「久し振りだな! お嬢ちゃん!」 振り返ると、やはりそこにはオスカーがいた。 独特な呼び方と、その美声でアンジェリークにはすぐ誰か判った。 「あっ! オスカーさんっ!」 懐かしそうにアンジェリークは駆けて行き、嬉しそうに笑う。 「お久し振りです!!」 「すっかり”奥さん”が板についてきたな。どうしようもない旦那は元気か?」 ”どうしようもない旦那” それは晴れて夫となったアリオスのこと。 天使にめろめろな彼は、彼女が絡んだらとたんに子供っぽくなってしまい、周りを微笑ましくしている 「アリオスは元気ですよ! 今度また遊びに来て下さいね!」 「あいつが、いいと言ったらな?」 苦笑いしながら彼は言った。 それもそのはずで、アリオスは、いつもクールで、女性も感情なく抱ける彼が、唯一、感情をぶつけてしまう存在であるアンジェリーク。 かつて、オスカーも彼女のことが好きで、友人であるアリオスにもそれを宣言していた。 だが、彼女はそのことを知らない。 自分が、二人の愛の巣に押しかけていけば、見せつけられるか、アンジェリークにだけ独占欲の強いアリオスに、嫉妬されるのが関の山である。 「また遊びに行かせてもらうな?」 「ええ! ごちそう作って待ってます」 ふと、先程から視線を感じ、アンジェリークはオスカーの横をみた。 「オスカーさん、この方は・・・?」 「ああ、セイランだ」 その名前に聞き覚えがあり、アンジェリークは記憶をたどりはっとした。 「作家のセイランさん!?」 セイランは、皮肉げに僅かに笑うと、アンジェリークを見た。 「今度、この街を舞台に小説を書くことになって、その取材」 「そうなんですか」 四人の少女の恋物語をね・・・。中心は君で・・・。 セイランは心の中で深く呟いた。 「この街が舞台なんですね! 素敵だわ・・・」 うっとりとアンジェリークは笑った。 今日は思いがけずに早く帰れたな。 アンジェを驚かせてやっても・・・。 彼はそう思うなり、アンジェリークの笑顔を見つけ、駆け寄ろうとした。 アンジェリークがどこにいるかは、長年培ってきた”アンジェ・センサー”で、どんな人込みにいても、見つけることができるのだ。 「アンジェ・・・」 声を掛けようとして、アリオスは思いとどまる。 アンジェリークが楽しそうに話している姿を見て、いやがおうもなく、嫉妬が吹き上げてくる。 しかも、話している相手はオスカーであり、その隣には、アリオスも知っている文学部芸術科にいたセイランがいる。 どうしてそんな笑顔でやつらを見る! アンジェ!! アリオスは拳を握り締めると、そのまま踵を返し、自宅へと向かった。 「あ、もういかなくっちゃ」 アンジェリークは時計に視線を落とした後、すまなそうに言うと、軽く頭を下げた。 「またな? お嬢ちゃん」 「またね、アンジェリーク」 二人の男性に見送られて、アンジェリークは自宅へと戻った。 電子ロックをカードキーで解除して、部屋に入ると、すでにアリオスの靴があり、彼が帰ってきているのが判った。 「あ、帰ってたの? おかえりなさい!」 「ああ」 不機嫌な様子のアリオスにアンジェリークは眉を寄せた。 「どうしたの?」 アンジェリークが声を掛けると、アリオスが鋭い視線でにらみつける。 それがアンジェリークには何のことかさっぱり判らず、目を見開いた。 「どうしたの?」 彼の顔を覗きこもうとして、手であしらわれる。今までそんなことをされたことのない彼女は、傷ついたように呆然とする。 「いい気なもんだぜ? 浮気かよ・・・? おまえ、昔からちやほやされるのが好きだったからな」 ちくりと嫌みな言葉をアリオスは呟く。その言葉が鋭い凶器となって心に突き刺さる。 「そんな! 浮気なんかしてない!!」 アンジェリークは、泣きながら抗議をするが、アリオスは相手にしない。 「おまえオスカーとセイランと嬉しそうに媚びを売って話してただろ!?」 アンジェリークははっとする。 見られてたんだ・・・。 「ただ話してただけだわ!」 「だったらなんであんなに嬉しそうに話してたんだよ!!」 アリオスは益々論旨がきつくなり、アンジェリークをにらみ付けた。 「信じてくれないのね・・・。だったら実家に帰る!」 アンジェリークも興奮し、手が付けられなくなる。 「行かせねえ!」 アリオスはアンジェリークの腕を即座に掴むと、そのまま力づくで彼女を抱き上げ、ベッドへと連れていく。 「身体で判らせてやる!」 彼はそう言うと、アンジェリークをベッドに投げた。 |
コメント
霧香様のリクエストで、「コレットちゃんが他の男の人と仲良く話しているのを目撃したアリオスが、嫉妬して切れる」です。
次回野獣(笑)
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