Present For You

前編


 恋人に内緒で、女王自らアルカディアへ。
 もちろん、女王としてではなく”ごくごく普通の17歳”に戻ってである。
 こそこそと天使の広場の路地裏に回り、アンジェリークは回りに誰もいないか確認する慎重ぶり。
 しっかりと深呼吸をして、いざお店へ。
 見た目は女の子が好きそうなショップなのだが、その実態は、純情なオトメには到底入れない場所である。
 アンジェリークも入るには少し抵抗があるが、散々ここのグッズをアリオスに使われているので、そのあたりは平気だ。
 何度かアリオスに連れられて来たことがあるのだが、今日のようにひとりで来るのは初めてだ。
 今日はアリオスには内緒できている。
「やっぱり、まずは定番よね・・・」
 自分でも正直なにを呟いているかは判らないまま、アンジェリークは吸い寄せられるようにして、”ぱんつ売り場”に向かった。
 もちろん、メンズものが目当てである。
「いろいろあるんだ・・・。ぷっ、”男性誇張ぱんつ”上げ底かあ〜。”俺、脱いだらないんです”って…。私のアリオスには必要ないけど」
「あ、ふんどし改造型か・・・。見た目は素敵だけれどね」
 ぱんつを手に取っては、びよ〜んと延ばしたりして色々と解説をつけていく新宇宙の女王。
 あのアンジェリークがここまでぱんつを吟味しているとは、アリオスの教育の賜物であろう。
「あ、ブーメラン・・・」
 ヒョウ柄のワイルドタイプのそれは、とてもセクシーで、アンジェリークは生唾を思わず呑み込んだ。
「アリオスなら似合うかも・・・」
 迷わず籠の中に入れると、うっとりと満足の溜め息を吐く。
 想像するだけで妙に興奮して甘い気分になった。
「何も仕掛けのないほうがいいのよ、かえってね」
 散々仕掛けぱんつをはかされたのが、彼女には反面教師になっているようだ。
 まだまだ掘り出し物はないかと色々見てみる。
「誕生日だもの。色々とグッズ買ってあげなくっちゃね」
 不意に、とても響きのいい広告を見つけた。
 ”お疲れのあなたに送る、甘い風”。
「栄養ドリンクか・・・。最近、アリオス激務だものね・・・」
 じっと見つめて、アンジェリークはこれだとばかりに1ダースを買い求めた。
 少し重いがこれぐらいなら持って帰られる。
 伊達に新宇宙の女王を張っているわけではないから。
「これで、アリオスも疲れを癒してくれるかな」
 横にも癒し系のアロマキャンドルがあった。
「へえセクシーに癒すキャンドルか・・・。いいわね」
 ぶつぶつと言いながら”おとなのお店”で買い物をする姿は、とてもアリオスに似ていた。
 キャンドル・ドリンク・ブーメランパンツ。アイテムは全部取り揃った。

 そして、ブランディーたっぷりのケーキを焼いて温かいラムシチューを作ってあげて・・・。
 後は、デザートはわ・た・し。

 そこまで考えて、アンジェリーク真っ赤になる。
「さてと、帰ろうっと!」
アンジェリークはほくほく顔になりながら、帰路に着いた。


 聖地に帰って直ぐに夕飯の支度をし、ばたばたと忙しく働く。
「おい、今日はいったいどこに行ってたんだ?」
 いきなりアリオスに声をかけられて、アンジェリークは大きく体を飛び上がらせた。
「あっ、アリオス、帰ってたんだ」
「帰ってたんじゃねえよ。おまえ、今日、午後からどこ行ってたんだよ!? レイチェルは答えねえし! あいつとホント気があわねえ」
 ふたりのやりとりは簡単に想像できてしまい、くすくすと彼女は笑う。
「おい、どこ行ってたんだよ!」
「ひみちゅ」
 少し早口で言いながら、アンジェリークは逃げていく。
 可愛い袋を隠すようにそそくさと行く時は、大概甘いイタズラをしている証拠。
 隠し事をしても、躰に訊けば判るから、今夜それを実行するつもりだ。
 甘さには甘さである。
「待ってね? 今日はごはんは私が作ったの。食べてね」
「ああ、その間きがえてくる」
「うん! 呼びに行く」
 いつもは激務の彼女だから、手料理は休みの日だけに決まっている。
 だが、今日は平日だというのに、彼女は料理を作ってくれていた。

 今日は、何かあったけな・・・?

 最近は、日にちや曜日を考える余裕などなく仕事をしていたせいか、特にぴんとこない。
 特に何も考えずに、部屋に戻って手早く着替えを始めた。
「アリオス、ごはん出来たわ!」
「ああ、行くぜ」
 服を着替え終わったところで、アンジェリークが部屋に呼びに来てくれる。
 愛らしい笑顔に、アリオスはふっと柔らかな気分になった。
「今日はごちそうなの! 頑張ったのよ!」
「ああ。サンキュ」
 小さなテーブルに温かな夕餉が用意されている。
「ね、座って! 座って!!」
「ああ」
 アリオスは言われるままに席に着くと、その瞬間に彼女がクラッカーを鳴らした。
「ハッピィ・バースディ、アリオス!」
 その音に、彼は少し驚いたようだったが、次の瞬間には柔らかな表情になる。
「サンキュ」
 彼女が秘密にしてくれた理由がこれだと判ると、穏やかな微笑みを浮かべた。
 自分の誕生日など、とんと無頓着だったせいもあって、アンジェリークの心遣いは本当に嬉しい。
「もう、そんな時期か・・・。おまえに祝ってもらうのが、何よりも嬉しいぜ」
「私も、あなたのお祝いをするのが、凄く嬉しいもの」
 幸せそうな顔は、女王の時とは違った甘いもの。
 この瞬間のアンジェリークが何よりも愛しい。
「さあ食べてね? アリオスの好きなものばかりを準備したからね」
「ああ」
 食卓に並べられたアリオスが大好きな食事群に、彼は美味しそうに食べてくれる。
「美味いぜ」
「ありがと」
 アンジェリークにとっては、アリオスの”美味しそうな顔”こそが、何よりものごちそうだった。

 食事も終わり、いよいよプレゼントタイム。
「アリオス・・・、これプレゼント」
「サンキュ」
 少しかさばるプレゼントを受け取ると、アリオスは早速アンジェリークを見つめる。
「開けていいか?」
「うん、どうぞ」
 アリオスは包みを開けるなり、一瞬絶句した。
 最初に目に入ったのは、勿論精力剤。
 その後には、アロマキャンドルに、ブーメランぱんつ。
 喜んでいいのか、呆れていいのか少し迷ったが、嬉しいことには違いない。
 アリオスは艶やかな微笑を浮かべると、アンジェリークを引き寄せて、その耳に唇を当てた。
「今夜は祝ってもらったから、最高に楽しませてやるぜ? 俺のアンジェ。
 おまえに貰ったグッズでな? 風呂に入った後、楽しみにしてろよ?
 明日は幸いにして休みだ。立てねえようにしてやるよ…」
「あんっ…」
 甘くも危険な囁き。
 アンジェリークは心の奥底で、アリオスの危険な”遊戯”を楽しみにしていた------

コメント

本館12000番のキリ番を踏まれたサミーさまのリクエストで
『コレットちゃん、独りで大人の店に買い物に行く』です。
買うものはわしにお任せということで、ブーメラン。
どうなるかは次回に続く(笑)



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