Summer Lesson

前編

 先生が好き。
 それだけで、今まで頑張ってきた。
 先生が担当する英語を一生懸命頑張って、良い点を取るように努力して、今まで頑張ってきました。
 大好きでしょうがない人…。

「おい、コレット!」
 突然声をかけられて振り返る。
 どきどきしながら、先生を見つめる為に。
「何でしょうか、アリオス先生」
「おまえは夏休みは補習に参加しねえといけなくなった」
「嘘・・・。英語が欠点だったんですか!?」
 突然言い渡された補習に、アンジェリークは驚いて言葉を繋げられなかった。
 あんなにも英語を頑張ったっていうのに、どうして欠点だったのだろうか。
「欠点じゃねえ。この夏、しっかりと勉強しておかないと、大学受験の時困るからな。おまえが受けるところは、英語論文があるから、そのための補習だ」
 少し面倒臭そうにアリオスは何でもないことのように言う。
「はい、頑張ります」
 ほっとして笑顔で答えると、アンジェリークは軽く会釈をした。
「補習はここで行うから、プリントをしっかりと読んでおくんだぜ」
「はい・・・」
 貰ったプリントに目を落としながら、しっかりと頷く。「
じゃあな」
 すっとした身のこなしのアリオスに見惚れながら、アンジェリークは少し嬉しい気分になった。
 大切にプリントに目を落とすと、場所が学校でないことが判る。

 制服ではなく私服か・・・。
 夏休みになってからなんだ。
 他の子も一緒だろうけれど、何だか楽しみが出来たな。
 今から凄く楽しみ。アンジェリークはたとえ補習授業であってもアリオスに逢えることが、たまらなく嬉しかった。

 当日、私服ということもあり、少しだけお洒落をして指定場所に向かう。
 持ち物はもちろん勉強道具。
 楽しみながら一生懸命勉強が出来るというのは、なんと素敵なことなのだろうか。
 指定された場所は高級マンションで、アンジェリークは驚いた。
 誰か一緒に入ろうにも、同じ大学を受ける生徒も見掛けない。
 まずはマンションの中に入るために、ボタンを押した。
「コレットか。開けるから入ってこい」
「はい」
 すぐに横のドアが開き、そこからマンションのロビーに出て、エレベーターで指定階に向かう。

 みんなで揃って来たほうが良かったのかな・・・。
 これだと先生大変だものね・・・。

エレベーターから降りると、ひとつしかドアがなくてすぐに判った。
 緊張の余りに手を震わせながら、ボタンを押す。
 するとすぐにドアが開いて、アリオスが迎えに来てくれた。
「暑かっただろ? さあ中に入ってくれ」
「はいっ!」
 アリオスの後に着いていくと、そこは明らかに居住スペースだった。
 正直言って、一介の教師では住むことが出来ない豪華なものだ。
「他のみんなは・・・」
「他はいねえ。おまえだけだ」
 その言葉にびっくりしてアリオスを見る。
 嬉しくも恥ずかしい複雑な気分だ。
「ほら、資料も用意したから、始めるぞ」
「はい!」
 ふたりきりだが、勉強モードなのがいい。
 もう少し砕けた雰囲気だったら、きっともっと緊張していただろう。
 リビングのテーブルに荷物を出して、勉強開始だ。
 アンジェリークはノートを広げて勉強を始める。
 早速いつも以上に厳しい授業が始まった。
「これは、大邸宅という意味で使う。決して、こういった俺たちが使う”マンション”って意味では使わない」
「はい」
 アンジェリークは一生懸命アリオスの指導を受け、しっかりとノートに書き留めていく。
 本当に勉強がはかどるというのは、このことを言うのだとしみじみ思う。

 勉強を始めて丁度3時間経ち、アリオスが時計を見た。
「そろそろ昼か・・・。昼飯を食わないとな。簡単にパスタでも作るか」
「手伝います」
「頼んだ」
 ふたりは仲良くキッチンに立ってパスタを作り始める。
「パスタお好きなんですか?」
「手早く作れるからな。結構気にいってる。今日は和風の卸しだれを使ったパスタだ」
「美味しそう〜」
 レトルトなどを使って調理をするかと思っていたが、意外な手作りに驚いた。
「大根を卸してくれ」
「はいっ!」
 アリオスがあさつきと大葉、タマネギを刻んでいる間に、アンジェリークが大根を卸していく。
 完全に分業して手早く作る。
 アリオスはオリーブオイルでさっとタマネギを炒めている。
 その間に、アンジェリークはパスタの番をした。
 お湯が沸騰すると二人分のパスタを素早く茹でて、アルデンテにする。
 茹でたパスタに、炒めた野菜、ツナ缶を絡めて大葉を乗せおろしポン酢を上からかけた。
「ほら、出来上がりだ」
「おいしそー!」
 ツナの和風パスタが完成し、ふたりは目を輝かせて食べる。
 スープをアリオスが手早く作ってくれたので、それも付いていた。出来たパスタは驚くほど美味しい。
「ホント、凄く美味しい〜!」
「だな。ふたりで一生懸命作ったからだぜ」
「スープも美味しいです!」
 余りにもの美味しさにアンジェリークはするすると食べた。
「先生、すごく料理が上手いんですね」
「自分で食いたいもんを作るために探求したからな」
 男でこんなに料理が上手いのは反則技で、料理を作って感激してもらうような手が使えない。
 ちょっと悔しいが、しょうがない。
 食事が終わると、一緒に食器洗い乾燥機に汚れた皿を入れ、後片付けをした。
 その後は少し休憩だ。
 アリオスが煙草をふかしているのをじっと見るのが楽しい。

 先生は何をしてもやっぱり素敵だな・・・。
 見惚れちゃう・・・。

 じっと見つめていると、アリオスがフッと微笑んでくる。
「どうした?」
「あ、あの・・・」
 躰に染み入るような声で囁かれて、どきどきとして妙に落ち着かなかった。
「アンジェリーク・・・」
 初めて名前で呼ばれて、甘くも切ない気分になる。
 心の奥が甘く疼いた。
「・・・先生・・・」
「アリオスって呼んでみろ」
「・・・アリオス」
 名前で呼ぶのが恥ずかしくてしょうがない。
「上手いぜ。良い声だ」
「あっ・・・」
 唇を掠めるようなキスに、アンジェリークは驚く。
 掠めただけなのに、甘い感覚が全身を駆け巡った。
「先生・・・」
「もっと教えてやろうか? 特別に」
 大好きな男性から甘いキスを貰いたい。
 そんな気持ちから、コクリと頷いてみせた。
「俺が見本をしてやるから、その後おまえもやってみろよ」
「・・・はい」
 アリオスの唇が啄むように触れてくる。
 心も躰も熱くなり、アンジェリークは頭の奥が熱に支配されてぼんやりとしてきた。
「ほらおまえの番だ」
「はい…」
 アリオスの唇に、ぎこちなくキスをする。
 その初々しさがアリオスには可愛くて溜まらなかった。
「次はこうだ…」
「んんっ!」
 今度は深く入り込んでくる。
 まるで生きているような舌に、アンジェリークは頭の芯までとろけるような感覚に溺れた。
 口腔内をしっかりと愛撫されて、力が抜けてくる。
 まるで感じる場所を知っているかのような舌の動きに、アンジェリークは達してしまいそうになった。
「あふ…」
 ようやく解放されて唇を離して貰うと、僅かに唾液がふたりを繋いでどこか官能的だ。
「-----アンジェ、今度はおまえの番だぜ?」
 アンジェリークはこくりと生唾を飲み込むと、アリオスに唇を重ねた-----
 
コメント

エロ教師の夏休み補習です。
次回で完結。
お楽しみに(笑)




top next