TABOO

U


 服が破れる音がこだまする。
「おまえは俺のもんだからな…。ずっとそうだった…。
 生まれたときから見守ってきたんだ…。離さねえ!!!」
「いやあ!!! お兄ちゃん!!」
 泣いて嫌がる妹を押さえ込み、アリオスは彼女に深く口付ける。
「…んっ!!」
 舌で激しく唇を吸い上げ、口腔内をくまなく犯してゆく。
 そのまま豊かな胸を鷲掴みにし、アリオスは身体を弄ることを止めない。

 こんなの…、間違ってる!
 だけど…。
 こうして欲しいって自分が居る…。

 身を捩ろうとしても、振りほどけない。
 涙が頬を伝って行く。
「…お願い…、お兄ちゃん!!」
 その切なくも苦しげなアンジェリークの表情を見て、アリオスははっとした。
 彼は身体を離すと、そのままベッドから降りる。
 後ろめたさや、苦しさ、そして…。
 アンジェリークを一人の女性として思う自分の運命をのろう気持ちが心に渦を巻いている。
 露になった白い胸を、アンジェリークは抱きしめ、呆然と兄を見詰めている。
「・・・どうして・・・?」
 唇が戦慄く。
「-----おまえは俺のものだ…。
 一人の女として…、愛してる…」
 アリオスは吐き捨てるように言うと、そのまま部屋を後にした。
 彼が部屋から去った後も、アンジェリークはまだ震えていた。

 あの瞳…。
 あれはいつものお兄ちゃんじゃなかった…。
 男の人の瞳だった…。
 怖かった…。

 アンジェリークはぎゅっと震える身体を抱きしめ、何度も深呼吸をする。

 だけど・・! お兄ちゃんに触れられるのは…。
 いやじゃなかった…!!!
 心が…悲鳴を言ってる!!
 お兄ちゃんに抱いてもらえなかったことに…

 ぎゅうとアンジェリークは唇を噛み締め、瞳を閉じた。

 胸がどきどきしている…。
 やっぱり本当は私…!!

 アンジェリークはそこまで考え、自分の答えを必死になって打ち消そうとする。
 心の奥底で考えている、真の答えを知るのが怖くて…。


 少し落ち着いてから、アンジェリークはふらふらとしながらもベッドから降り、書斎から出た。
 自分の部屋に向かう間も、視線は、兄を、アリオスを探してしまう。
「お兄ちゃん…」
 部屋に戻ってからも、アンジェリークはベッドの上に、膝を抱えて座り込んだ。
 兄の熱い思いを知り、その思いがまた自分の心の奥底になったものを目覚めさせた。

 お兄ちゃんのこと…。
 私好きなのかもしれない…。
 だって、私だって、お兄ちゃんを他の女性に取られたくないから…!!
 お父さん、お母さん…。
 これから私はどうしたらいいの…?

 アンジェリークは服を乱したまま、直すこともせず、ただじっとしていることしか出来なかった-----


 どれほど時間がたっただろうか…。
 すっかり夜が降りてきたが、家には何の気配すらない。

 お兄ちゃん…。
 どっかへ行っちゃったんだ…。
 当然よね…。
 でも・…。
 今度会うときにはどういった顔をすればいいの…?

 そのまま、アンジェリークは物音がするまで眠らずに待っていたが、いつしかうとうとと眠りについていた。

                             ----------------------------

 物音がして、アンジェリークは目覚めた。

 お兄ちゃん…!!!

 アンジェリークは慌てて起き上がり、取りあえずは適当にその辺のルームウェアに着替えて、音のする方向へと向かう。
 音がしたのはやはり兄の部屋。
「お兄ちゃん!!」
 ドアをいきなり開けると、そこには-----
 アリオスがいた。
 すっかり憔悴しきった彼の姿があった。
「…アンジェ…」
 顔をあわそうとしない兄に、アンジェリークはひどく胸をいためる。
「・・・どこか、行ってたの?」
「”女のとこ”だ」
「・…!!!!」
 ビクリ----
 身体に震えが走ってしまう。
 アンジェリークは心臓が止まるのかと思いながら、何とかその場を持ちこたえた。
「…どうして・…、ヤダ…、どうして…」
 声が震えてしまう。
 実の兄なのに、誰か自分以外の女性を抱いたのかと思うだけで、苦しくてたまらない。
 涙がぽろぽろと零れ落ち、そのままぺたんと床に座り込んでしまった。
 その音に、アリオスは思わず振り返る。
「アンジェ?」
 そこには、アンジェリークが泣きながら床に座り込んでいる。
「…ヤダ…」
 最初は小さすぎて聴こえなかった。
 だがよくよく耳を凝らしていると訊くことが出来た。
「……他の女性(ひと)に触れたら…、ヤダ・…」
「アンジェ…」
 一瞬、アリオスは耳を疑った。
 だが少女の兄を見る眼差しは、明らかに潤んでいる。
「私の代わりに…、誰か抱いたの!? ねえ!」
 初めて激情をぶつけてくる妹に、アリオスの理性のたがは再び外される。

 嫌われてもかまわない…

 そのままアリオスは情熱に任せて妹を抱きすくめた。
「おまえの代わりなんて誰もいやしねえ!!! 今夜だって誰も抱けなかった」
「あっ…」
 妹から漏れる甘い声にアリオスは酔いしれたが、次に、もっと驚愕することが待っていた。
「・…!」
 アンジェリークが抱き返してきたのである。
「アンジェ・・…」
「こんなの間違ってるかもしれない…。
 だけど、私もお兄ちゃんが好きなの!
 こんな気持ち…、変かもしれないけれど…」
 なきながら言う彼女が余りにも愛しくて、アリオスはさらに腕の力を強くする。
「何も怖がるな…。
 俺がおまえを守ってやる・…。
 世間からなんと言われようが…、俺がおまえを守る…。
 何もおまえを触れさせやしねえ…」
「お兄ちゃん!!!」
 二人はもう二度とはなれないかのように、しっかりと抱き合う。
「もうおまえを離さない…」
 そのままベッドへと倒れこみ、二人は禁断の扉に手を触れた。

 誰も私たちを、裁くことなんて出来やしないから…-----

 許されざる恋なのかもしれない。
 だが二人にとっては何より燃えがたい永遠の恋を、今、手に入れたのだ。  
The END

コメント


43000番を踏まれた、小野淳子様のリクエストで、
「アリアン禁断の兄妹もの」です。
反省します…
これはともかく純愛編…。
ついでにわしもヘン…。


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