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「アリオス、君もイスタルにいたのか・・・」 「いて悪いかよ」 相変わらずのアリオスの態度に、セイランは苦笑する。 「いやね、君が”新宇宙”の女王の元にいるって聞いたけど、君も休暇なのかい?」 意味深な視線をアリオスに投げ掛けると、セイランは不敵な微笑みを浮かべた。 「ひとりで休暇?」 「そうだ」 相変わらず、アリオスは冷たい表情をしている。 「まあ、君がひとりで休暇を取る人だとは考えられないけどね」 くすりと笑うと、セイランは何かを知っているかのように、いたずらっぽい瞳を向けた。 「とにかくここでゆっくりしてていいよ? オンボロだけれど、部屋はある。ただし、ちゃんと片付けないといけないけど。僕も君もお互いに干渉は嫌がるタイプだから、丁度いい」 セイランはそれだけを言うと、ドアを開け、埃っぽい部屋に案内してくれた。 埃避けカバーがかかっているので、まだましだが、かなりの荒れようだ。 アリオスは大きな溜め息を吐くと、窓を開け、埃を外に追い出すことにした。 小一時間で何とか寝られる部屋になる。 まあ、明日の夜はアンジェと一緒だからかまわねえがな。 こんなことになるなら、宿屋で昼寝してたほうが良かったぜ・・・。 ったく、わが女王陛下はわがままだからいけねえよ。 そう思いつつ、このわがままをどこか楽しんでいる自分に、苦笑していた。 食材などは、町で買ってきたので大丈夫だろうし、しばらくここにいて時間をつぶすことにする。 夕方までばたばたとしていたせいか、眠くなり、すぐにベッドの上で横になった。 セイランが干渉嫌いで、気紛れなお人好しで良かったと思う。 朝起きて、シャワーを浴びに行っても、彼は出てこず助かった。 昨日は思いのほか早く寝てしまったせいか、信じられないほどの目覚めの良さだ。 あいつとしねえと、調子が狂うな…。 朝の準備を終えて、朝食を食べ始める。 いつもの朝ならアンジェリークが簡単に朝食を作ってくれるが、今日は味けのない食事だ。 目玉焼きも焦がしちまうあいつだが、それでも、あいつの作るメシは、美味い。 少し感傷的になりながらも、朝食をとる。 パンと干し肉、チーズとトマト。温かい飲みものはインスタントのコーヒー。 それを規則正しく租借する。 ふと、外がにわかに騒がしくなり、アリオスは存在を知られないように、息を潜めた。 耳を澄まして聴くと、また聴き覚えのある声だ。 内容を聴くと、アンジェリークたちがイステルに来ることで、かなりの騒動になっているようだった。 やっぱりな・・・。あの堅物ぴかぴか野郎がまた騒いでるんじゃねえのかよ・・・。 アンジェは無事にたどり着けるのか? だが、アリオスの勘は見事に当たってしまうのである。 そろそろここも出ねえとな。 アリオスは小屋から出る準備をし、ひと騒動が終わった頃合を見計らって、ドアを開けた。 「いくのかい?」 「ああ」 アリオスはポーカーフェイスを装って、荷物を抱えて出ていこうとする。 「この惑星を出るんなら、急いだほうがいいよ。流星群の前後はシャトルが欠航になるのが普通だから」 「ああ。あばよ」 アリオスはそれだけ答えると、小屋を後にした。 小屋の外に出ると、通信機がメールの着信を知らせてくれる。 メールはアンジェリークからだった。 ふえ〜ん! ジュリアス様に掴まっちゃった! ホテルに軟禁〜! 迎えにきて! アリオス、お願い!! 「やっぱりな・・・。んなことだろうとは思ってたぜ・・・」 あまりにものお約束な展開にアリオスは溜め息を吐く。 「しょうがねえな」 どうせべそでもかいているのだと簡単に想像出来る。 ”今、どこにいる”とメールを打って返してやると、”今、イステルリッツホテル”と返ってくる。 アリオスは何度目かの溜め息を吐くと、アンジェリークのいるホテルに向かった。 「やっぱりジュリアスよね。これじゃあオスカーも逆らえないわ・・・」 大きな溜め息を吐くと、女王は切なそうにする。 「ルヴァだって、色々考えてるみたいなんだけど」 ロザリアもまた溜め息をひとつ。 「エルンストも守護聖様相手だと・・・」 三人の視線が、縋るようにアンジェリークに降り注ぐ。 その期待の込められた眼差しが何を意味するのか、鈍感少女のアンジェリークは、何のことかと小首を傾げた。 「な、なんでしょおか?」 「あなたの恋人は確か、サクリアを魔導に変換することが、出来たわよね?」 女王はにこにこと笑っている。 「私たちを脱出させて恋人のところに送り届けるのも、お手の物でしょ?」 今度はロザリアだ。 「アナタと一緒の部屋に住まわせてあげてるんだから、これくらいは当然でしょ!!」 レイチェルには痛いところを突かれ、アンジェリークは弱った。 「陛下、ロザリア様、レイチェルまで・・・」 完全にアンジェリークは困ってしまい眉根を寄せる。 「・・・アリオスに訊いてみます」 すっかり困り果てたように呟くと、アンジェリークは通信機を手に取った。 その瞬間、部屋にノックが鳴り響く。 「オリウ゛ィエだよ〜ん。陛下たち、ちょっといいかな〜」 「どうぞ」 アンジェリークがドアを開けると、イスタルの民族衣装である白いフードを大量に持った、オリヴィエが現れた。 「ねぇ、陛下たち、星祭りを見に行かない?」 その頃、アリオスはホテルの前に来たものの、その警備の厳重さに閉口しそうになった。 あのピカピカ野郎。 よくもここまで警備をしたもんたぜ。 呆れるな・・・。 アリオスは持ち場に立っているオスカーを見つける。 あいつが金髪の女王の相手だな・・・。 とぼけた野郎どもはいねえみてえだな・・・。 突然、アリオスの通信機が鳴る。 見るとアンジェリークからメールが届いていた。 今、オリウ゛ィエ様が、星の妖精の合唱隊の娘のフードを持ってきて下さったから、それをかぶって外に出ます。 皆さん、恋人の方にメールを送ったみたいだから、大丈夫よ。 星の妖精の合唱隊に紛れますから、掴まえてね。 あんじぇ 踏み込もうとしていたところで、恋人からのメールにアリオスはほっとして、星の妖精の合唱隊の娘の一団が歩くほうへと向かう。 が、しかし、あまたの少女たちがまったく同じ格好をしている。 これには正直言って、探すのが困難そうだ。 暗い闇の中にキャンドルの炎と、目深にかぶったフード。 だが、ふと思い直した。 俺はどこにいても、どんな格好をしていても。 そして------ たとえ…、人ごみにまぎれようとも、闇にまぎれようとも、同じ格好のやつが、何人いたって・・・。 俺はおまえを見つけられるから------- アリオスは、フッと、優しい微笑を浮かべると、星の妖精の合唱隊に近づいていく。 そう…。 不安そうにまわりをきょろきょろしながら、俺だけを探しているから、おまえを直ぐに見つけられる。 今直ぐに、おまえの瞳に、俺を映し出してやるから…。 アリオスは自分だけが判るアンジェリークの気に導かれるように、そっと少女たちに近づいていく。 -------いた…!! 見つけた、たった一人の天使------ ゆっくりと手を伸ばしてみる。 「きゃっ…」 甘い声と共に自分に引き寄せて、その腕の中でゆっくりとフードを取って見る。 「------アリオス…」 甘い声と共に、大きなアクアマリンの濡れた瞳がアリオスを捉え、白い頬を僅かに紅潮させている。 「つかまえたぜ?」 甘さと不適さが混じった言葉と共に、アリオスはアンジェリークの小さな手をしっかりと握り締めて離さない。 「捕まっちゃった」 くすりとアンジェリークは笑うと、アリオスの胸に軽く額をつけた。 「待ってたの…」 「判ってる。さあ、行くぜ」 お互いの手を温めながら、二人は暗闇の中をそっと歩いていく。 アリオスに手を引かれて、アンジェリークは小高い丘に登っていく。 鐘がイステルの町に鳴り響き始めた。 次の瞬間にっは、町中の照明が落とされていく。 丁度その様子を、二人は上りきった小高い丘の上で見つめていた----- 「もう直ぐ、星が流れ始める…」 「うん…」 二人は星に願いを込めて、宇宙の大海原を見上げる。 一つ目の星が、二人を祝福するように流れ、次々に続いていく。 ふたりはいつしかぬくもりに包まれあった。 アリオスが背中からアンジェリークを包み込むように抱き、彼女はアリオスの腕をしっかりと温もりで包み込んでいる。 いつまでも、私たちが共にあれますように・・・。 アリオスの傍に、いつまでも温かなものがあり、幸せでありますように…。 私たちが…永遠に結ばれていますように------ さすがの俺も、この星空には心を惹かれるな・・・。 暗闇から星が流れ、やがて消え…、また流れ…。 まるで宇宙の摂理のようじゃないか・・・。 光って消えて、出逢って、別れ…。 まったく宇宙というものは大したもんだ。 そして、この宇宙を統べる女王ってやつも・・・。 この美しい星空の霊に、せめて俺も祈るとしよう…。 ”愛””幸せ”------ そのほか…、この世界の良いもの総てを、いつまでもおまえと共にあることを------ 愛してる…。 いつまでもおまえと共にあるように…。 アンジェリーク-------- 二人は想いを込めて祈りをささげ、心をひとつにする。 同じタイミングで、二人は見つめあい、唇を近づけていく。 「-----アリオス、愛してるわ・・・。いつまでも傍にいてね?」 「いつまでもおまえと共に…。愛してる…」 唇が重なり合う。 素晴らしいひと時に心を合わせて、想いはひとつに。 ここに、この場所にいる、すべての恋人たちが、みな、同じ夢を見る。 レイチェルとエルンスト。 ロザリアとルヴァ。 金髪のアンジェリークとオスカー。 そして------ アンジェリークとアリオス…。 アリオス…。 素敵なひと時を有難う・・・。 もっともっと幸せになろうね・・・? 運命の恋人たちは、深く長く唇を重ね、近い未来の幸せに、思いを馳せていた------- |
| コメント CDドラマを忠実に、アリコレテイストで再現。 ミキアン●ェ様のリクエストで(笑) 裏に続きますぜい〜。 CDといえば。 「親指立てて笑っていこう〜」 ですか?? アリオスさん。 浪越徳●郎ですか???(爆笑) アンジェの指圧をする? 失礼しました。 「指圧の心エロ心〜」かぁ(←まちがい) |