KITTEN MY LOVE

前編


 雨の日に拾った栗色の子猫。
 余りにも可愛く、その大きなアクアマリンの瞳で見るものだから、拾ってやらずにはいられなかった。
「来いよ…」
 俺が手を伸ばせば、喉を鳴らして、駆け寄ってくる。
 余りにも俺に甘えてくる小さな猫…。
 その温かさは、俺が久し振りに手にした温かさだった。
 本当に天使みたいに見るものだから、俺の脳裏にはたった一つの名前しか思い浮かばなかった。
「----アンジェリーク…。お前の名はアンジェリークだ…」
 そう言った瞬間、子猫は嬉しそうに俺の胸に頭を埋めてくる。
 笑ったような気が、俺にはした----

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「アンジェ、行って来るぜ?」
「にゃおん!」
 足元に擦り寄ってくる、この子猫が可愛らしくて、アリオスはフッと甘く微笑む。
 最近、この子猫のお陰で、アリオスの心は満たされていた。
 この子猫は、不思議なことに、猫缶といった猫が一般に食べるものは食べず、アリオスと全く同じ物を食べる、少し変った猫であった。
「じゃあな? アンジェ?」
 無情にもドアが閉められ、アリオスが廊下を歩いてゆく靴音だけが響く。
 それを聞きながら、猫は、ふっと肩を落とした。

 アリオス…。
 あなたなら、私にかけられた魔法を解いてくれる?


 この日は金曜日であったが、アリオスは珍しく仕事が早く終わり、後のことを腹心の部下であるカインに任せて、家路に急ぐ。
 勿論、猫のアンジェリークと過ごしたいから。
 アンジェリークの大好きな、イチゴのケーキを買って帰る。
「アンジェ! 待ってたか!」
 彼が玄関のドアを開けるなり、猫のアンジェリークは嬉しそうにかけてきて迎えに来る。
「うるにゃあん!」
 大きな瞳をくるっと彼に向けて、帰って来るなり猫のアンジェリークは、彼の長い足に絡みついた。
「判ってるぜ? お前のためにケーキを買ってやってきたからな」
 小さな小さな子猫を抱き上げて、アリオスはキッチンへと向う。
 そこで椅子に子猫を座らせて、自分は手早くてを洗う。
 そして、テーブルの上には、彼の分のデパ地下のグルメ弁当と、アンジェリークのためのイチゴのロールケーキがある。
「ほら食うか」
「にゃおん!」
 子猫を膝の上に乗せて、アリオスは喉や頭を優しく撫でてやる。
 喉をまた鳴らして甘えてくる子猫が可愛くてたまらない。
「アンジェ、留守番サンキュ。ほら、ご褒美だ…」
 彼は掌に、アンジェリークが食べやすいように砕いたケーキを乗せてやり、食べさせてやる。
「にゃおん〜!!!」
 アンジェリークは、本当に嬉しそうに頭を振りながら、がつがつと食べる。
 その様子が、またまたアリオスの心を刺激して、彼は愛しげに目を細めた。

 いいひろいもんしたな…。
 こいつは俺を癒してくれる…

 お腹いっぱいになったのか、アンジェリークはアリオスの膝の上で、お腹を出して大の字になる。
 そもそも拾ったときからそうだった。
 この子猫は、彼の隣で眠る際、手枕でないと満足せず、しかもお腹を出して大の字で寝る。
 それがまたアリオスを子猫に夢中にさせる要因だった。
 おいしいという印である、口の周りを一生懸命舌で舐めて、満足そうにする。
「アンジェ・…」
 アリオスはアンジェリークの口を自分の口に近付け、ちゅっと軽くキスをした。
「愛してるぜ? アンジェ?」
 そう囁いたその瞬間-----
 時間が揺れた。
「……!!!」
 アリオスは驚愕の余り言葉が出ない。
 栗色の髪をした大きなアクアマリンの瞳を持つ少女が、裸のまま、アリオスの膝の上に乗っていた。
 その姿は彼が亡くした恋人に良く似ている。
「…アリオス!!!!! 有難う!!!!」
 少女は甘く囁くと、彼に豊か過ぎる胸を擦り付けて、細い腕を彼の腕に回す。
 その柔らかい感触に、彼の身体は素直に反応するも、頭がついていかない。
 ようやく彼は何とか言葉をつむぎだす。
「…アンジェリークか…?」
「そうよ、アリオス!!! 私、あなたに"魔法"を解いてもらったの!!!」
「魔法って…?」
 アリオスは全く話が見えない。
「…私ね…、ずっと…、あなたのことを知っていたの・…。
 「私は妖精界に住んでる妖精なの…。あなたのことは、あなたが恋人と一緒に、良く"アルカディアの森"に来てる時から知ってた…。
 あなたが、恋人を事故で無くしたって聞いていてもたってもいられなくって、妖精の女王陛下にあなたの側に行けるように頼んだの…。で、聞き入れてくださったけど、あなたの側には子猫の姿で行かせて下さったんだけれど、人間の姿になるにはあなたの愛情がこもった言葉が必要だったの…」
 一生懸命話すその姿は、透明感の合う妖精そのもので…。
「アンジェ・…」
 俄かには信じがたい話である。
 だが、彼女のその姿を見ていると、嘘をついているとは思えない。
 現に恋人の誌のことをちゃんと知っていたのだから。
 そこで、アリオスははっとする。
 恋人のことを思い出しても、胸が余り痛まない。
 この姿はアンジェリークなのだと、受け入れることができる自分がいる。
 黙ったままの彼に、アンジェリークは酷く不安になる。
「ね? 迷惑? そうよね…、私も最初、あなたの恋人を見たときに驚いて・…。迷惑だったら…」
 大きな瞳を潤ませて、不安げに見つめる少女が、とても愛しくて。
「そんなわけねえよ!!」
 ぎゅっと華奢な身体を抱きしめ、離さなかった。
「アリオス…、大好き!!!」
「お前…、可愛いな…」
「ね? 頭と首撫でて?」
「へ?」
 つんと突き出す首と頭に、彼は猫のときにそうしてやったように彼女をなでてやった。
「う〜ん」
 ごろごろと喉を鳴らしながら、少女は喜ぶ。

 まさか…、まだ猫の習性が・…

「ねえ、身体舐めるから」
「え!?」
 彼が驚いている間に、彼女は腕を舌で舐め始める。
 彼がじっと見つめていると、少女はきょとんとした姿で彼を見つめる。
「ね、アリオスも舐めて欲しい?」
 その言葉にアリオスの理性は音を立てて崩れ落ちる。

 ダメだ…。
 この可愛さの前じゃ、俺の理性は・…

 彼はそのまま彼女を抱き上げ、立ち上がる。
「あん、アリオス。どこに連れて行ってくれるの?」
「ベッド。
 -----俺がおまえの身体を綺麗に舐めてやるよ?」
「嬉しい!!」
 無邪気にそういうう彼女は、何が起こるか判ってはいない。
 そんな妖精に苦笑しながら、アリオスは寝室へと向った---- 
TO BE CONTINUED…

コメント

33333番のキリ番を踏まれたサミー様のリクエストで、
「アンジェリークを猫可愛がりするアリオス」です。
すみません。本当に猫にしてしまいました・…