忘年会と新年会とカウントダウン 子供たちは夜の住人〜We Love The Earth〜

 事件という事件がなかったのでゆったりとしたクリスマスを送り、まどろみの時間というなの朝をオレは当然のごとく蘭と共にすごしていた。
 願わくば、お正月まで事件がなければいい。
 そう心に願ってはみても、多分、そうも行かないだろう。
 だけれども、そんな時間が来ないことを祈りながらオレはまだ眠っている蘭を腕に抱いてぼーっとしていた。
 そして、ころ合いを見て蘭を起こす。
「蘭、オハヨ」
「オハヨ、新一」
 蘭はオレの顔を見てニッコリと微笑む。
 相変わらず、オレはこの微笑みに弱い。
 この微笑みだけはなくしたくない、そう思う。
 蘭にどれだけ助けられてきたか、それはオレが一番よく知っていた。
「新一?今、何時?」
 蘭がオレに聞いてくる。
「今?まだ9時だけど」
「もう9時なの?起きなくちゃ」
「起きるって…せっかく冬休みに入ったんだからもう少しゆっくりしてようぜ、蘭」
「あのねぇ」
 そう言って蘭は起き上がる。
「冬休みに入ったからこそ、ゆっくりはしてられないのよ。うかうかしてたら年明けちゃうわよ。やること一杯あるんだからね。それに、一応は受験生なんだからね。新一そこの所はわかってるの?」
「わーってるよ」
 あんまし、受験生っつーのも意味ねぇんだけどな。
 エスカレーターだし。
 自慢じゃねぇけど、全国模試10位以内に入ってるし。
「でも、ダメ。起きるわよ、新一」
「ハイハイ」
 蘭の言葉にオレはしぶしぶながらも起き上がる。
 しぶしぶ…じゃねぇのかも。
 蘭の言動に顔が笑ってんだからな。
 朝ご飯の最中。
「ねぇ、新一。大掃除いつからやる?。この家広いじゃない?どうせなら早めに片づけてゆっくりしたいなって思ってるんだけど」
「別にする必要ねぇよ。だいたい、オメェ暇さえあれば掃除してんじゃん」
「だって…そうだ!!忘れてた」
 オレの言葉に反論しようとしていた蘭が急に声をあげる。
「何を忘れてたんだ?」
「あのね、服部君達と快斗君達が明日ね、泊まりに来るって言ってたの!!」
「は??」
 蘭の言ったことの意味が今一つの見込めない。
 どういう…ことだ?
 あいつらが?泊まりに来る?
 なんでだ?
「ゴメンね、新一、言うの遅くなっちゃって…。聞いたの23日だったから……」
「それ…ホントか?」
 目まいがしそうな蘭の言葉にオレはこの年末年始が平穏にすごせないことが分かった。

「乾杯や!!!!」
 平ちゃんの言葉に全員がグラスを持つ。
 新一はため息をついた。
 オレと青子と平ちゃんと和葉ちゃんの4人は大掃除の最中の工藤邸に乗り込んできた。
 そのために、掃除を手伝わされたのは言うまでもない…。
 新一がため息をつきたくなる理由はおれ達が遊びに来たと言うだけじゃないだろうな。
 その期間が問題だから。
 12月26日から1月7まで……つまりほとんど冬休み。
 文句を言いたりないって顔してる。
 オレ達が泊まる日数を話したら思いっきり文句を言われたんだけどな。
 気持ちはわかる。
 気持ちはさ。
 蘭ちゃんと二人っきりでずっといたいんだって言う気持ちもわからないでもない。
 オレだって…青子と二人っきりが良かった。
 とはいっても、オレと青子は一緒に暮らしてるわけじゃねぇから、基本的にはずっと二人っキリって言うのは無理だけどな。
「まぁ、えぇやんかぁ。オレらはなぁ工藤とねぇちゃんが二人っきりじゃ寂しいやろうと思うて遊びに来たったんやで」
 と平ちゃんが言う。
 二人っきりじゃ寂しいだろうから。
 それはある意味建て前にしか過ぎない。
 ホントの理由は他にあって、その理由をオレと平ちゃんはまだ新一に告げられないでいた。
「でも、いいんじゃない?わたしは楽しいよ」
 そう言う蘭ちゃんはオレ達をフォローするように笑ってくれた。
 ワリィな…。
 つい思ってしまう。
 新一には、おもわねぇけど。
「なんや?工藤。浮かない顔しとるのぉ。クリスマスは警察に邪魔されたんか?」
「邪魔されてねぇよ。お前らに負けず劣らずすごしてました」
 新一の言葉にオレと平ちゃんはお互いに顔を見合わせる。
 どういう意味だ?
「な、何…言うてんのや?工藤。オレは別に何もあらへんで」
「そうか?じゃあ、和葉ちゃんの耳に着いているサードニックスのピアスはなんだ?あれ、オメェの趣味だろ」
 新一の言葉に服部は顔を赤くする。
「オレは何もなかったよ」
「へぇ、じゃあ、青子ちゃんの薬指にあるピンクトルマリンの指輪はどういうふうに説明するのかな?」
「……」
 げっバレてる。
 ばれないようにしろよって青子に言ったのに。
「オレにばれないと思ったのか?青子ちゃんと和葉ちゃんはふと気がついたらそこに触れている。触るって言うことはそれが気になっているって事だ。つまり、最近身に付けたもの。この時期に最近になって新しいものを身に付けるとしたら…クリスマスにもらったプレゼント以外ないじゃねぇか」
 バレてたか……。
 やっぱまずかったかなぁ。
 この季節に青子にやったのは。
「じゃあ、工藤は何をやったんや?」
「別に、言う必要ねぇだろ?」
 平ちゃんが新一に食いかかる。
「気になるだろ。オレらだけオマエに知られて、新一が蘭ちゃんに何をあげたのか知らないのはずるいんじゃねぇの?」
「それは、まだまだ観察がたらないんじゃないのかな?二人とも」
 邪魔された腹いせになのか新一はオレと平ちゃんの言葉をあっさりとかわし、皮肉まで言う。
 だから言ったんだ。
 日にちをもう少し後にしようって。
 青子達はと言うとオレ達3人のことは放っておいて女の子だけで話している。
 キャーキャーいってるところを見ると…クリスマスプレゼント何もらったとかって言う話かな?

「で、青子ちゃんは何もらったん?」
「うんわたしもそれ知りたい」
 和葉ちゃんと蘭ちゃんに青子は聞かれる。
 忘年会の最中の話題はクリスマスプレゼントの話になった。
 今回、このクリスマスを避けて家に集まるというのは…実は女の子だけの秘密の会話から成り立っていた。
 やっぱり、クリスマスは好きな人と二人っきりですごしたいから。
 本当なら、わたし達が蘭ちゃんと工藤君の家に泊まりに行くのは23日からだった。
 でも、和葉ちゃんと青子の強固な反対に平次君と快斗はしぶしぶおれたのだ。
 だって24日はクリスマスイブだよ。
 その日はみんなでパーティしなくちゃ。
 それに…快斗ともすごしたかったし…。
 ともかく、うまくいって良かったよね。
 と3人でムネをなで下ろしたのは言うまでもない。
 で、クリスマスプレゼントの品評会。
 最初は嬉しそうにピアスを見せてくれた和葉ちゃん。
「平次に開けてもらったやろ。せやからピアスを換えるときはやっぱり平次から貰ったもんがえぇなぁって思うてずっとねだっててん。そしたら、平次がクリスマスプレゼントやっ言うてこのピアスくれたん。でな、平次に最初のピアス外してもろうて、ついでに新しいピアスに換えてもらったんや」
 とすっごく嬉しそうに和葉ちゃんはいった。
 和葉ちゃんの耳にはきれいなオレンジ色のピアスが輝いている。
 次は蘭ちゃん。
「新一がねコレ御守りだと思って持ってろって言ったの。衝動買いして買ったくせに、御守りだなんて」
 と蘭ちゃんはそれを嬉しそうに見る。
 可愛い星形のローズクォーツのペンダント。
「蘭ちゃんに似合うと思ったんじゃないのかな?」
「そやね、だいたい、彼女へのプレゼントを衝動買いする男は滅多におらへんって。蘭ちゃん愛されとるわ」
 そう言う青子と和葉ちゃんに蘭ちゃんは恥ずかしそうに微笑んだ。
「で」
「で?」
 突然、和葉ちゃんと蘭ちゃんは青子に視線を向ける。
 どうやら矛先は青子に向かってるらしい。
「蘭ちゃんは何もらったん?」
「気になるんだよね」
「見せなくちゃダメ?」
 そう言う青子の言葉に蘭ちゃんと和葉ちゃんはうなづく。
 困ったなぁ。
「どうしても?」
「どうしても」
 しつこく青子を攻める和葉ちゃんと蘭ちゃんに青子は負けてしまった。
 もう、ハズかしぃなぁ。
「か、快斗ってね。いっつもクリスマスプレゼントくれるときってね、新作を披露してくれるんだけどね、今回はね、青子だけにマジック披露してくれてもらったの。そしたらこれくれたんだ」
 そう言って左手を見せる。
「うわぁ」
 左手の薬指に…快斗からのクリスマスプレゼントがはまっている。
 ピンクトルマリンのきれいな指輪。
 この指輪。
 掃除してたときとかはつけなかった。
 指輪にチェーンを通して首から下げていた。
 快斗がばれないようにしろよって言ってたし。
 何よりも落としてなくしたらいやだと思ったから。
 快斗が青子にくれたもの。
 それは大切にしたいんだ。
 平次君がテレビをつけて、時間を確認する。
 後ちょっとで新しい年の始まり。
 快斗とみんなとこうやってすごせることが嬉しいな。
「青子。なにぼーっとしてんだよ」
 快斗がぼーっとしていた青子の側にやって来る。
「なんか…ドキドキするよね」
「何が?」
「だって、こうやってみんなといるんだよ」
 ドキドキする。
 新しい年の始まり。
 新しいわくわくすることの始まり。
 快斗とこうやって一緒に迎えることが出来るのが嬉しい。
「青子……」
 青子の名前を呼んだ快斗はニッコリと青子に微笑む。
「快斗?」
「レディス&ジェントルマン。新しい年の始まりには、この黒羽快斗がマジックを披露いたしましょう」
 突然快斗の宣言にみんな驚く。
「はぁ?オメェ何言ってんだよ」
 と新一君。
「なんや、快ちゃん。マジック見せてくれんのか?」
 と平次君。
「また快斗君のマジック見れんのやな?」
 と和葉ちゃん。
「わたし快斗君のマジック好きだよ」
 と蘭ちゃん。
「青子、オメェはどうなんだ?見たくねぇの?」
 そう言って快斗は青子に微笑みかける。
「見たいよ。快斗」
 見たいに決まってる。
『さぁ、皆さん、もう少しで新しい時代の始まりです』
 テレビの中にいる人がそう言う。
 画面の数は1分前からカウントされていて…残りが10秒。
「9.8.7」
「6.5.4.」
「3.2.1」
 みんなでカウントダウンしていく。
「ハッピーニューイヤー」
 新しい年になったと同時にクラッカーを鳴らす。
 そして、外から聞こえる花火の音。
「なんや?」
「米花駅前の広場でカウントダウンのイベントやってんだよ」
 平次君の質問に新一君が言う。
 その間も花火はなりやむ気配を見せない。
「二階から見えるんと違う?」
「見に行こうか」
 蘭ちゃんの言葉に青子と和葉ちゃんは頷き二階へと向かう。
 吹き抜けの所から花火が見える。
「凄い、凄いねぇ」
「ホンマやね。下におる。平次達も呼んだほうがえぇな」
 そう行って和葉ちゃんは下に呼びに行く。
 その間に青子は言わなくちゃならないことを蘭ちゃんに言う。
 コレは4人で決めたこと。
「蘭ちゃん、青子達ね、コレから蘭ちゃんと工藤君に迷惑かけることしちゃうかも知れない」
「どういうこと?」
 青子の言葉に疑問を持って蘭ちゃんは首をかしげる。
「…でもね、それが一番いいことだから。その方が絶対いいから、青子や、和葉ちゃんや…蘭ちゃんの為に絶対になるから…。でも…ごめんね」
 今はこれ以上は言えない。
 まだ言っちゃいけない。
 言ってもいいんだけど、まだ…言えない。
 快斗と平次君は言ったのかな?
 言うって言ってたけど…。
 良いよね、こんな感じで。
「ねぇ、青子ちゃん、それどういう意味?」
「これ以上は詳しく言えないんだ…。大丈夫、絶対に楽しくなるから」
 青子の言葉に蘭ちゃんはニッコリと頷いた。
「はよせんと終わってまうって」
 和葉ちゃん達が階段を上ってくる。
 そして、花火を堪能する。
 新しい年がはじまって1分ぐらいたったのかな?カウントダウンの花火が終了した。
「終わってもうた」
「せやから言うたやんか。はよせんと終わってまうって」
 平次君と和葉ちゃんはさっさと下に降りていく。
 その後を蘭ちゃんと新一君。
 そして、快斗と青子。
 のハズが快斗は下に降りない。
「どうしたの快斗?」
「青子…、言った?」
 花火を堪能するために電気が消されている階段で快斗は青子の方を見て静かに言う。
 でも、月明かりが強いのか快斗の表情は綺麗に見えた。
「……すこし」
「少しって…どういうふうに?」
「青子達が迷惑掛けちゃうからごめんねって…」
「だから…かぁ」
 そう言った快斗は青子の側に来る。
「だからって?」
「蘭ちゃんが不思議そうな顔をしてたからな」
 そう言ってリビングへと消えていった蘭ちゃんを見る。
「快斗達…は言ったの?」
 青子の言葉に快斗は首を横に振る。
「まだ、言えてねぇ。平ちゃんも…オレもな…。怒るだろうな…新一の奴」
「でも…その方がいいんでしょう?快斗」
 青子の言葉に快斗は静かに微笑む。
「青子は…どう思う?青子…はどっちがいい?青子だったら…どうする?」
 静かに青子に問いかける快斗。
 その言葉に青子は考える。
 青子は青子だったらどうしたい?
 それは…分かってる。
「青子…はその方がいいと思う。青子…寂しいの嫌いだもん。一人でいるのって寂しいよね…。だったら…その方がいい」
「そっか……じゃあ、そうしようぜ。その方が絶対いい。これからが大変だけどな」
 快斗はそう言ってうつむいた青子をなでる。
「青子」
「ん?何」
「不安になるんじゃねぇよ」
 快斗はニッコリ微笑んで青子に言う。
「青子、絶対、大丈夫だからさ。オレにまかせとけよ」
「うん」
 快斗の大丈夫はなぜかいつもホントに大丈夫って言う感じがして安心できた。
 だから、大丈夫なんだよね、快斗。
「快斗ぉ、マジックやるんだろ?」
 下から新一君が顔をだして快斗の事を呼ぶ。
「何、そこでらぶらぶしてんねん!!」
 平次君も顔をだし快斗の事をからかう。
「だーうっせぇなぁ。邪魔すんじゃねぇよ!!ったく…ほら、青子。行くぜ」
「うん」
 快斗の手に引かれ、階段を下りていく。
 大丈夫、何があってもね。
 大丈夫…なんだから。

「ったくぅ…理由を言えよ。こんなに泊まった理由」
 新一が、オレ達が帰る前にそう言う。
「せやから言うたやろ?二人っきりやと寂しいやろうから泊まりにきたんやって」
「そうそう」
「それだけには見えねぇんだけどな」
 新一がジロッとオレと平ちゃんを見る。
「蘭の様子がおかしい。蘭に何か言ったのか?」
「言ってねぇよ。具体的にはな」
 オレの言葉に新一は訝しがる。
「どういう意味だよ、快斗」
「何や、青子ねぇちゃん詳しく言わんかったんか?」
「あぁ、具体的にも言ってない、言ったのはゴメンねぐらいだよ」
 青子が蘭ちゃんに言ったことは「後から迷惑かけるけどゴメンね」だけだった。
 具体的にも、きっぱりにも、何もない。
 蘭ちゃんが悩むのも無理はない。
 抽象的すぎて分かりづらい。
「後から迷惑かけるけどゴメンねって言うのはどういう意味だよ」
「何や、青子ねぇちゃん、それしか言うてへんのか?」
「あぁ、オレと平ちゃんが新一に改まってちゃんと言うと思ったから言わなかったんだと」
「なんやねん」
 オレと平ちゃんの会話に新一は首をかしげる。
「和葉ぁ」
「何?平次」
 不意に、平ちゃんが和葉ちゃんに声をかける。
「電車の時間、まだ平気やったよな」
「うん…まだ平気やけど…なして?」
「今から言うわ。工藤に」
 和葉ちゃんの言葉に平ちゃんはそう答える。
「平気なん?言うても」
 その言葉に平ちゃんは頷く。
「ちょっと待て、その事っていうのは…全員承知のことなのか?」
「そうや。オレらと快ちゃんらとで考えた結果や」
 平ちゃんの言葉に新一は顔をしかめる。
「新一、オレ達な、帝丹受けようと思ってるんだよ」
「は?」
 新一が驚く。
 ココで、間を空けたらまずいので、オレと平ちゃんは一気に言葉を紡ぐ。
「でな、帝丹大受かったら、同居しようや」
「ハイ?」
「みんなで同居したら楽しいとおもわねぇ?」
「ちょ、ちょっと…」
「工藤の家、大きいやろ。オレら6人で同居しても何も問題ないやん」
「だからっ」
「オレ達ちゃんと考えてるんだぜ。新一、オマエ探偵として忙しいじゃん?その間蘭ちゃんを寂しい思いさせとくつもりか?」
「そそれは…」
「でな、オレもこっちに来たったら来たったで忙しい思うんや。結構こっちからの依頼が多なってんねん。こっちに進出してきたって事になったらやっぱりオマエと同じようなことになる」
「そう言う問題じゃ…」
「それにな、ちょっと、オレ困ったことが起きてね、怪盗キッド復活させないとまずくなってるんだ」
 青子の顔が少しだけ曇る。
「困ったことってなんだよ…。それに、中森警部は知ってるのか」
「困ったことはまだ秘密。警部は知ってるよ…。まぁ、前みたいに派手に怪盗キッドをやるって訳じゃねぇんだけど…」
 新一には…まだ言えねぇよ…。
 あの事は。
「だからって同居は」
「せやからな、和葉や、青子ねーちゃんや蘭ねーちゃんらで居ったら寂しないやろ。そこまで考えてんねんで。それに、快ちゃんも探偵家業手伝う言うとるし」
「そ、そ。ほら、3人寄れば文殊の知恵って言うじゃん。事件があったとき3人で行けば、はやーく解決するじゃん。っても、オレは平ちゃんによれば助手扱いなんだけどな」
「当たり前や!!コレから厳しく鍛えるでぇ」
「勘弁してぇ!!」
「お前ら、本気で言ってるんか!!」
 新一がじゃれ始めたオレと平ちゃんに向かってそう言う。
「本気も本気や…。工藤……オレら本気で考えてんねんで。本気で考えてんねん。それ以外にあらへんねん。工藤かて、安心するやろ。和葉や青子ねーちゃんが蘭ねーちゃんと一緒におったら…。オレらかて安心や…」
 平ちゃんの本気の言葉に新一は真顔になる。
「新一……コレからのこと…本気で考えたんだよ…オレ達4人で…だから…だから…」
 これ以上、まだ言えない。
 言ってもいいのかも知れない…。
 けれど…新一に言っていいのか分からない。
 聞いたら…新一は絶対に………。
 だから言えない。
 オレは違うとしても、平ちゃんの………。
 だから言えない。
「新一…まだ大学に合格したわけじゃねぇんだしさ………。オマエがどうしてもいやだって言うなら…オレ達も考え直すよ」
「せやけどな…それが一番良い方法なんやで、工藤も考えとき」
 そう言い残してオレ達は新一の家を出る。
「良かったんかな…」
「何が?」
 駅で大阪行きの新幹線を待っているとき平ちゃんが呟く。
「工藤に…言ってや…」
 新一は…家にいる。
 平ちゃん達を見送るのはオレと青子のみ。
「当たり前だろ。今、言わないでいつ言うんだ?センターまであと少しだぜ」
「そやったな……」
 平ちゃんはそう言って空を見上げる。
 澄み切った青い空がホームからのぞけた。
「新一…許してくれるのかな」
「大丈夫やろ…。辛いな……何も言われへんのは…。言うたら言うたで、何するかは目に見えとんのやけどな」
 平ちゃんの言葉にオレ達は苦笑する。
 新一の行動を分かってるだけに…、どうなるか想像がついて困る。
「蘭ちゃんが苦労するんやろ。それやったら言わんほうがえぇよ。アタシイヤやで。蘭ちゃんが悲しそうな顔するの」
「青子も、いやだよ」
 青子と和葉ちゃんがその行動から被害を被る蘭ちゃんを思い浮かべる。
「でも…新一も知ってるのかな…?」
「オレらが知っとるって言うことは知らんやろな…」
 オレの言葉に平ちゃんはそう呟く。
 そうだと…良いけどな。

 少し話をしたあと、服部君と和葉ちゃんは大阪行きの新幹線に乗っていった。
 その姿を見届けたあと、青子は快斗と一緒に家への帰路に付く。
「快斗…もしね新一君が知ってたとして……蘭ちゃんは一人知らないのかな?」
「さぁな、青子みたいに一緒にいたのかも知れねぇよ」
 快斗は辛そうに呟く。
「……ねぇ快斗」
「ん?」
「青子…快斗の邪魔してるよね。青子は…側にいないほうが良かった?」
 時々、そう思う。
 青子が側にいなければ、快斗はもっと自由でいられたのかも知れない。
 快斗が好きなことをやるのに青子が邪魔しているのかも知れない。
 そう思って…。
「バーロォ…んな事考えるなよ。もし、青子が邪魔だったらオレがキッドだったって事もいわねぇだろ。それに、それもやんねーよ」
「か、快斗…」
 快斗が青子の指にはまってるそれに目を向ける。
 そんな快斗の顔は少し赤い。
「ほら、帰るぞ。青子、帰ってから受験勉強だ!!」
「うん」
 これからはじまることを青子も快斗も平次君も和葉ちゃんも新一君も蘭ちゃんも知らない。
 けど、楽しくなれば良いな。
 せっかく、友達になれたんだもんね。
 たのしくたのしくやさしくね。

*あとがき*
忘年会と言うより、新年会というより、カウントダウンがメイン。


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