俺と暮らす”アンジェリーク”は、レプリカント。 ふつう”レプリ”は、感情を持ってあるのだが、こいつはそれがまだ目覚めない。 今や、レプリカントは人間と同じ機能を持ち、人間と結婚する者も少なくない。 だが、アンジェリークはどこをどう間違ったか、感情がない一昔前の”ロボット”のようなのだ。 我がアルウ゛ィース財団の英知を集め、人間と寸分違わぬよう設計され、子供すらも宿してしまえる”アンジェリーク”。 結局、”感情面”が不完全で、今、俺の手元にいる。 「アンジェ、ただいま」 「お帰りなさい、アリオス」 いつもの感情が籠っていない挨拶にも、アリオスは慣れ始めていた。 「鞄、下さい」 大きな青緑の瞳を彼に向け、小首を傾げる姿が何とも愛らしい。 こういう可愛らしさが、コンツェルン総裁であるアリオスが、アンジェリークを側に置こうとした理由だった。 「頼んだ」 アリオスが鞄を差し出したのと、アンジェリークが手を差し出したのが、ほぼ同時で、二人の指先が、ほんの少し触れ合った。 その途端、アンジェリークは、びくりと体を震わせ、手を引っ込めてしまった。 それはアンジェリークが初めて示した”感情”だった。 その劇的な変化にアリオスは目を見張る。 「アンジェ・…」 彼が声を掛けると、彼女は初めて不安げな光を大きな瞳に宿した。 「どうした?」 「アリオスと触れ合ったら、びびっと電流が流れた…」 相変わらず、言葉には感情はこもっていなかったが、それでも大きな変化だった。 「アンジェ、馴れていないだけだ…。俺が馴れさせてやるから…」 「ホント?」 「ああ」 くしゃりと栗色の髪を撫でてやると、彼女は僅かに頷いて見せた。 ゆっくりと教えてやれば、目覚めるかもしれねえ・・・。 こいつは、”愛の営み”によって目を覚ますのかもしれない… 「アンジェ、俺に触れられるのは嫌か?」 「嫌じゃないと思う・・・、けど・・・、判らない…」 やはり余り判らないのか、アンジェリークは小首を傾げた。 「教えてやるよ・・・、一つずつ」 彼女の顎を上げると、そのまま唇を近付ける。 「ん・・・?」 ゆっくりと唇を吸い上げ始めた。 「ふあっ」 軽く吸い上げただけで甘い声を上げる彼女に、アリオスは満足そうに見つめた。 「この感覚は何?」 大きな瞳を潤ませて、彼を見つめる彼女に、彼は笑って抱き締めてやる。 「いい気持ちか?」 「いい・・・気持ち? もっと触れて欲しいってこと?」 「ああ」 彼の言葉に、彼女の瞳は明るく光る。 そして、いつしかその頬が赤く染められていった。 「だったら、もっと…、触れて欲しい…」 彼女の変化は、益々、アリオスの気持ちを高ぶらせる。 「可愛いな…? おまえは自分がこうしたいって思うことをすればいい。そうすれば、感情だって、どんなものかわかるようになるぞ?」 「うん…。 だったら、アリオス、私に触れていて?」 「ああ」 そのまま彼女を抱き上げると、彼は、寝室へと向かった。 彼女はそのままベットの上に座らされて、きょとんとしている。 「アリオス、ごはんは? 折角作ったのに」 「メシよりおまえに触れていてえ、嫌か?」 いつもよりもずっと優しくアリオスに囁かれて、アンジェリークは心の奥底が暖かくなるのを感じた。 同時に、少し甘くゾクリとする感覚も感じる。 「…うん…、私もそのほうがいい…」 「アンジェ…」 彼女はこのとき、初めて、自分の意志に忠実になったのだ。 「目、閉じろよ?」 「うん…」 アリオスに言われた通りに瞳を閉じて、彼女はその唇を待ちわびる。 俺が作った”人形”のはずなのに…。 こいつに触れるだけで胸がガキみてえに騒ぎやがる… 全く罪なやつだ・・ アリオスは、その柔らかな唇に自分の唇を当て、貪るように唇を吸い上げ始めた。 感情が未発達なアンジェリークに、彼は少しずる教え始めた。 「ん・・・っ!」 「そうだ…、感じたら素直に声を出せ?」 「感じる…?」 「気持ちよかったらだ…」 淫らな彼の教育にも、彼女は余りにも従順で。 「気持ちいいから…」 「ああ」 うっとりと、彼の唇に溺れるアンジェリークに、アリオスのレッスンは続く。 「少しだけ口を開けろ…」 「うん・・・あっ!」 ほんの少し唇を開ければ、そこに彼の舌が割って入ってくる。 その余りにもの感覚に、彼女は全身の力が抜け始めた。 私は…、アリオスに作ってもらったのに・…。 どうしてこんなに感じてしまうの…? 「はあん」 彼に口腔内を愛撫されると、何も考えられなくて。 もっと彼が与えてくれる刺激が欲しくなってしまう。。 甘い吐息が何度も漏れて、彼女は誰にも教わっていないのに、アリオスの服にしがみつく。 突然、彼の唇が離されてしまって、彼女は講義の声を上げた。 「ダメ…」 「ダメじゃねえよ…」 彼は、彼女の唇の周りについた、どちらかともわからない唾液をぺろりとなめ上げて、彼女はそれだけで彼にもたれかかってしまう。 まだなれていない証拠。 彼によって、ようやく感情が湧き出始めているのだ。 「おまえ…、すげえ可愛いぜ?」 「最高?」 「ああ、最高だ」 そのまま、アリオスは彼女に顔を近づける。 「今度は俺が舌を入れたら、おまえも俺の舌に自分のをからませろ」 「ん…」 少しはにかんではいるものの、彼女は従順だ。 その総てが可愛くて、たまらなくて、アリオスは再び夢中で彼女の唇を貪った。 「ああ・・・」 最初はぎこちなかった彼女の舌も、彼に誘導されるたびに上手く動くようになる。 経験豊富なアリオスですらも、その絡み合いに、夢中になってしまう。 こんなに夢中になれるなんて… もう、俺はこいつを離せねえ… 二人は互いの赴くままに唇を貪りあい、舌を絡ませあう。 ようやく唇が離されたときは、二人の唇の周りは、唾液で光っていた。 「アリオス…」 「ん? 何だ?」 おずおずとアンジェリークはアリオスの唇のまわりに舌を這わせ、それを舐めとってゆく。 「アンジェ!」 彼はもうたまらなくなる。 欲望を押さえることなんて出来ない。 「おまえが欲しい…」 「ああっ」 そのままアンジェリークはベットに押し倒されて、目くるめく、”レッスン”の時間が訪れた---- |
コメント
本館30000番のキリ番を踏まれたさくら様のリクエストで、
『アンドロイドのアンジェリークが、アリオスに教えられて感情に目覚めてゆく』です。
丁度タイムリーなことに衛星で『ブレードランナー』をやっているので、脱線しながら書かせていただきました。
ちなみに『レプリカント』って造語なんですよ〜。
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