あの人を好きだと思ったのはいつのことだろう。
何でも知っているあの人に、僕は尊敬の念を抱いた。
それと同時にあの人と対等に会話している彼に…嫉妬を覚えたのは…。
僕は最初は彼を好きになれなかった。
僕より何でも知っていて彼女の気を引いていたから僕は好きではなかった。
けれど、彼はそのことを自慢に持つわけでもなく、さも知っていることが当然の様で…その知識の広さは僕に尊敬の念を抱かせた。
だけど…。
あの人と対等に会話している彼に…僕は勝てるはずもなかった。
「…大切なのはその知識を誰に聞いたかじゃなく、どこでそれを活用するか…だと思うわ。そうじゃなくって?」
その言葉で僕は目が覚めた。
だから、僕は彼に勝ちたいと強く思っていた。
「ふぅ…ったりーな」
「何がですか?コナン君」
「何がって…オメェには関係ねぇよ」
そう言ってコナン君はため息をつく。
「蘭おねえさん。コナン君の事心配してたよ?ダメじゃない、蘭おねえさんに心配かけちゃ」
「あのなぁ……」
「あら、今更言われることじゃないって言いたそうな顔ね。それよりもあなた小言言われることが嬉しいって顔に書いてあるわよ」
「ん?分かるか?灰原」
そう言ってコナン君は嬉しそうに灰原さんの声に答える。
「なぁ、コナン。オメェ、そんなに転校すんのが嬉しいのかよ」
「えっ…そういう意味じゃ…ねぇよ…」
元太君の言葉にコナン君はうつむきながら答える。
そうコナン君は来週に転校してしまう。
おうちの関係でと…コナン君は言っていた。
コナン君のお姉さんの蘭おねえさんも言っていた。
「……コナン君が転校してしまうのも…もう少しなんですね」
「ねぇ、どうしても、転校しなくちゃダメなの?コナン君。コナン君だけ…そうよ、蘭おねえさんの家にずっといるって事ダメなの?」
「…そういうわけにも…イカねぇんだ。オヤの……都合って……訳…。どうしても…オヤと暮らさなくっちゃなんなくってさ。まぁ、どうでもそれは良いんだけど……」
いやに歯切れの悪いコナン君の言葉。
僕は何故か納得が行かなかった。
「わたし、コナン君と離れたくないよ」
「…ワリィ……。な…歩美…、元太、光彦」
そう言ってコナン君は僕たちに言葉を掛ける。
「まぁ、オレが転校するのも明日って訳じゃねぇんだからそんなしょげるなよ」
「そうですよね。では、コナン君が転校するときにはお別れパーティをしましょう。そうだ、蘭おねーさんも呼んで」
「そうだよ」
僕と、歩美ちゃん、元太君とで話しは盛り上がっていく。
「とんでもないことになったって思ってるんじゃないの?」
「だったら…フォローしろよ。……灰原…」
「何?」
不意に気付く。
コナン君と灰原さんが二人の世界をつくって会話していることに…。
「良いのか……オメェは…」
「何度も言ったはずよ。わたしにはココしかないって……」
「…あんなに……」
コナン君と話しているときの灰原さんは…いつも何故か凄く哀しそうに見えます。
僕はそれを知ったとき見てはいけないものを見たような気がしました。
僕は分かってしまったのかも知れないのです。
僕は…気づいてはいけなかったのかも知れないのです。
灰原さんはコナン君を好きだということに。
コナン君はそうでもないみたいなんですが。
「意味がないもの」
「意味がない?」
「そう、意味がないのよ。わたしが…そうしたって…」
コナン君は黙って灰原さんを見ていました。
不満そうに。
納得が行かないと言う顔をしていました。
「…コナン君、灰原さんと何話してたんですか?やっぱり…アダルトな会話ですか?」
「はぁ?オメェ何言ってんだよ。アダルトな会話ってなんだよ」
「ナンカ…何でも分かりあってるような…そんな雰囲気を持ってるじゃないですか」
「何でも分かりあってるねぇ」
嫌そうにコナン君は言葉をつなげる。
「分かりあってるっつーか…まぁ、似たような境遇だからなぁ…灰原とは…」
「どんな境遇ですか?」
僕の言葉にコナン君は少しだけ不思議な表情した。
「…両親が近くにいない。似てるだろ」
そう言って自嘲気味に微笑んだコナン君に僕は違和感を感じる。
それは…ウソなんではないだろうか。
気のせいかも知れないけれど…。
「それより、光彦。オメェ本気で灰原のやつに惚れたのか?」
「なっ何を急に!!」
ズバリ、言われると照れますけどっ。
いや、実際そうなのかも知れないけどっ。
改めて指摘されるとナンカ…こう…。
「止めとけ…アイツはオメェの手にはおえねぇよ」
「そんなことないですっ。じゃあ、コナン君の手だったらおえるって言うんですか?」
「…灰原には…そんな気も起きねぇよ。なあ、光彦。アイツのどこに惚れた?」
「えっ…。そうですねぇ。何でも知ってるところとか優しい所とかですかね」
「アイツが優しいねぇ…。オレにはとてもじゃねぇけどそうは思えねぇな」
そう言ってコナン君はため息をついた。
「…行っちゃったね…」
僕の隣で歩美ちゃんが寂しそうに呟く。
「住所…聞けたんだろ。光彦」
歩美ちゃんの言葉を受けて元太君が僕に聞いてくる。
コナン君は今日ご両親が迎えに来て行ってしまいました。
「いえ…住所は聞けませんでした。どうやら、ご両親が各地を転々とするらしく…一つの所に一ヶ月もいないそうなんです。そうすると住所や電話番号を教えてもすぐに変わってしまうからと言って……。お父さんが…携帯電話を持っていらしいんですが…お父さんの番号を言うわけには…と」
「そっか…」
僕の言葉を歩美ちゃんはしずかに聞いていました。
見送りの場所。
この場所に、いるのは僕と、博士と、歩美ちゃんと元太君のみ。
灰原さんは…きませんでした。
「私、そう言うの嫌いなの」
そう言って。
僕や歩美ちゃんや元太君が
「もう、二度と逢えなくなってしまう」
と言っても灰原さんは首を縦に振りませんでした。
それよりか…じっと…耐えている様子でした。
夕方の公園。
家にかえってから僕は、この公園が気になりました。
何故だか…分からなかったのですが。
前、一度灰原さんも一緒に遊んだ公園だからでしょうか…。
「っ………円谷君っ」
「灰原さん?どうしたんですか?何があったんですか?」
その公園で灰原さんは顔を涙にぬらし泣いていました。
「何も…ないわ……ただっ…ただっ」
そう言って灰原さんは涙を拭きます。
「どうして……涙を拭くんですか?」
不意に聞いてしまいました。
何故だか分からないのだけど…。
その行為が僕には凄く不思議に映ってしまったのです。
「止めるために決まってるでしょう。バカなこと聞かないで」
「泣くのをやめるんですか?」
「みっともないでしょう。泣いてるなんて」
「みっともなくなんかないですよ。灰原さん。泣きたいときは思いっきり泣くべきです。泣いて良いんですよ」
「どうしてっそういう風にいうのよっ」
そう言いながらもあふれてくる涙を拭きながら灰原さんは言います。
僕は…その時初めて灰原さんが感情を表に出すのを見ました。
クールな一面しか知らなかった事に少なからずもショックを受けましたが…新たな一面を知り何かしら優越感に浸ったのも事実です。
「灰原さん…コナン君の事……好きだったんですよね……」
「ちがっ……違う…わ……。そんなんじゃない…そんなんじゃない…。好きなんかじゃない…………」
そう言って泣きだしてしまった灰原さんに僕はハンカチを貸しました。
「何?円谷君」
「使って下さい。僕のハンカチで涙を拭いて下さい。僕のハンカチがびしょびしょに濡れるまで泣いても良いですから。使って下さい。僕はずっと灰原さんの側にいますから……」
「どうして?どうして側にいてくれるわけ?」
「そっそれは………。灰原さん、僕は、灰原さんが好きだからです」
「えっ」
灰原さんはそう言って顔を上げます。
「…私のどこが…好きなの?」
「何でも知っていて博識じゃないですか。何でも知っていて…、大人っぽいし…。それに優しいじゃないですか」
「…バカね…優しくなんかないわ…」
「優しいですよ。僕は知っています。灰原さんがどんなに優しいのかを。ただ…それを表に出せないだけなんですよね…。不器用なんですよ」
「不器用……そうかもしれないわね」
そう言って灰原さんは微笑みますが、まだ涙は止まらない様子でした。
「灰原さん…」
「何?」
僕は意を決して言います。
「灰原さんの側にいていいですか?」
「きゅっ急に何を言いだすかと思えば…」
「泣いている灰原さんを一人にしておくなんて僕には出来ません。泣きやんで下さい、なんて言いません。僕は黙って側にいようと思っているんですから」
そういう僕に灰原さんは半ば呆れながら言います。
「ホント…言いだしたら引かないんだから…。私、あなたを困らすぐらい泣くわよ。それでもいいの?」
「構いません。そのくらいの覚悟は出来ています」
意を決していった言葉に灰原さんは泣きながら笑います。
「なっ何で笑うんですか?」
「笑ってるんじゃないわ。驚いてるのよ…。あなた本当に小学生?小学生に…見えないんですもの……。ありがとう…円谷君…。あなたのおかげで私立ち直れそうだわ…」
そう言って灰原さんはまだ涙で濡れた顔でニッコリと微笑みました。
今までの灰原さんからでは想像のつかない笑顔でした。
数年後
「光彦君?観てないよ。元太君は見た?」
「いや、見てねぇなぁ。アイツも忙しいからなぁ」
「そう……分かった。もう少しさがしてみるわ」
私はそう彼等に言ってその場を立ち去る。
あれから……そう、組織の脅威が私の身の回りからさって10年…。
私達は高校生になっていた。
正常な時間を18年そして…偽りの時間を10年すごしてきた私にとってこの10年はなんだったのだろうと…少し考えさせられてしまう。
それでも…自暴自棄にならずにすんだのは……。
博士や、歩美(小2の頃からこう呼ぶようになった)や小嶋君そして…彼の存在があったからだと思う。
「…やっぱり、ココにいたのね」
屋上の日の当たる温かい所に来ると案の定彼は眠っていた。
彼は今、高校生探偵として世間に騒がれている。
あの、高校生探偵工藤新一の再来と叫ばれ、それでもあまりマスコミに出たがらない彼は当時の工藤新一とは別の意味でマスコミに騒がれていた。
「風邪、引くわよ」
そう言った私の声に彼は気づかない。
「眠ってるのね…。…現場に行き過ぎよ…」
そう呟いて、私は彼の隣に座る。
こういう間も…もう10年…。
「ん……あっ哀さん」
「ふぅ…目が覚めたのね。光彦」
「僕…眠ってしまったみたいですね…すみません」
「何を謝るの?謝る必要なんてないんじゃない?」
そう言った私に彼は微笑む。
彼の笑顔は10年変わっていない。
「そうだ、忘れてた、工藤…工藤さんから電話があったわ。事件だそうよ。現場へのお誘い。行く?それとも、断る?」
「いつ?あったんですか?」
「ついさっきよ。電話くれって言ってたわ」
久しぶりに聞いた工藤君の事件解決直前の声。
相変わらずの様で、蘭さんに同情してしまう。
「そうですか…。分かりました。哀さん、行きましょう」
「なっ何言ってるのよ、急に」
突然の言葉に私は面食らう。
「急にじゃありません。僕はずっと考えていたんです。哀さんのおかげで僕は今まで事件を解決できたようなものなんですよ?」
「あなたねぇ、犯人がいるかも知れない現場に行ったら危険だとかって思わないわけ?」
そう言っても彼は引かない。
それどころかシレッとした顔で
「大丈夫です、哀さんの事は僕が守ります。これでも、一通り護身術は習ったんですよ。実践も何度かあります」
そう答えた。
「なっなんですって、私そんなの初耳よ。いつそんなことになってるわけ?」
「いつって、この前の連続殺人事件の解決を工藤さんと行ったときですかねぇ、近いところで」
近いところでって……。
「心配しないでください。かすり傷一つもおってないんですから」
「そういう問題じゃないでしょう。あきれた人ねぇあなたって人は」
「そうですね。でも、これ全て哀さんを守るためのことなんですよ」
そう言って彼は私を見つめる。
「……今…言った言葉にウソはないわね」
「哀さんを守るためって言ったことですか?もちろん、ウソ偽りなんてないですよ」
「しょうがないわね。ついてって上げるわ」
マスコミをにぎわせる高校生探偵コンビが誕生するのはすぐ後のことだった。
余談:
歩美と元太は喧嘩っプルとして有名らしい。
余談番外編
新一×蘭
高校を卒業と同時に入籍、大学を卒業して結婚式を執り行う。
ただ、この結婚式が食わせ物だった……。
結婚式から数年後、コナンと言う男の子が生まれる。
平次×和葉
高校を卒業後同棲生活に突入。
大学卒業と同時に入籍、とある二人との合同結婚式をたくらみ、見事成功する。
とある二人というのは新一×蘭。
新一×蘭と平次×和葉の結婚式には総勢200人もの人が参列する。
警視庁と大阪府警の刑事が多数会場に参列し異様な雰囲気を醸し出していたのは言うまでもない。
結婚式から数年後、女の子が生まれる。名前は静葉。
快斗×青子
高校卒業後に同棲生活に突入。
大学卒業し数年後に結婚。
場所はとあるTowerの最上階(80F)の大聖堂。
快斗のプロポーズは「ココから見える全ての景色をあなたに差し上げます」と怪盗キッドモードでセリフを吐く。
その様子に新一と平次の両方から突っ込みが入ったとか入らなかったとか。
余談番外編の話し。
光哀数年後を考えているうちに、あの6人はどうなってるんだろうと考えた。
そしたら快青編で異様に萌える。
Towerというゲームをご存知だろうか。
このシミュレーションゲーム。難しすぎである。シムシティ2000の方が簡単。
で、このゲームのビルを5つ星にすると大聖堂が屋上に設置できるのである。
とまぁこのことを思いだし、快斗にキザに青子に言ってもらおうと…思ってしまったことから余計な余談が生まれてしまったのである。
タイトルのGirl FriendはもちろんTM。
『ぼくらの7日間戦争』の挿入歌。これ…BLUEにしか入ってないのね。
「7Days War」のカップリングなんだけどアルバムさがしてて……ん?BLUEにしか入ってないって気がついた。