしの反論に意地悪そうに笑う。
「何よ」
「別に、ほら、蘭帰るぞ」
 そう言って新一は先に行ってしまう。
 もう、わたしの気持ち分かってるのかなぁ。

3日目
 化学の授業が終わり、わたし達は化学実験室から元の教室へと戻る。
 家庭科の授業が終わったらしい女の子達がわたし達とすれ違う。
「工藤君の彼女ってどんな人か知ってる?」
「んーーーー詳しくは知らないけど、空手やってるって聞いたことあるよ」
「えーやっだー空手???」
「あ、あの人だよ、あれが工藤君の彼女」
「へーーーーやっだー」
 何、何、何、何ナノ?
 わたし何かやった?
 わたしが新一の彼女じゃ悪いってこと????
「ら、蘭?」
「何よ、園子」
「少し落ち着いてよ。あんなの聞いたって別にいいじゃない。」
 園子がわたしの怒りに気がつき焦って言う。
 分かってる、分かってるの。
 落ち着かなくっちゃって思っててもなんかムカツクのよ。
4日目
「すいません、工藤君って今どこにいるんですか?」
 昼休みに入ったときクッキーを持った女の子達がやって来る。
「新一君?蘭、新一君どこ行ったか知ってる?」
 園子がわたしに新一の居場所を聞いてくる。
 新一は朝から事件で学校に来てないことはクラス中が知ってること。
 それでも、園子がわたしに聞いてくるって言うことは昨日のことをわたしがまだ気にしていると思ってるからだと思う。
 気にしてるわよ。
 気にしてないほうがおかしい。
 なんか凄くばかにされた感じで。
 そう、なんか「あんたなんかより、アタシの方が工藤君にはお似合いよ!!」なんて言ってる感じで!!!
「蘭、聞いてるの?新一君、どこ行ったか知ってる?」
「新一なら、事件だって。朝、新一(と)の家でご飯食べてたら携帯に掛かってきてそのまま現場に直行!!!」
 半分怒りながら少し、自慢(毎日新一の家で朝ご飯一緒に食べてるんだよ!)をさりげなく入れて言う。
「そうなんだ、せっかく、工藤君にクッキーあげようと思ったのに。事件かぁ」
 そう言って女の子は自分の教室に戻っていく。
 な、何ナノよぉ!!!!
 わたしの自慢はどうでもいいわけ???
 くっそーーーーーーーーーーーーーーー!!!!
「蘭、あんた毎日新一君の家でご飯食べてるの?」
「な、何で分かったの?」
 園子の言葉に驚く。
 なんでそう思ったの?
「あ、やっぱりそうなんだぁ。仲いいわね」
「う…………」
 園子にカマ掛けられてしまった…。
 園子って妙に鋭いところあるしなぁ。
「で、明日はご飯一緒?」
「分かんないよ。事件が終わったら電話掛かってくるからそれまで分かんない」
「まめねぇ」
 へ?
 まめ?
 誰が?
 新一が?
「毎回事件が終わった後に電話してくるんでしょう。まめじゃない」
 そうなのかなぁ。
 まめなのかなぁ。

最終日の放課後
 家庭科の実習というのは女子のみなので2クラス合同となる。
 一応、うちのクラスにも新一のファンの女の子はいるのだが、園子曰く
「あんた達二人に目の前でラブラブされちゃ何にも出来ないわよ」
 らしいので(でも目の前でラブラブやってるつもりはないよ!)、うちのクラスの女の子からの新一へのクッキーは園子&志保さんの「嫌がらせクッキー」とわたしの愛情たっぷり(キャッ)のクッキーのみとなる。
 なんだけど……問題は合同でクッキー作っているクラスの女の子達なのよぉ。
 そのクラスは、合同でうちのクラスと色々やることが多いので、必然的に新一ファンが多い。
 そうなるとやっぱり、でてくるのは
「工藤君、今日クッキー作ったの」
 って言う女の子達!
 しかもわたしが今すぐにあげようと思った目の前で。
「お、サンキュ」
 そう言って受け取る推理バカ!!!!
 なんで受け取っちゃうのよ。
 わたしのクッキーの立場はどうなるわけ???
 もう、我慢の限界。
 入れ替わり立ち替わりやって来る女の子達に頭に来て言ってしまった。
「新一のバカ!!!!」
 頭が真っ白になりわたしは教室を飛びだした。
「あら、とうとう怒っちゃったわね」
「ちょっと私、蘭のところに行ってくる」
「そうしたほうがいいわね。私はこっちをどうにかするわ」

屋上
 新一のバカ。
 わたしのより先に他の女の子の受け取ることないじゃないの。
 どうして、せっかく新一の為に作ったのに。
 ……他の女の子もそうだってわかってる。
 でもね、やっぱりね、わたしのは他の誰のよりも先に受け取って欲しかったの。
「蘭、そのクッキーどうするの」
 園子がやって来る。
「捨てようかな……」
「もったいないじゃないの」
「もったいない?」
「せっかく新一君のために作ったんでしょう?わたしが、蘭の変わりに新一君に渡してくるから、ちょうだい」
 そう言って園子はわたしが手に持ってるクッキーを奪おうとする。
「そ、園子」
「どうするの?自分で渡す?」
 園子の言葉にうなずき、わたしは教室へと戻る。
 教室に入る前に会話が聞こえてくる。
「工藤、毛利のクッキーもくれんだろう」
 と一人の男の子言う。
「何でだよ」
「なんでっていつも他の女の子のやつ、くれんじゃん」
 最初の声と違う男の子が言う。
「やらねーよ。蘭のはやらねー。だから、他の子からもらってるやついつも全部オメーらにやってんだろ」
 と新一。
 え???
 ど、どういうこと?
「蘭が作ったのはオレのだ!!!」
 ちょ、ちょっと。
 なんでそんなうれしいこと言ってくれちゃうわけ?
「俺達も毛利の作ったやつ食いてーよ」
「絶対にやらねーよ」
 ……入りずらい。
「あら、蘭さん何やってるの?」
「あ、志保さん」
「クッキー、工藤君にあげるんでしょう」
 志保さんの言葉にうなずく。
「だったら早くあげてきたら」
 ウン。
「新一、はい、クッキー」
「おう、サンキュ」
 今の会話を聞かれていたと思って恥ずかしくなったのか新一は顔を赤くする。
「毛利、クッキー俺達にもくれない?工藤のやつやらねーって言うんだぜ」
 と男の子達は言う。
「やらねーーーーっていったろ。蘭の作ったやつはオレが食うの。蘭、帰るぞ」
 そう言って新一は何か怒りながら行ってしまう。
「ごめんね」
 そう謝りながら新一の後を追いかける。
「おいしい?」
 歩きながらつまむ新一にわたしは尋ねる。
「あたりめーだろ。蘭が作ったやつだしな。蘭が作るやつは全部おいしいって」
 と新一は言う。
「ありがとね」
「バーロ。礼を言うことじゃねーだろ」
 うれしかったんだよ。
 なんか凄く。
 散々な一週間だったけど、最後はすっごく幸せ。
「蘭、今日は夕飯一緒に食べられるんだろ」
「ウン。って、新一の方こそ大丈夫?」
「大丈夫」
 そう言って新一はすっごく優しい微笑みをわたしに向けたのでした。

*あとがき*
くっきーweek。珍しく歌のタイトルがついてないリク小説。


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