LOVE
〜DESTINY〜

FIRST 


「ワンピースもお気に入りのものだし、ジャケットは帽子とお揃いでばっちり・・・。後、ネックレスとイヤリングは〜、お誕生日に貰った真珠のやつ。」
 鏡を何度も見つめながら、アンジェリークは満足げに微笑む。
「よし、完璧!!」
 気合を入れるように彼女は言うと、バックを片手に部屋を出てゆく。

 今日だけ…、今日だけだから…

 明日になれば、いつもの自分に戻るから。
 今日は、初恋の男性とデートが出来る唯一の日かもしれない。
 彼の名はアリオス。
 この春までアンジェリークの担任だった物理の先生。
 だが、彼の実家は有名なコンツエルンで、そこを継がなければならなくなったために学校を退職したのだ。
 噂によるとこの六月に生まれながらの婚約者と結婚するらしい。
 真意を彼に確かめたわけではなかったが、大方事実だろう。
 彼のことをとても好きだった彼女は、彼の教師としての最後の日にお願いをしたのだ。
「たった一度でいいからデートさせてください」
 -----その申し出に、アリオスが快諾してくれたため、彼女はそのデートの待ち合わせ場所に今向かっているのだ。
 一張羅を着て、出来る限りのおしゃれをして。
 ショッピングセンターや繁華街を彼と二人で歩いてみたい。
 
 今日の予定を考えるだけで、 顔がにやけてしまう。

 バスに乗って公園へ行って、そこでホットドックを食べるの…。
 公園では手を繋いで、歩いてみたい…。
 普通の恋人同士みたいにじゃれあって…。
 そして、夜ご飯を食べて夜景を見て、さよなら・・・

 そこまで考えると、彼女は急に寂しくなって、肩を落とす。

 ダメ、ダメ!!
 折角先生がデートしてくれるんだから…

 彼女は暗い想いを払拭するかのように頭を振って、自分に言い聞かせた。
 約束の駅を降りて、彼女は鼓動が早くなるのを感じる。

 落ち着け…
 落ち着けアンジェリーク…

 その場所についただけで、彼を感じ取ることが出来る。
 今日、デートの待ち合わせとして指定されたのは、緑なす公園を中心にして広がる一大繁華街の最寄駅だ。
 指定された場所は、噴水の前。
 彼女は、少し早く着いてしまったせいか、周りをきょろきょろしながら彼の姿を探す。

 先生、どんな格好で来るのかな…

「あっ!!」
 彼の姿を見つけたのと同時に、 彼女は息を飲む。
 アリオスは、黒いTシャツにジーンズというごくラフなスタイルで現れた。
 とてもシンプルなファッションであるがゆえに、彼のスタイルのよさを強調している。
「よ? 待ったか?」
「いいえ、それほどでも・・・」
 言いながら、彼女ははにかんで俯いてしまう。

 先生…。
 きょうはいつにも増してカッコいいな…

「ほら、なにしてんだ、ん?」
「あ・・・、だって、先生いつもよりも、カッコいいから…」
 アンジェリークは耳まで真っ赤にして、拙く話す。
 その様子が、余りにも可愛くて、彼はクッと喉を鳴らした。
「ほら、先生じゃねえぜ? 今日は。”アリオス”って呼べ?」
 いきなり大きな手で頬を包まれて、その異色の魅惑的な眼差しで見つめられてしまうと、心臓が飛び出してくるのではないかと思うほど鼓動を早めてしまう。
 喉がからからになって、底には渇望がある。
 頬だけが熱くて、だけど彼の手はひんやりと冷たくて…。
「ほら、行くぜ? 今日、一日は俺はおまえの”恋人”だ」
 頬から手を離すと、その手を彼女の小さな手を包み込んだ。
 体温は冷たいのに、なんだか守られているようで、心が熱くなる。

 先生…

「はい、行きましょう!」
「なあ、おまえはどこに行きたい?」
 当てもなくとりあえず歩きながら、アリオスは訊く。
「公園に行って、ホットドッグを食べて、ショッピング!!」
「よし」
 憎らしいほどの魅力が混じった微笑みを浮かべると、彼はそのまま彼女をひっぱって、公園へと連れてゆく。

 もっと強く握っていいよ…先生…



  公園に着いた二人は、先ずホットドックを買って、それを仲良くベンチで座ってほおばった。
「美味しい!!」
「ヤッパリ外で食うとうまいな?」
 昼食を堪能した後、少し、雲を眺めてから、今度は散歩がてらショッピングモールまであるく。
「アリオス、これにあう?」
「いや〜、全然」
「もう! 意地悪!!」
 ごく自然にアンジェリークは彼の肩を軽く叩く。
 本当に彼女は楽しそうで、嬉しそうで、きらきらと輝いている。

 判ってる…。
 これが今日一日のことだって…。
 これが”永遠”に続けばと思うけれど…、”永遠”なんてないから・・・。
 だからこの一瞬一瞬を、大切にしよう。
 頭の先からつま先まで、忘れないように…

 彼女は彼の表情もひとつひとつを胸に刻み込む。
 そして、アリオスも…。

 ころころと変わる表情が可愛くて、この瞬間が”幸せ”だと思う…。
 誰よりも…、俺はアンジェリークのことを…

 二人は互いの想いを口に出さなかった。
 そうすればどうなるかが判っていたから。

 この時間を、生きている糧にすればいいから…

 アンジェリークはそう胸に深く刻み込んでいた。

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 デートのメインイベントである夕食も済み、外はすっかり暗くなっていた。
 二人はもう少し一緒にいたい。
 そう思ってはいたが、まだどちらからも口に出さなかった。
 残り少なくなった時間は切なかった。
 アンジェリークは実施に涙をこらえて、待ち合わせをした場所へと向かった。
 そこにアリオスの車も停めてある為、自然と別れの場所になる。
「アンジェリーク」
 駅の近くに着たかと思うと、アリオスは彼女を連れて狭い路地に入ってゆく。
「アリオス?」
 戸惑う彼女などお構いなしに、彼は、路地の狭い壁に彼女の華奢な身体を押し付け、逃げられないように両手を彼女の身体の横の壁に、左右に分けてつく。
「帰したくねえ・・・」
低く囁かれたかと思うと、彼は彼女の唇を幣ぼるように奪った。
「ん・・・っ!!」
 深く奪うような口付け。
 舌で深く口の中を愛撫されて、彼女は頭が白くなり、立ってはいられない。
 彼の左手の二つのブレスレットが擦れ合って金属の乾いた音を立てる。
「来いよ」
 挑むように言われて、彼女もそっと頷く。

 許されざる行為でもいい…。
 誰も私たちのことは止められないから…
 そう誰も…

TO BE CONTINUED・・・


コメント

23456番を踏まれた沙羅様のリクエストで、「ラブ通Vol9」のイラストを元にした創作です。
これから本番です…