Love In The Space Dome

前編

 夕方、涼しくなってから、とっておきのサマーワンピースを身に纏い、おしゃれをしてデートに出かけた。
「またぷち”家出”?」
 くすくすと笑う母親に、アンジェリークはほんの少しだけ頬を赤らめる。
「もう、お母さんのバカ・・・」
「アリオスくんに宜しくね? もう娘をお嫁にあげた気分よ」
 恋人のアリオスとは両親も公認の仲なせいか、このようにからかわれるのもしばしばである。

 アンジェリークは夕涼み方々、駅前でアリオスを待つことにした。

 もうお母さんのばか・・・。

 ”ぷち家出”その表現ははっきり言って正しかった。
 彼が有名俳優で余りデートできないこともあり、一度アリオスとデートをすると、アンジェリークは帰って来ないことがほとんどなのだ。
 今や、アリオスの家と自分の家の物は半分ずつになってしまっている。
「涼しい〜」
 やはり七時近くなれば、とても風が優しくなり涼しさも増す。
 愛らしい彼女の表情に、街行く男達は目を止めるが、アンジェリークにはアリオスしか見えないせいか気にしない。
「アンジェ」
 アリオスが風に銀の髪をなびかせながら、こちらにやって来る。
 銀の髪を揺らしながら。大きなスタンスで歩く姿。
 その上サングラスもとても似合っている。
 いつもながら素敵な彼にアンジェリークはうっとりと見つめ、彼もまた側に来るなりその華奢な腰を抱いた。
「行くぞ」
「うん」
 しっかりと身体を密着されて、アンジェリークは幸せすぎて息を呑んでしまう。
 でも本当は、アンジェリークばかりを見つめる男達の目線が気になり、わざと腰を抱いたのだ。
「こうしてもらうの凄く嬉しい」
「何でだ?」
「アリオス、女の人がみんなあなたを見てるでしょ? あなたは私の恋人だって、彼女たちに示せるもん・・・。私の彼を眼差しで誘惑しないでって」
 少し恥ずかしそうに、だが華やぎのある声でアンジェリークは呟く。
「んなことねえよ。俺にはおまえしか見えてねえしな。それにそんなに俺のこと見てるかよ?」
「見てるわ・・・。きっとそのうちにあなたが、あの俳優の”アリオス”だってみんな気がつくわよ?」
 アリオスはおかしそうに喉を鳴らして笑うと、更にアンジェリークを抱き寄せた。
「きゃっ」
「それよりもだ。おまえを見ている男達の視線の方が俺は気になる」
 耳朶を噛むようにしてアリオスが囁くものだから、アンジェリークは益々真っ赤になる。
 それがアリオスには色っぽくて堪らない。
「・・・そんなに見てないわよ」
「見てるぜ? おまえは俺の女なのによ」
 頬を掠めるようにしてキスをすると、彼女は甘い溜め息を吐いた。

 身体を密着させながら、ふたりはゆったりとビル街へと向かう。
「アリオス、どこに連れていってくれるの?」
「秘密だ」
「もう、ケチ!!」
 アリオスが連れて行ってくれたのは、アンジェリークが友達のレイチェルと一緒によく遊びに行く、ショッピングビルだった。
 シースルーのエレベーターで上まで上がりきり、ドーム形状のホールの中へと入っていく。
 彼が係員に話すと、すんなりと中に入れてくれた。
「プラネタリウム? でも、”本日終了”になってるわよ」
「いいから来いよ」
「うん・・・」
 戸惑いながら、アリオスに手を引かれて中に入ると、ドーム天井は明るかった。
 誰もいないそこは、とても静かだ。
「俺の友達がこのビルのオーナーで、プラネタリウムを所有している。あいつには貸しがあるからな? 今夜の回を貸し切りにしてもらった」
「貸切!!!」
 あまりにものスケールに、アンジェリークは声を大きく上げてしまう。
「どこに座っても良いんだぜ?」
「え! ホント!!」
 360度どこも自由に座れるとは。
 アンジェリークはまるで子供のようにはしゃぎながらどこに座ろうかと思案してる。
「どこから見ても同じだぜ?」
 そんな少し子供じみた彼女が可愛くて、アリオスは仕方がなかった。
「ここにしようっと!」
 アンジェリークが選んだのは、先程、入ってきた入り口付近の場所だ。
「さっきとかわらねえじゃねえか」
 アリオスは笑いながらアンジェリークの横に座った。
 2人がドームを見上げると、タイミングよく夕焼けの色にドームが染まっていく。
「始まるわね?」
「ああ」
 二人は手をしっかりと握り合って空を見上げる。

『空をご覧下さい------
 夕闇が迫り始めました。
 西の空には太陽が沈み始め、東の空には月が顔を覗かせていますね?
 ゆっくりと空も暗くなってきました。
 いつもは空気が汚れていたり、ネオンなどで余り星見えないアルカディアの街。
 では、今日は、アルカディアの町の空気を綺麗にして車を通らないようにして、ネオンを消してしまいましょう!』
 その瞬間、ドームの上にはあまたの星星が光り輝き、アンジェリークはその美しさに声を上げた。
「こんなに星が隠れているんだ〜!!!
 凄いわね!! アリオス」
「だな?」
 吸い込まれそうになりながら、アンジェリークは瞳をきらきらさせて星空を見つめている。
「こんな空で星を眺めていたら、きっととってもロマンティックだわ・・・。
 今もだけどね?」
 アンジェリークがクスリと笑うと、アリオスは、ひじ置きを上にあげて手を伸ばすと、彼女をぎゅっと抱き寄せた。
「--------もっとロマンティックな気分にさせてやるよ?」
 甘く囁くと、アリオスはアンジェリークの唇を深く奪い去る。
 舌を絡ませあい、口腔内をお互いに愛撫しあう。
「んんっ…」
 唾液が糸を引いて、二人はいつしかプラネタリウムではなくキスに夢中になっていた。
 しっかりと抱擁をしあう。
 アリオスの手はいつしか、アンジェリークのワンピースを弄り始める。

『北の空で人一倍輝く星! それが北極星です。北極星から7倍距離を伸ばしてみましょう…』

 プラネタリウムのナレーションも、いまや夢中になる二人には届かなかった--------

 TO BE CONTINUED…

  
コメント

 SCCで東京に行ったとき、瑠美さまとミナミさまと渋谷をぶらぶらとしていたときにみつけたのが臨時にやってた
『プラネタリウム』でした。
ここから生まれたのがこのネタです。

ここで出てくるプラネタリウムは、私が小学生の頃学校から行き、それ以来何度も通った、大○市立電気○学館のプラネタリウムがイメージです。ここには、日本で最古のプラネタリウムの投影機が、当時はまだ現役で動いていて、手○治虫先生も子供の頃に通っていたというナレーションから始まりました。今は、この館もなくなり、お役ごめんになった投影機は博物館に展示されています。
ちなみにこの館には『透明人間の部屋』というのがあり、透明人間の一日の生活が覗けるのがありました(笑)
透明人間の癖にシャワーを浴びたりメシ食ってた(笑)

瑠美さまミナミさま書きましたぜ?



モドル  ツギ