雨の日に拾った栗色の子猫。 余りにも可愛く、その大きなアクアマリンの瞳で見るものだから、拾ってやらずにはいられなかった。 「来いよ…」 俺が手を伸ばせば、喉を鳴らして、駆け寄ってくる。 余りにも俺に甘えてくる小さな猫…。 その温かさは、俺が久し振りに手にした温かさだった。 本当に天使みたいに見るものだから、俺の脳裏にはたった一つの名前しか思い浮かばなかった。 「----アンジェリーク…。お前の名はアンジェリークだ…」 そう言った瞬間、子猫は嬉しそうに俺の胸に頭を埋めてくる。 笑ったような気が、俺にはした---- -------------------------------- 「アンジェ、行って来るぜ?」 「にゃおん!」 足元に擦り寄ってくる、この子猫が可愛らしくて、アリオスはフッと甘く微笑む。 最近、この子猫のお陰で、アリオスの心は満たされていた。 この子猫は、不思議なことに、猫缶といった猫が一般に食べるものは食べず、アリオスと全く同じ物を食べる、少し変った猫であった。 「じゃあな? アンジェ?」 無情にもドアが閉められ、アリオスが廊下を歩いてゆく靴音だけが響く。 それを聞きながら、猫は、ふっと肩を落とした。 アリオス…。 あなたなら、私にかけられた魔法を解いてくれる? この日は金曜日であったが、アリオスは珍しく仕事が早く終わり、後のことを腹心の部下であるカインに任せて、家路に急ぐ。 勿論、猫のアンジェリークと過ごしたいから。 アンジェリークの大好きな、イチゴのケーキを買って帰る。 「アンジェ! 待ってたか!」 彼が玄関のドアを開けるなり、猫のアンジェリークは嬉しそうにかけてきて迎えに来る。 「うるにゃあん!」 大きな瞳をくるっと彼に向けて、帰って来るなり猫のアンジェリークは、彼の長い足に絡みついた。 「判ってるぜ? お前のためにケーキを買ってやってきたからな」 小さな小さな子猫を抱き上げて、アリオスはキッチンへと向う。 そこで椅子に子猫を座らせて、自分は手早くてを洗う。 そして、テーブルの上には、彼の分のデパ地下のグルメ弁当と、アンジェリークのためのイチゴのロールケーキがある。 「ほら食うか」 「にゃおん!」 子猫を膝の上に乗せて、アリオスは喉や頭を優しく撫でてやる。 喉をまた鳴らして甘えてくる子猫が可愛くてたまらない。 「アンジェ、留守番サンキュ。ほら、ご褒美だ…」 彼は掌に、アンジェリークが食べやすいように砕いたケーキを乗せてやり、食べさせてやる。 「にゃおん〜!!!」 アンジェリークは、本当に嬉しそうに頭を振りながら、がつがつと食べる。 その様子が、またまたアリオスの心を刺激して、彼は愛しげに目を細めた。 いいひろいもんしたな…。 こいつは俺を癒してくれる… お腹いっぱいになったのか、アンジェリークはアリオスの膝の上で、お腹を出して大の字になる。 そもそも拾ったときからそうだった。 この子猫は、彼の隣で眠る際、手枕でないと満足せず、しかもお腹を出して大の字で寝る。 それがまたアリオスを子猫に夢中にさせる要因だった。 おいしいという印である、口の周りを一生懸命舌で舐めて、満足そうにする。 「アンジェ・…」 アリオスはアンジェリークの口を自分の口に近付け、ちゅっと軽くキスをした。 「愛してるぜ? アンジェ?」 そう囁いたその瞬間----- 時間が揺れた。 「……!!!」 アリオスは驚愕の余り言葉が出ない。 栗色の髪をした大きなアクアマリンの瞳を持つ少女が、裸のまま、アリオスの膝の上に乗っていた。 その姿は彼が亡くした恋人に良く似ている。 「…アリオス!!!!! 有難う!!!!」 少女は甘く囁くと、彼に豊か過ぎる胸を擦り付けて、細い腕を彼の腕に回す。 その柔らかい感触に、彼の身体は素直に反応するも、頭がついていかない。 ようやく彼は何とか言葉をつむぎだす。 「…アンジェリークか…?」 「そうよ、アリオス!!! 私、あなたに"魔法"を解いてもらったの!!!」 「魔法って…?」 アリオスは全く話が見えない。 「…私ね…、ずっと…、あなたのことを知っていたの・…。 「私は妖精界に住んでる妖精なの…。あなたのことは、あなたが恋人と一緒に、良く"アルカディアの森"に来てる時から知ってた…。 あなたが、恋人を事故で無くしたって聞いていてもたってもいられなくって、妖精の女王陛下にあなたの側に行けるように頼んだの…。で、聞き入れてくださったけど、あなたの側には子猫の姿で行かせて下さったんだけれど、人間の姿になるにはあなたの愛情がこもった言葉が必要だったの…」 一生懸命話すその姿は、透明感の合う妖精そのもので…。 「アンジェ・…」 俄かには信じがたい話である。 だが、彼女のその姿を見ていると、嘘をついているとは思えない。 現に恋人の誌のことをちゃんと知っていたのだから。 そこで、アリオスははっとする。 恋人のことを思い出しても、胸が余り痛まない。 この姿はアンジェリークなのだと、受け入れることができる自分がいる。 黙ったままの彼に、アンジェリークは酷く不安になる。 「ね? 迷惑? そうよね…、私も最初、あなたの恋人を見たときに驚いて・…。迷惑だったら…」 大きな瞳を潤ませて、不安げに見つめる少女が、とても愛しくて。 「そんなわけねえよ!!」 ぎゅっと華奢な身体を抱きしめ、離さなかった。 「アリオス…、大好き!!!」 「お前…、可愛いな…」 「ね? 頭と首撫でて?」 「へ?」 つんと突き出す首と頭に、彼は猫のときにそうしてやったように彼女をなでてやった。 「う〜ん」 ごろごろと喉を鳴らしながら、少女は喜ぶ。 まさか…、まだ猫の習性が・… 「ねえ、身体舐めるから」 「え!?」 彼が驚いている間に、彼女は腕を舌で舐め始める。 彼がじっと見つめていると、少女はきょとんとした姿で彼を見つめる。 「ね、アリオスも舐めて欲しい?」 その言葉にアリオスの理性は音を立てて崩れ落ちる。 ダメだ…。 この可愛さの前じゃ、俺の理性は・… 彼はそのまま彼女を抱き上げ、立ち上がる。 「あん、アリオス。どこに連れて行ってくれるの?」 「ベッド。 -----俺がおまえの身体を綺麗に舐めてやるよ?」 「嬉しい!!」 無邪気にそういうう彼女は、何が起こるか判ってはいない。 そんな妖精に苦笑しながら、アリオスは寝室へと向った---- |
コメント
33333番のキリ番を踏まれたサミー様のリクエストで、
「アンジェリークを猫可愛がりするアリオス」です。
すみません。本当に猫にしてしまいました・…
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