「なあ、今日は俺の買物に付き合ってくれねえか?」 「うん、いいよ」 時間が出来た土の曜日の午後、いつものようにアンジェリークは約束の地でアリオスと逢っていた。 ここから日の曜日にかけては、二人だけの時間。 土の曜日は夕方までデートをして彼女の部屋で過ごし、日の曜日は一日デートをするのだ。 これが今のアンジェリークを支えている"活力"となっている。 いつもアリオスはアンジェリークにデートの場所の選択権を与えてくれるが、今日は珍しく彼からの申し出。 それもまた、彼女には嬉しかった。 「じゃあ天使の広場に行こうぜ?」 「え、いいの?」 アンジェリークはそこが彼の隙ではない場所と知っていて尋ねる。 だいたい、アリオスは、”誰かに逢うかもしれない”、という理由で、"天使の広場"が嫌いなのだが、彼が行きたい店がそこにあるため、致し方ない。 「ああ。そこに店があるからな。行くぜ?」 「うん!」 アンジェリークは嬉しそうに彼の腕に自分の腕を絡ませると、甘えるようにし着いていった---- アンジェリークが連れて行かれたのは、天使の広場の路地裏だった。 だが、路地裏といっても、明るくて、日差しが差し込み、樹木が茂るとてもロマンティックな通りだ。 ここだったら、誰にも逢わないものね…。 でも、こきにも小さくて可愛いお店がいっぱいあるわね♪ 小さな窓にかざられている商品を楽しそうに眺めながら、アンジェリークはきょろきょろと見つめる。 「おい、ここだ」 アリオスが指差したのは、その中でも、最も外観が可愛らしいお店だった。 ドアは木目で少し硝子の部分があり、レースが掛けられている。 中の様子はわからないが、とてもアンジェリークの好みの感じの店のような気がした。 「ほら、行くぜ?」 「うん!」 アンジェリークもこのときは知らなかった。 この店が例の"大人のお店”であることを---- 中に入っても、アンティークな証明の、ロマンティックな雰囲気で、アンジェリークは悪くないと思った。 しかも中にいるのは、カップルばかりで、アンジェリークはここはペアグッズを売っているものだとばかり思っていた。 だが---- 彼女の目にとまったのは、見覚えがある、数々のもの。 メイド服、鎖ぱんつ、徳利・…。 これらはかつてアリオスと盛り上がるのに役に立ったものたちであった。 「アリオス〜」 ようやくこの店の正体に気がついた天使は、耳まで真っ赤にさせて恥ずかしそうに彼の服の袖をぎゅっとひっぱっる。 「一度おまえをこの店に連れて行きたくてな?」 「バカ」 「いつも世話になってるからな?」 と言って、彼はいつもつけているフィット感の最高な避妊具の箱を彼女の前に突きつけた。 「アリオス、もう知らないっ!」 真っ赤になって彼女はぷいっと横を向くが、真剣に怒っていないことぐらいアリオスには判っている。 「この週末の良いものを見ようぜ?」 「もう…」 俯きながら彼に着いていく彼女が可愛い。 アリオスは喉を鳴らして笑うと、手を繋いだまま店内を物色し始めた。 「ここはいい店なんだぜ? ポイントカードもあるしな?」 「もう…」 「何か、一緒のものを買おうぜ?」 言いながら、アリオスはペアグッズの売り場へとアンジェリークを連れて行った。 そこにはありとあらゆるペアグッズが陳列されており、アンジェリークは赤面する。 ペアショーツは勿論のこと、ペアふんどし、ペアパジャマ、ペア紐、ペア鞭(!)など、危ないものも多数売ってある。 「こんなペアなものなんていらないわよ〜!」 「ペアのショーツぐらいだったら、かまわねえだろ?」 「…だって恥ずかしい…」 そういいながらも、アンジェリークの目は少し好奇に輝いており、ちらりちらりとペアショーツを見ている。 「おまえとさ、ここじゃペアの物してもバレたら困るだろう? 下着ぐらいだったら、ペアにしたって誰にも判らねえからな?」 アンジェリークは確かにと思う。 あからさまな指輪やブレスレットなどは、今の二人の状態では出来ない。 ちゃんと新宇宙に一緒に帰ってからでないと、堂々と出来やしないのだ。 「…ちょっとだけ…、見ようかな…」 少しはにかみの入り混じった声で言うと、アンジェリークは視線をペアショーツに落とす。 結局は、アリオスにいいように丸め込まれているのである。 先ずは女王マークがまばゆい濃紺のものがある。 アリオスとこんなのをペアではいたら、何だか嫌だ・・・ はいた姿を想像をしてしまう、イケナイ女王陛下である。 アンジェリークは少し頬を染めながら、次のぱんつを見た。 大事な所にアルカディアの天然記念物で、アリオスとも一緒に見た蝶がデザインされていて、そこがさらに透けている。 やだやだ〜 コレは大切で美しい思い出が汚されるかのようで嫌だった。 「ねえ、アリオスは何か…はきたいものってあるの?」 「そうだな…。やっぱりおまえには可愛くてちょっと色っぽいのをはいて貰いてえな・…」 「…うん…」 結局はアンジェリークもアリオスには弱いので、彼の言うようなものを探してしまうし、そのほうが好みでも合ったので、選ぼうとする。 「なあ、これはどうだ?」 アリオスが手に取ったぱんつのセットは、綺麗にリボンが付いて既に、ラッピングがしてある。 中身も女性用は可愛いピンク色でシンプルなレースがついてあり、男性用もシンプルに濃紺のブリーフになっている普通のものだ。 「うん…、これが一番普通っぽくっていいかもしれない…」 アンジェリークも同意をして、これを買うことに決めた。 一緒にレジに行って、アリオスが精算をしてくれた。 可愛い包装をしてもらったものを、アンジェリークは大事そうに持つ。 初めてのおそろいのもので嬉しいな…。 …ぱんつだけど・… 二人は"大人のお店"を出て、アンジェリークの住まう屋敷へと向う。 今日はレイチェルも午後はエルンストの元に行っているからいないのだ。 「今夜シャワー浴びた後、それをはいてくれよ?」 「…アリオスもね…」 真っ赤になりながら答える彼女が可愛らしい。 二人は手を繋いで歩いていった。 このときアンジェリークは知らなかった。 巧みにアリオスの"わな”にはまっていることに…。 ----------------------------- 夕食も済んで、アリオスが先ずは手早くシャワーを済ませ、アンジェリークがそれに続く。 そして彼女はシャワーの後、恥ずかしそうに彼からプレゼントされたぱんつをはいて、いつもよりは少し可愛いネグリジェを着て、ベッドへと向った。 「待ってたぜ?」 「…アリオス・…」 アリオスはローブ姿のまま、ベッドに乗って待ち構えている。 「来い」 「…うん…」 薄暗い照明の元、アンジェリークは恥じらいながらアリオスの胸の中に飛び込んでいった---- |