家に先に帰っているかもしれない…。 そう思って、レヴィアスは自宅マンションに戻ってみた。 が…。 家は相変わらず暗いままで、アンジェリークのいる雰囲気すらしない。 だが、部屋の隅でいつものように小さくなっているかもしれないと、レヴィアスは名前を呼びながら、まわってみる。 『アンジェ!! アンジェ!!!」 だが、返事すらもなく、レヴィアスは苛立ちを募らせてゆく。 「アンジェ!! いないのか!?」 それこそ部屋という部屋、果てはクロゼットまで、レヴィアスは彼女を求めて探し回った。 だが、聞こえるのは、先ほどから降り始めた雨の音だけだった。 「…雨か…」 サッシを開けて、レヴィアスは外を見る。 なぜだか自分の心のようでむなしかった。 どこ行ったんだ、アンジェ…。 彼はリビングに戻ると、ソファに腰を下ろして、頭を抱え込む。 彼には珍しく、溜息ばかりが出てしまう。 雨の中歩き回っていなければいいが…。 ああ見えても、身体は丈夫じゃないからな… レヴィアスは意を決したように、電話を手に取り、心当たりの場所に片っ端から掛け始めた---- 「夜分に申し訳ありません…。アンジェリークがそちらに…」 ------------------------------------------- 「まあ、アンジェちゃん!! どうしたの!!」 「お義母さん…!!」 アンジェリークがたどり着いたのは、レヴィアスの実家。 両親を亡くしたアンジェリークが、レヴィアスと結婚するまでいた、”我が家”だった。 当然、彼の両親とも、本当の親子のような関係だ。 「こんなに濡れて、風邪をひくわ。さ、中に入って…」 「はい…」 雨で濡れていたせいか、泣いていたことを見られなくて済むことに、少し安堵する。 優しいレヴィアスの母に、肩を持たれて、彼女は客間へと入ってゆく。 「どうしたの…? レヴィアスと喧嘩でもしたの?」 びくりと身体を震わせるアンジェリークに、レヴィアスの母はやっぱりとばかりに深い微笑を浮かべる。 「あ・・・、あの・・・」 「あの子は独占欲の強い子だから、きっとそのことで何かあったのね?」 「…だって…、レヴィアス、私…、浮気なんかしてないのに…、浮気したって怒って」 緊張が解けたのか、アンジェリークはずっと泣きじゃくっている。 それを不謹慎だがほほえましく思ってしまう。 あのレヴィアスの心を解かしたのはあなたなんだから、もっと自信を持ちなさい? 「さあ、お風呂に入って、温まりなさい?」 「はい…」 アンジェリークをお風呂に連れて行き、ホット日と行き着いたときに、リヴィングの電話が鳴った。 「はい? アルヴィースです?」 「ああ。母か。アンジェは…」 「来てるわよ?」 受話器の向こうに安堵の溜息が聞こえ、レヴィアスの母はフッと微笑む。 「何がおかしい…」 「何でもないわ。アンジェちゃん、今、興奮してるし、うちで預かるわ」」 「…判った。学校の道具だけを届けにいく」 「ええ…、お願い」 「じゃあ、今すぐ行くから」 「ええ」 電話を切り、レヴィアスの母親はほっと息を吐いた。 まったく、犬は食わないというけど… 「お義母さん…」 力ない声が聞こえたので、レヴィアスの母ははっと振り返った。 「アンジェ・・、アンジェちゃん!!」 そのまま崩れ落ちた少女にを、慌てて彼女は支える。 「アンジェちゃん!!」 額に触れると、とても熱く、彼女はその熱さに怯んだ。 お願い、レヴィアス、早く来て頂戴!! -------------------------------- その頃レヴィアスは、当座の彼女の着替えと、学校の道具を詰め込んで、マンションから出ようとしていた。 「兄さん!!」 呼ばれた気がして、振り返ると、そこには正装をした、先ほどのナンパ男がいた。 途端にレヴィアスの嫉妬心は燃え上がり、きつい眼差しで彼を見つめる。 「何だ!?} 「あ、そんな顔せんといて、頼むから!! ちゃんと謝りにきたんや。あのこにも、あんさんにも」 彼がすまなそうに言うと、その広い背中からレイチェルが顔を出した。 「レイチェル、どうして」 「あ、レヴィアスさん、ワタシの従兄がヘンなことをしたって聞いて、一緒に謝りに来たの、ね?」 レイチェルはウィンクをしてチャーリーを見、その場を和ませる。 「ホンマ、アンジェちゃんとは何もあらへんねん!! このとおり勘弁して!! お詫びに、うちが経営するホテルのSWEETの券と、レストランの食事券もってきたよって」 本当にすまなさそうにするチャーリーに、レヴィアスの表情も幾分か和む。 だが---- お陰で、アンジェリークと喧嘩をしたのも事実で。 「ねえ、許してやって? それも受けとってやって」 「----レイチェルに免じてな」 「有難う!」 チャーリーもレイチェルもとても嬉しそうな表情でほっとする。 「で、どこに行くの、レヴィアスさん?」 「アンジェが実家にいるんでな。じゃあ、急ぐから」 レヴィアスは足早に駐車場へと向かう。 その様子に、二人は、溜息をつきながら見ていた---- ---------------------------------------- 「レヴィアス!! 待ってたの!!」 家に着くなり、母親がいきなり焦るように口走った。 「何かあったのか!?」 彼は、もしやと思い、眉根を寄せる。 「アンジェちゃんが高熱出したのよ!?」 「何!?」 そう聞くなり、彼はアンジェリークのいる客間へと向かう。 すまないアンジェ…。 俺があんなことを言わなければ…。 アンジェリークのいる部屋に入ると、彼女が魘されながら寝ていた。 「アンジェ!?」 近寄って額を見ると、驚くほど熱い。 「母。アンジェを連れて帰る。うちに解熱剤などがあるから、とにかくそれで対処する」 「レヴィアス…」 レヴィアスは彼女を抱き上げ、そのまま部屋の外に出る。 母が二人の前を歩き、ドアを開けてくれる。 クソ…。アンジェ!! 彼女の虚弱は、かつて、レヴィアスの恋人だった彼女の姉を助けるためにしたことから始まっていた。 今は以前よりましになったとはいえ、それでも目が離せない状態なのだ。 そのまま車に彼女を乗せ、運転席に飛び乗る。 「母。すまなかった・・・」 「いいのよ。アンジェちゃんを頼むわね?」 「ああ」 母と会話を軽く交わした後、レヴィアスは車を自宅マンションへと発進させた。 マンションにつくなり、ぐったりとした彼女をベットに寝かせると、冷蔵庫から氷枕を出し、それを彼女の頭の下にあてがった。 その後、冷蔵庫に、アンジェリークの為に常備している解熱剤と抗生物質を取り出し、往診バックから、注射器と聴診器を取り出した。 「頑張れよ…」 小さな風邪が、アンジェリークにとっては大きいことを、レヴィアスは良く知っていた。 「…レヴィアス…の…バカ…」 うわ言で自分に悪態の吐く彼女に、彼は苦笑する。 その表情は、とても優しかった。 「そういえれば上等…」 アルコール綿で腕を消毒し、彼は彼女に注射をしてゆく。 「・・・っ!!」 いたんだのか、顔を僅かにしかめる。 「我慢しろ。もうすぐ楽になる…」 注射をした後、レヴィアスは、彼女の小さな手を握りながら、額に当てたタオルを何度も変えてゆく。 気持ちいい…。 誰? お母さん? それとも… アンジェリークは夢うつつに目を開けると、そこには艶やかな髪をした、"神”がいるようなきがした。 「…レヴィアス…」 「アンジェ?} ようやく気がついた妻に、彼は顔を近づける。 「レヴィアス…」 震える手で頬をなぞる天使を、彼は抱き寄せた。 「平気か?」 「…うん…、何とか…」 精悍な彼の胸に顔を埋めながら、彼女はふうと息をする。 少し苦しげに。 「抱きしめててね…。レヴィアス…」 「ああ」 より強く、彼女の体を抱く。 それがとても甘美で、身震いする。 「すまなかったな・・、今日は…」 「ううん。私も悪かったから…、やっぱりレヴィアスの腕の中は安心できる…」 「アンジェ…」 そのまま彼女は再び眠りに落ちる。 レヴィアスは彼女の華奢な背中を撫でて、いつまでも抱きしめていた---- -------------------------------------------- 朝、目覚めると、アンジェリークはしっかりと抱きしめてくれるレヴィアスの姿を認めた。 「レヴィアス…」 「おはよう、アンジェ」 唇に甘い口付けを受けて、彼女はふふと微笑んだ。 「熱は…」 レヴィアスは心配そうに額に手を当て、調べる。 「もう…、ないようだな」 「うん…。レヴィアスのお陰で楽になったわ…」 彼女の微笑みも温かくて、レヴィアスはそれにつられて微笑んだ。 「すまなかったな。本当に、昨日は。あれから、レイチェルと一緒にあの男が来てな? 何だ、申し訳ないといっていた」 「レイチェルと!?」 「ああ従兄らしい」 「だったら、ウォン財閥の総帥…」 「ふ、人は見かけによらないというが…、本当だな?」 「そうね…」 二人は甘く微笑みあう。 「ところで、アンジェ?」 「何?」 「おまえが欲しい」 そのまま組しかれる格好になり、アンジェリークは戸惑う。 「ダメよ、レヴィアス、私汗かいたのに…、っ!!」 「ダメだ」 「ああっ!!」 そのまま深い口付けを全身に受け、アンジェリークはその甘美な世界に溺れてゆく。 仲直りするには、これほどの行為はないから…。 そんなことを思いながら…。 |
コメント
27000番を踏まれたマキ様のリクエストで「嫉妬レヴィアス」です。
実はこれ、今密かに書こうとしているレヴィXアン版「愛の劇場」
のその後の設定にしています。
「愛の劇場」本編はそのうちに…(笑)
だって、今終わらせなきゃならんもの抱えてるんで…。
裏も裏も表もDESPEも同人も…。
ああ、体が後四つ欲しい…!!(笑)
(一人が同人原稿、一人がCLUB、ひとりが本館、ひとりが別館(笑))