銀の髪をかき上げながら、携帯で話している姿がとても艶やかに思える。 仕事の話をしている彼はとても精悍で、アンジェリークはその横顔に見とれた。 「ああ。その件だが脚本を書いたものを送っておいたから、後は刷り待ちだ。キャストへの発送は頼んだ。じゃあ」 携帯を切った後、アリオスはアンジェリークに向き直る。 「すまなかったな? これで仕事に追い立てられなくてすむから」 「うん」 車を発進させ、ドライブに出発する。 彼との出会いは三か月前。 春休みのアルバイトでアリオスが監督をする映画に、軽い気持ちでエキストラに出た。 そこで彼にスカウトされたものの、彼女はそれを断った。 だがそれが縁で、今、こうして付き合っている。 アリオスは「アカデミー俳優」として知られ、監督としても名声を得ているおり、彼も将来は「監督一本」ときめている。 だが自分はしがない女子高生。 そのギャップに時々苦しくなるときもある。 多忙な彼はこうやって逢える日が極端に少ないのだ。 逢ったらドライブデートの後は食事をしてセックス。 そんなデートがずっと続いている。 それでもアンジェリークにとっては貴重な逢瀬に違いなかった。 「今夜は大丈夫なんだろ?」 そんな彼の甘い囁きをなかなか拒めない。 もっともっと他の子と同じようなデートをしてみたいという欲望があるが、今はあえるだけでも満足だと思うことにした------- デートをしてからもう十日経った。 あれから連絡といえばメールしかない。 彼は大作映画の撮影を抱えていてその準備に忙しそうだ。 逢いたいのにな・・・。 抱き締めて欲しいのに。 もっともっとキスして欲しいのに・・・。 恨めしくなって携帯を指でこんと叩いた。 やっぱりアリオスんとこに行っちゃおう! せめて顔だけでもみたいもんね〜! アンジェリークは堪らなくなり、学校の帰りにアリオスの事務所に立ち寄ってみることにした。 「こんにちは・・・」 おこづかいで買ったシューアイスを片手に、事務所に入ると、アリオスは作成した撮影スケジュールをチェックし、確認していた。 奥にいる事務員は彼から出された書類をパソコンで打って大変そうだ。 「アリオス?」 声を掛けると彼はほんの一瞬顔をあげた。 「来たのか?」 「うん…」 少し不安げに見つめた彼女をアリオスは穏やかな眼差しで見つめてくれる。 「わりぃ。ちょっと待っててくれねえか? これから少しだけ撮影スケジュールの打ち合わせを会議室でするから」 「うん、判ったわ」 アンジェリークは素直に頷くと、アリオスがほっとしたように笑った。 アリオスは脚本家としても、監督としても優れているせいか、次々に映画の企画を持ち込まれて、てんてこまいだ。 「もっとゆったり仕事してえけどな」 最近の彼の口癖はこうである。 彼はすぐに書類を持って足早に出て行く。 「いってらっしゃい」 「いってくる!」 彼を見送った後、アンジェリークは釈然としない胸のつかえを感じてしまう。 忙しいのは判ってるんだけど・・・。 大きな溜め息を吐くと、彼女はシューアイスを一つだけ取って、後は冷蔵庫に直した。 自然と溜め息が出てしまう。 自分は”来客”ではないので、アンジェリークはパントリーの椅子に座って、シューアイスをぱくついた。 2時間ほどして、ようやくアリオスは帰ってきた。 「先生、それじゃあこれで」 「ああ、ご苦労さん」 それを待っていたかのように、事務員は挨拶をして帰宅する。 「アンジェ?」 事務員をパ見送った後、パントリーにアリオスが顔を覗かせると、アンジェリークはうつらうつらと夢の世界に漂っていた。 「ったく、しょうがねえな・・・」 彼は苦笑すると、来客用のソファに彼女を抱き運ぶ。 アリオスもゆっくりとその横に腰を降ろすと、彼もまた静かに目を閉じ、緩やかな眠りの中に漂っていった。 「・・・んっ」 ゆっくりと目を開ける。ぼんやりとした意識が徐々に戻ってきた。 パントリーの椅子に座っていたはずが、いつの間にか、ソファの上に座っている。 目を凝らしてみると、隣にはアリオスがいてくれた。 アリオス・・・。 無防備に眠っている彼は、とてもなまめかしい。 「ホント綺麗な顔をしているのよね・・・」 彼はネクタイを外していて、更にシャツの前は少しだけはだけていた。 あまりにもセクシーで、彼女は生唾を飲んでしまう。 最近、ぜんぜんしてなかったものね・・・。 考えるだけで恥ずかしくなってしまい、彼女は真っ赤になる。 アリオスが起きないように触るだけだったらいいよね? やはり欲望には勝てない。 アンジェリークはシャツの上からアリオスの精悍な胸をなぞろうとした。 「それから? 何だ」 「・・・!!」 いきなり翡翠と黄金の眼差しを空けた彼に、アンジェリークは驚くあまりに息を呑む。 「ア、アリオス!!」 「やれよ? 続き。俺からは何もしねえぜ?」 「あっ…」 黄金と翡翠の眼差しが艶やかに光っている。 その光はどこか楽しそうにアンジェリークを捕らえている。 アンジェリークは頬を染めながらも、この挑発に乗る覚悟をきめた。 生唾を飲み込み、顔を真っ赤にしながら、彼女は震える手を彼の胸に押し付ける。 一生懸命ボタンを外し、彼のシャツの前を開け放つ。 「女だって、したいって思うことはあるのよ?」 「だったら、やってみろよ?」 コクリと頷くと、彼女は彼の胸に舌を這わせ始めた-------- |
コメント 後一回で終わります。 いつもより積極的なアンジェちゃんです。 設定的には、去年出した同人誌「SWEET LOVERS」のふたりです |